トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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今日で無印ラブライブ1期放送開始から10年らしいですね
ゼロライブの時間軸から今作の時間軸までも10年なのでイメージしやすくていいですね(よくはない)


37話 雨粒の終幕

 

 

《ウルトラマンタイガ!》

 

 

 

『シュアッ!』

 

変身と共に跳躍。空中で幾度かの宙返りを重ねた後、振り下ろす形でデアボリックへと飛び蹴りをお見舞いする。

 

『来たな。遅いぞ宇宙警備隊』

 

『お前……何のつもりだ。お前とトレギアは仲間じゃなかったのか?』

 

『私の目的に使えそうだったから一応は協力していただけだ。私の気分を害する場合はその限りじゃない』

 

並び立ったメツボロスから今日だけで散々耳にした声が伝わってくる。嘘はつかないという奴の言葉を信じるのなら本当なのだろう。

 

『まあそんなことはどうでもいい……今はただ目の前の享楽に浸ることだけ考えろ!』

 

『ぐおぉっ……!?』

 

なんて思ったのも束の間。

突如として後頭部に重い衝撃が走り、不意を突かれたタイガの身体が派手に転倒する。それがオグリスによる殴打だと認識したのは少し遅れてからだった。

 

『おいおい、これくらいは反応して貰わないと張り合いがないぞ』

 

『何すんだ! 共闘するんじゃなかったのか!?』

 

『誰がいつそんなことを言った。私が望むのは一対一対一の勝負……バトルロワイヤルとか言うやつだ。地球にはそういう文化があるんだろう?』

 

『くっ……!』

 

間髪入れずに下される重厚な手甲を真横に転がることで回避。即座に起き上がっては反撃の姿勢を取る。

 

「あってたまるかそんな物騒な文化! すぐ漫画に影響されるガキかお前は!」

 

『む……そうなのか。だが概念として存在する以上は私をそそらせるものであることに変わりはない。黙って付き合え!』

 

『おい無茶苦茶だぞコイツ!?』

 

コーラス音混じりの咆哮に続き、メツボロスの指先から幾重もの粒子砲が射出される。如何にもサイボーグという見た目通り飛び道具も備えているらしい。これでは距離を取るのも得策と言えないだろう。

 

『˝タイガウォ˝―――ぐあぁ……!』

 

一旦はバリアを展開し迫りくる光芒を遮断する。遮断した筈だった。

それなのにも関わらず肩を貫いた衝撃の方向は背後。遅れてデアボリックの砲撃を喰らったのだと理解する。

 

そうだ。オグリスの言う通りこれは三つ巴のバトルロワイヤル……敵は一人だけではない。

 

『ッッッ――――――!』

 

「くそッ……!」

 

単騎で複数の敵を相手取った経験は雄牙にはない。でも甘えが許される理由にはならなかった。

 

増援が来るのを待つのも手ではあるが、一刻も早くコイツ等を退けなければならないという事実に変わりはないのだから。どう転ぶにしろ戦う他に道はなかった。

 

『ハァッ!』

 

メツボロスの接近を察知し、咄嗟の判断で潜り込んだのはデアボリックの真後ろだった。

 

そうしてその巨体を背中から蹴り飛ばし奴へと仕向ける。重心を尻尾、つまりは後方へと預けている機械獣の身体は容易く前へと転がった。

 

『甘い!』

 

だがオグリスは跳び箱を飛び超えるかのような要領でそれを回避すると、左腕の粒子砲でデアボリックを攻撃しつつ、そのまま右腕をタイガへ向けて振り翳す。

 

『ぐぅっ……!』

 

初撃は辛うじて往なすが、着地からの続けて二撃目。見た目以上に重い殴打が横腹を穿った。

ガードが意味を成さない。防御など軽々突き破ってくるような衝撃だ。

 

『どうしたどうした? この程度で音を上げたりはしないよな!?』

 

「当たり……前だッ!」

 

覆い被さった三撃目は辛うじて堪えた。頭上でクロスする両腕に鈍い痛みが走るが、今は無視して押し返すことだけを考える。

 

「だあらッ!」

 

『おぉ!?』

 

気合で弾いた鉤爪を今度は抱え込む。逃れられぬようガッチリと固定し、繰り出したジャイアントスイングの後にメツボロスを上空へと放った。

 

『˝タイガスラッシュ˝ッ!』

 

続け様に追撃へと移り、打ち出した光弾の爆風で奴を地表へと叩き落とした。

 

『繰り返すが……これはバトルロワイヤルだぞ?』

 

だが―――、

 

『ッッッ――――――!』

 

『ッ……! しまっ―――』

 

またしても意識の外にいたのはデアボリック。

 

いつの間にか右腕の砲台に集約していた膨大なエネルギーは直後にビームとなって吹き荒れ、一瞬の内にタイガを飲み込んだ。

 

『ぐっ……ああぁ……!』

 

直撃だった。防ぐ余地などない熱量の塊にただ吹き飛ぶしかない。受けたダメージを物語るようにカラータイマーが点滅を始める。

 

焦げ付いた身体が勢い良く転がり、メツボロスの足裏によって止められる。タイガへ乗せる片足へ体重を寄せつつオグリスは零した。

 

『最初の脱落者は……お前のようだな』

 

微かな失望と共に見下ろされる目線が次に起こることを示している。けれども破滅的な一撃を受けた肉体は簡単に動こうとはしてくれなかった。

 

『……終いだ』

 

猶予のカウントさえも尽き、朦朧とする視界の中で下された戦斧が輝きを刈り取らんとして駆けた。

 

『そうはさせん!』

 

阻むのは直撃の目前に空へと昇った光の柱だった。

吐き飛ばされるメツボロスの真下、相も変わらず主張の激しい筋肉を連ねる戦士の名を呼ぶ。

 

『タイ……タス……!』

 

『遅れてすまない。シェルターの者達へ避難を促すのに時間が掛かってしまった。無事か、タイガ』

 

『ああ……助かった』

 

肩を借りて立ち上がり、改めて二体の巨獣と向き直る。

 

『成程な……発端はお前か。トレギアと接触したなU-40』

 

『何だって……? 本当かタイタス!?』

 

『ああ。だがその話は後だ。今は奴等を片付ける』

 

タイタスがいつの間に敵がトレギアだという確証を得たのか、いつの間に奴へ繋がる手掛かりを得たのか。疑問は尽きないが彼の言葉は事実だ。

 

『この事態は奴の行動を予測し切れなかった私の責任だ……デアボリックは私が対処する。オグリスを任せられるか?』

 

「てか、お前等なんで一緒にいるんだ……?」

 

『その話も後だ後! いいから行くぞ!』

 

仕切り直して第二ラウンド。タイタスはデアボリック、タイガはメツボロスへとそれぞれの敵へと仕掛けてゆく。

 

『一対一になったんだ。多少はマシになっててくれよ』

 

『言っておけ!』

 

タイタスに受け渡されたエネルギーによって多少体力は回復している。絶好調と呼べる程ではないが、戦闘を行う分には問題はない。

 

再度受け止めた鉄槌を押し返すべく力を籠める。今度は横槍を入れる存在はいない。目の前の敵だけに全力を注げた。

 

『……そう言えば、トレギアのことを教える約束があったな。どうせ奴のことだ。U-40にもロクに腹の内は明かさなかっただろうからな……嫌がらせに私が洗い浚い吐いてやる』

 

だがそれはオグリスも同じこと。圧し掛かる重圧は先程の比ではなかった。それでも負けじと両の足で大地を踏みしめた折、思い出したように奴は言う。

 

『先程お前はあのトレギアか、とか言っていたが、その認識で間違いはない。奴はウルトラマントレギア。お前と同じ、光の国出身のウルトラマンだ』

 

『やっぱり……!』

 

語る間にも攻撃の手は緩まない。初発こそ結果的に受け流すことには成功するものの、繰り返しに迫る切っ先は幾度となくタイガを切り裂こうと迫ってくる。

 

『何故トレギアはこの星にいる……アイツの目的はなんだ!?』

 

『肉体を失い宇宙を彷徨っていたお前は知らないだろうが、奴は十年前にこの星でウルトラマンゼロを始めとした光の戦士達に敗れている。その際にトレギア本人も深手を負うのみならず、奴の力を担う存在を失った』

 

『奴の、力……?』

 

『ああ。宇宙創成期の混沌より生まれた邪神達の融合体―――˝グリムド˝をな』

 

聞き慣れぬ名前が風切り音と共に耳を撫でる。真横を斬撃が通過した音だった。

 

『数多の邪神を体内に取り込んだ代償にな、アイツは死ねないんだ。仮に命を失おうとも、マルチバースに存在する別世界の自分自身を犠牲とすることで蘇る……事実上の不死だ』

 

片手間で処理するにはあまりにも濃密すぎる情報だ。全身に走る痺れは戦闘の齎す衝撃によるものだけではないとハッキリわかる。

 

『だがそのグリムドも光の戦士達によってトレギア諸共打ち倒された。辛うじて生き永らえることは出来たようだが、消えかかる邪神の力では不完全な復活が関の山だったようでな。今の奴は万全の状態じゃない……本来の巨人の姿に戻れない程にな』

 

驚きはない。トレギアが光の国のウルトラマンであるということはタイガから聞いていたから。だがその後に連なる奴の辿った軌跡は動揺と混乱を生むには十分すぎて。

 

一瞬とは言え脱力した身体は決定的な隙を生み、突貫したメツボロスの体当たりがタイガを吹き飛ばした。

 

『ここからは私の推測になるが……恐らく、奴の狙いはグリムドの復活だ。正確にはグリムドの力と共に自身の力も取り戻すこと、と言うべきか』

 

語りのテンションと合致しない粒子砲の包囲網が押し寄せる。バリアや回転運動を用い、辛うじてそれらを掻い潜った。

 

『グリムドは言わば虚無の化身、故に糧となるのも生ける者の抱く虚無だ。現にトレギアもこの十年間、自ら空虚へと突き落とした者を捕食させることでグリムドの力を繋ぎ止めていたようだからな』

 

「……優木を狙ったのはその為か?」

 

『さあな。そこまでは知らん。あの時の奴には、何か別な目的もあるように見えたが……』

 

あの時初めて敵として対峙したトレギアの関心は明らかに雄牙達へと向いていた。嘘を吐かないと掲げるオグリスの証言も加味して、何か雄牙達絡みの目的があったことは明らかだろう。

 

『……っと、私から話せるのはこれくらいだな。約束は果たした。後は存分にヤリ合おうか!』

 

ではそれは一体何なのか。思考が次の段階へ至ろうとした途端、ギアを上げたオグリスが牙を剥いた。

 

唸りを上げたメツボロスがサバンナを駆ける猛獣の如くお台場の街を疾走する。その速度は最早ウルトラマンですらも見切れるものではなく、気付けば背後に回られ重い重い一撃が叩き込まれた。

 

『ぐっ……!』

 

跳ね飛ばされた身体が橋を破壊しながら河口へと落ちる。霧散し、雨のように降り注ぐ水飛沫を掻き分け突っ込んできたのはまたもメツボロスだ。

 

『˝ウルトラフリーザー˝ッ!』

 

冷気を纏った風を吹かせ、空中の飛沫を凍らせては奴へとぶつける。ダメージこそ薄いが勢いは殺せる。減速の隙に立ち上がり体勢を整えた。

 

『面白い攻撃をする……ならこれはどうだ!』

 

『˝ハンドビーム˝ッ!』

 

再度殺到した粒子の方に光弾で対抗するが、威力で押し負け着弾。火花と共に吹き上がった爆炎が体力を削る。

 

『ほらほらどうした! コイツも凌いで見せろ宇宙警備隊!』

 

連発可能な高火力の重火器はタイガと相性が悪い。威力で対抗できるのはストリウムブラスターくらいだろうが、たかが一発の攻撃を凌ぐのにあの大技は使えない。となると―――、

 

『指輪だ雄牙! ギャラクトロンの指輪なら対抗できる!』

 

「そっか……よし!」

 

以前の経験から最適解を導き出す。

メツボロスの武装も恐らくは同系統の怪獣に由来するものだ。ギャラクトロンの力にはギャラクトロンの力を。

 

だが。

 

『待て雄牙……それを使うな!』

 

「え……」

 

指輪をリードしようとしたその瞬間、不意に飛んだタイタスからの制止に動きを止めてしまう。

 

生まれた隙は文字通りの命取り。気付いた頃には暴力的な熱線が間近へと迫っており、対処する術もなく弾け飛んだ。

 

『ぐっ……、どういうことだタイタス!』

 

『言い忘れていたが……その指輪はトレギア製だぞ』

 

代わりに答えたのはオグリスだった。タイタスからも否定の声は上がらない。

 

怪獣の指輪はトレギアによって生み出されたもの。その事実が付与された途端、急速に指輪の帯びる危険性が上昇する。

 

一度目ならともかく、繰り返し使用すれば何が起こるかわからない……つまりはそういうことだろう。

 

『使うのならば止めないぞ。まあ、お勧めはしないがな』

 

自身に降りかかる危険か街や皆の安全かを秤に掛けている間にもオグリスは待ってはくれない。それどころかその闘争心は加速してゆく一方だ。

 

建物の側面すらも足場に使い、より立体的に空間を駆けたメツボロスの疾走がタイガを囲うように展開される。

 

『ッッッ――――――!』

 

『がっ、ああぁぁ……ッ!』

 

突進の勢いに乗り更に威力を増した斬撃がタイガの胸元を襲った。血飛沫のように散華する火花が宙を舞う。

 

再度点滅を開始したカラータイマーはタイタスより受け渡されたエネルギーも底をつきかけていることを示している。もう本当に時間がなかった。

 

『おいおいこれ以上落胆させるな。これでもお前には結構、期待しているんだぞ?』

 

地に伏せ、思うように動かない身体へ鞭を打つ雄牙を見下ろしながらオグリスは煽る。タイガに反し彼女はまだまだ余裕がある様子だった。

 

力量に差がありすぎる。これまでの戦いの中で雄牙達も確かに成長しているが、それでもオグリスの域はまだ、遠い。

 

『暴れ足りん。不完全燃焼もいいところだ……これならあの青いのを引き摺り出すか』

 

不満気な吐息を漏らしたオグリスは不意に何かを思い付いたように辺りを見回し、やがてとある一点に視線を固定すると冷めた声で笑った。

 

『……丁度イイ餌がいた』

 

砲門にエネルギーを集約させ始めたメツボロスに騒めくような予感を覚え、急ぎ奴が見据える先を確認する。

 

『かすみ達……!?』

 

ショッピングモール前の広場。避難をした直後なのか、そこには見慣れた面々が揃ってこちらを見上げていた。耀の顔も伺える。

 

いやそれよりもだ。オグリスの狙いはもしや―――、

 

「っ……!」

 

理解の途端に柵が弾け飛ぶ。

遠い笑顔が脳裏を過った時、迸るような何かがこの身体を、魂を突き動かした。

 

 

《ヘルベロスリング!》

 

 

《エンゲージ!》

 

 

『なに……!?』

 

傷口から滴る血潮が武器の形を成したかのように、赤黒い閃光の刃がメツボロスを切り裂き、薙ぎ払った。

 

雄牙も殆ど無意識の内にリードしていた怪獣の指輪。その力により生まれたチャンスを逃さぬように、限界を迎えている筈の身体を無理矢理に駆動させた。

 

「う……らあぁぁぁッ!!」

 

打ち上げたメツボロスを追うように起き上がり様に飛翔。肉薄しては突き出した拳を埋める。

 

筋肉という名の鎧に覆われた肉体に対し殴打によるダメージは薄いが、衝撃までもを往なせる訳じゃないのは分かっている。僅かだが崩れた体勢へ更に連撃を叩き込み、防御力の薄い首元を露出させた、その瞬間。

 

「タイガッ……!」

 

『雄牙お前……わかったよ!』

 

懐へ潜り込みつつお決まりの動作を重ねる。両腕を掲げ、腰元へと下ろし、身体中に虹色のエネルギーを循環させた。

 

『˝ストリウムブラスター˝ッ!!』

 

T字に構えた腕より放出される光線が首元から奴を穿つ。

 

『ッッッ――――――!』

 

断末魔にも近しい雄叫びが上がるが、それも束の間のこと。たった数秒とは言え超至近距離からのストリウムブラスターを耐え抜いたメツボロスは両腕の装甲で光線諸共タイガを叩き落として見せたのだ。

 

『く……はは! いいぞ! そうでなければ面白くない!』

 

パワーやスピードだけじゃない。タフネスさもまた常軌を逸している。

今の一撃でかなり削れたとは思うが、それでも奴にはまだまだ余裕がある。底が見えない絶望感が心に圧し掛かってくるようだ。

 

でもここで折れる訳にはいかない。雄牙が敗れれば奴はフーマを呼び出す為に誰かの命を脅かし兼ねない攻撃的な活動を取る……それだけは阻止しなければならなかった。

 

頭を冷やせ。落ち着け。でも急げ。

 

どうにかしてこの状況を打開する方法を弾き出せ。

 

『もっとだ……もっと私の心をヒリつかせてみろ!』

 

爆発的な瞬発力で接近してきた一閃を前転運動で回避。連撃に迫った咢を蹴り上げることで防ぐとハンドビームでの牽制を入れつつ距離を取った。

 

『ッッッ――――――!』

 

だが近中遠全ての攻撃範囲に対応する奴の手数の前には無意味だった。

姿勢を整える前に打ち放たれた粒子砲。それに対処すべく再度怪獣の指輪を読み込もうとする。

 

『ソイツはもう使うな!』

 

静止の声が挟まり、仕様よりも早く展開されたタイガのバリアが熱線を防いでいた。

 

『忘れた訳じゃないだろ。その指輪はトレギアが作ったもの……罠の可能性だってあるんだぞ』

 

「じゃあどうしろってんだよ! こいつ以外に方法なんて―――」

 

『ある……一つだけ』

 

捲し立てる雄牙にタイガは一つの光明を提示する。

 

「一つあれば十分だろ。迷ってる暇なんてないんだぞ」

 

『けどこの技は危険なんてレベルじゃない。他の技なんて比較にならない程デカい反動がある……おまけにまだ未完成だ。使えば俺達もどうなるかわからない』

 

いつもに増してタイガの声には緊張感が籠っていた。強さに対して少なくない固執があるように見える彼でさえ使用を躊躇う技だ。それ程まで、ということなのだろう。

 

『それでも……やるのか?』

 

けれど、迷いはなかった。

 

「やる。今やらなきゃいつやるんだ」

 

『わかった……気合い入れろよ雄牙!』

 

問答の間にも距離を詰めて来ていたメツボロスに対しタイガが取った行動は―――受け止めること。命諸共意識を掻っ攫ってゆきそうな衝撃を意地で堪え、ガッチリと、奴の身体へ自らの身体を固定する。

 

『なに……?』

 

『うっ……おぉぉぉぉぉッ!!』

 

そうしてメツボロスに掴み掛かったまま飛翔したタイガの肉体が赤色を帯び、燃え盛る炎となる程に熱エネルギーを増幅させてゆく。

 

『まさかこれは……No.6の……!?』

 

『ああそうだ! 見様見真似だけどな!』

 

終わりは唐突だった。

気合いで繋ぎ止めた意識の意図すらも焼き切らんとする灼熱の行く末。()()()()()()()()()()()が全てを消し飛ばした。

 

 

『ウルトラ―――ダイナマイト』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……無茶苦茶な戦い方をする」

 

「……お前に、だけはっ……言われたくない……!」

 

白が視界を埋め尽くしてから少し後。

完全に動かなくなった四肢を地面へと投げ出した雄牙は、同じく大の字で転がるオグリスへと悪態をつく。

 

「一緒にするな。私の享楽は命あってこそだ……お前のは最早破滅願望だろ」

 

「悪かったな……弱っちい奴には、弱いなりのやり方しかないんでね」

 

「ああ、確かに弱いな。……だが、その泥臭さは嫌いじゃない」

 

あっさりと起き上がって見せたオグリスの表情は穏やかだった。心なしか満足気にも思える笑みだ。

 

「それに、お前は何かを()()()()()。本当に私を最後まで飽きさせないな」

 

タイガの言っていた大きすぎる反動が故か、意味深に細められた彼女の眼が何を映しているのかを確認する余裕もない。

 

「……お前もそう思うだろ?」

 

いや……確認したくなかったのかもしれない。

 

「やっぱり……そうだったんですね」

 

コンクリートと擦れ合う靴音が耳元まで近づき、見知った少女が顔を覗き込んでくる。

騒ぎも、また驚きもしない。ただ静かに、桜坂しずくは佇んでいた。

 

「その分ではある程度推測はついていたみたいだな……聞かせてみろ。採点してやる」

 

「オグリスさんが自分は宇宙人だと明かす前から、何かおかしいと思ってたんです。瀬良さんとせつ菜さんが、妙にあなたを警戒していたから」

 

淡々と、殆ど組み終わったパズルのピースを嵌めるようにしずくは語る。

 

「それにお二人がいなくなった時、せつ菜さんが率先して私達に避難を促していました。瀬良さんを心配する歩夢さんを無理矢理説得しようとしてまで……まるで、私達を瀬良さんから遠ざけたいみたいに」

 

雄牙の頭の中でも点と点が線で結ばれてゆく。偶然なんかじゃない。彼女は自分の意志を以ってこの場所へ赴いたのだ。

 

「怪獣が出た後に宇宙人と関係のある人がいなくなって、探されると何か不都合なことがある……そんなの、答えは一つしかないじゃないですか」

 

全ては、辿り着いてしまった真実が故に。

 

「あなたがウルトラマンだったんですね……瀬良さん」

 

疲労と痛みに支配されているはずの身体へ悪寒が走った。せつ菜の時とは比較にならない悪寒だった。

 

「く、はは……。そうか。それがお前の本質か」

 

一瞬にして焦りに満たされた雄牙に反し、オグリスは満足気な笑いを見せた。後方で起こった爆風に漆のような黒髪が揺れる。

 

「……っと、U-40の方も終わったか。誰かさんのせいで無駄に力を消費してしまったしな。捕捉されると面倒だ。今日のところはここらでお開きとするか」

 

次にその笑みを雄牙へと固定し、緩慢な動作で立ち上がった彼女は最後に一言。

 

「楽しかったぞ。また遊ぼう―――()()

 

好き放題に暴れ回ったその台風は、またも勝手気ままにどこかへ消えてゆく。紅に溶ける後ろ姿は晴れやかなものだった。

 

されど台風は台風。残していった爪痕は、更に大きなものへとなっていた。

 

「……責める気はありませんよ。これまで守ってくれたことに感謝はしていますし、この事を隠していた訳も理解できます。それでも……」

 

暫くしてようやく起き上がれた雄牙に対し、しずくは腰を下げて目線を重ねてくる。

微笑みを作る両の瞳には、限りない影が差していた。

 

「……やっぱり私、あなたのこと大っ嫌いです」

 

見せたのは一瞬だった。遠くから聞こえた自分達の名前を呼ぶ声を聞き取ると、またいつもの顔を張り付けて、日常に舞い戻ってゆく。

 

雄牙も一応は続くが、それが日常への帰路ではないことくらいはわかっている。つもりでいた。

 




ほぼ戦闘描写だけなのに何だこの文字数は()
ともかくこれでようやくしずく回(のつもり)終幕です

オグリスとの関係に進展があった反面、なんとしずくには正体がバレてしまい……
(恐らく)数話先にあるであろう2度目のしずく回でイザコザ諸共解決するやら
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