トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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ギャラファイ3の情報量よ(2の時も同じこと言ってた)


3話 厄災が歩み寄る

 

 

かつん。

 

かつん。

 

お台場の街を一望するビルの屋上に無機質な靴音が残響した。

 

「……あれから、10年か」

 

浜辺の風が縦半分に区切られた白黒の服を靡かせる。

 

眼下で蠢く有象無象の命を見下ろしながら、男はここにはない何かを空目した。

 

「ようやく来たね。君達ウルトラの一族に、私の得た新たな答えを示す時が」

 

その腕の中で転がされるのは、指輪。

 

禍々しい凶獣の意匠が施されたそれに文字通りの命を吹き込み、送り出すように男は呟いた。

 

「行っておいで―――――ヘルベロス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイガと名乗るウルトラマンと出逢ってから数週間が経った。

 

あれからは特に何事もなく年度を超え、雄牙達の学年も一つ上がり二年生となった。

 

受験がより明確に見え始め、より一層の緊張感を持って取り組むべきはずの授業が執り行われる教室を満たしていたのは……飽きと弛緩だ。

 

『…酷いな。授業ってもっと真面目に受けるものじゃなかったか?』

 

(あんま人のいる場所で話しかけんなって言っただろ)

 

タイガとはまだ一体化したままだ。

 

最初こそ混乱や不便さを感じることもあったが、今となってはもう慣れた。そしてそれはタイガも同じようで、今は高校の授業というものに興味を示すくらいの余裕はあるらしい。

 

『この星の授業ってのはいつもこんな有様なのか?』

 

(いや、流石にこの授業だけだ。皆飽きてんだよ)

 

自らもまた気だるげに黒板の一角に視線をやる。

 

怪獣学。その三文字はある者に恐怖を、ある者に好奇を、そして大半の学生には眠気を齎すものだ。

 

『この星にも怪獣を学ぶ学問があったんだな……』

 

タイガが意外に思うのも無理はない。何せこの教科が必須課程に追加されたのは5年ほど前の話だ。10年間も宇宙空間を彷徨っていたという彼が知る由もない。

 

頻出する怪獣災害を受け、一般層にも最低限の知識が必要。そう考えた政府によって学校境域の一つに組み込まれたのがこの怪獣学だ。

 

基本的には小中の義務教育期間での指導が主ではあるが、近隣で怪獣災害が勃発するとこのように高校等でも臨時授業がなされる。今回は春休み期間中に起きたということもあり、学年を繰り越して行われている形になる。

 

『もっと他にも授業があるんだろ? 国語とか、算数とか。それは何時やるんだよ』

 

(落ち着け……てかお前、やたら地球文化詳しいよな。特に日本の)

 

『まあ俺の故郷……光の国にも学校があって、そこである程度地球のことについては教えられるからな。これでも成績トップだったんだぜ?』

 

(へーへー凄い凄い)

 

『だろぉ~?』

 

嫌味ったらしく返すが当人には通じる様子もない。良くも悪くも素直な奴だ。

 

『……怪獣の授業ってそんなにつまらないか? こっちにも似た授業はあったけど、むしろ皆嬉々として受けてたぞ』

 

(多分お前が想像してるのと違うぞ)

 

タイガの思う怪獣学とは様々な怪獣の種類やその生態、対処法などを教える授業なのだろうが、地球におけるそれは違う。避難訓練のようなものなのだ。

 

どこにどう逃げるのか。そんな面白味もない内容の反復が怪獣が出現する度に執り行われる。それを数年も続けば流石に飽きが来るものだ。

 

雄牙は比較的真面目にこの授業へと取り組んでいる部類だが、それでも同じことの繰り返しであるこの形式には辟易としているものだ。

 

『ふーん……じゃあつまり、これからその成果が見れるって訳か』

 

(……? どういう……)

 

『あれ、見てみろ』

 

説明を終えた頃だった。

 

タイガに言われ、教室の窓から見渡せる街並みに視線を流す。

 

(……雲?)

 

『何か、ヤバい感じがするぞ』

 

お台場の上空に浮かぶその暗雲が普通ではないのはすぐにわかった。

 

まず明らかに高度が低い。恐らく地上から数百メートル程度しかないであろう位置で漂う雲というのはまずあり得ないものだ。

 

そして何よりも、紫紺の雷を纏う様はタイガに言われずとも本能的な危機感を覚えうる代物であり―――、

 

『来るぞ!』

 

タイガが警告を上げた、その直後。

 

黒雲から発生した落雷が街中へと直撃し、爆発。伴う轟音と爆炎に教室内で悲鳴が上がった。

 

 

『ッッッ――――――!!!』

 

 

届いたのは生命の躍動。

 

粉塵の立ち込める町の中、突如として姿を現したソレは大気を震わせるように吠えた。

 

 

 

―――――最凶獣(サイキョウジュウ) ヘルベロス

 

 

 

深紅の表装から無数の刃を生やす怪獣は出現と同時に人類文明への侵攻を開始する。

 

遅れて教室内の各箇所から警報音が上がった。怪獣災害の始まりだ。

 

「なんだアイツ……あんなの今まで……」

 

『ヘルベロスだ。本来自然下には存在しない怪獣だから知らないのも無理はない』

 

「つまり……?」

 

『どこかで脱走した個体……もしくは何者かが召喚した可能性がある』

 

言われてみれば、確かに自然界には存在しないような形状をしている。鋭利な刃物を全身から生やす様は戦うために生み出された存在のように思えた。

 

「瀬良さん! 何をしているんですか!」

 

クラス委員から声が飛び、既に教室内からの避難が始まっていることを理解する。

 

出でた先での廊下では、悲鳴が満たす叫喚の図が広がっていた。誘導をする教職員の声など聞き入れず、多くの生徒が我先にと階段を駆け下りている。

 

『酷い有様だな。今の授業はこういう事態を想定したものじゃないのか?』

 

(今回は警報よりも先に出てきやがったんだからこうもなるだろ……まあ、事前に予測されてた時点で変わらないとは思うけど)

 

これを期に皆が真面目に災害時の行動を学んでくれることを祈りつつ、雄牙もまたその流れに混ざる。

 

人波に押されながら思うのはヘルベロスと呼称されたあの怪獣のことだった。普段怪獣が出現する際と異なる前触れの無い登場と、あの攻撃性の高い形状。確かにタイガの言った通り、何者かが召喚した可能性が高いだろう。

 

(召喚って……誰が何の目的で)

 

『そりゃあお前……侵略とかだろ。実際それが目的で他の星を襲う宇宙人は山ほどいるしな』

 

宇宙人。その単語は怪獣ほどではないものの、今の人類には深く根付いている言葉だった。

 

無論良い意味で用いられる言葉ではない。その印象は怪獣よりも悪いと言って差し支えないだろう。

 

宇宙人が主犯とされる事件は毎年全国で数多く報告されており、中には未解決のままの事件や、悲惨な結果で終わったものもある。

 

このことから相当数の宇宙人が今も人間社会に紛れ込んでいることが想定されるが……そう考えるといい気はしなかった。

 

(けど今更そんな大それたことする宇宙人なんて……)

 

『まあそりゃ、あんだけ強い防衛隊がいれば大半の宇宙人は手出し出来ないだろ。今回の奴はよっぽどあのヘルベロスに自信があるのか、侵略とは別の目的があるか、だな』

 

ならばその目的とは……と思考を巡らせようとするが、一先ずは避難を優先すべきだと判断する。

 

それを導き出したところで雄牙に出来ることはない。一般市民は命を守ることに集中すべきだ。

 

『今回もあのE.G.I.S.とかいうのが片付けてくれるんだろうが……まあ、突発的な出現だったのもあって対処は遅れるだろうな。それなりの被害は出そうだ。どうする? 変身するか?』

 

(それはこの前答えを出したはずだろ)

 

『だよなぁ……はあ、早く回復しねぇかなぁ、俺の身体』

 

タイガの促しを突っ撥ね、虹ヶ咲学園における避難場所である近隣の広場へと向かう。

 

雄牙は一般人だ。偶然ウルトラマンが宿ってしまっただけの、ただの一般人。そんな自分が前線に出て戦う理由も義務もない。

 

それでいいはずなんだと言い聞かせ、荒ぶる怪獣から目を背けた雄牙は避難場所へ足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「前触れもなく出てきやがって……ちったぁTPO弁えろってんだ」

 

『怪獣にそんなの通じる訳ないでしょ、この仕事何年目よ』

 

東京都内上空。並走するもう一機の戦闘機に搭乗した同期と軽口を叩く。

 

二台同時発進などいつ以来だろうか。普段は自分一人で対処に当たることが多い分、この光景にはある意味不慣れだ。

 

『ハイハイ二人とも、私的なおしゃべりはそこまでだよ。今回の怪獣は過去にデータの無い子だから慎重にね。あとサンプルにしたいから出来る限り肉体の損傷は避ける方針で―――』

 

「お前が一番私的な願望持ち込んでんじゃねぇかこのマッドサイエンティストが」

 

『全くね……遥也、そっちはいつ頃着きそう?』

 

『混乱で道が混んでてこれ以上は車じゃ無理です。隊長、徒歩で移動する許可を』

 

《承認する。α、β両機は現着し次第砲撃を開始。周辺の避難は殆ど完了しているから遠慮する必要はない。とにかく犠牲を出すな……いいな!》

 

「『了解!」』

 

号令と共に降下を開始する。標的は当然、街を闊歩する巨大生物だ。

 

《目標は60メートル級の二足歩行型怪獣。体形自体はこの前のゴメスと同じだけど、体表が装甲に覆われてる。狙うならそれの無い部分かな》

 

「だってよ……涼香(すずか)、久々の実戦だ。腕は訛ってないだろうな?」

 

『何なら後で試してあげてもいいわよ……攻撃、開始します』

 

「同じく。攻撃、開始」

 

照準を固定する。一先ずは牽制にと何発か撃ち出すが、事前情報の通り後頭部から背中一帯を覆う装甲によって弾かれる結果に終わった。なるほど、確かにあの部位への攻撃は有効的でなさそうだ。

 

『ッッッ――――――!!!』

 

「おっと」

 

旋回し、今度は腹部にと狙いを定めた時、怪獣の吐き出した火球が機体の真横を駆け抜けていった。

 

『うわ、体内に火炎袋を持ってるタイプの奴だ。これじゃ距離を取ってても安心はできないね』

 

「問題ない。涼香、合わせろ」

 

『OK、任せて』

 

「よし行くぞ。イチ……ニ!」

 

自らが音頭を取り、二機同時に怪獣へと接近する。

 

食いついたのはこちらだった。先程と同様に放出された火球をギリギリまで引き付けてから回避し、がら空きとなった首元へ熱波光線を射出した。

 

『ッッッ―――……!!』

 

「よし。装甲の薄い部分への攻撃は効くな。このまま一気にやるぞ」

 

着弾に伴う爆発が奴を襲う。その後は藻掻くように両腕の刃や尻尾による撃墜を試みてくるが、生憎そんな抵抗はこれまでの任務でごまんと処理してきている。

 

自分達の搭乗する機体―――ホークイージスは最高速度マッハ25を誇りながら数メートル単位で飛行軌道の調整が利く、間違いなく現在地球上に存在する戦闘機の中でトップクラスの性能だ。

 

それが知性に乏しい怪獣の、そんな悪足掻きのような攻撃が通じるような代物ではない。

 

「350mm荷電粒子砲……発射ッ!」

 

『発射!』

 

攻撃を掻い潜り、再び晒した弱点へ向けてホークイージスの最大火力をぶっ放す。

 

かつて地球を守った巨人の光線程の威力はないが、並みの怪獣程度なら容易く絶命まで誘う火力。そんなものを立て続けに喰らった怪獣の巨体は真後ろへと倒れ込み、やがて上がった爆炎の中へ姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっとこれは……少し予想外かな」

 

無様にも地面へ身体を投げ出し、今にも与えた命を手放そうとしている手駒の姿に男は首を捻る。

 

「……これは隠し玉だったのだけど、仕方ないか」

 

コキコキと指を鳴らした掌に黒が集約してゆく。

 

渦巻くそれは、部分的に異形の者へと化した男の腕が前に突き出されると共に線を伸ばし、倒れ伏すヘルベロスへと注がれる。

 

「主賓が登場する前にパーティーが終わってしまうのは興ざめだ……前座には退場して頂こうね」

 

数拍の後、躍動を取り戻す息吹きが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッッッ――――――!!!』

 

「ッ……!? コイツまだ生きて―――」

 

黒煙の中で轟いた猛々しい怒号に再度操縦桿を握り直す。

 

まだ足りないのなら気が済むまでぶち込んでやる。そんな気概を以て攻撃態勢へ移るが―――、

 

『ッッッ――――――!』

 

「ぐッ……!?」

 

逆に魔の手を伸ばしてきたのは奴からの反撃。

 

空へと昇った幾数に枝分かれする雷撃が機体の翼を掠める。火事場の馬鹿力とかいうやつなのか、一度は追い詰めたソイツの攻撃性は先程までの比ではなくなっていた。

 

「ッ……! 涼香避けろッ!」

 

『え―――』

 

一先ず距離を取って体制を立て直す。その指示を共有するよりも早く。

 

音速を超えて飛来した赤い光刃が、同期の乗る機体の右翼を切断していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オイオイオイ……コイツは少しマズいんじゃないのか?』

 

信じ難い光景を目にしたのは、避難場所である広場に到着した頃だった。

 

一度は倒したと思われた怪獣の攻撃により、ホークイージスが撃墜。二機出撃した内の片方のみではあるが、日頃難なく怪獣を打ち倒している翼が墜とされる様は人々の心に巨大な影を落とす。

 

もしもう一機までもがやられてしまったら……そんな不安は雄牙のみならず、空を見上げる全ての者にあることだろう。

 

『ッッッ――――――!!!』

 

少しずつ、希望の灯が消えてゆく。

 

絶望の始まりを告げるように、焔の中で吠えるヘルベロスの咆哮が響き渡った。

 

 




冒頭の怪しい奴は勿論アイツ()
ゼロライブを読んでくださった方の中には「オイ待てよ」と思われる方もいるかもですがそこは先のお楽しみということで……


今回は前作から10年経ったこの世界についての解説します

かつて人類を守った巨人が地球を去って以降、(今は伏せますが)何らかの要因で怪獣達が頻出するようになったのが雄牙達の生きる時代です
頻発する怪獣災害への対応は前回解説した防衛組織のE.G.I.S.のみならず、「ウルトラマンZ」内であったような災害時の警報システム、˝怪獣学˝と称した怪獣出現時の対応を学ぶ授業などが学校教育に取り入れられており、一般市民含め怪獣への適応が進みつつある…といった具合ですね

そんな中登場したのはタイガ本編で1話怪獣を務めたヘルベロス……ということはつまり……?
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