トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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アニガサキ2期1話凄まじかったですね……
物語に引き込まれるという没入体験を久々に味わいました……今後が非常に楽しみです


4話 光の勇者

 

「涼香! おい涼香無事か!? 応答しろ!」

 

『…え、ええ……何とかね』

 

回避に殆どの神経を集中させつつ無線越しに墜とされた仲間の安否を問う。

一応は返ってきた声に安堵はするものの、その後に続いた情報はあまり喜ばしくはないもので。

 

『私は無事だけど……機体の方はもうダメ。右翼が完全にイカれちゃってる』

 

「クッソ……」

 

宙を駆け回る機体の中でこの事態の元凶たる巨獣を見下ろした。

ホークイージスが墜とされるだなんていつ以来のことだ。記憶の限りでは少なからず、結成から日の浅い時期に何度かあった程度だ。

 

そしてそれも経験不足からくるミスによるもの。純粋に怪獣に圧倒されて墜ちるのは……過去に例がなかった。

 

未央(みお)! アイツの分析はどこまで進んだ! なんなんだアイツは!」

 

『わかんないよ……火炎や雷ならまだしも、あの腕から打ってくる光の刃に関してはどんなメカニズムなのか……』

 

E.G.I.S.の誇るマッドサイエンティストでさえも弱音を伴って匙を投げるレベル……それだけの相手ということか。

 

ただ普通の怪獣ではないことは自分でもよくわかる。通常怪獣の持つ攻撃性能とは身を守るために備わった防御機能であるが、この個体のそれは聊か常軌を逸している。

 

これはまるで、戦うためだけに生み出されたかのような―――、

 

『先輩! 怪獣の棘が光出しててなんかヤバそうです!』

 

「まだあんのかよ……!」

 

地上部隊の後輩から警告を受けるが―――時すでに遅し。

気付けば奴の背後より射出された無数の棘の雨が降り注ぎ、逃げ切ろうとターボを掛けたホークイージスのエンジンを貫通した。

 

「くっ……そおぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」

 

推進力を失い、煙を引いて墜ちてゆく機体の中で慟哭に近い声を上げる。

脱出の瞬間に見た奴の目線は、人々の集中する広場の方へと向けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ……」

 

動揺が立ち込めた。

一機のみならず二機も……出撃したホークイージスが全て撃墜されるなど過去に例のない事態だ。

 

『ッッッ――――――!』

 

目障りなハエを撃ち落とし勝利の余韻にでも浸っているのか、一際大きい咆哮を上げたヘルベロスが次に照準に捉えたのは―――雄牙達のいる避難所。

 

一歩、また一歩と迫ってくる光景は、人々に久しく忘れていた()()()怪獣の恐怖を思い起こさせる。

 

「に、逃げろ……!」

 

「逃げるってどこにだよ!」

 

「いいから離れるんだよ! ここにいたら殺される!」

 

途端に流れを作って逃げ喚く人々。その声に反応したのか、ヘルベロスは更にその進行速度を上げる。

 

「助けて……ウルトラマン……!」

 

「ッ……!」

 

何処からした声かはわからない。けれど確かにその声は雄牙の耳朶を叩いた。

 

かつて怪獣の恐怖から人々を守った巨人……その彼を再び呼び求める声だ。

 

そしてその声に応えるチケットを、雄牙は手にしている。

 

『……行こう、雄牙』

 

「……やらない」

 

『意地張ってる場合か! ここで俺達が戦わなかったら大勢人が死ぬんだぞ! 侑も、歩夢も……お前だって―――』

 

「ヒーロー面してんじゃねぇッ!」

 

捲し立てるタイガの言葉を、声を荒げることで遮った。

 

「何が英雄だ……何がウルトラマンだ…………本当に助けて欲しい時に、来てすらくれないくせに……!」

 

『雄牙……?』

 

繋がらない問答にタイガに混乱が走るのがわかった。

 

わかっている。タイガがあの巨人ではないことくらい。わかってる。タイガの言っていることは正しい。それを雄牙に巣食う感情が認めようとしていないだけだということも。

 

タイガに対する拒絶感がこの数週間で殆ど無くなっていたのも事実だ。実際に触れてみるウルトラマンは、思っていたよりもずっと身近なものに感じた。

 

けど、それでも、その力だけは。

 

英雄と持て囃されるウルトラマンの力……それだけは、今なお雄牙の心は受け入れようとしない。

 

『……お前が俺の力を拒絶するのは、過去にウルトラマンに助けて貰えなかったからか?』

 

「っ……」

 

少しの間を置き、タイガが雄牙の核心を突く。

図星か。短く零した後に彼は続けた。

 

『……悪かったな、お前の心情も知らずに。そりゃあ、そんなのと一緒に戦ってくれって言われても、拒むよな……うん。当たり前だ』

 

瀬良雄牙という一人の人間を理解する手段とするように、タイガは連ねる言葉一つ一つを、噛み締めるように語る。

その様子には何か……シンパシーにも近い感情が含まれているようにも思えた。

 

『けどな雄牙。今俺達が戦わなかったら、大勢の人が傷付く。過去にお前が感じたような想いを、もっと多くの人間に与えることになるんだ』

 

「ッ……!」

 

紅蓮の記憶が蘇る。

全てを奪う炎の中で救いを求め、ただただ泣き叫ぶことしか出来なかった、破滅の記憶。

 

『無理にとは言わない。お前がこの先も俺を信じられなくても、共に戦うことを拒絶しても、俺はお前の意志を尊重する』

 

その痛みを分かち合い、寄り添うような声音がいつかの傷を優しく撫でた。

けれどそれだけじゃ前には進めない。そう言うように、タイガは力強く問いかけた。

 

『でも今は、せめて今だけは……俺を、ウルトラマンの力を信じてくれないか?』

 

目を閉じ、次の瞬間には出さなくてはいけない答えを模索する。

 

何かに助けを求める声は、いつもその何かに届くとは限らない。記憶の中で叫ぶ、幼き日の己だってそうだ。

 

でも今は違う。その声は雄牙に届いている。

 

呼び声があるのを知りつつ、それに応える力があるのにも関わらず、手を伸ばさないでいれば今度は雄牙自身が、かつての自分のような想いを誰かに植え付けることとなる。

 

それだけは……そんなことだけは絶対にしたくなかった。

 

 

 

「……わかったよ」

 

再度目を開いた頃……葛藤は一つの答えとなり、この身体を動かした。

 

『へへっ……そう来なくっちゃな!』

 

タイガの力が宿り、人の限界を超えた速度で駆け出した雄牙の向かう先は逃げ惑う人々の流れとは逆―――ヘルベロスの方向だ。

 

『やり方、教えたよな。俺とお前でアイツを倒すんだ』

 

「……ああ」

 

 

《カモン!》

 

 

やがてその姿を目前とした時、右腕に出現した手甲―――タイガスパークのレバーを引く。

 

軌跡のような光が舞うと共に現れたのはあのアクセサリーだ。タイガと出逢ったあの日、変身を拒絶し放り投げたアクセサリー。今度はそれをしっかりと掴み取った。

 

『さあ行くぞ雄牙! 叫べ―――俺の名を!』

 

「光の勇者……タイガ!」

 

初めて彼の名を呼んだ。

 

怪獣に立ち向かおうとしている。それもあろうことか、あのウルトラマンの力を使って。

 

 

「『バディィィ…………」』

 

 

少なからず数週間前には想像すらしていなかった事態に妙な感覚を覚えつつ、今は眼前の脅威を取り除くべく、強くアクセサリーを握った右腕を天へ突き上げた。

 

 

 

「『ゴ―――ッッッ!!」』

 

 

 

包み込むように光の柱が上がり、その中で自らの肉体が別のものへと構築されていく。

 

より大きく、より力強く。溢れ出すエネルギーを感じ取りながら―――雄牙は光の巨人へと姿を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

《ウルトラマンタイガ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シュアッ!』

 

閃光が駆け抜け、何か巨大なものが着地する音が街に轟く。

今度はなんだ。恐怖に疲弊しきった人々が見上げた先で全貌を露わにしたのは、赤と銀の巨人。

 

それが何であるかを大衆が理解した次の瞬間―――爆発的な歓声がお台場の街を揺らした。

 

 

 

 

 

「ウルトラマン……!」

 

「ウルトラマンだ……!」

 

「また来てくれたんだ……!」

 

「いけぇー! ウルトラマーンッ!」

 

 

 

向けられた喝采の中、その巨人はビルの窓ガラスに反射する自らの肉体を眺めた。

 

「これが、タイガ……」

 

特徴的な二本角や、肩から走る甲冑のような装甲。そして何より目を引くのは、光の巨人の象徴たる胸のランプ。

 

本当にウルトラマンに成っている……不可解な実感が雄牙を満たしていた。

 

『おいぼーっとしてんな雄牙! 来るぞ!』

 

タイガの声に本来の目的を思い出した折、いきなり突っ込んできたヘルベロスの頭突きに身体を大きく逸らす。

危なかった。もう少し反応が遅れていたらあの角で貫かれていたところだっただろう。

 

『集中するんだ。コイツは全身が武器……油断してるとやられるぞ』

 

「わかってるよ!」

 

情報を整理する。奴の用いる飛び道具はホークイージスに使用していた火炎弾、頭部からの稲妻、そして腕から放つ光の刃だ。

 

加えその身体は無数の棘を伴う装甲に覆われているため下手に近づくと串刺しにされかねない。ともかく最初は慎重に―――、

 

『テェェヤッ!』

 

一度距離を取ろうとする雄牙だったが、意志に反して巨人の肉体は前へと走る。

その行動がタイガによるものだと理解した時には既に、繰り出された飛び蹴りがヘルベロスを後方へと押し出していた。

 

「おい! 油断してるとやられるんじゃなかったのか?」

 

『だからと言って受け身になってたら何も変わらないだろ。攻撃しない限りは勝てない。基本だぞ』

 

「そんなこと言われてたって俺はお前と違って戦った経験なんてないんだよ!」

 

口論の間にヘルベロスは転倒していた巨体を起き上げ、反撃にと火炎弾を吐き出してくる。

 

迫るそれを防いだのはまたもタイガによる動作だった。手刀によって両断された火球は足元へと墜落、発破と共に再度奴へと仕掛けるスタートを切らせた。

 

『ッッ――――――!』

 

「うおぉッ!?」

 

だがヘルベロスの上げた遠吠えに思わず足を止める。立て続けに発生した稲妻を回避すべく雄牙は後方へ飛びのこうとするが、無我夢中で動かした身体は地上数十メートルの高度にまで至ってしまう。

 

「ちょっと力んだだけでこんな……?」

 

『当たり前だろ。人間の身体とは……違うんだ!』

 

タイガの意識が肉体を動かし、幾度かの宙返りを決めた後に再度右足をヘルベロスの胴へと沈めた。

 

今度は体勢を保った奴がとった行動は背中を天へ向けることだった。刹那に射出された刃の群れが雨の如くタイガへと殺到してくる。

 

「これヤバくないか!?」

 

『問題ない―――˝スワローバレット˝ッ!!』

 

飛び道具には飛び道具。十字に組まれた腕から放たれた光弾は次々と刃を撃ち落とし相殺してゆく。

 

それにより充満した白煙が視界を覆うが、タイガはお構いなしと言った様子で前へと突っ切り、渾身の体当たりをヘルベロスへとお見舞いした。

 

『よし……このまま―――』

 

『ッッッ――――――!!!』

 

「うっ―――!?」

 

流れを掴んだのか決めに掛かろうとするタイガだったが、それを阻んでしまったのはまたしても雄牙。

 

禍々しく発光を始めたヘルベロスの二本角に委縮し、突進中だった身体にブレーキを掛ける。そしてそのまま、先程よりも数倍太い雷撃がタイガへと放出され―――、

 

『ぐああぁぁッ……!!』

 

上がる火花は先の一撃がタイガに命中したことを意味していた。派手に吹き飛ばされた身体が傍らのビルを巻き込んで転倒する。

 

全方向から襲い掛かってくる痛みに顔を顰める中、細めた視界に映るのは追撃を仕掛けてくるヘルベロスの巨体だった。

 

『ぬぁ……がぁぁぁッ……!』

 

馬乗りに近い形で転倒したタイガの上を取ったヘルベロス。その腕に備わった巨大な刃が幾度となくタイガを切り刻んでゆく。

 

どうにか抜け出そうとするも、身動きを取ろうとする度に別の所作がそれを上塗りする。どうやら一体化した状態では雄牙とタイガの意志、その両方が肉体の動作に作用するらしい。

 

故に足並みが揃わない。経験不足が災いし消極的な雄牙に、先手必勝と言わんばかりのタイガ。正反対の思考を抱えたウルトラマンの肉体は一貫しない挙動を繰り返していた。

 

気を遣ってかタイガもあまり口は出してこないが……雄牙が足を引っ張っているのは明確だった。

 

『ッッッ――――――!!!』

 

何とかしなくては。打開策を探し必死に頭を働かせる雄牙の眼前でヘルベロスの刃が紅く煌めく。

 

「ぁ―――」

 

先程ホークイージスを撃墜した一撃。恐らく奴の攻撃手段の中で最も高い破壊力を持つそれをこの距離で喰らえば、如何にウルトラマンと言えどただでは済まないだろう。

 

最悪―――死ぬ。そんな絶望が脳裏を過った時だった。

 

 

「おおぉぉぉッ!!」

 

 

誰かの雄叫びに少し遅れて生じた小規模な爆発がヘルベロスの動作を妨害する。

 

「アンタ一人に任せっぱでいられるかよ……これでも喰らえ!」

 

「遥也さん……?」

 

防衛の象徴たる隊服を纏い、担いだ大砲を幾度となくぶっ放すのは見知った顔だった。

一瞬重なった視線には力強さがあった。俺はまだ諦めていない。宿る闘志がそう語っている。

 

「頑張れ! ウルトラマーン!」

 

「そうだ……負けるな!」

 

兄貴分の奮起に少しだけ頭が冷静さを取り戻した時、ずっと上がり続けていたウルトラマンへの声援がタイガへ届く。

 

見やったのは多くの人々が避難する広場。その中には自分の中で何物にも代えがたい二人の顔もあった。

 

ここで自分達が敗れればヘルベロスはあの避難場所に向かうだろう。そうなればきっとあの二人もただでは済まない。

 

 

 

 

だから―――負けたくない。その想いが雄牙の中で強く脈打った時、真の意味で、タイガと一つになった感覚がした。

 

 

 

 

『ッ……――!』

 

『今だ…!』

 

度重なる砲撃によってヘルベロスの上体が浮いたその隙を見逃さず、突き上げた両足で眼前の巨体を蹴り飛ばす。

 

即座に立ち上がるが、今度は距離を取ることはしなかった。必ず勝つ。その意志がタイガと重なり全身を突き動かす。

 

『うぉぉおおおッ!』

 

怒号を撒き散らすヘルベロスの突進を受け止め、押し返す。

足りないパワーは気合で補った。持てるもの全てをひり出せ……目の前の脅威へ、立ち向かうために。

 

『ッッ――――――!!』

 

『シャアァッ!』

 

横薙ぎに振るわれ、軌道上に在る数棟の建物を倒壊させながら猛進する奴の尾を掴み上げては力任せにぶん回した。数十万トンはあるであろう巨体が宙を舞う。

 

やがて完全にグロッキーになったヘルベロスを放り投げるのと、タイガの胸のランプが点滅し始めるのは同時だった。

 

『…話に聞いていた通りだな。やっぱりエネルギーの消耗が激しい』

 

「どういうことだ?」

 

『この星の太陽エネルギー量じゃ、俺達ウルトラマンの活動に必要なエネルギーを賄い切れないんだ……この姿で戦えるのは、せいぜい3分が限界ってとこだな』

 

言われてみて気付く。確かに先程に比べ若干の倦怠感や息苦しさがあった。

彼の言葉通り、活動限界が近い……そういうことなのだろう。

 

『これ以上時間は掛けていられない。一気に行くぞ雄牙!』

 

タイガの思考が伝播する。次で決めるという意志だ。

雄牙もまた同じ考えだ。同調した波導は身体を動かし、右腕を天へと突き上げた。

 

『˝ストリウム……』

 

タイガスパークを媒介に高まってゆく光が五体に走る。

全身を虹色に発色させるほどのエネルギーを、掲げた両腕を重ね、すぐさま腰元まで下ろし、動作を重ねることで身体に馴染ませてゆく。

 

 

『ブラスターーーー˝ッッッ!!!!』

 

 

最終的にT字に組まれた腕から放たれる爆発的な熱と光の奔流。それはヘルベロスへと直撃し、瞬く間に悉くを吹き飛ばしてゆく。

 

『ッッッ――――――!!!』

 

けたたましい断末魔を最後に、真後ろへ倒れ込んだ肉体は爆散。

勝利を告げる轟音を耳にした瞬間、疲れと共に安心感が溢れ出してくるのがわかった。

 

「ん……?」

 

黒煙の中からふわりと舞い上がった光をタイガが掴み取る。するとそれは指輪の形となって雄牙の手の中で転がった。

 

「なんだこれ……」

 

『さあ……? 見たところ今倒したヘルベロスの力が込められているみたいだが……」

 

ゲームで言うドロップアイテムのようなのものなのか。そんなことを考える雄牙の耳朶に次に触れたのは人々の歓喜の声だった。

 

「っ……!」

 

その声に応えるようにタイガが後方を振り返った時、視界に映り込むものがあった。

 

『とにかくやったな雄牙。この街を、人々を……俺とお前で守ったんだ』

 

「守っ、た……?」

 

絶え間なく送られる歓声の中、徐々に大きくなってゆく疑念。

人間達の密集する広場よりも手前。今しがた自分達の戦場となっていた街を見下ろしながら、己自身に問いかけるように雄牙は零した。

 

「…これで、守ったって言えるのか……?」

 

罅割れた道路。原型を留めないほどに崩壊した建物の数々。

焦げ臭さの漂うお台場の一角……その街並みは、完全に変わり果てた姿でそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見せたかったものとは、これのことか?」

 

背後から向けられた声に、男は指輪の姿に戻った愛犬を送り出しながら振り返る。

 

「おや、その様子ではご満足いただけなかったのかな?」

 

「満足も何も、なんだあの体たらくは。見るに耐えん。あの有様でウルトラマンだというのだから笑えるな」

 

視線の先で隠す気の無い不快感を醸すのは黒を纏った少女だった。細められた紅い眼光は射殺すように男を見据えている。

 

「やれやれ……君の求める暇潰しと言うのはいつも要求値が高い。応える私の身にもなって欲しいものだね」

 

「私をこの星に招いたのはお前だろう。だったらお前には私を退屈させない義務がある……その()()()()()とやらが完遂されるまでな」

 

「既に知られてしまってはもうサプライズではないけれどね……ただまあ、そこに関しては安心するといいさ。必ず君の渇きを満たすものになる」

 

「……だといいがな」

 

吹き付けた潮風が零された声を乗せ、少女の輪郭を虚空へと誘う。

舞い戻った孤独の中、男は薄ら寒い笑いを浮かべながらコキリと首を鳴らした。

 

「……さてと、一先ずファーストステップはクリアといったところかな?」

 

黒煙の上がる街の中、歓声の的となっている巨人を眺める。

 

「まだまだ先は長いんだ……これからの精進に期待させてもらうよ、タイガくん」

 

雲間から差した陽光が男を照らす。

伸びた影が形作る仮面の悪魔もまた、何かの到来を予感させるように嗤いを漏らしていた。

 

 




と、いう訳で初変身回となりました……これでもゼロライブよりは早いという
今作はゼロライブにはなかった「初めての変身による弊害」を強調してみました

今回は2代目主人公、瀬良雄牙についての解説となります

虹ヶ咲学園の普通科に通う、怪獣に対する知識が豊富な彼
そんな彼ですがウルトラマンの力には不信感を抱いており、その訳はタイガが言い当てた通り「過去にウルトラマンに助けて貰えなかった」ことが起因している……まあつまるところ「ウルトラマンサーガ」でのタイガ・ノゾムが近しいし実際モデルにしてます(ややこしい)

そんな苦々しい過去の詳細が明かされるのはまだ先のことになりそうですが……そんな彼も遂に変身しヘルベロスを撃破。ただしその結果には納得できていないようで…

そして最後に出てきた謎の少女は一体……?
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