トライ×ライブ! ~Rainbow Generations~   作:がじゃまる

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書くことが無いのでAqoursの新譜、「なんどだって約束!」が大変良かったと書き記しておきます

絶対また東京ドームに行くんだ……!


8話 咎人の鎖

 

「じゃあ、行ってくるねお姉ちゃん。昂貴さんも」

 

「おう、お前もな」

 

「行ってらっしゃ~い。頑張ってねぇ遥ちゃ~ん!」

 

タイタスと出逢って数日後の朝。いつも通り登校のために玄関を出たところでお隣の住民でもある幼馴染姉妹と遭遇、自然な流れでその姉の方と通学を開始する。

 

「……遥も向こうのスクールアイドル部に入ったんだったよな」

 

「うん。もうそろそろステージに立てるみたいだよ。あの東雲で、まだ入学したばっかりの一年生なのに凄いよぉ~! さっすが遥ちゃ~ん!」

 

「へー、やるなアイツ」

 

「でしょでしょ~? だから今日はお祝い! 放課後一緒にお買い物して、遥ちゃんの好きなもの作ってあげるんだ~!」

 

彼方の妹、近江遥(このえはるか)が所属する東雲(しののめ)高校スクールアイドル部はここらではかなり有名なグループである。そこで妹が頭角を示しているともなれば、彼女を溺愛している彼方としては嬉しい限りだろう。

 

最も、その姉の方は今まともに活動出来ない状態にあるのだが……、

 

「……お前はどうなんだよ。他の連中とは話してるのか? 同好会の」

 

「う~ん……エマちゃんとくらいかなぁ……。しずくちゃんは演劇部の方に集中してるみたいだし、せつ菜ちゃんはそもそも連絡もつかないから」

 

「中須は……まあどうせアイツは元気にやってるか」

 

部長であった優木せつ菜によって同好会の解散が告げられて以降、何とかまた彼方に活動の機会を作ってやれないかと画策しているが……元メンバーがその有様となれば助力を求めるのは難しいか。

 

『ふむ……スクールアイドルか。話には聞いていたが、こんなにも早く触れることになろうとはな』

 

(…? 知ってんのか?)

 

慣れてきたテレパシーで体内の彼と会話を交わす。

タイタスが地球についてそれなりの知識を持っていることはこの数日でわかっている。だがそれが日本……その高校生の部活動にまで及んでいるとは少々意外だった。

 

『実は任務を命じられた際、以前この地球に滞在した光の国のウルトラマンに話を伺う機会があってな。その際に彼から伝え聞いたのだ。と言っても、あまり詳しい訳ではないがな』

 

(へぇ……、面白い話もあるモンだ)

 

タイタスが話したというウルトラマンが10年前この星で戦い抜いた˝彼˝であるかはわからない。何せあの1年間で確認されたウルトラマンの数は20体に迫る。

 

そう思うとたかだか2人のウルトラマンが滞在しているだけの現状だと可愛いものだった。

 

『して、そのスクールアイドルのことで悩んでいるようだったが、何かあったのか?』

 

(あー…、それなんだがな……)

 

そう言えばまだ説明していなかったかと、タイタスに彼方の置かれた現状について伝える。

 

『成程な……確かにそれは難儀なものだ』

 

作られた思念体が首肯する。

本来巨人であるはずの彼が小人サイズで目の前にいるというのも不思議な感覚だがこちらも最早慣れた。

 

『理由が理由な手前こんな提案をするのも不躾ではあるが……再びその同好会とやらを結成すれば良いのではないのか?』

 

(それが出来れば苦労しないんだがな)

 

確かにタイタスの言う通りまた同好会を設立させるのが一番手っ取り早いのだろうが、それが承認されるためには最低でも部員が5人必要だ。実行に移すとしても、昂貴と彼方の2人では足りない。

 

「……あ」

 

元同好会の面々も頼れない中、何か既定の人数を集める手段はないかと画策した脳裏に浮かんだ顔。

 

そう言えば、先日優木せつ菜を訪ねてきた面々の人数は丁度―――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「瀬良ってのはいるか?」

 

「え……?」

 

それは穏やかな昼下がりのことだった。

例えるならば黒船の襲来。かつて鎖国中であった日本に来訪し当時の人々に衝撃を与えたペリー提督の如く、平穏な時の流れていた昼休みの教室にその男は来訪したのだ。

 

「ちょっと話がある。ツラ貸してくれねぇか?」

 

学内でもちょっとした有名人である強面の先輩を前に震撼する教室の中、指名されたのはまさかの雄牙。

 

一体何の用だろうか。クラスメイトからの注視にむず痒い感覚を覚えながらその将来に応じる。

 

「悪いな、急に呼び出して」

 

「…いやまあ、どうせ暇だったからいいですけど……どこで名前知ったんですか?」

 

「その辺の奴に特徴話して聞き出した……そういやこの前一緒にいた奴等はいないのか?」

 

「……クラス違うんで」

 

「ふぅん……まあいいか。一人いりゃ話するには十分だしな」

 

風貌も相まってスライドドアの枠に凭れ掛かる様は不良そのものだった。それもあり口振りから一瞬侑達目当てかと身構えるが、その心配はなさそうで安堵する。

 

「単刀直入に言う。お前等三人、同好会に入ってくれねぇか?」

 

「え……? いやこの前廃部になったって自分で……」

 

「だから作り直そうとしてんだろうが。同好会の設立には最低でも5人部員が必要なんだが、今は俺と俺の幼馴染合わせて2人しかいなくてな。それでお前等3人に加わって貰えると助かるんだが……」

 

成程。どうやら先日部室の前で鉢合わせたことで雄牙達もスクールアイドルに興味があるものと思われてしまったらしい。

 

行動としては納得できる。確かに同好会に勧誘するのなら、その活動内容に関心を持つ者に声を掛けるのが一番だろう。

 

だが―――、

 

「……ちょっと、アイツ等の意見聞いてからでもいいですか?」

 

 

***

 

 

「―――ってことがあったんだが……お前等どうする?」

 

放課後。

HRの終了と共に侑達の教室へ駆け込んだ雄牙は真っ先に昼休みの出来事を伝える。

 

「まあ勿論、お前等にその気がなければそれで終わる話ではあるんだけど……」

 

「でも同好会が復活したら、せつ菜ちゃんが戻ってくるかもしれないよね……?」

 

案の定な展開に眉を寄せた。

 

同好会が無くなってしまったからせつ菜はスクールアイドルを辞めざるを得なくなってしまったのではないか。あの日以降、侑が度々口にしていることだった。

 

「やめておいた方がいいと思うよ~」

 

それに侑が惹かれているのは優木せつ菜のみならずスクールアイドルそのものだ。どう転ぶにしろ、同好会が復活するのは彼女にとっても魅力的な話だろう。

 

彼女はどんな判断をするのか。教室内から声が掛かったのは、その答えを待っていた時だった。

 

「その先輩って南雲先輩でしょ? あんまりいい噂聞かないから、関わらないに越したことはないと思うよ?」

 

割って入ってきたのは一人の女子生徒。侑達のクラスメイトだろうか、如何にも噂好きと言った様子の彼女は井戸端会議に興じる主婦のノリで続ける。

 

「私詳しくは知らないんだけどさ、なんでその南雲先輩?はそんな風に噂されてるの?」

 

「あれ? 侑ちゃん知らないの?」

 

「……殺人で捕まってるって話があるんだよ、あの先輩のお父さん」

 

口にされた事実は雄牙も知り得ていたことだ。先程クラスメイトの大半が彼の来訪に身構えていたのもそれに起因する。

 

「でも噂なんだよね? それだけで判断するのは……」

 

「でも考えてみなよ。そんな噂のある人が所属してる同好会が廃部になった……なんかあると思わない?」

 

「…何かって?」

 

「……あんま大声で言うようなことじゃないけど、例えばあの人が同好会のメンバーに手を出したのが原因で解散になった……っていう線もあり得るでしょ?」

 

侑が優木せつ菜やスクールアイドルに興味を持っている……そこに目を付けて声を掛けてきたのは少なからず事実だ。

 

雄牙自身あの先輩がそういう人間に見えている訳ではないが、それでも何かしらの不破が原因で同好会に亀裂が入ったことは事実だ。どうであれ警戒するに越したことは無い。

 

「高咲さん達可愛いから目ぇ付けられちゃったのかもねぇ~、そんな訳だから気を付けてね」

 

言うだけ言ってその女生徒は走り去っていく。

結果として残されたのは残響と沈黙。重ね合わせた視線だけが、各々の意志を物語っているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ……」

 

返答を聞こうと再度足を運んだ普通科2年の教室……だったのだが無駄足のようだ。

余計なことを口走っていった女生徒を恨めし気に睨みつつ、昂貴は踵を返して学外へと向かった。

 

『待て昂貴。今の少女の話はどういうことだ』

 

(……聞いての通りだよ。俺の親父は人殺し……それだけの話だ)

 

足早に廊下を進む最中、脳裏に思い起こされるのはいつかの記憶。

 

あれは小学生の頃だったか。最早よくは覚えていないが、突然来訪してきた警察官に事を告げられ泣き崩れる母親の顔だけは朧気に記憶の中で瞬いている。

 

揉め事の末だったらしい。向こうは酒を飲んでいたという話だったが、結果として手を上げ命を奪ったのは父親……当然本人は刑務所へとぶち込まれ、残された家族を待ち構えていたのも苦難と軽蔑の日々だった。

 

『そうか…………すまない。あまり気の利く言葉が浮かばなくてな』

 

(お前が気に病むようなことでもないだろ。全部ウチの問題だ)

 

纏った空気感はタイタスにも伝播してしまう。言った通り彼は関係ないというのにお人好しな奴だ。

 

『是正……すべきではないのか? 父親の成したことで君自身までもが悪く言われるなどあってはならないことだ』

 

(…今更どうにかなるようなモンじゃないんでな。どうせあと1年で卒業なんだ。変えるよりそっちの方が早い)

 

『しかしだな……』

 

(いいんだよ、別に。俺は受け入れてる)

 

嘘をついた。一つだけ容認できないことがある。

 

別に自分が思われ、どう言われようが今更気に留めるようなことでもない。これでも大分マシになった方なのだ。それこそ事件が起きた数年の間に比べればどうということはない。

 

ただ……自分のせいで彼方が不利益を被ること。それだけは耐え難かった。

 

(周りがお前や彼方みたいな奴ならこうはならなかったんだろうな……。いや、そもそもな問題は親父か……恵まれねぇ)

 

近江家の面々だけは変わらず南雲家に接してくれた。彼方だけは変わらず、ずっと昂貴の隣にいてくれた。そんな彼女にどれだけ救われてきたか。

 

だから少しでも返したいというのに……現実は思うようにはいかない。昂貴に貼られたレッテルが彼方の邪魔をしてばかりだ。

 

「またイチから考え直しだな…………クソが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまらん」

 

怪獣災害によって倒壊したビル、その工事現場に乾いた声が反響する。

暗幕によって日光が遮られた空間の中、少女の不満を耳にした男は額を抑え頭を垂れた。

 

「まあそう言わないでくれ。何事も順序というものがあるんだよ」

 

「そんなものは知らん。私が退屈している、それが問題だ」

 

有無を言わさぬ圧を醸し紅く灯る少女の双眸。

そんな彼女に対し男もまた何かを秘めた瞳を灯らせ、それでいて降参するように両手を上げた。

 

「仕方ないか……ではこちらを―――」

 

「いや待て、今度は私にやらせろ」

 

「ほう……?」

 

名乗り出た少女の手に握られたのは半扇状の形状を持つアイテム。漂う光の芳香を嗅ぎ取った男は興味深そうに首を傾げた。

 

「丁度光の国から拝借してきたコイツを試したかったところでもあるしな………暇潰しにはいい機会だ」

 

差し込まれたトリガーに連動し開かれた光満ちる異空間へのゲート。

 

口角を吊り上げた少女がその内部へと踏み入った途端―――赤黒い˝闇˝が迸った。

 

 




少しづつ物語をアニガサキから分岐させていきたい所存

そして昂貴の父親が殺人で捕まっている……という過去が明かされました

咎人の子である設定はタイタス(ボイスドラマ参照)、苦労人設定は彼方からそれぞれ引っ張ってきた形となります。まあでもラブトラの主人公に何かしらの業を背負わせるのはノルマなんで(諸作家様方への責任転嫁)

そしてラストシーンで謎の少女が用いたアイテムは……
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