トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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最早前回いつ更新したかも覚えてない。


52話 獣がきたる日

 

「α機、β機共に大気圏外への突入を確認」

 

「目標との距離47万メートル! 映像出ます!」

 

GAFA日本支部。そのオペレータールーム。暗闇に転倒した中継映像を、室内の誰もが緊迫した面持ちで見守った。

 

「……いよいよか」

 

自らもまた中央に座した執務席へと腰を下ろす。いつにない空気感が肌を刺した。

 

「未央ちゃん。改修の方は上手くいった?」

 

「勿論、天っ才なので! ……けどまあ、元が宇宙空間用の機体じゃないから……」

 

「フルスペックは発揮出来ないってことね。……でもこの短期間でよくやってくれたよ」

 

アナザークライシスやベリアル軍の工作が遺す影響もあり、この星の宇宙産業における遅れは深刻だ。

 

その制約から解放された直近の十年でさえも対怪獣装備にリソースが割かれ、終ぞ急速な発展を遂げることは無かった。

 

他宇宙の防衛隊には星間飛行技術を備え、地球外惑星の開拓を進めている場所もあると聞くが……この星の人類はその領域にすらいない。

 

故に、今目の前に迫っているような地球外からの危機に弱い。それは例の工作に加担していた自分の責任でもある。

 

だからこそこの道を選んだのだ。

 

「目標との距離40万! ˝天照(あまてらす)˝、射程に捉えました!」

 

「充填まで5、4、3、2、1……天照、照射!」

 

オペレーターの報告に遅れて画面を満たす閃光。直撃の証だ。

 

軍事衛星天照(あまてらす)。そのあまりの威力を理由に地上に対しての使用を禁じられた兵器。過去に封印した武装がこんな場面で役に立つとは思わなんだ。

 

間違いなくこの星の人類が持つ最強の兵器。だがこの程度では˝奴˝は―――、

 

「目標との距離38万……進行止まりません!」

 

「うそ……核でも比にならないような威力なんだけど!?」

 

止まらない。

 

白の世界から回復した映像の中で、目標物体は若干の減衰こそ見せたものの、変わらず侵攻を続けていた。

 

「落ち着け。そのためのホーク機だ」

 

しかし一度の不測で潰えるような作戦をこの組織が立てる訳もない。この男が容認する訳もない。

 

「海斗、涼香、聞こえるな? プラン変更だ。破壊ではなく目標自体の推進力を利用して地球から軌道を外す。未央、どの角度からならアレの軌道を変えられるか、弾き出せるな?」

 

「そっか……力の向きを変えてやれば……。まっかせて下さいっ!」

 

「だそうだ。その後は両機共に対象の後方に回り込んで待機。攻撃の合図はこちらから送る。デカいのをかましてやれ」

 

E.G.I.S.隊長、佐々倉正人。自分の知る限り、この男に勝る指揮統制力を持つ人間はこの国にはいない。

 

正しく防衛の要。立ち込めた暗雲が瞬く間に取り払われたのも偏に彼への信頼、そして優秀さの結果に他ならない。

 

「相変わらず冷静だね」

 

「そう、見えますか? これでもかなり緊張しています。月並みに表現するなら心臓が飛び出しそうだ」

 

「だったら猶更だよ。やっぱり君を選んでよかった……もう私要らないんじゃないかなこれ」

 

「いえ。まだまだ外の力を頼りにしてばかりです。……局長のお力添えが無ければ、こんな命令は出しませんよ」

 

「バレてたか……。皆には内緒でお願いね」

 

一体どこで尻尾を掴まれたのやら。

 

だがまあ、正人がそれを知っているのは都合がいいか。これで多少は足並みが揃うだろう。

 

「来たね……」

 

モニターの映像に奔る光の柱。

 

その内より姿を見せた巨人へ祈りを捧げるように、メトロン星人は地球人としての腕を組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でけぇ……」

 

地球は青かった、だとか。いつだかに月へ渡った宇宙飛行士の残した有名な言葉がある。

 

直径約13万キロメートルの球体が水を湛え、青々と緑が茂る様子。もしもこんな状況で無ければ昂貴も似たような情緒に浸っていたのだろうか。

 

そう、こんな状況で無ければ。

 

『これは……想像以上だな……』

 

タイタスの声音にも余裕がない。半信半疑であった自体が現実であると、ようやく頭が理解する。

 

ゆっくりと、殊更にゆっくりと地球に迫る巨大な塊……いや、大きすぎてそう錯覚しているだけだ。既に地球の引力の影響を受けているであろう巨影の速度は百や千の速度を遥かに逸している。

 

恐竜を時代の王座から引き摺り下ろした隕石を思わせる。正しく破滅の行進と言ったところか。

 

『正面から破壊出来るようなものには思えんな……む』

 

一先ずは防衛隊の出方を伺うべきか。

 

この場に至るまでの経緯からそう判断したタイタスが目線を散らすと、丁度岩塊の真後ろに回り込む形で接近するホークイージスが確認出来た。先行する二機に倣い、後方ではパラボラに紫電を集約させる衛星が隊列を成していた。

 

『成程な……。ならば、我々も続こう!』

 

意図を悟り、自らも目標へ向かって加速するタイタス。

 

最中にホークのパイロットと目が合う。互いに頷いた。

 

音のない宇宙空間で言葉は交わせない。だがこれまでの共闘で紡いだ信頼が突き進む意志を確かなものへとした。

 

『オオォォォッ!』

 

ホークイージスから射出されたレーザー砲に追従する速度で宙を翔け、着弾と共に拳を叩きこむ。

 

「っ……づァッ!?」

 

『この程度では動かんか……!』

 

稲妻のような痛みが拳から肘にかけてを襲った。亀裂でも走ったんじゃないか。なんて錯覚してしまうほどの痺れに、悟った。

 

大地を殴っているのと同じだ。その巨大さ、頑強さ、重量故に衝撃が伝わり切らず、殆どが反発してタイタスの腕へと還ってきたのだ。

 

重力や摩擦による抵抗が存在しない宇宙空間ですら微動だにしない質量。もしもこんなものが地球に落下すればと考えるだけで焦燥が疾走する。

 

『˝プラニウムバスター˝ッ!』

 

サイズにして体躯の大凡三倍。過剰なまでにエネルギーを込めた光球が表層を砕く。今度は僅かながらに軸をズラした感覚はあったが、本当に微々たるものだ。目標の軌道に至るまで繰り返すともなれば確実に枯渇するのが先だ。

 

これと同等以上の力を絶えず加え続ける方法ともなれば―――、

 

「コイツ……絶対ただの隕石じゃないな」

 

『ああ。でなければ我々に依頼など持ち掛けないだろう』

 

「……どうするよ」

 

問いつつ、右の拳を握って開く動作を反復する。痛み以外の感覚が遠い。一時的なものではあるだろうが、一連の所作で神経がマヒしたようだ。

 

とは言え、この時点で両者の弾き出した回答は合致していた。

 

「……ぶっ壊す必要はねぇんだろ? だったら無理矢理にでも押しのけちまえばいい」

 

『だが質量が質量だ。成功する保証はない。それに君の身体が無事で済むか……』

 

「他に方法もなきゃ時間もねぇならやるしかないだろ。……地球に落とすよかマシだ」

 

『……そうだな。君なら、そう答えるか』

 

数拍の沈黙の後。

 

『途中で音を上げても引き返さんぞ! いいな昂貴!』

 

「テメェこそなァ!」

 

一度距離を開けたタイタスは飛翔に加速を重ね、再び対象へと激突した。

 

「ッ……!」

 

身体中のありとあらゆる筋肉を駆動させ、推進力へと変える。

 

こちらから力を加えているはずなのにも関わらず、逆に身体が押し潰されているようだった。筋という筋が裂け、骨の軋む響きが伝う。

 

「ははっ……、きっ……ついなァッ!」

 

『だなッ……だが、少しずつ、軌道は変わっている』

 

小さくとも着実に変化は訪れている。確信を持った相方の声音を受け、昂貴もまた苦悶の中に笑みを作った。

 

疲れた。身体中が痛い。タイタスと出会う以前から振り返っても、これだけ肉体を酷使したのは初めてだ。この分では数日はマトモに動けないだろう。

 

正直、今回に関しては誤魔化し切れる自信はない。

 

……彼方はなんて言うだろうか。

 

心配されるだろうか。怒るだろうか。何となくだがどちらでもある気がした。何だっていい気がした。

 

刹那に瞬いた、先日の、何気ない団欒の記憶。

 

あの日常が守れたのなら、なんだっていい。

 

『「ウ……オオォォォォッッ!!』」

 

この時、両者の肉体がかつてないほどに際限なく同調を高めたことを二人はまだ知らない。されども発揮された膂力は巨岩を突き動かし、朧気だった未来を確信へと至らせた。

 

その、はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッッッ――――――……!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

確信に変わりつつある未来を否定したのは、前触れもなく奔った音の塊だった。

 

真空。宇宙空間において音が発生しないのは、空気という振動を伝える媒介が存在しないからだ。

 

ならば。だったら。

 

今この瞬間に全身を貫き、轟いたこの˝咆哮˝の正体はなんだ。

 

「なんっ……!?」

 

『なんだ……?』

 

把握する時間すらも与えぬままに、震源たる巨岩は表層に亀裂を走らせては破片を宙へと投げ出してゆく。

 

何かがいる。内部に。何かが。

 

理性の理解よりも早く本能が告げた危険信号。それすらもが遅かったと判明したのは、膨大な熱量が全身を包んだ後のことだった。

 

「ぁッ……」

 

視覚として捉えられたのは一瞬だ。融解した岩盤の奥から噴出した光の束が色鮮やかな世界を赤熱の中に焼き切った。

 

残ったのは肉体が塵芥へと変わる痛覚だけ。それすらも束の間の出来事であり、手放す間もなく焼失した意識もまた、灰となって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目標が熱線を放出ッ……!?」

 

驚嘆を隠さないオペレーターの報告に何度目かもわからない激震が走る。言葉以外の情報はない。現地とこの場を繋ぐ中継は白と黒の嵐に飲まれている。

 

「映像……回復します……」

 

十数秒経ち、ノイズの晴れた現状に更なる混乱が上乗せされる。

 

「う、ウルトラマンの反応消失っ……! α機β機も共に反応消失……交信もできません!」

 

「飲み込まれたか……!」

 

映像の途切れる寸前に何が起こったかは定かではない。だがモニターの中央に座した岩塊は様相が全てを物語っている。

 

原型を留めないほどに刻まれた崩壊と融解の跡は破滅的な爆発と高温の証に他ならない。

 

具体的な数値まではわからずとも、あれだけ巨大な岩塊が一瞬にして変形するほどだ。仮に直撃していれば塵も残るはずがない。

 

「これ……生体反応!? あの隕石の中から!?」

 

留まらない動揺の連鎖。

 

「中に何かいる!」

 

未央が声を張り上げたと同時に画面の中で巨岩が弾け飛ぶ。

 

飛来した岩片と粉塵の雨が中継衛星を襲撃し、亀裂に満ちる世界。

 

最早本来の機能を果たさなくなった映像の中で尚も存在を誇示したのは―――――猛り狂う、獣の眼光だった。

 

「ぇ……」

 

「怪獣、なの……?」

 

熱が下がる。

 

例えるなら蛇に睨まれた蛙。映像を介してのフィルターなどなんの意味もなかった。

 

ソイツが、そこに、いる。

 

ただそれだけの事実が生命としての本能に根元的な恐怖を発芽させる。

 

 

「海斗! 涼香! 聞こえるか!? 聞こえてるなら全速力で離脱しろッ!」

 

一瞬遅れ、恐怖と忘我の沈黙を佐々倉の一喝が切り裂いた。

 

「天照、並びに全サテライトレーザー照射準備! この機を逃すな……ぶっ放せッ!」

 

長の号令は自然と耳にした者達の身体を駆動させた。この瞬間に動かねばどんな未来が訪れるのか。佐々倉の迫力はそれを理解させるのに十分過ぎた。

 

今自分達が成すべきことを成し得、迫りくる脅威から逃れんがために務めを果たす。

 

「発射ァッ!」

 

解き放たれた光の束が再び炸裂を見せたのは˝奴˝が姿を見せてから数十秒のことだった。

 

外殻として纏っていた隕石が砕け、著しく質量を下げた巨獣はその全貌を伺わせないままに光の尾を引いて小さくなってゆく。

 

やがて極光は収まり、表面上の平穏が舞い戻る。

 

「対象の軌道の変動を確認! この軌道で進めば……八時間後に木星へ到達します!」

 

「一先ず……か」

 

結果として、地球に迫っていたそれを退けることには成功した。

 

何かが解決した訳じゃないが、目先の危機は乗り越えた。束の間の安堵が佐々倉の顔にも浮かぶ。

 

「フェーズ5発令! 各国部隊への伝達と情報の共有を急げ! 遥也は俺とオデッセイ号に搭乗してホーク機の捜索及び回収、未央は解析の準備だ!」

 

「オォス!」

 

繰り返すが解決した訳じゃない。一呼吸を置き、休む間もなく事態は次の段階へ移行する。

 

「……行かなきゃ」

 

気付けば蚊帳の外に置かれた気分でいたメトロンもまた、駆り立てられるようにして為すべきことへと足を向けた。

 

 




彼方への想いを自覚し、脅威へ挑んだ昂貴くんですが無事玉砕……E.G.I.S.の活躍で一時的には退けましたがまだまだ油断できない状況です。

軽くネタバレですが、隕石の中にいる"奴"はゼロライブ以来のオリジナル怪獣だったりします。自分で言うのもアレですが最終回とか劇場版クラスのを持ってきたつもりです。

……そんなもん考えるのに時間かけてねぇでさっさと話を進めろって感じですが()

ダラダラしてる間にアニガサキが完結しちまいそうなので気張ります。
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