トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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始まる……ウルトラヒーローズEXPO2022サマーフェスティバルが……


25話 トラブル狂騒曲

 

 

「いよいよだね」

 

「…うん」

 

隣り合って揺られるモノレールの車内。普段の通学で見慣れたものと思っていたこの景色も、今日ばかりは違って見える。

 

璃奈がライブの宣言をしてからはや数週間。目まぐるしく過ぎていった練習の日々を乗り越え、遂にその日を迎えた。

 

「緊張する?」

 

「……する。でも頑張る。皆応援してくれたから、応えたい」

 

スクールアイドル部に入ってからの日常は本当に忙しい。でもそれに負けないくらいの充実感があった。

 

実際に耀自身がステージに立つ訳ではないが、ステージに立ちたいという誰かを支えるのは案外いいものだと思える。高校に入るまで璃奈と関わることしかしなかった自分にとっては大きな進歩と言えるだろう。

 

だがまあそれでも、最も支えたいのが彼女であるという事実に変わりはないのだが。

 

「璃奈ちゃんボード˝むんっ˝」

 

「あはは、もうすっかり使いこなしてるね」

 

顔を覆うように掲げられたスケッチブックにはデフォルメチックに簡略化された表情が描かれている。

 

璃奈ちゃんボードと名付けられたこれは、感情を表に出すことが苦手な彼女が彼女なりに考えて編み出した伝達方法だった。近頃はこれを活用してのコミュニケーションも増えてきたところだ。

 

「そっちの方も大丈夫そう?」

 

「うん。家を出る前に動作確認もしてきた。ばっちり」

 

スケッチブックとは別に璃奈の膝に抱えられているのはヘッドホン。それも前部に電光ボードが備わったかなり大型のものだ。

 

璃奈曰くこれは「オートエモーションコンバート璃奈ちゃんボード」なる代物らしく、舞台上で表情が作れないという課題を解決すべく生み出したもの。スケッチブックの方もこちらから着想を得て生み出したそうな。

 

「まさか完成が間に合うとは思わなかった。瀬良さんのおかげ」

 

「改めて考えてみるとホントに凄い人脈してるよね……瀬良先輩」

 

しかもこの電光ボード、装着者の感情に合った表情をリアルタイムで表示してくれるだけでなく、内蔵されたカメラが顔側の液晶に景色を映し出すことで視界も確保できるという優れもの。

 

設計自体は璃奈や愛達が行ったものらしいが、プログラムに関しては同好会の先輩である雄牙がE.G.I.S.の知り合いに相談した結果ものの数分で組み上げて送ってきたらしい。本当にあの人達様々だろう。

 

「……色んな人に助けられちゃったね」

 

「うん……だから、頑張る。璃奈ちゃんボード˝ふぁいっ!˝」

 

ライブに向けた準備を通し、皆と繋がりたい、という璃奈の願望は果たされたのかもしれない。

 

でもそれは一方的なものだ。貰った分は返したい。璃奈が望む繋がりとはそういうものであり、スクールアイドルにとってそれは歌を届けることだから。

 

「きっと、いいライブになるよ」

 

「ありがとう……耀くんも、見てて」

 

そんなステージはもう目前だ。

ほんの少しの心配と、その何倍もの期待を抱えたままモノレールは進む。両者の間に流れる空気感もやはり、普段とは違って感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「星海」

 

巷で話題のスクールアイドルのソロイベント。そんな物珍しさからかそれなりの賑わいを見せている会場から少し離れた地点。

 

不意に璃奈達から離れていった耀の後を追い、人気が閑散としてきた折にその背中を呼び留めた。

 

「南雲先輩……?」

 

「何してんだ? トイレならあっちだぞ」

 

「ああいや、璃奈ちゃん達に何か飲み物でも買ってこようかと思って……」

 

彼の一挙手一投足に怪訝を張り巡らせる。所感に過ぎないが嘘を言っているようには思えなかった。

 

視線を重ねればそんなことでわざわざ声を掛けたのかと、疑念に思うような輝の顔があった。だが警戒しているような素振りはない。

 

その様には少々違和感を覚えるが……それでもやることは変わらない。

 

「答えろ星海。お前、こないだの練習中どこに行ってた」

 

射止めるように目尻を吊り上げて本題を切り出す。そう言えば一対一で面と向かって話すのは初めてだったが、そんなことは関係ない。自分はこのことを問い詰めるためにここへ来たのだから。

 

先日のことだ。璃奈の特訓中、まるで()()()()()()()()()()()()()ように目の色を変えた耀が一時的に彼女から離れたことがあった。

 

タイミング的にも不自然な離脱。兼ねてよりタイタスから彼への警戒を呼び掛けられていた昂貴はその後を追ったが、そう時間も掛からない内に見失ってしまった。

 

仮にも訓練を積んだウルトラマンが宿る自分の尾行を巻いた……まあ間違いなく一介の高校生に出来る芸当ではないだろう。

 

だが―――、

 

「……やっぱり」

 

「あ…?」

 

彼の反応は予想していたどれとも合致しない。正直とぼけられるものと思っていたが、耀は何か自問するかのように顎へと手を当てている。

 

「璃奈ちゃんにも同じことを言われたんですけど……何も覚えてなくて。やっぱりあの時の僕、何か変でしたか?」

 

「あ、ああ……そりゃぁな」

 

遂には問い返される始末。改めてその挙動を注視するがやはり何かを偽っているようには見えない。

 

『自覚がない……となると、やはり何者かに意識を遮断されていた可能性が高いな。存在を認知していたのならばこちらから正体を明かし問い詰めることも出来たが、こうなっては止むを得ないな』

 

(どうする気だ?)

 

『手荒な真似にはなるが……彼の肉体から追い出す。身体を借りるぞ、昂貴』

 

四肢の感覚が遠ざかってゆく。タイタスが肉体の主導権を握った証だろう。

 

何をする気かはわからないが、手荒な真似という発言の通り主の切り替わった身体が発する圧は相当なものだ。耀もそれを感じ取ったのか、じりじりと警戒するように後退してゆく。

 

「先輩……? 何を……」

 

『…悪いな。少し、眠って貰おう』

 

膨れ上がった筋肉が力を溜め、解放と同時に砲弾のような拳が耀へと打ち出される。ウルトラ念力と呼ばれる彼等特有の念動波をぶつけ、内部にいる何者かを直接叩こうという狙いだった。

 

『ッ……!』

 

しかしその拳が実体を捉えることはなく、打ち抜いたのはその場に残された残像。

 

『…ようやくお出ましという訳だな』

 

『……クソが。やっぱし勘付いてやがったか』

 

一瞬の内に背後へと回り込んでいた耀……その肉体を動かす者へとタイタスが目線を固定する。

 

『さて、早速対話といこうか。君は何者だ。何の目的があって彼の身体に宿っている』

 

『それなんだがよ……ちーっと見逃しちゃくれねぇか? 別にお前等にとって不都合なことはしてねぇからよ』

 

『どうするかは君の返答次第だな。もし答えないというのなら、私は君を拘束する他なくなる』

 

耀の瞳を染めるのは、あの時と同じ蒼。一転した粗暴の荒々しさからも別な意識に切り替わっていることが見て伺える。

 

『これだから頭の固ぇ警備組織はよ……水が綺麗すぎちゃ生きてけねぇのは魚も俺等も同じだろうがよ。ちっと薄汚れた部分があるからこその生だろうが』

 

『君の価値基準は尊重するが、この場で用いるべきものではないな。現に君は1人の原住民の生活に支障をきたす存在となっている。戦士団として、その状況を見過ごすわけにはいかない』

 

『へーへーおありがてぇご説法なこった。けど生憎座って授業受けるなんざ柄でもねぇんでな。おさらばさせてもらう……ぜっ!』

 

『ッ……! 待てッ!』

 

突風が吹いたと思った次の瞬間、ほんの一瞬前までそこにあったはずの耀の姿が遥か遠くへと飛翔する。

 

『何だあの速度は……!?』

 

遅れてタイタスもその後を追うが、ウルトラマンの力を以ってしてもその差が縮まるどころか、むしろみるみる内に離されてゆく。

 

上記を逸した速度だった。巻き起こった風が周辺の人々を拭きつけているが、彼等もまさかそれを起こしているのが小柄な少年だとは思わないだろう。

 

『マズいな……撒かれてしまっては何をされるか―――、』

 

危機感が脳裏を疾走するが、それが上塗りされたのは直後のことだった。

 

 

 

『ッッ……!?』

 

大地が揺れる。いや、割れていると称するべきか。

 

『何だ……何が起こっている……?』

 

地震とはまた違う。明確に何かが砕ける音と共に流動する東京の街。その亀裂から壁を作るように赤い閃光が吹き上がった直後―――、

 

 

『ッッッ――――――!!!』

 

 

轟いた無機質な咆哮が、怪獣災害の幕開けを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『馬鹿な…!? 魔王獣だって!?』

 

怪獣の出現に伴い湧き上がる警報と悲鳴。混沌の様相を呈した街の中で、タイガにもまた大きな衝撃が走ったのがわかる。

 

「魔王獣……?」

 

『世界を滅ぼすと言われる力を持った怪獣の総称だ……しかもこいつは˝マガグランドキング˝。かつて父さん……ウルトラマンタロウが封印したはずの個体だぞ』

 

馴染みのない名前をそのまま問い返して見れば、想像を遥かに超えた規模の答えが紡がれる。

だがアレが相当ヤバイ怪獣であるのは雄牙から見ても明らかだった。

 

怪獣というよりはギャラクトロンのような機械獣を思わせる。左右の腕に巨大な鉤爪と大鋏を持ち、全身に備わった砲台や銃口は正しく怪獣兵器と呼ぶに相応しいとも言えた。

 

 

―――――土ノ魔王獣(ツチノマオウジュウ) マガグランドキング

 

 

『フゥン!』

 

少し遅れる形でタイタスが出現し、即座にマガグランドキングとの交戦に至る。

如何にタイタスと言えど相手は魔王の名を冠する程の怪獣だ。苦戦しないとは言い切れないだろう。

 

『一先ずは人々が避難する時間を稼ぐのが先決だな……雄牙、俺達も―――』

 

相方と共に導き出した答えは加勢。すぐさま変身し自らもあの場に至ろうとするが、その決断はまた別の悲鳴に掻き消されることとなる。

 

『さぁてと……こっちもお仕事と行きますか』

 

マガグランドキングとは別方向で渦巻いた混乱のど真ん中に目をやれば、自らの存在を示すように堂々と闊歩する異形の存在が目に入る。

 

「宇宙人……!」

 

『スラン星人!? なんでこんなところに……』

 

タイガがスラン星人と呼んだソイツは逃げ惑う人々をさながら品定めするかのように見回している。

 

人型でこそあるが各部位の形状は悉く地球人とは一致しない。本来の姿で宇宙人を拝むのは初めてだが、こうして目の当たりにするとやはり不気味さが勝るものだった。

 

 

―――――高速宇宙人(コウソクウチュウジン) スラン星人

 

 

『さてとどいつにするか……出来るだけちんまい奴の方が運びやすくていいよな……っと』

 

『ッ…! マズイッ!』

 

そんな所感を抱いたのも束の間。何かを見つけ出したようにスラン星人が指を鳴らした直後、ウルトラマンの動体視力を以てしても追い切れない速度で奴の身体が駆動する。

 

そして―――、

 

「りなりー!?」

 

『野郎……人攫いか。追うぞ雄牙!』

 

朧げな紫紺の影がスクールアイドル同好会の集団を横断し、その中の一名を搔っ攫ってゆく。

 

狙われたのは璃奈だった。どういう意図があってかは知らないが、小柄な彼女を抱えたスラン星人の背中はみるみる内に遠ざかってゆく。

 

「なんだアレ……いくら何でも速すぎだろ!」

 

『そういう種族なんだ……このままじゃ追い付けないな。こうなったら……!』

 

雄牙の意志とは関係なくタイガスパークが右腕に装着される。

 

『変身して奴を追うぞ。正直それでも追い付けるかはわからないが……やらないよりはマシだ』

 

「…わかった」

 

《カモン!》

 

スラン星人がビルの影へと隠れたのを確認し、ギアを上げると共にレバーを引く。

 

タイタスが交戦している方向へと進んでくれたことが幸いし周囲に一目はない。出現したキーホルダーを掴み取ると、真上ではなく正面に突き出す形でタイガスパークを構えた。

 

「『バディ……ゴーッ!」』

 

 

《ウルトラマンタイガ!》

 

 

等身大での変身が完了し、完全に解放されたウルトラマンの力で奴を追う。

ビル街であるここら一帯の道は入り組んでいる。それが故にトップスピードを出せないスラン星人を射程に捉えると、そのまま一気に加速し―――、

 

『˝ハンドビーム˝!』

 

射出した光の鏃が足元へと着弾。目論見通り足止めに成功したタイガは立ち塞がるように奴の眼前へと躍り出る。

 

『ッ…! ウルトラマン!』

 

『追い付いたぞスラン星人! その子を解放しろ!』

 

『はっ! まさかそっちから出てきてくれるとはな……これで2人。手間が省けたぜ』

 

『何だと?』

 

『詳しい話は……上でやろうぜ?』

 

直後。

追い詰めたと思ったはずのスラン星人の肉体がみるみるうちに膨れ上がってゆく。

 

『おいおい……何のつもりだ!』

 

薙ぎ倒された周辺の建物が瓦礫として降り注いでくるのを察知し、たまらずタイガも巨大化。2つの巨影が衝突する街中にまた2体の巨人が出現する。

 

『スラン星人……? どういうことだタイガ』

 

『すまない……天王寺璃奈を攫われた』

 

『まあそういうことだ。俺が何を言いたいか……わかるよな?』

 

勝ち誇った様子のスラン星人が球体に閉じ込めた璃奈を掲げる。その背後ではマガグランドキングがその眼光を煌かせていた。

 

『……抵抗をやめろということか』

 

『物分かりがいいじゃねーか。俺はヴィラン・ギルドの連中にお前等の妨害を依頼されたモンでな。悪いがお前等にはこの怪獣オークションの引き立て役になってもらう……おっと、拒否権はないぜ?』

 

『オークションだと……』

 

『ああ……まあせいぜい、盛り上げてくれよな』

 

仕組まれた戯曲のままに事が進行する。

刹那に瞬いた紅の閃光が、2体のウルトラマンを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おっぱじめたか……』

 

吹き飛ばされる巨人達を見上げて零す。

 

知り得ていた訳ではなかったが、ヴィラン・ギルドのオークションが今日この日に行われたのは運が良かった。おかげでタイタスとかいうウルトラマンを撒くことには成功した。

 

だがそれも一時的なものに過ぎない。この件が収まれば、また自分達は彼に追われることになるだろう。そうなれば……、

 

(ねえフーマ……フーマってば!)

 

焦燥が思考を満たす中、また一つ面倒事を生んでいたことに気が付く。

 

しまったと己の失策を呪った。タイタスから逃げるのを意識するあまり、耀の意識を遮断することを完全に失念していたのだ。

 

(これってどういうこと? あの怪獣は……? そもそもどうなってるのこれ)

 

これまで積み上げ、保ってきたものが崩れ落ちる音がした。

この数年間で己の雑さや不器用さに嫌気が指したことは多々あったが、今日ほどそれを恨んだ日はない。

 

『こうなりゃ……、ッ!?』

 

多少彼に障害を遺してでもこの記憶を封じ込めるべきか……そんな思考が頭を過った折、見上げた視界にあるものが映り込む。

 

『璃奈……!?』

 

(え……?)

 

ウルトラマンと怪獣の戦闘を眺めるスラン星人の右腕に収まった球体。その内部に囚われている少女の顔は自分にとっても重要な存在の1人だった。

 

『ヤロォ……よりによって―――ッ!?』

 

「璃奈ちゃんッ!」

 

瞬間、迸った何かによって輝の肉体との接続が遮断される。

状況を認識し、その事実に戸惑ったのも束の間。気付けば主を取り戻した身体は前へと駆け、囚われた少女の元へと向かわんとしていた。

 




もう……このライブは滅茶苦茶だぁ!(agpn)

さあドタバタしてまいりました。ヴィラン・ギルドのオークションに出品されたのはなんとマガグランドキング……実は前の話のどこかにコイツが出てくる伏線があったり……

フーマの存在もタイタスに看破されて……さあどうなっていくのやら
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