トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~ 作:がじゃまる
『相手は模造品とは言え魔王獣だ。油断せず行くぞ雄牙!』
「いつも油断なんかする余裕ないだろうが!」
璃奈の解放によりスラン星人からの強要材料は無くなった。それによりようやくまともな戦闘が開始される。
『ハアァァッ!』
天高く跳躍し、数回の宙返りを繰り返した後に降下。突き出した足でマガグランドキングの脳天を叩く。
だが効果は薄い。渾身の力を込めたはずの攻撃を受けても奴がダメージを受けているような様子はなかった。
言い表すならば最強の盾か。とにかくこの装甲をどうにかしないことに勝機はないらしい。
『まさかヴィラン・ギルドの動きがここまで活発化していようとは……幾度かの潜入を重ねていたにも関わらず気が付けなかった私のミスだ』
攻めあぐねるタイガの脇で、ハッキリと音が聞き取れるほどにタイタスが両の拳を強く握る。
『責任は果たそう。直ぐに片づける!』
刹那に解放された強打が着弾。さながら鐘を打ち付けたかのような重低音が辺りに響く。
並みの怪獣ならばこの一発だけでノックアウトしかねない威力だ。だが仮にも魔王の名を冠するその巨獣はそうもいかないようで。
『ッッッ――――――!!』
『やはり打撃は効果が薄いか……!』
あのタイタスの拳を二、三歩後退するのみで受け切ったマガグランドキングが咆哮を散らす。
叫びに呼応したのは胸部を縦に走る水晶体だった。煌々と輝いた光は次の瞬間には射出され、膨大な熱量を持ったレーザーが巨人達目掛けて疾走する。
『ぐッ……!』
駆け抜けた光がタイガの肩を掠める。振り返った先では原型は留めたままでいるビルの中央部に風穴が開いていた。それだけの貫通力を持つということ……こちらは最強の矛というべきか。
「でもレーザーなら……!」
タイガと思考を共有する。
レーザー光線の破壊力はその光が物質に吸収されることで生じる熱によるものだ。つまり光を吸収しない性質を持つもので遮ってやればいい。
『˝タイガウォール˝!』
視界を覆うように長方形のバリアが生成される。
極限まで反射率を上げた光粒子の壁は、さながら鏡のように周囲の景色を映しながらレーザーを受け止め―――、
『ぐあっ……!』
光線を反射する、それ自体は成功した。だが直前で威力負けしたタイガが体勢を崩したことで跳ね返した閃光は対象を逸れて虚空へと消えてゆく。
バリアの質を変化させるのにエネルギーを割いている分踏ん張りが利かない。故に物理的な突貫力までもを備えているのは厄介極まりなかった。
「もう一回やれ瀬良!」
『力が足りぬのなら……私達が支える!』
間髪入れずにマガグランドキングが穿孔の溜めに入った頃、タイガの後方へ立ったタイタスが告げる。
『うおおぉぉぉッ!』
直後に放射された光線は再度バリアと衝突する。だが今度は力負けすることはなく、完璧に反射し切った熱線が奴の水晶体に命中。間もなくその装甲に僅かながらも穴が開いたのを確認できた。
最強の矛と最強の盾は両立できない……つまりはそういうことだ。
『今だ……決めるぞタイガ!』
『おう!』
自身の光線の熱量のせいか、挙動を止めたマガグランドキングの前でエネルギーを高める。
そして再び奴の体躯が動き出す前に―――解き放った。
『˝ストリウムブラスター˝ッ!』
『˝プラニウムバスター˝ッ!』
殴り飛ばされた光球が虹色の奔流に乗り、ピンポイントで装甲の穴を貫く。
ただでさえ熱暴走を起こしていたマガグランドキングの巨体でそのエネルギーは更に膨れ上がり、次の瞬間には体内部から全てを吹き飛ばす爆炎が吹き上がった。
『これで一段落だな……』
『ああ……こちらはな』
勝利の余韻を噛み締める間もなくタイタスが何かを仰ぎ見るように見上げる。
視線を注ぐ先の空では、二筋の影が熾烈な交錯を繰り返していた。
『見せて貰おうか……風の覇者とやら』
蒼き疾風が街の真上を駆ける。
風の覇者。自らをそう称す3人目の戦士―――ウルトラマンフーマはこれまでに確認されていた巨人達とは一線を画する速度でこの空に顕現していた。
『セイッ……ハァッ!』
『チッ……!』
その一挙手一投足に猛烈な空気の圧を纏いながら飛び回るフーマの攻撃に、スラン星人は同等の速度を以って対抗する。
超人的な力を持つ者達以外では満足な目視すらも叶わない攻防。その渦中に身を置く耀は脂汗を浮かべつつも全力で己が身体を突き動かした。
『大丈夫か耀! ついてこれてっか!?』
「何ともない! ……とは言い切れないけど、大丈夫! 絶対についてくから!」
『おうよ! 俺を呼び出すチケットを手にしたからにゃあ、それくらいの気概でいてくれねぇとなァ!』
更にそのギアを上げたフーマの手刀がスラン星人の脇腹を掠める。
攻撃のヒットにより状況が動くと予測し身構える耀。が、舞い降りたのは思わぬ停滞だった。
『お前この気配……フーマか』
何かを察知したようにスラン星人が口を動かす。
『……だからどうしたってんだ』
『どうしたじゃねぇだろ! お前がウルトラマンだと……騙してやがったのか!?』
『おいおい人聞きが悪ぃな……聞かれなかっただけだッ!』
直後に向けられたのは隠す気もない黒い感情だが、フーマはそんなもの知ったことかというように攻撃を再開。苛烈に描く手刀の弧がスラン星人へと切り掛かった。
しかしそれも命中することはない。フーマは速いがこの異星人も大概だ。この星の常識などとうに超えた次元のスピード対決がそこにはあった。
『あなたはウルトラマンですかぁ?なんてわざわざ聞く訳ねぇだろうが! お前、ヴィラン・ギルドに潜入したスパイか何かか? 何を探ってやがった!?』
『そこに関しては安心しやがれ。俺もお前等と同じ、稼ぎ目的であそこにいる流れモンだ。特別組織に害を齎そうなんざ考えちゃいねぇよ』
『だったらどうして俺の邪魔を―――、』
『そんなん決まってんだろうが!』
更にその高度を上げたフーマが太陽を背にすると共に突貫。突き出した腕先の齎す斬撃がまたも奴を掠める。
『テメェはおいたが過ぎた……人の領域に土足で踏み込む不躾な野郎だ。覚悟は出来てんだろうなぁ!』
『舐めるなァッ!』
速く、速く、疾く。
宙を翔ける双星の影は際限ない程の加速を積み、この空に幾重もの光彩を描く。互いが互いを超えるべく鬩ぎ合う証だ。
だが僅かに―――フーマの上昇指数がスラン星人に勝る。
『ダァラッ!』
『ぐあぁ……』
横薙ぎに振り抜かれたフーマの裂脚がスラン星人を捉え、遥かな高度から奴の巨体を地表へと叩き落とす。
『˝
追撃を仕掛けるようにフーマも急降下。その速度は最早スラン星人ですら対応出来るものでは無くなっていた。
一切の減速を経ることなく突撃した頭突きが炸裂。もんどり返るように高速宇宙人の身体は吹き飛んだ。
『どうなってやがる……どんどん速度が上がって……!?』
『長いこと戦ってなかったモンでな。どうにも身体が鈍ってたんだが……お前のおかげで温まってきたぜ』
『この俺をウォーミングアップに使うだと……クソがぁッ!』
周辺のもの全てを打ち抜くように光弾が散らされるが、悉くは掠りもせずに虚空へと消えてゆく。誰がこの戦場で主導権を握っているかなど火を見るよりも明らかだった。
『お前もいいモンは持ってるよ。磨けば光るだろうが……生かしとくとちっと不都合なんでな。ここで討たせてもらう!』
『こんのッ……!』
最後の悪足掻き。いや、奥の手というべきだろうか。
突如スラン星人の輪郭がぼやけたと思えば、それは瞬く間に複数の影となって散開。ゆうに30は超えるであろう残像がフーマを取り囲むように形成された。
所謂影分身というやつだ……だが。
『……もう一度だけ言うぜ。お前は遅すぎる』
フーマは更にその上を行く。
分身体から一斉に射出された光弾を跳躍一つで回避すると、天を翔けつつ右手の手甲に手裏剣を生成。振り抜かれた腕の軌道に沿って宙を奔るそれは瞬く間にスラン星人の残像を切り裂いていった。
『何なんだよ……何なんだよテメェは! 稼ぎ目的で犯罪組織で活動したと思えば、自分の都合で俺を始末だぁ……? 本当にウルトラマンかよ!?』
『ウルトラマンだからって全員が全員、正義だの平和だの御大層な信念掲げてると思ってんじゃねぇぞ。俺は俺の道を往く……自由に、派手に、心の風が吹くままに!』
暴かれた本体に向かって水平蹴りをヒットさせる。気付けば満身創痍となっていたスラン星人が力なく地面を転がった。
『俺が俺の目的を果たすのにテメェは邪魔でしかねぇ。手を出す相手が悪かったと思うこったな!』
トドメの瞬間までフーマが容赦をすることなかった。
再度形成された手裏剣は先程のものよりも大きく、備わった4つの刃は残酷なまでに鋭利な光を宿す。
『決めるぜ耀。遠慮はいらねぇ……ブチかませッ!』
「うん!」
フーマの声に強く応えた。
彼とこの宇宙人の関係。彼が裏で行ってきたこと。彼の目的。フーマについてはわからないことだらけだ。
でも聞かない。力を借りる時、自分はそう約束したから。フーマが自分の想いに応えてくれたのなら耀だってそれに応じるべきだ。
それに、フーマは悪い奴なんかじゃないと知ってる、信じてるから。
だから今は……全力でそれを示すだけだ。
『コイツはピースマークじゃねぇぞ。お前はあと2秒でおしまいってことだ!』
イチ。
右手でVサインを作った後、幾度かのステップを踏んだフーマの両足が地面から離れると同時にその姿が消える。
『どこへ……!?』
『こっちだよッ!』
そして、ニ。
一瞬の間に背後へと回り込み、構えると共にその同調を高めた。
『˝
そしてフーマと耀が強く重なった次の瞬間。
極限までその眩さを高めた光の刃が打ち放たれ、巻き起こった突風を纏ってはスラン星人へと襲い掛かる。
『クッソ…、こんな、こんなところでェェッ……!!!』
突き刺さっても尚その勢いが衰えることはなく、回転する手裏剣はそのままスラン星人の身体を両断。
直後に吹き上がった爆炎は悲鳴諸共奴を消し飛ばし、ド派手にフーマの勝利を告げた。
ゆらり、ゆらりと、無言のまま閑散としたモノレールに揺られる。
舞い降りた沈黙が息苦しい。傾く太陽が生む優美な光も、この時ばかりは眩しすぎた。
「その……残念、だったね。今日は……」
耐え兼ねて口を開いた耀が少しだけ横に流した視線に俯いたままの璃奈を見やる。彼の瞳に反射する自分の顔は、相も変わらず無表情だった。
「でも、これで終わりじゃないでしょ? 確かに今回のイベントは無くなっちゃったけど、ライブはまたいつでもできるし。僕、全力で璃奈ちゃんのこと応援するから!」
怪獣の出現により、当然ライブイベントは中断。璃奈の初めての舞台となるはずのライブは流れてしまった。
そんな自分を気遣ってか、彼が掛けてくれる言葉はとても暖かいものだった。
「……皆にも、同じこと言って貰えた」
だからこそ小さくとも、ちゃんとこの声で返した。
「ライブがダメになっちゃったのは確かに残念。でも皆励ましてくれた。今度を楽しみにしてるって言ってくれて、嬉しかった。その気持ちに応えるまでは、止まりたくない」
辛い思いをした。怖い思いもした。でもそれは自分を応援してくれた皆の気持ちを裏切っていい理由にはならない。
それに応えるため、自分の気持ちを伝えるために、自分はスクールアイドルになったのだから。
「……だから、また応援してくれる? 耀くん」
「…勿論。何があったって、僕は璃奈ちゃんを応援するよ」
初めて出来た友達の笑顔が、変わらぬままでそこに在る。色々あったけれど、今はただそれだけでいい気がした。
「……耀くん?」
ありがとう。そう紡ごうとした折、耳朶に触れた安らかな音に首を傾ける。
それが寝息だということを理解するのに時間は掛からなかった。安堵し、張りつめていたものが途切れたのか、今日の疲れが一気に出たらしい。
伝えられなかったのは残念だが、仕方あるまい。だって彼は自分を助けるために、
「……助けてくれて、ありがとう」
数拍の静寂の後に短く零した。隣に腰掛けている少年は眠ったままだが、それでも今の璃奈には声を交わすべき相手がいるから。
『……怒ってねぇのか?』
「怒るなんて、しない。助けて貰って……嬉しかったから」
『……そうか』
返す声を発する蒼の光が半透明の霊体を作って耀の肩に腰を下ろした。こうして2人で話をするのも久しく感じる。
『…すまねぇ。あんだけお前に強いておいて、結局は俺自身がそれを破った。本当に悪いと思ってる』
「…でも、それは耀くんが決めたことだから」
『だとしてもだ。俺達はもう戻れない道に踏み込んじまった。……この先、最悪の事態が起こらないとは言い切れない』
「だとしても応援する。耀くんが私を応援してくれるなら、私も耀くんを応援したい」
『……お前は優しいな』
時間にしてたった数十秒の会話。けれどもその中に、抱えきれないほどの何かを秘めて。
再度眠りこけた友達の顔を見つめた璃奈は、決して彼に知られてはならない会話に終止符を打った。
『改めてすまねぇ璃奈。もう少しだけこの迷惑、かけさせてくれ』
「……ううん。こちらこそ、苦労させてごめんなさい。…………フーマさん」
風の覇者さん初戦闘回でした……フーマもタイタス同様原典の彼より強めに描く所存です
前回も軽く触れましたが耀の掘り下げに関しては今後少しづつ……ですね
そして気になるのは最後の会話……一体この2人が抱える秘密とは……