ゾイド生命体を用いてBETAの脅威を打ち砕く話 作:もにもに+マウンテンヘッド
…
山の高台の城から見える、眼下の景色は地獄同然であった。
町は燃え、その煙で空は霞み、肉と血を燃やした炎の臭いが漂ってくる。
その大地のさらに遠くには、平野の広がりをこちらの山と挟むように、はるかな山の連なりがもう幾つかある。
そして今…もともとは広大な水田が広がっていたこの平野の向こうからそれらの山の反対側まで、
おびただしい数のベータが、
まるで自分たちの進路上にこちらの側が居るのが悪いのだ、というように…こちら人類を轢き潰して、押しつぶすかのように殺到してきていた。
その様子が、真夜中ではあるが、城の見晴らしから、絶望の光景として一望することが出来ていた。
そうして、城の立地する山の頂上付近から見下ろす…麓の市街地での、その戦闘の光景。
深夜の風景に、銃撃の音と炸裂音、その砲声とともに、発砲炎の明滅が閃いては消える…
兵士たちは必死に闘う。
閃光の破裂が連続するその最中、
焼け焦げた鉄と火の臭いを撒き散らしながら、
銃撃の速射を繰り広げる戦術機・撃震の機体がそこには居た。
「クソぉ、やってもやっても、キリがない!」
そうして、市街地のさなかで死闘を繰り広げる戦術機のシルエットがいくつか有った。
そのうちの一つの、この、
両側の腕部マニピュレータと背部の兵装担架からによる四点の銃撃を見舞っていた、撃震の1機。
こうも周囲を、濃密にベータが布陣しているのだ…
自機の飛行時の安全の保証はもはや無いということでもあったし、
そもそも、この自機は、もはや飛翔する分の燃料は払底しているも同然である。
なので今は、さながら移動砲台としての役に甘んじる他はない状態だった。
「ベータ、ベータ、ベータ!!!
どこを見渡しても、宇宙人どもばかりだ、クソッタレ!」
悪態をつくくらいしか、恐怖を紛らわす方法はない!
「 とにかくにも、だ…」
射点を移動して、それから、弾薬補給を。
残りわずかな弾薬で、自分たちがあとどれだけ持ちこたえられるかだろうが…
そう判断して機体を稼働させようとした、まさにその刹那のことである…
「 ぐあっ、!?」
ふと、乗員が殺気めいたものを感じたその時その瞬間…
その撃震のマニピュレータの片方が、蒸発して灼け飛んだ。
「! 光線級…!!」
一瞬だったが、稼働させた己の機体が市街地の建物の間から暴露したことにより、光線級の認識に察知され、その射線に収まってしまった瞬間があったのだ!
撃震の衛士は絶望するしか無い。
ただでさえ機能が十全ではない戦術機に乗っていて、挙げ句にはその機体は損傷までさせられたというのだ。
つまるところのその前途は?
つまりは、己の死刑宣告と同義だ。
損傷した撃震の機体の動きがもつれる。
破損を報告するコクピット内での警告音が衛士の耳をつんざく。
そして、いま間接視認装置越しに目撃した己の機の正面には、
立ちはだかる己を目掛けて、道路の道なりを進んでくる突撃級どもの姿があった。
(終わりか…)
衛士の脳裏に戦慄がよぎった。
そうして、己の最後を予期した衛士の目に、走馬灯が見えかけた…
…その時。
ほかにはなにも遮蔽物のない、水田地帯から市街に入りかける、触りの辺りでそれは起きた。
撃震に目掛け突進を開始していた、
正面の突撃級の複数体が、ほぼ同時の瞬間に、その肉体が、まるで血糊を詰めた風船の様に…弾けて割れたのである。
「は?」
次に、
やや遠くの光線級の肉体が、弾け跳んだ。
それもまた同時の瞬間だった。
連続、次々に、どんどん、またまた、
「 な、何が起きている」
あれだけ多数複数無数が居たはずのベータどもが、
気づけば櫛の歯の数ほどにまで減っていた。
そうしていると、その櫛の歯の分の残りも、あっというまに!
折れて削れて取れて行くかの如く、
みるみるうちに消えてなくなっていこうとなりつつある…
有り体に、脅威度の等級が危険であるベータから、
優先して排除がされていっている…
(稼働できる状態の分隊支援火器を担いでるやつなんざ、ウチの隊にはもう居なかったはずだが?
いや、それにしても、こんな無数同時の火点を張れるだけの数は、
そもそもこちらがわには揃えられてなかったはずだが…)
衛士は困惑するしか無い。
…種を明かそう。
場所はしばらく離れて…
城の立地する山とは別の山の山中に、その存在たちは布陣していた。
“ グルルゥ…” “ グルゥ”
スナイパー装備の部隊…がそこにはいた。
暗視ゴーグルを装着したスポッター役ハンマーロックの評定指揮で、
スナイパーライフル装備のケーニッヒウルフ、ガンスナイパーとスナイプマスター、ウネンラギアが狙撃を見舞っていく。
一キロ以上離れた位置からの、火力支援の精密射撃。
このゾイドたちが布陣しているのは、
近隣にあるうちのもう一つの山地だ。
先だっての先程、ベータどもが「 無駄撃ち」…により迎撃を懸命に図っていたところの、
すなわち、
ライガーゼロフェニックスとライガーゼロファルコン、ガンギャラド、ウイングライダー装着型キングライガー、オルディオス、バトルクーガー、ワイルドウィーゼル装備型ガンスナイパー、プテラスウイング装備型のゴドスとイグアン…の混合空挺部隊の空からの強襲により、人類側が掌握することが叶った地点である。
そこを布陣ポイントにしての、そこからの直接射撃が今のこれであった。
空挺ゾイド部隊はそのまま展開を続けており、
近隣のいくつかの山にも、同様のスナイパーの部隊が布陣していた。
それらからの援護射撃により、
射線が見えていて繋がる範囲のベータに関しては、
片っ端からの排除がなされていく。
「 す、すごい…」
撃震の衛士は呆気にとられるしかなかった。
否、この場のほぼ全ての帝国軍兵士たちは、一様に困惑と呆然の中にあった。
…その撃震に向かって、死角から、もう数体の突撃級が突進しようとしていた。
そうして、撃震の衛士がその事に気づいた時には、もはや回避するのは不可能な間合いの相互距離だった、
まさにその時、
「 んなっ!?」
その突撃級を、横合いから、
巨大な腕とその先のマニピュレータが、掴み取った。
そうして、目にも止まらない速さの、次の瞬間には、
その突撃級は、空中で掴み上げられ、それから、まるでバナナの房を分け取るかのような手軽さで、
圧倒的なパワーのそのゾイドのマニピュレータの両手によって、
一瞬のうちに肉体をバラバラにされて、あるいは握りつぶされて…千切り捨てられるしかなかったのだ。
体液がしぼられるように滴り、
紫色の、汚いベータの血のフレッシュ・ジュースが、
地面のアスファルトの割れた道路へと、飲ますように降り落ちる。
周囲にいた要撃級や戦車級は、
同様の手際によって、
同じ区ゴリラ型のそのゾイドとその僚機たちによって、
同じように撃滅がされていった。
撃震の衛士は、その黒い巨体を、目撃するしかなかった。
「 や、山が動いた…」
“ 山”と形容された、そのゾイド…
ゴリラ型戦闘機械獣、アイアンコング。
その機体と、アイアンコングマークツー、ハンマーロック、ゴーレム型24ゾイドからなる僚機たちの、特別部隊の出現であった。
このときに至るまでのあらましは、多少、時間を遡る必要がある…
…