トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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スパスタ2期始まりましたねぇ
デッカーも面白いですし、暫くは楽しくなりそうです


24話 街に不協が吹き抜ける

 

 

地球の夜は喧しい。帳が降りた後すらも忙しなく活動を続ける人間達の奏でる音に、この星へ舞い降りた当初は困惑したことを覚えている。

 

暗闇とは本来静謐が満たすもの。何もかもが眠る黒と同化し、自らもその中に沈む。それが光ある場所に生きる者の摂理だというのに。

 

だが生命とは適応するものだ。この星に飛来し早10年……自分も随分と毒されてしまったらしい。

 

 

 

『……よし、寝たな』

 

相方の意識が深場へと沈んだのを確認し、主導権の入れ替えた身体を起き上げる。仄暗い部屋の中で時計を見上げれば10時半。時間としては余裕があるくらいか。

 

『まだ幾つかの部屋で物音がすんのが気になるが……点呼が終わってんなら問題ねぇか。ったく、ガキはさっさと寝ろってんだ』

 

ここ虹ヶ咲学園の学生寮には幾つかの規則がある。指定時間外の外出禁止や消灯など、学生にとって窮屈なものは枚挙に遑がないが……自分には関係がない。

 

『しかしまあ、この時間にしか動けねぇってのも不便だな……今更だが』

 

音もなく窓枠の外へと飛び出し、風のような速度で夜を翔けた。

 

僅かに差した月光が蒼く染まった瞳を照らす。次第に寝静まってゆく街の中、星海輝の身体はその内に潜む者の意志のままに、吹き抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、おぉぉ~……!」

 

「頑張って璃奈ちゃん! あと10秒だよ!」

 

両腕を床に置いた状態で身体を持ち上げる璃奈を同等の目線になって応援する。

 

所謂体幹トレーニングというものの最中だった。璃奈がライブをする上での最大の問題はその体力や筋力にあるという話になり、暫くはこちら方面を強化する、という話になったのだった。

 

「9…、10! りなりーお疲れ! よく頑張ったね!」

 

「疲れた……。全身、びりびりする」

 

「最初の内はそんなものよ。慣れてくれば少しは楽になるわ」

 

取り決まった日程の関係上、トレーニングは突貫工事の様相を呈している。故に内容はハードであり、身体面で平均値を下回る璃奈にとってはかなり辛いものではあるだろう。

 

だが弱音を吐くことはなかった。輝自身そんな彼女が心配な部分はあるが、当人がやる気である以上は応援したい。

 

「というか、私としては耀くんが平気な顔してることに凄く驚きなのだけど……」

 

「耀くん、昔から体力凄かった」

 

「確か体力テストも学年1位だったよね~。輝いてるよ! テルだけに!」

 

「へ、へ~……ちょっと意外ね」

 

フーマが宿っている影響かは知らないが、昔から身体能力の面で困ったことがあるという記憶はなかった。

 

今の果林のように小柄なことから意外に思われることは少なくないが、難なく璃奈と同じメニューをこなせていると考えれば面倒なことばかりではないだろう。

 

「…てか、なんでお前まで一緒にやってんだよ。鍛える必要なくないか」

 

「ただ応援してるだけって言うのもアレかなと思ったので……それに同じメニューをやってれば璃奈ちゃんに何かアドバイスできるかもですし」

 

「健気だねぇ耀くんは。コウ君なんか腕組みながらバシバシ駄目出ししてくるのに」

 

「お前がすぐ楽しようとするからだろ」

 

同好会の方にも、それなりに馴染んできたと思う。耀自身も会話が増えたこともあるが、何より璃奈が楽しそうにしているのが嬉しい。

 

フーマの気配を感じ取られているのか、まだ時折昂貴達が懐疑の視線を向けてくることもあるが、それも大分減った。彼等もまた耀を受け入れ始めている、と判断していいのだろうか。

 

「りな子~、次は歌と振り付けの練習だよ~。可愛いかすみんからいーっぱい学んで、一緒に可愛いスクールアイドル目指そうね! まあ一番は勿論かすみんだけど」

 

「うん、今行く」

 

ここの人達は、本当に暖かいと感じる。

 

ずっと璃奈と2人きりだった関係が、愛が加わり、スクールアイドルに触れ、どんどんその輪が大きくなっている。少し前からは考えられない光景だった。

 

「耀くん、行こう?」

 

「あ、うん。そうだね」

 

『っ……!』

 

璃奈の呼びかけに応じ、耀もまたかすみの後に続こうとしたその時。

体内のフーマが何かを察知したのを感じ取り、その見て伺える警戒の色から足を止めてしまう。

 

『この気配……』

 

(フーマ…? どうかしたの?)

 

『……悪いな耀』

 

一切の状況が掴めぬまま投げ掛け零された短い謝罪の後。

 

(フー……マ……―――?)

 

なんで今更。よりによってこのタイミングかよ。あの筋肉ダルマに悟られんだろうが。

雑多な思考が流れ込み、それは輝の意識を覆い隠すように表層へとせり上がってゆく。

 

そして、

 

『……ごめん。ちょっと外すから先行ってて』

 

次に肉体が言葉を発した時にはもう、それを支配する意識は輝のものではなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ナニモンだ』

 

とんっ、と。

吹き抜ける風だけが存在する三角錐の狭間に、わざとらしく上げた靴音が反響する。

 

『へぇ……あの距離からでもこの俺の気配に気付くか。流石、隠密行動のエキスパート様は違うねぇ』

 

『用件だけ言え。今立て込んでんだ』

 

影の中からその全貌を露わにした異形の存在を前に目を細めた。

昆虫が人型を成したような風貌をしており、両手の甲からは鋭利な刃が伸びている。校舎の上から自分達を見下ろしていたこと含め、まあ間違いなくこの星の住民ではないだろう。

 

『そう身構えるなよ。俺はお前に仕事の依頼をしに来ただけだ……つっても、俺も雇われた側だけどな』

 

『……ヴィラン・ギルドか』

 

『おうそうだ。お前の腕を見込んで協力を依頼しに来たんだよ……風の覇者さん』

 

口にされたいつだかの二つ名に妙な不快感を覚える。どうやら自分について随分と調べて来たらしい。

 

だが自分達の正体にまでは辿り着いてはいないのか、眼前の宇宙人に警戒のような色は見受けられなかった。

 

『…つっても、この分じゃ時間の問題か』

 

『…? なんか言ったか?』

 

『なんでもねぇ。それより依頼ってなんだ』

 

『ああ、その話だが……最近、怪獣商の連中が何やら上物を仕入れたって話でな。近々大体的にオークションをやるから俺達はその邪魔立ての阻止、体よく言えば警護をしろって依頼だ』

 

『邪魔される前提で話してるってこたぁ、まあ別に目的があるってことだろ』

 

『…いいねぇ。理解が早いのは好きだ』

 

頭部の発光体が彩度を上げる。奴にとってはそれが表情の変化のようなものらしい。

だがそんな知識はどうでもいい。問題はこの依頼の裏に隠された真意だ。

 

『……っと、自己紹介がまだだったな。俺はスラン星人のアジル。お前と同じ、ヴィラン・ギルド内じゃブツの受け渡しや横奪を専門にした工作員ってとこだよ、フーマ』

 

スラン星人。詳しくは知らないが、高速宇宙人という別名の通り俊敏な動きを得意とした種族であることはかつて耳にした事がある。

 

この依頼はそんな宇宙人との合同任務になるらしいが、その内容は警護。相応しい人材ならばもっと別にいるはずだが……、

 

『なんで俺達なのかわかんねぇって顔してんな。いいぜ、教えてやるよ。まずは……そうだな。今回オークションに出される怪獣ってのはこの街の地中にいる。怪獣商としてもそれなりに育て上げてから出品したいらしくてな、今は地中の熱エネルギーを吸わせてる最中らしい』

 

『…こないだの怪獣騒ぎはそれが原因か』

 

『ああ。特殊な電磁波で覆ってるから地球人の探知には引っ掛からねぇらしいが、どうも怪獣は別らしい。熱エネルギーの低下を察知して異物を排除しようとしたのか、それとも怯えて地上に出てきたのかは知らねぇが……まあ計画の方に支障はないから安心しろとのことだ』

 

アジルと名乗ったスラン星人が鷹揚に胸を張る。あの事態の影響をもろに受けた自分にはあまりいい気はしないが、そんなものこの星の住民ではない彼には関係ないのか。

 

『話を戻すぞ。怪獣商の行うオークションってのは、大抵その目玉商品と現地で適当に鹵獲した怪獣を戦わせるデモンストレーションと併せての実施だ。だが今この地球でそんな真似すりゃあ、あのウルトラマン共が黙っちゃいねぇだろうよ。……それで、だ』

 

『……戦えってのかよ』

 

『まっさか、そんな非効率なこといくら連中でも指示してこねぇさ。俺達はただ奴等を牽制できればいい。適当な地球人を何人か拉致して人質にする……それだけで奴等は戦えなくなるだろうよ』

 

躊躇いなく人質という選択肢が出てくるのもその証拠だ。倫理観というのはその種族の風習や個々の価値観によって様々ではあるが、コイツにとってそれは利己的な部分が大半を占めるらしい。

 

尤もそれはアジルに限ったことではなく、この星に巣食う犯罪組織全体に蔓延する考えではあるのだが。

 

『それだけじゃねぇぜ。ウルトラマンを倒したとなれば、そいつぁ怪獣を売り出す上で相当なセールスポイントになる。形としては八百長になるが、そんなモン中継先のバイヤー共には伝わんねぇだろうしな。素直に信じ込んで大金を出してくれるだろうって算段だ。その分報酬も弾むだろうよ、クハハ』

 

故にこの品の無い哄笑は組織そのものの気質を表したものだ。

辟易とするが、保身の面から否定は出来ない。これもまたこの組織、特に下っ端連中に根付く考えだろう。

 

『話を纏めると、俺達はオークション最中にウルトラマンが表れたタイミングで拉致した地球人を人質に奴等へ無抵抗を促せばいいだけ。仮に失敗しても、俺達のスピードなら問題なく振り切れるだろうよ。被害を受けるのは怪獣商だけだ』

 

ヴィラン・ギルドは纏まった一つの組織という訳ではなく、言い表すのならば違うの一致した集団が一時的に手を組んでいる群れ、という方が相応しい。

 

よってどこかで計画が頓挫しようと組織全体への影響は殆どない。このスラン星人のように、個人で活動を続ける者にとっては猶更だ。

 

『で、どうだ? 俺と組んで一儲けしないか?』

 

腕を返し、刃の下に隠された手のひらが向けられる。確かにアジル同様個人行動が主な自分にとっても美味しい話ではあるだろう。

 

だが―――、

 

『…悪ぃが他を当たれ。俺は極力面倒事……特にウルトラマンにゃ関わりたくないんでな』

 

その手を取ることなく踵を返し、話を断ち切るように背を向けてはその場を去った。

 

『そうか……残念だ。ま、その分俺の取り分が増えたと思っておくぜ』

 

背後に在った気配が消えてゆく。

これだからこの星は息は息苦しい。余所者を良しとしない原住民の風潮に、それが故の外星人共の横暴。居心地の悪さは他に類を見ないほどだ。

 

でもまだ離れる訳にはいかない。あと少し、もう少しだけ、自分にはこの星でやり遂げなければならないことがあるから。

 

『……チッ』

 

抑え込んである身体の主の意識が眠ったままであることを再確認する。一連の話は聞かれていないようで何よりだ。

 

だが安堵は出来ない。そんな不快感を発散するように舌を打ったフーマは風のような速度で地上へ下り立ち、人間社会の中に舞い戻っていった。

 

 




雄牙(主人公)、出番なしw

前回輝くんメインのお話になると言いましたがフーマメインになりそうなので発言を訂正させて頂きます()

そしてそんなフーマはなんとヴィラン・ギルドの一員で……?
彼の暗躍を輝が何も把握していない状況。こんな中りなりーのライブが向かう先とは……
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