トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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永久hors、9枚買ったにょ……
どうか、どうか現地を私めに……!


55話 これでいい

「アオイ、ちゃん……?」

 

直前の賑わいがそのまま悲鳴の渦中へと変換された街で、彼方は茫然と目の前の怪獣を見上げていた。

 

友達が変貌した、友達の面影なんてない破壊の獣。受け入れ難い現実が形となって日常を踏み躙っている。

 

「へぇ……これがメモールか。中々に醜悪な姿じゃないか」

 

嗤っているのはただ一人。さながら喜劇でも鑑賞するかのように愉快で不快な笑みを張り付けた男だけだ。

 

「……なんで、こんなことするの?」

 

彼方はこの男を知っている、気がした。

 

直接の記憶はないが確信があった。あの日アオイが消えた理由は……この男にある。

 

「少し認識が違うな。私はあくまでも可能性を提供したに過ぎない。この結末へと導いたのは紛れもない彼女……いや、今は彼等とも言った方が正しいか」

 

胸の内で疼く感情がなんなのかわからない。怒っているのか悲しんでいるのか。どっちでもあった。強いて言うのなら前者が勝っていた。

 

「おいおい。そんな怖い顔しないでくれよ。むしろ感謝して欲しいくらいだね。死んだはずのオトモダチと、こうして再び巡り合わせてあげたんだから」

 

「……こんなこと、望んでないよ」

 

「君はそうかもしれないね。でも彼女は違った」

 

爆発音がした。街が壊れる振動を作り出す怪獣を見上げて男は続ける。

 

「彼女は死してなお君という偶像が生み出す眩しさに焦がれ、求め続けていた。身に余る羨望に身を焼かれ、愚かしくもあるべき己を逸してしまった……今しがたの行動は、紛れもないその証明だ」

 

「違う……愚かな訳ない。アオイちゃんの在り方を、あなたが決めないでよ」

 

「だが君に出会わなければ、彼女が自らの役割を放棄することもなかった。命を落とすこともなかった。そうだろう?」

 

「っ……。それ、は……」

 

奥底で刺さり続けていた痛みを、奴は玩具箱をひっくり返す子供のように容易くぶちまけて見せる。

 

「ははっ、これは酷い。盲目的だとは思っていたが想像以上に重傷だな」

 

反論の止まった彼方へ、男は追い打ちをかけるように捲し立てる。

 

「君は今望んでいないと言ったね。まさしくその通りだよ。君は彼女の在り方が気に食わなかったからこそ、その道を君が望む方向へと捻じ曲げた。ただそれだけなんだよ」

 

世界が歪む感覚がした。二の足で踏む地面ですら覚束なくなるような眩暈がする。

 

「おっと失礼。レディにそんな顔をさせるつもりはなかった……申し訳ない」

 

蒼白になった彼方の顔を満足げに眺め、今度こそ男は姿を消した。

 

「ただ一つ、覚えておいてくれ。君が善意で正義だと思っているそれは、初戦理想の押し付けに過ぎないということを。友を一人破滅に追い込んだ者としてせめて、胸に留めておいて欲しい」

 

消し難い傷跡と、残響を刻んだまま。

 

一人になった。怪しげで危険な男からは解放された。なのに、その場から動くことが出来ない。

 

「彼方ちゃんのせい……?」

 

空に昇るか細い自責は、沸き起こる轟音の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『タアァッ!』

 

『セエェェヤッ!!』

 

赤い閃光と蒼の疾風が舞い降り、進撃する怪獣の行く手を阻む。

 

タイガにフーマ。両者の初撃を受けた怪獣―――メモールはけたたましい悲鳴と共に横転する。

 

『珍妙なカッコした怪獣だな……。タイガ、雄牙、知ってっか?』

 

『いや、俺達も知らない。宇宙怪獣……なのか?』

 

「にしては色々とおかしい気がするけど……」

 

定期ライブの終演後、急に飛び出していったという彼方を探しに来てみれば見計らったかのようにコイツが出現した。

 

シルエットとしては一般的な二足歩行型だが、三本指に備わった吸盤やピエロの靴を思わせる赤い脚部など、所々に特殊な形状が見られる。

 

 

―――――うろこ怪獣(カイジュウ) メモール

 

 

『ッッッ――――――!!』

 

二体の巨人の姿を視認するや否や、メモールは炎を吐き散らしながら突進を仕掛けてくる。

 

それ自体は容易く回避に成功するが、標的を失った焔は周辺の建物へと着火。瞬く間に燃え広がっては一帯を紅く照らした。

 

「火炎放射……? いや、この手足で地底怪獣な訳……」

 

「燃え広がるのが早い……このままじゃ大火事になる。フーマ!」

 

『わーってるよ。ちゃっちゃと片付けりゃいいんだろ!』

 

次に仕掛けたのはフーマだった。

 

突風を纏い一気に肉薄。多段蹴り、裏拳、手刀。流れるように繰り出される連撃がメモールを絡め取る。

 

『ッッッ――――――!』

 

『˝ウルトラフリーザー˝ッ!』

 

フーマを振り払おうと膨張を始めた熱源へタイガの冷気が着弾する。瞬間に蒸発、そして気化。行き場を失ったエネルギーがメモールの口内で暴発した。

 

『ついでにその辺消火しとけタイガ!』

 

晒した隙を逃すフーマじゃない。姿勢を下げ、切り裂く一点へと狙いを定める。

 

『˝光波剣……大蛇(オロチ)˝ッ!』

 

即座に複数の光刃を連ならせ、右腕の先に着装したのは長剣だった。横回転の勢いに乗り、鞭の如く撓りを聞かせた一閃が奔る。

 

『ッッッ――――――!』

 

『ッと。タイガ!』

 

『おう!』

 

横薙ぎに振るわれた尻尾を回避したフーマの跳躍と共にスイッチ。懐に転がり込んだタイガの右ストレートが下腹部へと突き刺さる。

 

立て続けに左右の拳でお見舞いしたラッシュで一発一発、着実にメモールの体力を削ってゆく。

 

「……なんなんだコイツ」

 

状況は悪くない。火の燃え広がりは止めたし、避難も間に合いつつある。むしろ良好なぐらいだ。

 

それでも、雄牙の胸で燻る違和感は否定し難かった。

 

「……なにか引っかかるんですか?」

 

「なんもかんも。……色々と嚙み合わない」

 

口から火炎を吐き出すのは主に地底怪獣に備わった能力だ。これは地底の高温高圧に耐えるための器官による副次的な能力だ。しかしこの怪獣はとてもじゃないが地中に潜めるような形状じゃない。

 

では宇宙怪獣なのか、という話だが、これは火炎放射能力が否定する。燃焼する媒介のない宇宙空間でそんな能力を発展させる理由がないからだ。

 

コイツの由来がどこにあるのかがわからない。両立し得ない特性がパッチワークのように絡み合い、気味の悪い疑念を生んでいた。

 

「……聞き出しとくんだったな」

 

頭を過る可能性に胸がざわつく。まだ思い当たる節があった。

 

昂貴とタイタス、涼香達が衛星軌道上で遭遇したという謎の怪獣。同じ個体とは考えずらいが、関係があるのならば、なんというか、嫌な予感がする。

 

整然とした理屈がある訳じゃない。勘としか言いようがない感覚。

 

『……メンドクセェ話は一旦抜きだ。ブッ倒すことに変わりはねぇんだろ?』

 

「……うん。そうだな」

 

既に手裏剣の生成を始めていたフーマに倣い、タイガもチャージを開始する。

 

フーマの言う通りだ。放っておけば被害が拡大する以上ここで倒す他に選択肢はない。

 

『˝ストリウムブラスター˝ッ!』

 

『˝極星光波手裏剣˝ッ!』

 

七色の光線と荒ぶる刃が宙を駆け、メモールへと迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その、少し前の話。

 

「彼方……?」

 

小雨だった空模様が勢いを増してきた頃。

 

逃げ惑う人々の波を掻き分け、戦いの渦中へと飛び込んだ昂貴は想定外の人物との遭遇を果す。

 

「コウ君……」

 

人の限界を逸した速度で駆け込んだ昂貴に、彼方は吹き荒ぶ灰塵で煤こけた顔を向けた。今にも泣き出しそうな顔だった。

 

「アオイちゃんが……」

 

「はぁ……?」

 

状況と繋がらない訴えに一瞬は呆ける昂貴だったが、すぐにその意味を理解して戦慄する。

 

「まさか……」

 

当該の人物に当たる存在は、この場において一つしか有り得ない。想定していた最悪を別の形で襲来した最悪がぶち壊してくる音がした。

 

どうして失念していた。

 

どうして悪意を以て害を為す者がドルズ星人だとばかり思い込んでいた。

 

「ト、レギアぁッ……!」

 

誰よりもこの状況を好み、残虐な悪戯を施していった悪魔の名を最大の怨嗟を込めて吐き捨てた。矛先は奴に対してのものだけではなかった。

 

『オオォォ……!』

 

「やめてぇっ……!」

 

こうしている魔にも戦況は加速し、タイガ達はメモールを仕留めるべく光線のチャージを開始してしまう。彼方の悲痛な叫びは他でもないメモールの咆哮によってかき消された。

 

「やめてっ……やめてよぉ……! アオイちゃんが死んじゃう……」

 

誰にも届かない孤独な叫びが昂貴だけを絶えず打ち付けた。

 

どうしてこうなった。誰がこの結末を招いた。幾多にも絡み合った末に辿り着いた理不尽に対する憤怒と絶望が廻る、巡る。

 

何を憎めばいい。誰を恨めばいい。

 

ドルズ星人か? トレギアか?

 

そもそもこの状況は……昂貴がウルトラマンであることを選んだが故の悲劇ではないのか。

 

「ッ……!」

 

瞬間、何かが切れる音がする。

 

 

―――そうだ。俺の成すべきことは……何も変わってないだろ。

 

 

やがて弾き出した決断のままに、昂貴は巨影へと向かって全力で駆け出した。

 

『待てッ……昂貴ッ!』

 

既に待機状態だったタイガスパークの宿る右手でキーホルダーを握る。

 

降り頻る雨を、その曇天ごと穿つように掲げる。

 

「うおおぉぉぉぉぉおおおぉぉッッ!!!」

 

輝きを宿した手甲が眩い光を広げ、昂貴の身体を巨人の姿へと変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドルズ星人の侵攻が再開された。

 

そうメトロンから報せを受けた瞬間から、こうなる運命は決められていたのかもしれない。

 

あの時の改造人間と同じ電磁波を放つ怪獣。その正体をアイツ等は知らない。それを打ち倒すことが何を意味するのかをアイツ等は知る由もない。だから走ったんだろ。

 

結果としてもっと重いものを背負う羽目になってしまった。

 

でもこれでいい。

 

汚れるのは、俺だけでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体感にして一瞬。刹那にも満たない間に起きた出来事を、彼方は処理し切れずにいた。

 

「コウ、くん……?」

 

怪獣に変貌したアオイへと放たれたウルトラマンの光線を自らの肉体で防いだのも、また

ウルトラマンだった。凄まじく膨れ上がった筋肉を赤と黒に宿す、あの日彼方を助けてくれたウルトラマン。

 

『ウ、アァ……!』

 

焦げ付いた黒煙を昇らせて膝を付いた巨人は、微かに顔を上げる。悲しげな光を宿した大きな瞳が彼方を映した。

 

そして、

 

『ヌアアァァァッッ!!』

 

立ち上がり様、振り返り様に弧を描いた拳が光球を殴り飛ばし……アオイの胸を、打ち抜いた。

 

「え……」

 

末後の悲鳴すら上げず、真後ろに倒れこんだアオイをウルトラマンは静かに見下ろしていた。その背後では赤と青の巨人達が困惑した様子で互いの顔を見合わせている。

 

「なん、でぇ……」

 

雨音が強くなる。

 

空から降り注ぐ冷たい涙が、絶命したアオイの身体を激しく打ち付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――零れ落ちたのは涙だけではなかった。

 

「え……?」

 

行き場のない感情そのものを表したかのような˝声˝に呼ばれ、仰いだ空は厚い雲で覆われている。

 

灰色の向こう側。複数に渡る爆発音がソレの接近を告げていた。

 

「うっ……あぁっ……!」

 

雲の一点が赤熱を帯びた瞬間、曇天を穿ったソレは地表へと着弾する。発生した衝撃波と地鳴りが世界を揺らした。容易く運ばれた小さな身体が何度も跳ねては転がる。

 

 

『ッッッッ―――――――!!!!』

 

 

舞い上がった粉塵を吹き飛ばす咆哮が轟き、直径数百メートルに渡るクレーターの跡が露わになる。

 

その震源地。何もかもが原型を留めていない破壊の坩堝にソイツは在ったんだ。

 

予感させるものは紛れもない……終わりだった。

 




ドルズ星人が出るならそりゃメモールも出るんですよねぇ……。
タロウ本編では倒されず宇宙空間に放り投げられたメモールですが、今作では昂貴くんの手によってガッツリ絶命。更にそれを彼方に目撃されてしまいました。

そして忘れた頃にやって来てしまったのは宇宙空間でタイタスを撃墜したアイツ。実はオリジナルの怪獣だったりします。

収まる気配のない大波乱は……一体どこへ向かっていくのでしょうか。
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