トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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1か月も経ってしまった……申し訳ない
夏休み中はかなり1次創作の方が立て込んでいて時間が取れませんでしたが粗方片付いたのでボチボチ再開していきます

今回はニュージェネ恒例の振り返り回的なアレです


29話 あの日の景色

 

 

「ウルトラマンゼロ……」

 

『ああ。それが10年前、この星を守った戦士の名だ』

 

タイタスによって告げられた名がいつかの記憶を呼び覚ます。

一度だけ目にしたことがある。暗雲の中、絶大な輝きを以って闇を払った光の戦士……その名こそが、ウルトラマンゼロ。

 

『光の国でも特に名誉ある称号とされるウルトラ6兄弟……その1人に数えられるウルトラセブンを父に持つ戦士であり、若いながらもこれまでこの地球を含む数多くの星を救ってきたウルトラマン……それがゼロだ』

 

「ウルトラ6兄弟って……」

 

『…俺の父親、ウルトラマンタロウもその1人だ。比べられることもまあ……少なくなかったな』

 

タイガが語気を澱ませた理由は直ぐにわかった。

 

ずっと、僅かながらも疑問には思ってたんだ。いくら偉大な家系に生まれ、それが故の色眼鏡に見られ続けたとはいえ、果たしてそれだけで自尊心の暴走が引き起こされるまでに追い詰められるのかと。

 

でも違った。タイガの心は、同じく偉大な父親を持つゼロとの比較によっても削られ続けていたんだ。

 

強すぎる光は必ずどこかで影を生む。タロウやゼロという名の威光は、その陰でタイガの心を蝕み続けていた……つまりはそういうことだ。

 

「…なあ、タイタス」

 

『うん?』

 

「それだけの人がさ……なんで、急に地球からいなくなったんだ? まだ怪獣は出続けてたのに」

 

その影はタイガだけじゃない。雄牙の心にも、ずっと居座り続けている。

 

そんな感情に押し出されるようにして吐き出した疑問に昂貴と耀もその目をタイタスに向けた。そう思っていたのは自分だけではなかったらしい。

 

身勝手な言葉なのはわかってる。自分達はただ一方的に守られていただけだ。こんなことを言う権利は毛ほどもない。

 

でも、それでも割り切れはしないんだ。どうしてまだ怪獣の脅威が残る中で、この地球を去ってしまったのかが。

 

『……そうだな。まず雄牙。君のご両親のことは……私もタイガから聞いてる。確かに突然この星からいなくなった彼に対しやるせなく思うのもわかる。だが理解もして欲しい。我々ウルトラマンは本来、他星の文明に過度に干渉してはいけない存在なんだ。……この意味がわかるか?』

 

「いつまでも守ってやる訳にもいかねぇ……そういうことだろ」

 

雄牙に代わり昂貴が答える。

 

『その通りだ。……ゼロがこの星に滞在していたのは、この星を脅かす、この星の外からの脅威があったからだ。それが無くなった以上、不必要にこの星に残り、文明に余計な影響を及ぼす訳にはいかない。彼もその判断の元、この星を去ったのだ』

 

そんな極めて理性的に語られた、極めて論理的な言葉を、タイタスは次の一句で締め括った。

 

『我々ウルトラマンは、あくまでも宇宙のバランスを保つ存在に過ぎない。……決して、神などではないのだから』

 

地球に住まう者達が顔を下げる。

神様、だなんて思ってはいない。自分達と同じ感情を持った1つの生命であることは、彼等と共に戦ってきた雄牙達が最も理解していることだ。

 

でも確かに心のどこかで、ウルトラマンを都合よく人類を守ってくれる存在か何かだと思っていた部分があるのも事実だった。

 

『お前達が気にすることじゃないさ。そう思わせてしまう俺達にも非はある』

 

『その通りだ。少なからず今は、君達がそれをわかってくれている。その事実だけで十分だ』

 

改めなければならない。この認識を、ウルトラマンに対する何もかもを。それが共に戦ってゆく人間としての責務だろう。

 

『もののついでにこちらもわかってくれると嬉しい。ゼロは何も怪獣を放置してこの星を去った訳じゃない……我々含め、この星に怪獣に関する事実を把握してなかっただけだ』

 

「…? どういうことだ」

 

『それに関してはまず、この星で起きた出来事を語らねばならないな。簡潔に伝えると10年前、この星は˝ベリアル˝という闇に墜ちたウルトラマンによって危機に晒されていた』

 

「やっぱり、ウルトラマンだったんだな。あの黒いの……」

 

『ああ……ウルトラマンベリアル。光の国唯一の犯罪者にして、最凶最悪のウルトラマンだ』

 

ゼロが戦った1年間の中で最も大きなものとされる東京での戦い。その中でベリアルが見せた暴虐の限りは、今でも絶望の象徴として人々に語り継がれるほどだ。

 

そんなベリアルもまたウルトラマンの1人。薄々勘付きながらも目を逸らしていた事実が圧し掛かってくる。ウルトラマンは神でもなければ守護者でもない。改めてそれを実感させられるようだった。

 

『その名前なら流石に俺でも知ってるぜ。確か何十年か前に宇宙規模のでっけー戦争起こしたやべー奴だろ』

 

『˝オメガ・アーマゲドン˝って大戦のことか。確か、サイドアースとこの星での戦いがそれの延長線なんだよな』

 

『ああ……まずはオメガ・アーマゲドンについて話そうか。2人が語った通り、これはかつてベリアルが起こした宇宙規模の戦争を指す言葉だ。そしてその大戦の中で˝クライシス・インパクト˝と呼ばれる大事件によって異なる時空の、2つの地球が破壊された。それがサイドアースと呼ばれる地球と……この星だ』

 

「「『はぁッ!?」」』

 

昂貴、そしてフーマと共に揃って驚嘆の声を上げる。

けどそれも仕方ないことだろう。この地球にかつて破壊された過去がある……一撃で脳のキャパシティを超えてきた情報にはただ叫ぶしかない。

 

『オイオイオイそれマジかよ旦那!? そんじゃあ今俺等が立ってるこの星は何なんだよ!?』

 

『落ち着けってフーマ。今この地球が存在してるってことは修復されたってことだろ』

 

『タイガの言う通りだ。ベリアル軍によって崩壊の危機に瀕したこれらの地球、そして宇宙はいずれも超人的な力を持つウルトラマンが一体化することで修復された。この星に関してはウルトラマンノア……神とまで称される、伝説の巨人がそれをやってのけた。君等も1度目にしたことがあるだろう』

 

タイタスが言い切ると同時にタイガがイメージを共有してくれる。眩いまでの銀色の肉体に巨大な翼を携えたその姿は、間違いなく10年前にゼロと共にベリアルを打ち倒した巨人のものだった。

 

当時の自分には知る由もないだろう。突然現れたあの巨人が、2度に渡ってこの星を救ってくれた者であるなど。

 

『ノアほどの存在が動かざるを得ない規模の被害が生じた戦いだ。当然首謀者であるベリアルも無事では済まず、肉体を失う結果に終わった。そんなベリアルを復活させるために利用されたのもまた、クライシス・インパクトによって破壊された地球だったという訳だ』

 

『サイドアースでの件なら俺も知ってるぞ。確か、ベリアルの復活自体は防げなかったけど、ジードって言うウルトラマンが打ち倒したんだろ。爺ちゃんが話してたのを覚えてる』

 

『その通り……この星でも概ね同様だな。ベリアルは三度復活を遂げたが、その結果は君達も知っての通り。ゼロとノアに打ち倒されることで一連の戦いは終結を迎えた……筈だった』

 

否定で区切られた言葉に眉を寄せた。恐らくそれこそがゼロを含むウルトラマン達が把握していなかったというこの星の事実なのだろう。

 

『んだよ。もったいぶってねぇで早く言ってくれって』

 

『戦いの影響は今も色濃くこの星に表れている……ということだ。特に、頻出する怪獣はその最たる例だろうな』

 

タイタスがVサインを作る。ピースマークではなく、怪獣の出現する要因が2つあるということだろう。

 

『1つはダークネスファイブと呼ばれたベリアル直属の配下の存在にある。彼等の乗っていた宇宙船の残骸から、怪獣の活性を抑える特殊な波動が照射されていたことがわかっていてな』

 

「じゃあ、今のこの状態が本来の地球ってことか?」

 

『そうなるな。計画の進行に不都合な存在を抑制する必要があった、という話だ。恐らくクライシス・インパクト以前は当たり前に怪獣が生息する環境にあったのだろう』

 

怪獣は殆どの宇宙に存在する普通種であるというタイタスの捕捉が加わる。これまで抱いていた常識が尽く否定され、新たなものに塗り替わってゆく音がした。

 

『もう1つは˝デビルスプリンター˝と呼ばれる、ベリアルの細胞から発生した因子だ。これには生命体を狂暴化させる作用があるのだが、厄介なことに、ベリアルが討たれた場所でもあるこの宇宙では特にその影響が色濃く出ている』

 

ベリアルが打ち倒された後、宇宙警備隊によって可能な限りは回収されたらしいが……それでも宇宙空間に散ってしまったものや、既に地球生物に接収されてしまったものが相当数残っていると考えられるらしい。

 

あくまでも考察に過ぎないが、地球怪獣の急速な活性化もこのデビルスプリンターが関わっている可能性が高いそうな。

 

『……そして、このデビルスプリンターこそが私がこの星に遣わされた理由でもある。タイガ、ファイブキングにゼッパンドンのことは覚えているな?』

 

『ああ。確か、タイタスが追ってきたって奴が変身してたって、奴だろ。ソイツと何か関係があるのか?』

 

『関係があるというよりは、奴がこの星に飛来した目的がデビルスプリンターにあるということだ。奴……オグリスは光の国にて開発途中であった˝ウルトラゼットライザー˝を盗み出して以降、次々とデビルスプリンターの回収任務に当たっていた宇宙警備隊からそれらを強奪していたと聞く』

 

この星は特にデビルスプリンターの影響が色濃い。先程のタイタスの言葉を反芻する。確かに、これまでもデビルスプリンターを狙って行動していたのなら地球へと飛来した理由もそれだと考えるのも妥当だろう。

 

『……ヴィラン・ギルドの連中が騒いでやがったのはそういうことか』

 

『? 何か言ったか?』

 

『……何でもねぇ。それよか、どーすんだよその奴さんはよ。んな危ねーもん集めてるような野郎なら、何しでかすかわかったモンじゃねぇだろ』

 

『それについては私としても早急に対処をしたいところではあるが……少々、面倒なことになっているようでな』

 

『……つーと?』

 

『どうやら、この星にて何者かと手を組んだようでな……タイガ。これに関しては君の方が詳しいだろう』

 

首を傾げたフーマに、タイタスは雄牙達の方向を見やることで回答した。

この星に巣食う脅威は一つではない。オグリス、デビルスプリンター、ヴィラン・ギルド……そして、自分達に接触してきた謎の男の存在だ。

 

『つっても、俺もただこの中で唯一ソイツと接触してるってだけに過ぎないけどな。この前のギャラクトロンの時と……10年前の戦いの時』

 

「10年前って……あのゼロってウルトラマンがいた頃、ですよね? タイガさん関係してるんですか?」

 

『関係してるというか……ゼロとベリアルの最終決戦の時、俺は宇宙警備隊の作戦に無断で参加して地球周辺のベリアル軍と戦ってたんだ。その中で俺は大きなダメージを受けて、肉体を失った』

 

苦々しい表情でタイガが語る。やはり当人としてもあまり掘り返したくはない過去らしい。

 

『その一撃を放ってきたのが奴だ。どこまで信用できるかはわからないけど、本人がそう言っていた』

 

「そんで10年経ってまたお前の前に現れたと……ストーカーみてぇだな」

 

雄牙も奴と対峙したのは1度だけだが、その所業は嫌という程この記憶に刻み込まれている。菜々を精神的に痛めつけ、街を破壊し、挙句の果てにタイガの正体を彼女へと明かした。

 

敢えて雄牙達に街を守らせようとしたなど不可解な点は多いが……それでも油断ならない相手であるのは確かだった。

 

『聞く分にゃ、そのストーカーさんの狙いはソイツにあるんじゃねーのか? なにせお偉いさんのご子息だ。狙われる理由なんざごまんとあんだろ』

 

『私達も同様の見解に至っている……それと、関係があるかはわからないが……先日、せつ菜に確認されたという発光体の件も気になる』

 

『え、あれが˝リトルスター˝じゃないのか?』

 

「リトルスター……?」

 

何度目かもわからない、聞き慣れぬ単語が上がる。必然的に視線はその言葉を発したタイガへと集まった。

 

『ああ、うん。俺も詳しく知ってる訳じゃないけど、˝カレラン分子˝っていう特殊な物質の影響で形成されるエネルギー体って話だ。初めはサイドアースでベリアルの復活を目的に散布されたってのも、光の国のメモリーヒルズで見た』

 

せつ菜の光がタイガスパークを介してブレスレットという形を成したように、媒体ごとにその形状や質を変化させるリトルスターの性質を利用したのかもしれない。タイガはそう語る。

 

『この地球でもベリアルの復活は企てられたって話だったから、てっきりサイドアースと同じかと思ってたんだけど……違うのか?』

 

『いや……確かにこの星でもリトルスターの存在は確認されている。ゼロが戦った10年前にな』

 

『そんじゃあもう決まってるようなモンじゃねぇかよ。そのデビルスプリンターだのとか、リトルスターってのを集めてベリアルを復活させようって魂胆だろ』

 

その結論に達したのはフーマだけではなかった。ベリアル因子の結晶とも言えるデビルスプリンターに、過去に奴の復活を目的に利用されたリトルスターの存在。その考えに至るのは必然とも言える。

 

『確か、サイドアースでカレラン分子が散布されたのは俺が資料を見た時点では6年前……あれから10年は経ってるから、今だと16年くらい前か』

 

「丁度俺等が生まれた頃か……他になんか知らねぇのか」

 

『俺も10年前ので情報が止まってるから流石に当時判明してたことくらいしか。あと俺から話せるのは……そうだな。リトルスターの性質の1つに、宿主がウルトラマンに対して強く祈ることで分離されるってのがある、ってくらいか』

 

「だからあの時……」

 

せつ菜から雄牙に光が受け渡された時、確かに彼女は強く祈るように自分達へと声を向けていた。それこそがタイガの言う性質なのだろうか。

 

『でもちょっと待てよ。だったら連中はどうやってリトルスターを集めようとしてたんだ。ウルトラマンに祈らねぇと分離されねぇってんなら、連中にゃどう足搔いたって回収できねぇだろ。その辺はどうやってたんだよ旦那』

 

『そこに関しては私も知らない。……不可解なことに、この星、強いてはサイドアースでの一連の件についてはあまり事の詳細が明かされていなくてな。噂によれば、ウルトラ兄弟等の一部の者にしか共有されていないという話だ』

 

『なんかきな臭ぇなその話……おいタイガ。お前お偉いさんの息子なんだろ。なんかその手の話聞いてねぇのかよ』

 

『いくら何でも話してもらえる訳ないだろそんなこと……ああでも、関係あるかわからないけどメビウスって言う兄弟子が前にこの星での任務を終えて来た時にちょっとだけ話してくれたことがあったな。確か……陸くんって弟子が出来た~、とか言ってた気がする』

 

「陸くん……?」

 

地球人、それも日本人に当て嵌まるであろうその名前に揃って眉を寄せる。

 

『…一応聞いておくぞタイガ。メビウスほどの戦士が軽々しく口外することはないと思うが……それは話して大丈夫な情報だったのか?』

 

『いや……あの人結構天然というか、抜けてるとこあるから割と口滑らせることも多いぞ。この事もやっぱりマズかったらしくて、あとで父さんとヒカリ先生に滅茶苦茶怒られてたし』

 

「だとしても名前1つでんな大目玉喰らうか普通……」

 

昂貴の言う通り、いくら無暗な交流が好ましくは星の住人とは言えど名前1つで叱られるとは考えにくい。となるとその陸という人物は10年前の戦いにおいて重要な者であった可能性が高いか。

 

だとするなら一体なんだ。フルスロットルに思考を回転させた雄牙の脳裏に閃きが走るのはこの直後だった。

 

「もしかして……ゼロと一体化してた地球人の名前?」

 

『ッ…! それだ! それだぜ雄牙!』

 

ウルトラマンは他の星に滞在をする際、その場所の原住民の身体を借りることがある。それはゼロも例外ではないはずだ。その場において上がり、かつウルトラマンに弟子入りする地球人の名前などそう考える他ないだろう。

 

陸。それが10年前、ウルトラマンゼロと一体化し戦った人間の名前。

 

「……でも、地球の方で秘密にされるならともかく、ウルトラマン達の間でも隠される理由ってなんなんでしょう」

 

『……情報源が噂になるから、信憑性の面では薄くなるんだけどさ。実はジードってベリアルって結構似ててさ。そのせいで何か関係があるんじゃないのかって言われてるんだよ』

 

そう言えば、かつて地球に飛来したウルトラマンの中に妙にベリアルと似た容姿を持つ者がいた。それこそが幾度も名前の上がってきたジードと言う戦士なのだろうか。

 

『で、それがどうかしたのかよ』

 

『さっきフーマも言ってただろ。リトルスターの分離にはウルトラマンに対して祈ることが必要だって。だからベリアル軍の連中にもリトルスターを集めるためのウルトラマンが必要だったはずだ。多分だけど……それがジードと、その陸って人だったんじゃないのか』

 

これまでに上げられた情報を拾い集めながらタイガは語る。

 

『ゼロはサイドアースでジードと共に戦ってたから、一連の件については知ってた筈だ。だからこの星で出会った第二のウルトラマンジードとも言える彼が同じ道を辿らないように一体化し、共に戦った……これなら辻褄が合わないか?』

 

『……成程な。てこたぁアレか、今はそのベリアル軍の残党が10年前と同じ方法でベリアルを復活させようと企んでるってこった』

 

集めさせたリトルスター、を最終的に強奪するという形で利用していたのなら確かに合点がいく。

仮にそれが事実であるとするなら、今回その対象になっているのはタイガだ。あの男が接触を図ってきたことからもそれは明白だろう。

 

『決まりだな。奴等の狙いはベリアルの復活……他の組織と交信が取れない以上、俺達でどうにかするしかない。俺達で奴等の野望を阻止するんだ』

 

『ちゃっかり数に含みやがってこの野郎……これだからお役所連中はよ』

 

『なんだよ。お前も結構ノリ気だったじゃんかよ』

 

『なんでただ駄弁っただけで協力するってことになるのかねぇ? っぱお前バカだろ。一瞬でも見直して損したぜ』

 

『はぁ? それを言ったらお前もな―――、』

 

議論の次に始まった口論により部室内が再びの喧しさに包まれていく。この有様で戦い抜けていけるのかと言う不安はあるが、それでもやるしかない。今その脅威に立ち向かえるのは自分達しかいないのだから。

 

『……』

 

改めて決意の帯を結び直す。その傍らでタイタスが怪訝に顔を傾けていることにはまだ気が付きはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……毎度のように思うが、本当に気持ちの悪い技術力だな。見様見真似で再現出来る代物ではないだろう」

 

「前にも言ったが、手先が器用でね」

 

手渡された新しいメダルを見下ろす。玩具が増えると思えば悪い気はしないが……それでもやはり、この異様なまでの手際の良さには気色悪さも覚えた。

 

「このところはヴィラン・ギルドの連中も好意的に接してくれてね。少し珍しい怪獣も提供してくれるようになった。足を運び続けた甲斐があったよ」

 

「フン……弾むようになったのはそれだけではないだろう?」

 

けれどもコイツには利用価値がある。それがある限りは多少目は瞑ってやる。

メダルを握る方とは反対の手を何かをせびるように差し出せば、男もまた呆れるような溜息と共にその手を重ねた。

 

「……仰せのままに。少しは、自分で稼ぐ気にもなって欲しいものだがね」

 

「前にも言ったが、この星に私を招いたのはお前だ。だったらお前には私をもてなす義務がある」

 

受け渡された代物を確認し口角を吊り上げる。

この星においては恐らくメダル以上の価値を持つそれらを握りしめ、オグリスは突風のような速度で飛び出してはビルの間を縫うように宙を翔けた。

 

「さて……いつまでこんな真似を続けるつもりか」

 

この星で味わう娯楽は確かに魅力的だ。だがそんなものはオグリスの気を逸らすための戯れに過ぎない。協力するという言葉の裏で何かを進めているのは明白だ。

 

奴が何を目論んでいるかに興味はないが……自分を利用しようなどという考えは気に食わない。

 

こうなれば少し、探ってみるのも一興か。

 

「頃合いを見計らって奴等に接触してみるか……場合によっては、新しい玩具になってくれそうだ」

 

やることは変わらない。この乾きが潤うその時まで、己が心の赴くままに遊ぶだけだ。

 

徐々に夜闇が支配してゆく街の中、紅く瞬いた双眸の描く光彩が黒の中に刻まれた。

 

 




今回は前作「ゼロライブ」で起きた大まかな出来事の振り返り、そして今作へと続く要素の説明回となりました。前作を読んでいない方に軽く説明しておくと、この作品の世界は本家ウルトラシリーズの世界線が「ウルトラマンジード」辺りの時系列から少しずつ分岐していった世界となっています

ゼロライブ時空で起きたクライシス・インパクトの正式な名称は「アナザークライシス」となるのですが今回は便宜上クライシス・インパクトの呼び方で統一しましたので悪しからず

そして上がった˝陸˝と言う名前……タイガ君の考察がどこまで当たっているのかも含めニチャニチャして見守っていきましょう
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