トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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殆ど戦闘の回だと進むのが早い早い……


43話 それでも私は夢を見る 前編

 

《ウルトラマンタイガ!》

 

『シュアッ!』

 

海上を渡り、商業施設の連なる地帯へと移動する黒の巨獣を視認するや否や、タイガへと姿を変えた雄牙は飛び立つ。

 

宙返りを重ねた後、踵を落とす形で怪獣の頭部へと強襲。それ以上の進軍を阻むように眼前へと立ちはだかった。

 

「ギマイ、ラ……!?」

 

向き合い、その正体を察した身体に悪寒と衝撃が走る。

 

全身を覆う激しく隆起した棘を備える鱗に、頭部から伸びる巨大な一本角。そして他の怪獣よりも大きく見開かれた双眸が生み出す風貌は、獣の形を成しながらも悪魔を思わせるような凶悪さを秘めていた。

 

 

―――――吸血怪獣(キュウケツカイジュウ) ギマイラ

 

 

E.I.G.S.結成以降の日本にて、特に大きな被害や悲劇を齎したとされる三大怪獣災害。奴は内の一つに数えられる厄災の元凶となった怪獣だ。

 

だが後年の研究で宇宙怪獣、つまり地球にとっての外来種であると判明し、恒常的に脅威を齎す存在ではないとされた。それが再び出現したとなれば……、

 

「別の個体が宇宙から来たのか……」

 

『もしくは誰か使役してる奴がいるか、だな。ギマイラは怪獣の中でも特に知能が高い。食事目的で星に降り立つ時は、反撃を嫌って人口の多い場所は避ける傾向があるんだ。なのにコイツはこの場所に現れた……妙だと思わないか』

 

以前ギマイラが出現したのは内陸から離れた位置にある離島だった。そこで島民達を掌握して吸血を続けていたと巨大生物読本に記載されていたのを覚えている。

 

補給が目的ならば餌となる人間が多く存在する都心部に降り立った方が効率的ではないかとは思っていたが……確かにタイガの言う通りなら合点がいく。

 

「仮にそうだとしても……扱えるのか? ギマイラを……」

 

『さあな。けど、魔王獣を複製するような奴がいるくらいだ。ギマイラを侵略や商売に使っていてもおかしくない』

 

ヴィラン・ギルドか、将又トレギアなのか。そもそも管理下にある怪獣なのか野生個体であるのかすらもまだわからないが、放置してはおけない存在であるのだけは確かだ。

 

目指すは一刻も早い駆除。同じ悲劇を繰り返さないための抗いだ。

 

『ッッッ――――――!!!』

 

『ぐあっ……!』

 

先制で仕掛けた攻撃は、噴射された純白の靄によって阻まれる。小規模ながらも表皮を伝う爆発の刺激がタイガの身体を後方へ誘った。

 

揮発性の高い化合物を体内に備えているのか、ともかく出鼻を挫かれた。すぐ反撃に転じなければギマイラのペースとなってしまう。

 

『˝ハンドビーム˝ッ!』

 

後転で爆風の勢いを流しつつ、起き上がり様に突き出した手先から光弾を連発。距離を詰めようと上体を傾けたギマイラを牽制する。

 

だが奴は止まらない。乱雑に振るった両腕でハンドビームを撃ち落としては棘塗れの巨体で強烈なタックルをお見舞いしてくる。

 

『ッッッ――――――!!!』

 

『があァァァッ……!』

 

相対する巨人を薙ぎ払っても尚ギマイラの攻撃が緩まることは無かった。頭角に赤白い紫電が集約していったと思えば、次の瞬間に巨大な雷と化してタイガへと打ち付けられる。

 

尋常ではない熱量と痛みが全身を襲う。痺れこそ存在しない筈なのに、純粋なダメージが身体の自由を奪っていくようだった。

 

「これ、がっ……ギマイラ……!」

 

文献資料から想像していたそれとは圧倒的にレベルが違う。オグリスの変身した個体ではない、純粋な怪獣にここまで一方的に押されるのは初めてのことだ。

 

「タイガ……光の国になんかコイツの資料とか無かったのか」

 

『ギマイラは強力な分そもそもな接敵数が少ないからな……昔80先生が戦った時の話は聞いたことはあるけど、正直この状況で有益になる情報は無い』

 

地球においてもギマイラは離島での出現であったためにそもそもの目撃例が少なく、雄牙のような一般人が知り得る知識も限られてくる。

 

手数も生態も、わからないことが多すぎる。ただ一つ凶悪な怪獣だという事実だけが独り歩きし、加速するばかりの焦燥を後押ししていた。

 

『とにかくパワーじゃ勝てない。まずはヒットアンドアウェイで奴の体力を削るぞ』

 

再度に迫った轟雷を跳躍で回避し、飛び蹴りの形で肉薄する。

しかし追撃を仕掛けることはせず、頭部ごと振り下ろされた一本角の気配を察知してはすぐに距離を取った。

 

『˝ウルトラフリーザー˝ッ!』

 

飛び退く傍らに吹雪かせた氷の礫を鬱陶しそうに振り払うギマイラ。海面ですら一瞬で凍結させる冷気を受けてなお怯まないタフネスは驚愕だが、それでも隙が生まれない訳じゃない。

 

『おおおぉぉッ!』

 

開いた懐へ潜り込むと一気にラッシュ。打ち出した両の拳が連続でギマイラの鳩尾へと沈む。

 

これには流石の奴も応えたか。蹲るように下げられた側頭部を狙って上段踵蹴りを見舞う。

 

が、

 

『なぁッ……!?』

 

直撃を確信した筈の一撃は空を切り、身体の回転と共に流れる視界が上体を仰け反らせたギマイラの姿を視認する。

 

躱された? あの状態から反応して回避に移ったのか?

 

いや違う。頭部の比重が大きいギマイラにはこんな芸当狙っていなければ出来ない。

 

奴はこちらが戦法を切り替えたのを察し、敢えて攻撃を受けることでタイガの隙を誘ったんだ。

 

『ッッッ――――――!』

 

『あぐァっ……!』

 

横一文字に奔った大木の如き尻尾に足を払われ、腰から地面に激突。更には間髪なく繰り出させる蹴りや頭突きがタイガの身体をかち上げ、ゴロゴロと地面を転がされる。

 

反撃に転じるどころか、満足に防御を取る余裕すらも与えてくれない。直前の攻撃誘導といい、コイツはこの短期間でこちらのテンポを見切りつつあるんだ。

 

知能が高いとは言うがここまでか。原始的な生存本能や闘争における判断力に関しては人間の遥か上を行っている。

 

この怪獣……想像よりも数段ヤバい。

 

『クソッ……˝ストリウムブラスター˝ッ!』

 

苦肉の策で光線技を放ち、強引にギマイラを押し戻す。しかし殆どエネルギーを集約出来なかった一撃では奴の肉体を破壊することは叶わず、ただ力ない黒煙を着弾部位から昇らせるだけに留まってしまう。

 

当然、ダメージの点で見てもたかが知れている。刹那には一向に怯む様子を見せないギマイラの瞳がその殺意の鋭さを示すように見開かれた。

 

『ッッッ――――――!』

 

『な、んッ……!?』

 

咢までが大きく開口され、奥より飛び出した黒い何かがタイガの身体を絡め取る。

 

「舌……?」

 

『何だよこの長さ……外れねぇ……!』

 

猛烈に締め上げてくるのはギマイラの舌だ。ただ既知のそれとは大きく形状が異なり、奴の体長を何倍も上回る長さに加えてその先端は無数に枝分かれしている。伸縮自在に動き回る様は最早触手だ。

 

『うおぉッ!?』

 

おまけに力までも強いと来た。ギマイラの意志に従って動く舌は容易くタイガの身体を持ち上げ、付近にあった建物へと叩き付ける。舞い上がった瓦礫と粉塵が容赦なく降り注いでくる。

 

更には―――、

 

『ッッッ――――――!』

 

『がっ……あああアァァッッ……!』

 

舌先からも放電が可能なのか、全身を駆け巡った落雷の衝撃が体力を奪い取る。

 

遂には点滅を始めたカラータイマーが差し迫る敗北へのカウントダウンを刻んだ。早く切り抜けなければならないというのに、拘束された身体ではまともに抗うことすら叶わない。

 

「こうなったら……!」

 

この状況では光線技で打開を図ることも出来ない。となれば残された手段は一つ。

 

《タイタスレット!》

 

《コネクトオン!》

 

唯一自由が利くインナースペースの中で読み込んだブレスレットがタイガに膂力を与える。

 

自由を奪う舌を賢者の加護で強引に突破し、引き戻される前に掴み取っては奴の身体ごとぶん回す。遠心力も加わった勢いのままに投げ飛ばされたギマイラがお台場の海に着弾した。

 

「あ、ぐっ……!」

 

『マズイ……もうエネルギーが……!』

 

ようやく決定的なチャンスを得たというのに、ただでさえギリギリの状況で行使したタイタスの力は残された余力を根こそぎ掻っ攫ってゆく。

 

膝を折る間にもギマイラは再度上陸し、衰えのない剣呑さを双眸に宿している。

 

いよいよ万事休すか。一歩、また一歩と迫る脅威を前に拳を握った。

 

『なんだ……?』

 

だがギマイラはタイガにトドメを差すことはしなかった。

それどころか突然侵攻を止めたと思えば、全身から宇宙の混沌を凝縮したかのような濃霧を発生させ始めたのだ。

 

「ッ……! マズッ……!」

 

雄牙がその意図に気付いた時には既に遅い。

 

地表を覆う霧は瞬く間に魔の手を伸ばし、お台場の街を白に染め上げていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けほッ……えほっ……!」

 

呼吸器に入り込んだ異物に反応した身体が咳込み、暴れ狂う怪獣から離れようとする足を止めてしまう。

 

近くで火災でも起きたのかと一抹の不安が頭を過るが、直後にそれ以上の驚愕によって上塗りされる。たった今辺りを包み込んだ霧は、ウルトラマンを圧倒する怪獣を中心に広がっていたのだから。

 

「かすみさん……! だいじょ―――けほっ……!」

 

手を引いてくれていた筈のせつ菜の姿も声も、白の中に消えてしまう。全てが覆い隠された世界の中で漆黒の悪魔の咆哮だけが轟き続けていた。

 

そもそもどうしてこんなことになったんだ。

 

突然のこと過ぎて詳細に覚えている訳ではないが、記憶が正しければあの怪獣はかすみの持っていた指輪が変化したものだ。

 

元々の持ち主はかすみではないが、持ち歩きさえしなければこんなことにはならなかったのではないか。そんな憂いが頭を過る。

 

「私の……せい……?」

 

「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える」

 

震える声音で零した一言に返す綴り。

現れたのはこの純白の中でもハッキリと視認できる黒の穢れだった。半身のみが存在しているような不気味な揺らめきに、かすみは先刻の光景をフラッシュバックさせる。

 

「ひっ……こここ来ないでくださいぃぃッ……!」

 

「おやおや、随分と嫌われてしまったらしいね」

 

この濃霧の中でどうやってかすみを見つけたのか。何故顔色一つ変えずに立っていられるのか。湧き上がる筈の疑問は全て恐怖によって上塗りされる。

 

怪獣と化した指輪をかすみに授けた張本人。間違いなく人間ではないであろう男は、微塵も裏側を伺わせない笑顔を張り付けたまま歩み寄ってくる。

 

「怖がることは無いさ。あの夜も言ったが、私は君の味方だからね」

 

「だったらどうしてこんなことするんですかぁ!」

 

「何を言うかと思えば……。これは他でもない、君のための催しだよ」

 

「はい……?」

 

言っている意味が分からない。

こんな、街を混乱させて、日常を壊して、皆を怖がらせるだけの所業のどこがかすみのためになるというんだ。

 

「……すぐにわかるさ」

 

変化があったのはこの直後。

男の声に乗り、沿岸より吹き込んだ潮風が少しずつ霧を晴らしてゆく。

 

「せつ菜先輩……!?」

 

異物が取り払われた世界では、尚も異様な光景が続いていた。見失っていたせつ菜の姿を確認し安堵したのも束の間。ふらふらとした足取りで彼女が向かっていたのは、あろうことか怪獣が佇む方向だったのだから。

 

「何してるんですかせつ菜先輩……せつ菜先輩ッ!」

 

直前の恐怖も忘れ思わず制止に入るも、自分の見知ったせつ菜に戻る気配はない。

情熱的が過ぎて暑苦しさすらあった瞳は今や光を失った虚を映し、意思を持たない傀儡と化してしまっている。

 

しかもせつ菜だけじゃない。周囲に見える人影は皆一様に彼女と同じ目をし、怪獣の元へ歩を進めているじゃないか。

 

「先輩に何したんですか……やめてくださいよこんなの!」

 

「本当にその必要があるのかなァ。君が無自覚なだけで、これは君自身の望んだ光景だというのに」

 

「そんな訳ないじゃないですかッ! 誰がこんなの……」

 

「指輪が君に応えたんだ。どれだけ受け入れ難くともこれこそが君の本心だよ」

 

否定も意味を成さない。ただより深く男の声が入り込んでくる隙を作るだけだった。

 

「憎かったんだろう? 君の在り方を認めない全てが。自分を差し置いて理想へと進む奴等が……ギマイラは、そんな君の心そのものだ。君が憎む悉くを消し去るまで止まらない」

 

どす黒いものが広がっていくのを感じ、決して見失わないようにと、かすみは己の心を抱き留める。

 

そうじゃない。そんな訳ないと自らに言い聞かせる傍らで、徐々に男の気配が遠ざかっていった。

 

「枷が消え去り、望む世界を手に入れた君が何を成すのか……見届けさせてもらうよ」

 

消し去り難い、悪魔の響きを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人が……!」

 

『コイツ……他の生物を操れるのか……?』

 

霧が街を包んだ直後、引き寄せられるようにして集まってきた人々の姿を視認した雄牙は滝のような汗を滲ませる。

 

十中八九ギマイラの仕業であろうが、何故こんな真似を。その疑念の答えは低く唸りを鳴らしたままの奴の眼光が物語っていた。

 

『人質ってことか……』

 

「どんだけ姑息なんだよコイツ……」

 

単純な戦闘能力で既にタイガを圧倒しているというのに、その上で人質すらも取る狡猾さは最早怪獣の域を逸脱しているとすら思える。

 

エネルギーは既に尽きかけ、迂闊な抵抗すらも取れなくなった。

 

異様な速度で悪い方向へと進んでいく事態へ果てしない焦燥を覚えながら、タイガと共に肩を上下させる。

 

どうすればいい。

どうすればこの状況を打開出来る。

 

『ッッッ――――――!』

 

『ぐううぅぅッ……!』

 

模索を繰り返すも解は出ず、差し込まれた雷撃にただただ吹き飛ぶ。加速するカラータイマーの点滅が殊更に平静を奪った。

 

『―――˝タイタスプラネットハンマー˝ッッ!!』

 

辛うじて立ち上がりはするものの戦う力など残されてなく。

トドメを待つだけかと思われたタイガを救ったのは、真上から降り注いだ星の大槌だった。

 

「タイタス……!」

 

『ギリギリ間に合ったな……対応が遅れてすまない』

 

君臨と同時に強烈な一撃をお見舞いしたタイタスは、そのままギマイラを脇に抱えて抑え込む。

 

タイガを圧倒した奴と言えど、流石に単純な力勝負ではタイタスに分があるか。一時的とはいえギマイラを拘束した彼は雄牙達へ声を張り上げた。

 

『ギマイラの霧が人々を操っている……そうだなタイガ!』

 

『……ああ。人質ってことらしい。迂闊に動くとマズい』

 

『問題ない。既に手は打ってある!』

 

タイタスの背後で昇る蒼の光。

それがフーマであると理解するや否や、彼は上空で軌跡を描きながらの旋回を始める。

 

『セエェェイヤッ!』

 

空気の流れを感知したのは直後のこと。

猛烈な速度で回り続けるフーマの勢いが気流を生み、遂には竜巻が如しつむじ風となって地表に吹き下ろされる。

 

『……っと、一丁上がりよ。こんなモンでいいか旦那』

 

やがて全ての白が上空へと運ばれた頃に降り立った蒼の巨人。

 

立て続けに現れた敵性生物の姿に不利を悟ったのか、途端にギマイラは全身から眩い発光を始め―――、

 

『……逃げたか』

 

『チッ……嫌な方向に賢い奴だぜ』

 

どうやら地中へと逃走したらしい。直前まで奴を抱え込んでいたタイタスの足元には隆起した土の山が形成されている。

 

一先ずの脅威は去った、と捉えていいのだろうが、それでも暫くは油断出来ない状況と考えるべきだろう。

 

『追跡したいところではあるが……人々の安全を確保するのが先決か。君達も手伝ってくれ』

 

「あ、ああ……うん」

 

付近には未だ胡乱の中にある人々が多くいた。一歩下手を踏めば纏めて蹂躙し、その命を奪ってしまい兼ねないほどに。

 

巨人としての肉体を解く傍らに見えた景色が、いやに胸を抉るようだった。

 




ギマイラ、かなり好きな怪獣なので盛りに盛ってしまった……
軽くネタバレですが次回以降も相当暴れます()

対して中須のかすみんは事案おじさんに粘着されてさあ大変。無事に収集つかなくなってますがあと二話で収まることを祈りましょう
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