トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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新年あけましておめでとうございます。本年も創作意欲に溢れる年になりますように……


36話 カーテンコールはまだ早い

 

ウルトラマン。その言葉を耳にした人々が思い浮かべる印象は何であろうか。

きっとそれは希望を象徴するもの。ヒーロー、正義の味方、救世主。大方、世間の印象はこんなものだろうか。

 

事実それは間違っていない。かつて目にしてきたウルトラマンはその殆どが平和を願い戦っていたし、後に出会った相棒もそうであった。

 

だが何事にも例外は存在する。現に十年前に世界を暗雲に閉ざしたベリアルがそうであったように、光の象徴であるウルトラマンでさえも闇に堕ち、悪夢を齎す存在と化すことも時にはある。

 

今目の前にいる悪魔もまた―――その一人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴様はかつて、光の国で活躍する科学者の一人だった。平和を願う者達と志を共にしていた筈の貴様が何故闇に堕ちたのか……そんなことは今更問うまい』

 

不自由の中に確かな自由が息衝く日陰者の街。そんな場所に充満するのは正反対の緊張感だった。

 

『ただ一つ聞かせてもらうぞ……貴様は何の目的があってここにいる。トレギア』

 

「ふふ……実に想像通りの問いだ。想像通り過ぎて退屈すら覚える」

 

『ならば当然、回答も用意しているのだろうな?』

 

「さあ、どうだろうね」

 

トレギア、ウルトラマントレギア。

ゼロやタイガと出身を同じくしながら光に背き、闇に身を堕としたウルトラマン。かつてこの地球で暗躍した記録もあるという存在だ。

 

「話せば、君は私に協力してくれるのかい?」

 

『馬鹿なことを……如何なる理由があろうと、咎人に加担するなど私の筋肉(ウルトラマッスル)が許さん』

 

「咎人ねぇ……。では問おうか。君にとって咎とは何だ。悪行を以って罪のない者を傷付けることか?」

 

『……そうだと言ったら?』

 

「だろうね……実に光の者らしい、独善的で欺瞞的な模範解答だ」

 

タイタス以外にも数名存在するギャラリーに対しても己が思想を誇示するように、男―――改めトレギアは鷹揚に腕を広げる。

 

「私にとってはねU-40、その考え方こそが咎なんだよ」

 

傾けられた首の真上で、ぎろりと見開いた双眸が存在を主張する。

狂気。そう呼称するに他ならない闇が渦巻いている瞳だった。

 

「光の者の語る正義は著しく偏った、未熟なものだ。だが君達はその事実と向き合うことをせず、やること成すこと全てが正しいと考え牙を剝く……それが如何に危うい行為か、考えたことはないのかい?」

 

知的生命とは誰しもその考えに多少の偏りを持つものだ。時にはその思考を他者へと強要する者も存在するが……コイツのそれは何か違う。タイタスに身を委ねる昂貴の警戒心が最大級に違和を叫んでいる。

 

「ないだろうね。君達にとってはそれこそが正しさなのだから」

 

返答を待たずしてトレギアは次の句を紡ぐ。

次の瞬間、痺れるような悪寒を走らせるような威圧感を醸して。

 

「だから私は否定するよ。君達の掲げるものを……その為にここにいる」

 

奴が何を思って、何をきっかけにこれ程までの狂気に至ったのかはわからない。確かなのはコイツの存在はいずれ昂貴の周囲全てを脅かし兼ねない。そんな漠然とした危機感だけだった。

 

『……成程な。貴様の理念や目的は理解した。我々の掲げる正義にそのような一面があるのも認めよう。だが……』

 

だからこそ退く訳にはいかない。揺るがぬ姿勢を体現するようにしてタイタスはトレギアへと向き直った。

 

『それでも、これまで貴様が重ねてきた所業は到底許されるものではない。貴様が贖うべき罪、キッチリと清算してもらうぞ』

 

「はぁ……その思考こそが危ういと言っている」

 

次にトレギアが示したのは呆れの感情だった。わざとらしく額へと置いた手の合間から覗く眼光が昂貴達を射止める。

 

「……申し訳ないが、取引は今日限りでお終いにさせて頂こう」

 

『そ、それはどういう……』

 

「もうこの場所に価値は無くなった……そういうことです」

 

終始呆気に取られたままであったマーキンド星人を一瞥すると、奴はまるで手品のような動作を見せ、直前まで何もなかった筈の手のひらに一つの指輪を転がす。

 

『その指輪は……!』

 

それは以前、共に戦う者が怪獣から回収したというものと酷似していた。

 

当初はブレスレット同様、討伐された怪獣の力がタイガスパークを介して形となったものと考えていたが、もしそれがトレギアによって仕組まれたものであったのなら―――、

 

「残業はしない主義なのでね。今日のところはここでお暇させて頂くよ……では、ごきげんよう♪」

 

『待てッ……!』

 

消えゆくトレギアへタイタスが手を伸ばすよりも早く。

怪しげな光を放った指輪によって沸き起こった地響きが大地を揺らし、直後の咆哮が世界へと轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッッッ――――――!』

 

どこか機械らしさを含む鳴動が届く。

それが日常を揺るがす巨獣の出現を示しているのを理解するのと、周囲の人々の携帯端末から警報音が上がるのは同時だった。

 

「えぇ!? また怪獣? こんな時にぃ……」

 

直前まで稼働していたアトラクションは制止し、係員のアナウンスと共に避難誘導が開始される。

 

別段怪獣が出現すること自体は珍しいことではない。だが今はその怪獣の力を持つ者がすぐ傍にいる。何か関連があるのかと疑るように視線を横へと流した。

 

「この臭い……トレギアか」

 

だがオグリスの様子は想像とは大きく異なるもので。

零された件の名前には、明らかな憤りが含まれて見えた。

 

「来い」

 

「は? いやお前なにぐえぇッ……!?」

 

何をする気かと伺っていれば、着用していたパーカーのフードを引っ張られる形で非常口へと向かう人波から連れ出される。

 

呼び留める声などもお構いなしに突き進んだオグリスがやがて足を止めたのは施設の外、所謂屋外デッキと呼ばれる場所だった。

 

「アレを呼び出したのはトレギアだ。私の嗅覚がそう告げている」

 

既に避難は終えているのか、自分達以外の人影は確認出来なかった。その理由は海風と共に爆風を齎す巨大生物が物語っている。

 

埋立地と内陸部を繋ぐ橋を挟んだ向こう側。一般人の視力でもハッキリとその風貌が伺えるような距離の場所にソイツは出現していた。

 

『ッッッ――――――!』

 

怪獣と機械の中間、サイボーグと呼ぶのが相応しいか。丸みを帯びたアンシンメトリーの肉体には無数の重火器が供えられており、放置しておけば瞬く間に周囲を焦土へと変えてしまいかねないような脅威を感じる。

 

 

 

 

――――――奇機械怪獣(キキカイカイジュウ) デアボリック

 

 

 

 

「私を退屈させるのみならず、暇潰しさえも邪魔するか……つくづく気に障る奴だ」

 

そう言ってオグリスが取り出したのは、青いブレードを備えた扇形のアイテム。

 

『それが……ウルトラゼットライザー……』

 

「ああ。光の国より拝借した私のお気に入りだ」

 

体のいい言葉を使ってはいるが実際は強奪であることはタイタスより聞かされている。恐らくこれまでの怪獣もあのゼットライザーを用いて変身していたのだろう。

 

そして問題は、今オグリスがそれを手に何をしようとしているかだが。

 

「腹癒せにあの木偶で遊んでやるとするか……お前も来い、宇宙警備隊」

 

 

《Ogris》

 

《Access Granted》

 

 

赤い双眸が剣呑に瞬く。

ゼットライザーを起動したオグリスは続けて三枚のメダルを取り出し、ブレードのスロット部分へと挿入。

 

 

《Horoboros》

 

《Galactron Mk2》

 

《Gilbalis》

 

 

「さあ……派手に行こうか」

 

本来は平和を願うウルトラマンの為に生み出された力が、悪戯な邪気へと染まる。

ブレードの展開により読み込まれた力はオグリスへと流れ込み、やがてはその肉体を巨大は獣の姿へと変貌させた。

 

 

 

《Metsuboros》

 

 

 

舞い降りた妖しげな光に砂塵が舞う。

 

サイボーグにはサイボーグを、という魂胆なのか。獅子を思わせる肉体に機械的なマスクや手甲が装着された、武装を施されながらも野性味を残すその様はある意味でオグリスらしい。

 

 

 

―――――寄生破滅獣(キセイハメツジュウ) メツボロス

 

 

 

『ッッッ――――――!』

 

君臨と同時にオグリスは攻撃を開始。突風のような勢いで距離を詰めては巨大かつ重量のある鉤爪でデアボリックを襲撃する。

 

反撃に放たれた弾幕の嵐すらも容易く交わして見せるが、代わりに崩壊してゆくのは街並みを構成する建物や道路だった。至る所で上がる爆音や炸裂音に混じって悲鳴が聞こえる。

 

「タイガッ!」

 

『ああ……行くぞ!』

 

 

《カモン!》

 

 

何を思ってオグリスが雄牙達に参戦を促したかはわからないが、このまま好き放題されるのをただ指を咥えて見ている訳にはいかない。

 

「『バディ……ゴーッ!」』

 

トリガーを操作しタイガスパークを起動。生成された銀色の光を掴み取っては天へと掲げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄牙君! 雄牙くーん!」

 

「歩夢さん、今は避難を……」

 

「でも雄牙君がまだ……」

 

不規則な揺れの続く建物の中、揉め合うような少女達の声が反響する。

鳴り響く警報にも関わらず避難を始めない歩夢。その行動の理由は先程オグリスに連れられて行った雄牙にあるのだろう。

 

「気持ちはわかりますが……やはり今は避難を優先するべきです。この場所も安全ではありませんし、もし自分を探した結果歩夢さんが怪我をしたとなれば一番悲しむのは瀬良さんなんですよ? ……今は無事を信じましょう」

 

「そうだよ歩夢。今はせつ菜ちゃんの言う通りだと思う」

 

「侑ちゃん……でも……!」

 

侑が説得に加わっても歩夢の姿勢が揺るぐことはなかった。

以前から歩夢は雄牙に対し少々過保護だという話を聞くことがあったが事実らしい。最も、今の彼女を見る限りではそれ以上の何かを感じるが。

 

「……わかりました。三分です。あと三分だけ瀬良さん達を探しましょう。それでも見つからなかったら、その時は一緒に避難してください。いいですね」

 

それに、やはりせつ菜も何かおかしい。尤もらしい言葉を並べてはいるが、その裏には何か、自分達を雄牙から遠ざけたいかのような意図が垣間見える。

 

「……」

 

顎に手を当てしずくは考える。

 

宇宙人であるというオグリス、そのオグリスを警戒視している雄牙、そして二人の関係について何か知っているであろうせつ菜。元より存在した違和感を照合してみる。

 

どうしてオグリスは怪獣の出現したこのタイミングで雄牙を連れ出した。どうしてせつ菜は自分達を雄牙から遠ざけようとする。

 

雄牙は一体……何を隠している。

 

「……もしかして」

 

雑多な情報を受け止めた頭が一つの結論を提示する。そんなことがあり得るのかと理性の制止が入るが、こう仮定するならば辻褄が合うと、無理矢理に振り切った。

 

「皆さんは先に避難していてください。私達も後で合流しますので」

 

「僕も行きます。愛さん、璃奈ちゃんのことお願いしますね」

 

「おっけ任せて。ダイバーシティ前の広場のとこで待ってるから、気を付けてね……って、しずくは!?」

 

()()()を得てしまった身体は、駆り立てられるように動いていて。

答えがあるならばきっとあの場所だと、気付けば訪れるであろうある一点へ向けて、走り出していた。

 




本当は今回でこの話は終わるつもりでした。長くなり過ぎたので区切りました。新年早々霧が悪いですね。こんなんですが今年もよろしくお願いします。

デアボリックにメツボロスと、相変わらずの過剰戦力がお台場に出現する中何かに気付いたしずくが向かった先は……
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