トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~ 作:がじゃまる
『さあさあ、本日の目玉商品はなんとあの魔王獣……マガグランドキング! ご覧くださいこの圧倒的な力! あのウルトラマンを物ともしない力が手に入るのは今回限りかもしれませんよ!』
「……滑稽だな」
かつてない盛り上がりを見せるヴィラン・ギルドの怪獣オークション会場。その片隅で異星人達の熱気を眺めるオグリスは冷めた声音で吐き捨てた。
「身に余る私欲に飲まれた結果がこれか。そこに力があれば縋るように飛びつくとは……惨めでならん」
「まあそう言ってあげるな。力を持たない者にはその者なりの立ち振る舞いというものがあるのだよ」
「私には理解し兼ねるな。戦いとは自らの力で挑むからこその至高であり愉悦だろう。ただ怪獣を使役するだけでそれを満たそうとする輩の考えなど私にはわからん。……そんな連中に力を与えるお前も含めてな」
「おや、バレていたか」
「ハナから隠す気もないだろうに。……だが本当に何のつもりだ? 以前大した害にはならないだのなんだの言っていたが、ここまで派手にやらかされてはそうもいかないんじゃないか?」
今このオークションに出品されているマガグランドキングは、かつてこの男がヴィラン・ギルドとの取引で連中に受け渡したものだ。
オグリスの所持する˝マガオロチ˝のメダルからその派生である魔王獣の力を生成した奴の技術もそうだが、それ以上にその行動の意図が読めない。
「なに、私はただ夢を提供しているだけさ。力を持たない子羊達に、わかりやすい強さと肩書きを持った力という夢をね」
手のひらで幾つもの指輪が転がされる。˝マガバッサー˝に˝マガジャッパ˝、˝マガパンドン˝。別のエレメントを持つ魔王獣の指輪は、今後もここにいる連中を振り回していくことだろう。
「でも夢とはいつか覚めるもの……都合のいい夢を見た暁には、私にも協力してもらわないとね」
「ようするに連中を利用してウルトラマン共を刺激したかった訳か……回りくどいことをする。奴等と遊びたければお前自身が出向けばいいものを」
「前にも言ったが、私の身体は今満足のいく状態ではなくてね。その回復のためにも、今は彼等を利用させて頂かないとね」
「フン……結局はお前も力が目当てか」
「おいおい、力を欲しているという点では君も同じだろう? だからこそ私の誘いに乗った……違うかい?」
「力を持つ者が更なる力を求めて何が悪い。それに、私の求める力は他でもない私自身を強くするものだ。連中の欲するハリボテの力などと同列に語るな」
「まあ……そういうことにしておこうか」
相も変わらずその腹の内を伺わせぬまま、薄ら寒い笑いを張り付けた男が視線を上げる。
共に見据えたモニターには、ウルトラマンを圧倒する……ように仕向けられた中継映像が、観客達に更なる熱狂を与えていた。
『ッッッ――――――!』
『ぐあぁ……!』
袈裟懸けに振り下ろされた大鋏がタイガの胸元を抉る。
一撃貰うだけでも致命傷になり兼ねない威力。だが今の自分達はそれを回避する術など持ち合わせてはいなかった。
『はははッ! いいねぇウルトラマン! 情けねぇやられっぷりだぜ!』
『野郎……!』
『抑えろタイガ。下手をすれば天王寺璃奈の無事が保証できない』
『それはわかってるけど……このままじゃどうしようもないだろ』
囚われた璃奈を掲げるスラン星人の要求は、無抵抗のままこのマガグランドキングにやられること。
ヴィラン・ギルドなる組織が開催する怪獣オークション。そのパフォーマンスの見せしめとなることだった。
『今は奴の隙を伺うしかない……一先ずは私が盾になる。君はエネルギーを温存するんだ』
『……わかったよ』
防御力で勝るタイタスが攻撃を受け、彼よりも機敏なタイガが璃奈の奪取を図る。作戦こそ単純だが、だからこその困難が付き纏うのは雄牙でも理解できた。
スラン星人は恐ろしく速い。恐らくタイガがトップスピードで突撃しても隙を突けるか怪しい程にだ。
そしてもしそれが失敗すれば璃奈が無事でいる保証はない。人命の掛かった場面で分の悪い賭けに出るのは好ましくないのはきっとタイタスも承知の上だ。
でも現時点において有効と考えられる策がこれしかないのもまた事実。
(考えろ……!)
攻撃を捌きながら必死に思考を巡らせる。
こうしている間にも巨人の肉体を維持するエネルギーは消耗し続けている。誇張抜きのジリ貧の状況に陥る中で、2体のウルトラマンはその決断を迫られるのだった。
『おいバカ止まれ……! 何考えてやがんだ!』
全速力で階段を駆け上る宿主をその体内から呼び留めようとする。
「でも……でも璃奈ちゃんが!」
『でもじゃねぇ! お前が行ったところで何ができるってんだ!』
無理矢理に肉体の主導権を奪おうとするがそれが叶わない。先程から何度も試みているというのにこれだ。
純粋な力ならこちらが遥かに上回っているというのに……彼の精神力がそうさせるのか、璃奈を助けようとする彼の心はフーマの浸食を弾き続けていた。
『出来る訳ねぇだろ助けるなんざ! 勇敢と無謀を履き違えんじゃねぇ……身の丈に合わねぇんだよテメェの行動は!』
「だからって何もしなくていい理由にはならないよ! フーマは璃奈ちゃんがどうなってもいいの!?」
『そりゃよかねぇが……それとこれとじゃ話が別だ。最悪お前が…って可能性だってある。璃奈が戻ってきた時にお前がいなかったら意味ねぇだろうが』
「璃奈ちゃんがいなかったらそれこそ意味ない!」
ならば説得をとダメ元でそれらしい言葉を投げかけるも、案の定突っ撥ねられる。
星海耀にとっての世界とは天王寺璃奈がいる世界だ。それは一番近い場所で彼の成長を見ていたフーマが一番知っている。
『だあぁ……メンドクセェ拗らせ方しやがってこの野郎……! 大体お前、1人で突っ込んでどうするつもりだ。ドチビのお前じゃ身長の時点でボロ負け、ビルから飛んだとて届くはずもねぇ。手段がねぇだろ手段が』
「それは……」
一度足が止まる。でも彼が諦めるという予感はなかった。
何かを伺うように真下に向けられた視線。その目に込められた意図は直ぐに察した。
『俺に力を貸せってか。威勢よく飛び出してった割には随分と他力本願な解決策だこった……甘ったれんな。自分の力で出来ねぇようなこと、ハナっから抜かすんじゃねぇ』
耀の判断は間違っていない。この状況における最も有効な打開策は、彼が自分と共に変身して璃奈の奪還に向かうことだろう。
だがそれは出来ない。それだけはしたくない。ここでその選択をすれば、これまで積み上げてきた全てを自らの手で瓦解させかねない。
地球などと言う辺鄙な星でおかしな原住民に紛れながら過ごした、この10年の日々を。
「……確かに、そうかもしれないけど」
酷く威勢の削がれた声が零れる。ようやく押し留めることに成功したと胸を撫で下ろし駆けるが、まだその瞳に宿る意志が死んではいないことを直ぐに察した。
「…けど、やっぱりただ見てるだけなんて出来ないよ。確かに先輩達やE.G.I.S.に任せれば璃奈ちゃんは助かるかもしれない。僕に出来ることなんて何もないのかもしれない……でも、ここで投げ出したら僕が僕を許せなくなる」
フーマはこの目を
「情けないところばっかりだけどさ……せめて、璃奈ちゃんにくらいは誇れる僕でいたいから」
『お、おい……俺の話聞いてなかったのか?』
「フーマには頼らないよ。……確かにそれじゃ何にも変わらないかもしれないけど、それでも僕に出来ることをやりたい……やらなきゃいけないんだ」
暫くの後に紡がれた答えと共に輝はまた走り出す。最早それを止められるものは世界のどこにもいない。それもフーマが一番知っている。
正直自己満足もいいところだろう。勇敢であることは決して美しいことではない。志を貫こうとして身を滅ぼした奴を何人も見てきた……今彼が進もうとしているのはそんな道だ。
でもその姿が、どうにも
『…嫌なとこばっか似やがって……』
永遠のようで一瞬の迷いを抱いた後、
『あーもう、わかったよ』
「フーマ……?」
『俺の負けだ。力を貸してやる』
観念するように溜息を吐きながら、耀の右腕に黒い手甲を出現させる。
下手をすればまた、あの日と同じことを繰り返すことになる。それはこの心に刻んだ誓いを破る行為だ。
けどどうしてだろうか。それなのにも関わらず浮かんでくるのは……笑ってる顔なんだ。
「……いいの?」
『……ま、ほっといたらマジでその身一つで突撃し兼ねねぇし、それでもしお前に死なれちゃ一体化してる俺も一緒にお陀仏だからな。背に腹は代えられねぇ』
ここにはいない誰かへの言い訳とするように今一度それらしい理由を並べてみる。
きっとこんなものは必要としてないだろうけど、他でもない自分自身を納得させるために。
『ただし、1つだけ条件がある。これまでのも、これからも、俺がお前に隠してることについては聞くな』
「……それだけ?」
『それだけってお前……
「フーマがそんなことする訳ないじゃん」
迷いも淀みもなく返された言葉に最早呆れすら覚えた。
人が良すぎるのか、将又危機感のない馬鹿なのか。だがしかしまあ、その方が都合がいいのは確かだ。
『我ながらとんでもねぇのと過ごしてきたモンだ……使い方はイメージで伝える。そのレバーを引いたら戻れなくなるぞ。それでもいいんだな?』
「勿論」
《カモン!》
かつてある者に伝授された使用法のままに耀が手甲を操作。引き金が動くと共に蒼と銀の光が散華する。
『へっ、だったら遠慮はいらねぇなぁ! 行くぜ耀! 轟かせろ……俺の名を!』
「風の覇者……フーマ!」
形成されたアクセサリーを掴み取り、大きく振り被った身体。
「『バディィィ……ゴーッ!!」』
直後に振り上げられた拳は天を穿ち、極光と共に一陣の風を運び込んだ。
《ウルトラマンフーマ!》
『ゼエェェイヤッ!』
喧しいまでの雄叫びを上げ、切り裂くような轟音を纏って降臨する蒼い輝き。
柔くも鋭い感触が頬を撫でる。新たな事態に見る者全てが騒然とする中で自らの存在を主張するように、出現した3人目の巨人は悠々と立ち上がった。
「蒼い……ウルトラマン……?」
タイガ達と同等の高さにまで視線を置いたその存在と瞳が重なる。
蒼い身体。胸の蒼い輝き。飄々と物静かな印象を抱かせる容姿に反し、そのウルトラマンは荒々しい口調で言った。
『……この姿になるのも久々だな。あーくっそ、身体が重くて仕方ねぇ』
『この気配は星海耀の中にいた……ウルトラマンだったのか!?』
『あー……詳しい話は後だ。とにかくこのデカブツはアンタ等に任せたぜ。俺は璃奈を救出する』
『救出って……出来るのか? あのスラン星人相手に』
『おいおい誰に物言ってやがる……俺は風の覇者、ウルトラマンフーマ……だッ!』
轟。
直後に吹いた突風を言い表すならばそれだっただろうか。
『は……?』
間延びた声はスラン星人のものだった。
理由は明白。今の今まで奴が握っていた天王寺璃奈を捕えた球体は……この一瞬の間にフーマと名乗ったウルトラマンの手の中に渡っていたのだから。
『お、鈍ってると思ってたがまだ案外いけるモンだな』
球体を解除し、そっと地面に下ろした彼女に向かって静かに首肯。
恐ろしいまでの速度で動いたその巨人は自信たっぷりにその身を翻すと、またも自己主張の強い声音で宣言した。
『こっからは瞬き禁止だ。さぁ……ぶっ飛ばすぜ!』
遂に風の覇者さん君臨です
本当は戦闘含めて1話で締めるつもりだったんですが長くなりそうだったので区切りました。スランさんは次回にでもぶっ飛ばされることでしょう。多分
フーマ視点でばかり描かれてあまり輝が掘り下げられていませんが実は……?