トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~ 作:がじゃまる
ポケモンSV、ストーリーが本当にもう過去最高に˝良˝いのでまだご購入されていないという方はこの話を読んだ後にすぐに買いに行きましょう
それでは一か月も投稿放置し申し訳ございませんでした
『……君から見て、彼方の様子はどうだ?』
「本人は大丈夫だっつってるが……多分取り繕ってるだけだ。まだ引き摺ってやがるな」
『君が言うのならそうなのだろうな……無理はないか』
E.G.I.S.お抱えの大型病院。彼方の入院する建物から勇み足で出でる。
『私としても、出来れば彼女の傍にいさせてやりたいのだが……事態が事態だ。今は一刻が惜しいことをわかって欲しい』
「言われんでもわかってるよ。……それに、俺も一発はぶん殴らねぇと気が済まねぇ」
このタイミングで果林とエマが見舞いに足を運んでくれたのは幸運だった。学友という、昂貴とはまた違った関係の友人との交流は彼方の心に安らぎを齎してくれることだろう。
『今奴は怪獣商との取引であの場所に赴いているという話……だったな。情報が本当なら、この機を逃す手はない』
交流を結んでいたシェルターの宇宙人達から、件の人物が交渉に来ているという情報を受けた。
アオイを惨殺し、彼方の心に傷を残したあの男。タイタスが言うにはオグリス以上の脅威となる可能性もある存在とのことだ。彼の言葉の通り、出来るならば今の内に叩きたい。
「世話になった分はキッチリ返させてもらうからな……覚悟しとけ道化野郎が」
沸き立つ憤怒が前へ進む足を殊更に加速させる。
進む先で何が起こるかなど知るところではない。けれどもう止まる術を知らないから、感情のままに、待ち受ける未来へと駆け抜けた。
「ルールは先程伝えた通りだ。四対一で私を倒せればお前達の勝ち、逆に全滅させれば私の勝ちだ。異論はないな?」
同好会の皆で遊ぶ、少なからず他のメンバーにとっては楽しい時間となる筈だった休日の一幕。その日は今、たった一人の少女の存在によって侵されようとしていた。
『なあ、宇宙人なのは確かだけどよ……マジで旦那が言ってた奴なんだよな?』
『自分でそう名乗ったんだ……それしかないだろ』
オグリス。タイタスがこの星に来訪した理由であり、光の国からアイテムを強奪し、デビルスプリンターを集め、挙句に怪獣となって暴れ回る危険人物。望まずとも張り詰めた緊張の糸が雁字搦めに雄牙を縛っていた。
「どったんテル君。雄牙もだけど、顔怖いよ?」
そんな奴が要求してきた四対一でのゲーム。直接の指名があった雄牙と耀に加え、同好会メンバーから選抜されたのは愛と璃奈だった。確かに経験もありセンスにも長けたこの二人を出すのは理に適っている。
だが彼女達はあくまでも地球人だ。その常識を遥かに超越した存在であるオグリスにどこまで対応出来るかなどわからないし、怪獣となって街を破壊するような奴が相手だ。大怪我を負わされる可能性だってある。
「そんな顔をするなよ。私はただ遊びたいだけだ。特別お前達を害するつもりはないさ。これまでも、勿論これからもな」
「……どーだかな」
傍らへと寄り、雄牙の心中を読み取ったように弁を並べるオグリスに嘘をついているような素振りは伺えない。だがそれだけで今の言葉を信じるにはこれまでの所業が重すぎる。
「大体お前、こんなところで何してんだ。何が目的なんだよ」
「だから遊んでいるだけと言っているだろ。˝トレギア˝の奴が私を待たせ続けている間の暇潰しにな……全く、呆れたものだ。自分から招待を寄越してきた奴の態度には思えん……お前もそう思わないか?」
『トレ、ギア……?』
オグリスの口にした名に、タイガが声を震わせて反応する。
『おいトレギアってまさか……あのトレギアか!?』
「ん……? なんだ、そっちは知らなかったのか?」
意外そうにオグリスは目を丸くする。
でもそれも一瞬のこと。直ぐに何かを閃いたように白い歯を見せると得意満面に告げた。
「そうだな……なら、お前達が勝てれば私の知っている範囲で奴について教えてやってもいい。それなら、お前達も本気で来るだろう?」
くい、くい、と。挑発的に手を扇ぐオグリスの瞳は子供のように無邪気なものだ。どうやら本当に、コイツは楽しむことだけを目的に行動しているらしい。
「……本当だな」
「安心しろ。私は嘘はつかない……さあ、楽しませてみろ」
イザコザで始まった筈の陣取り合戦は、いつの間にか別の意味を帯びてゆく。
異種族間による変則ゲーム対決の火蓋が切って落とされようとしていた。
「うぅ~……なんでこんなことに……」
青い顔をしたかすみが完全に委縮した様子で観戦席であるベンチに座り込んでいた。
どうにも自身の口論から発展してしまったこの事態に責任を感じてしまっているらしい。
「大丈夫だよかすみさん。愛さん達も気にしてないと思うから」
とは言ったものの、しずくも少なからず不安というか、違和感を覚えているのは事実であり。
特にオグリスと名乗った少女と雄牙の間にある、因縁のような空気感。普段は小動物のような耀でさえ警戒と緊張を醸しており、只ならぬ何かがあるということはあまり二人をよく知らないしずくから見ても明らかだった。
「瀬良さんとは面識がある様子でしたけど……侑さん達はご存じの方なんですか?」
「いや、私も今日が初めましてだけど……そもそも雄牙に外国の子の知り合いがいるのも初めて知ったよ」
「あんな顔した雄牙くん、初めて見る……」
かなり親しい間柄である侑と歩夢でも知り得ていない関係らしい。
それに侑はオグリスのことを外国の子と言ったが、しずくにはそれすらも疑わしく思えた。
確かにあの日本人離れした名前や容姿、そして常識から少し外れた装いや言葉遣いは外国人を連想させるが……何か、何かが引っかかる。
「瀬良さん……」
それにせつ菜の様子も気になる。
彼女から伺える不安にはかすみ達とは違う色が宿って見える。それは雄牙や耀に近しい色だ。
侑と歩夢を除けば、最も雄牙と親しいのは同じクラスでもあるらしいせつ菜だ。そんな彼女だからこそ知り得ている何かがあるのだろうか。
例えばこう、せつ菜の復帰までにあった筈の二人のやり取り。雄牙が彼女が戻ってくる切っ掛けになったのは知っているが、具体的に何をしたかは当事者以外誰も知らない。聞いても有耶無耶に誤魔化されてしまうという。
この状況もそれに似ている。殆どの面々が何も知らないのに対し、雄牙とせつ菜は何かへの警戒や不安を滲ませている。それはしずく達が把握していない何かを知っているということだ。
「準備はいいな? さあ、始めようか!」
などと思案に耽る時間は、この事態の元凶であるオグリスによってゴングが鳴らされたことによって吹き飛ばされた。
それもその筈。直後に繰り広げられた光景は、しずくの創造を遥かに逸したものだったのだから。
「ちょっ……足はっや!?」
フィールドから愛の驚嘆の声が上がった。観戦席から眺める自分達に沸き起こったのも同様の感情だ。
その原因はまたしてもオグリス。流星のような速度で駆ける彼女の挙動はしずく達の度肝を抜くに十分な衝撃を持っていた。
「ちょっ、ちょ……何ですかアレ早すぎませんかぁ!?」
ゲームが始まったことで中継画面越しにしずく達が見ている映像はプレイヤーのアバターによるものに切り替わっている。仮想世界ということもあり多少は現実から逸脱した挙動も見受けられるが、それを差し引いてもオグリスの挙動は異常だった。
通常のフィールドである床のみならず、壁や天井をも用いた立体的な動き。とても人間業とは思えない。
「星海!」
だが驚きはそれだけに収まらなかった。
オグリスの攻撃に対応している者がいる。それも二人。雄牙と耀の両名の駆動もまた、しずく達の想定からは大きく逸したものだ。
オグリスのような派手さはないが、堅実に、着実に彼女の銃撃を回避しては反撃に転じている。双方のスタイルこそ違うが戦況は拮抗していると言えるだろう。
「……雄牙ってあんなに足速かったっけ」
「いや、足が速いとかそういう次元の話じゃなくないですかぁ!?」
「……せつ菜ちゃんは何か知らない?」
「え……い、いえ。私も特には。体育の授業も男女別々なので……はは……」
画面越しの光景にただただ圧巻される。本当にどうなっているのか。脳の理解を置いて行くように三つの影が駆け巡っていた。
そしてその結末も、自分達の理解の遥か先を行き―――、
「くはは……いいな! やはり他の連中とは訳が違う!」
高揚しているのか、フィールドから漏れ出るオグリスの声が確かな熱を帯びる。呼応するように激しさを増す攻撃でジリジリと二人を追い詰める彼女に対し、負けじと雄牙達も速度を上げた、その時。
「……見切った」
終わりは唐突だった。
短く零された声が誰のものか、そもそも本当にこの耳朶へと届いたものなのか。それを認識するよりも早く。
「は……?」
派手に上がったクリティカルヒットの炸裂音。
次に響いたゲームの終了を告げるメロディが空間を満たすと同時に、底をついたオグリスの体力ケージが彼女の敗北を物語っていた。
「ほら飲め飲め私の奢りだ! 地球人の身で私に勝ったんだ、祝杯といこうじゃないか!」
「いや、なんで部外者、それも負けた人が仕切ってるんですか……」
「まあそう言うなよ。私はただ今この瞬間の高揚感を楽しみたいだけだ。一応さっきの非礼は詫びておくから大人しく受け取れ……えっと、かすかす、だったか?」
「全然謝る気ないですよねぇ!? まあ、くれるって言うなら受け取りますけど……あとかすみんです!」
またしても喧しさが二つ、耳障りな響きを以って鎮座する。
けれど先程の口論とは内包するものが違う。片方はともかく、もう一方に含まれるのは素直な嬉々とした感情だ。
「まさか地球人にやられるとは思ってなかったぞ。狙ってたのか、璃奈」
「……一応。動きは速かったけど、着地する場所はわかりやすかったから。耀君と先輩が気を引いててくれたおかげで狙いやすかった」
「アハハ! そうかそうか……小娘の相手など片手間で足りると思っていたが、してやられた。地球ではこういうのを窮鼠猫を嚙む……とかいうんだったか」
「……ちょっと違うと思う」
『えぇ~っと……どういう状況だこれ』
『俺が知るかってんだ』
結果として勝利に終わったオグリスとのゲーム対決。あまりにも唐突な幕切れだったこともあり、負けを認めない彼女が皆に危害を加える可能性も警戒していたが、現実はその真逆。
当の本人は嬉々としてこの勝利を湛え、自腹で購入してきた飲み物で勝手に祝杯を上げ始める始末だ。激流のような展開の速さと唐突の無さに置いていかれた頭が痛い。
「しかし、この星は本当に私を退屈させないな。食文化や娯楽のみならず、差こそあるが住民までもが面白い。目的を果たすまでの足掛かりとしか認識していなかったが思わぬ発見だ」
「何なんですかさっきから地球だのなんだの、まるで宇宙人みたいに……」
「ん? 言ってなかったか? 私はこの星の住民ではないぞ」
「えっ……ええぇぇぇぇッ!?」
そしてオグリス自身も座する気は毛頭ないようで。
何をする気かと身構えていれば早速のカミングアウト。普段の三割増しで喧しいかすみの声がキンキンと反響する。
「じゃ、じゃあホントに宇宙人さんなんですかぁ!?」
「宇宙人……に当て嵌まるかは知らんが、まあ概ねその認識で間違いな―――」
「おいぃぃ……! お前なぁ……!」
微塵の躊躇もなく軽い口を動かすオグリスの弁を遮る形で取り押さえる。このまま喋らせてはいずれとんでもないことを口走りかねないという予感があった。
「おいおい。そこまで急かずともトレギアのことなら後で教えてやるぞ」
「そうじゃねぇだろ! お前、んな堂々と口走りやがってホントに何のつもりだ」
「私のことを私がどう話そうと自由だろ。……光の国の掟を気にしているのなら安心しろ。特別お前達を害する気はないと言ったろ。トレギアがしたようにお前達の正体を明かして陥れてやろうだなんてつもりはない」
陰湿な奴は気に食わない。そう言ったオグリスの瞳にやはり嘘は感じられない。
だがそれでもやはり、その一言だけで信用するにはコイツはあまりにも爆弾過ぎる。
「えっと……雄牙? どうしたの急に……」
それにコイツの撒いた地雷は他にもある。今しがたのカミングアウトをバッチリ聞き取っていた同好会の面々だ。
耳打ち自体は聞き取られぬよう心掛けたが、それでも傍から見た光景が雄牙が突然自称宇宙人の少女を捕縛しているものだという事実に変わりはない。こちらはこちらでどうしたものか。
「あっとその……ほら、宇宙人ってどっちかというと危険なイメージあるだろ? それなのにこんなあっさりバラして大丈夫なのかな~って」
「ああ成程! 特に私達は以前襲われたこともありましたしね! 瀬良さんがそうするのも納得です!」
咄嗟の言い訳もせつ菜のカバーにより辛うじて体を保つ。多少ぎこちない芝居も直前に明かされた事実に比べれば些細なものだろう。
「ああ、怪獣オークションの時の話か。その節は災難だったな。だが安心しろ。私はあの連中のような姑息な真似はしない」
「じゃあいい宇宙人ってこと?」
「善か悪かなど個々の価値基準によるが……まあ、お前達から見て悪ではないことは保証しよう」
怪獣となって街中で暴れ、嫌っているとはいえ明確な悪意を持つ者に加担し、挙句に原住民に催眠を掛けて好き勝手やっていた奴のどこがいい宇宙人なんだと喉まで出かけたが、事情を知らぬ者が大半である手前直前で飲み込む。
「とにかくだ。当分はこの星に滞在する……暫くの間、遊び相手になってくれると嬉しい」
「勿論だよー! うっはー! アタシ宇宙人の友達とか初めてだよ! アガるー!」
「友……友か。いいな、悪くない響きだ!」
その中身を知らなければ見た目相応の少女にしか見えない笑みをオグリスは作る。悪意のない邪悪に頭を揺らす鈍痛だけが増してゆく。既に一部の者と仲良くなり始めているのが本当に最悪だ。
「……一つ、いいかな?」
「歩夢?」
そんな頭痛もピークを迎えた折、不意に会話へ入り込んだのは歩夢だった。
「他の星の人っていうのはわかったけど……その、雄牙君とはどこで知り合ったのかな……って」
問いこそオグリスに対するものだが、口にする歩夢の瞳は雄牙に向けられていた。そう言えばと、続々とその声に賛同する他の面々が興味を示すのに対し、彼女の作る表情には何か別の色が伺えた。
「えーっと……」
この返答は慎重に紡がなければならない。理性が下した判断に従おうとした時、それを瓦解させたのはまたもオグリスだった。
「なに、大したことじゃないさ。以前、今日みたく喧嘩を売った時にボコボコにしてやったからな。大方それを根に持ってるんだろ」
「は? いやおま―――、」
「話を合わせろ。お前もコイツ等にバレたくはないんだろ?」
「ぐ……」
咄嗟に反論しかけた雄牙に対し、先程のお返しだと言わんばかりにオグリスは意地悪く口角を吊り上げる。
「雄牙君……そうなの?」
「や、えと、その……まあ、大体あって、る」
理性と感情の狭間で葛藤し、やがて折れる形で肯定する。
別に間違ってはいない。間違ってはいないのだが、向けられた眼差しに混じる同情や憐憫の居心地の悪さが半端ではなかった。一応は事情を知っているはずの耀やせつ菜でさえも哀れむように苦笑いを作っていた。
「……そうなんだ。もう、気を付けてね」
「……ごめん」
何より歩夢のこの目が、痛い。今も昔も彼女は優しすぎるから。
「……色々複雑みたいだな、お前は」
オグリスが冷ややかに吐き捨てる。だがそれも一瞬のことで、すぐに子供のような表情を作ると仕切り直すように先陣を切った。
「鬱屈なのはゴメンだ。これ以上気分が害される前に次の遊びに興じるとしよう……お、アレとかどうだ?」
「え、もしかしてまだ一緒に遊ぶ気ですか?」
「何言ってるんだ。今日一日はお前達にお供してもらうぞ。さあ行くぞかすかす!」
「凄い自分勝手ですねぇ!? あとかすみんですってばぁ!」
三度の喧しさに、蟠っていた沈黙は晴れてゆく。気分一つで空気を塗り替えてしまう様はさながら台風のようで。
自ら暗雲を呼び寄せ、そして吹き払い、決して小さくはない爪痕を残しながら突き進んでいった。
オグリスがやりたい放題やってるせいで完全に乗っ取られてますが前回では桜坂回だったらしいですよ
前作でオウガ書いてた時もそうでしたがこの手のキャラは勝手に動いてくれるので会話にテンポが生まれていいですね。それ以外が壊滅するんだけど
そしてオグリスが口にした˝トレギア˝という名前は……まさか……!(すっとぼけ)