しかし、ゼッドの口から出た「闇の民」という言葉にレオンは戦慄してしまう。
そして、その闇の民が間違いなくあの者ではないかと確信し、嫌な予感がレオンに過ぎる。
レオンも恐れる闇の民とは?
「・・・・・・。」
ジッと剣を構えて相手を見据えるハディ。
「・・・・・・。」
同じく微動だにせず剣を構える白銀の鎧。周りで繰り広げられる戦いとは別の次元がここにはあった。お互いの力量はほぼ同格。剣を構えた段階で分かるほどの二人の達人。チラリチラリと周囲の状況を見るが、それ以上に目が離せない二人の間合いが、そこにはあった。
最初にその沈黙を破って口を開いたのは白銀の男だった。
「・・・まさか、フュージョンを使いこなすガードナーが現れるとは計算外だった。」
その声は兜のせいでコモってはいたが、落ち着いた優しそうなやわらかい声だった。
「・・・私も驚いていますよ。」
少し笑みをこぼすが一瞬も気を緩めないハディ。
「・・・計算外のことが多すぎる。早めに対策を練らねば。」
「・・・・・・。」
冷静に淡々としゃべる白銀。張りつめた空気が突き刺さるように冷たくなっていくのを感じたハディだったが、冷静に相手を見据えていた。
「そろそろ、本格的に動こうか。」
そう言うと白銀は左手を頭の上に上げ、手を広げた。
「・・・・・・。」
ハディは剣を構えたまま相手の動きを伺う。
〔ディメンション〕〔ブゥーーーーーンッ〕
冷たい声で白銀がそうつぶやく。すると、神殿広場が冷たい空気に包まれた。
(こっ、これは・・・。)
「どうしたの、シヴァ?」
シヴァの動揺した声がノブヒデの頭の中で響く。ノブヒデにはシヴァが戸惑っているのが感じ取れた。心配してノブヒデは声を出して言葉をシヴァにかける。
(時空魔法よ、ヤツがいる!)
空気が変わったのを察したシヴァは時空魔法が発動したのを感じ取ってノブヒデにその事を告げた。
「時空魔法?」
聞きなれないシヴァの言葉に困惑するノブヒデ。
(大魔法使いがいたとしても容易く使えない時間すら支配する魔法。でも、ヤツは使いこなしていた。)
「ヤツって誰?」
シヴァの言葉には恐怖と怒りが交じり合っていた。その言葉に戸惑いながらもノブヒデは疑問に思ったことを尋ねる。
(忘れはしないわ。あなたの母親の運命を変えた男。闇の民。)
「・・・母さんの・・・運命を・・・?!」
突如としてシヴァの口から飛び出したノブヒデの母の事・・・その言葉に固まるノブヒデ。
ノブヒデがシヴァから衝撃の過去を突き付けられそうになったその時、
「ハディッ!」
「ッ?!」
ノブヒデの鼓膜にミナの悲痛な叫びが届き、現実へと戻される。
ノブヒデは慌ててミナの方に目をやり、ミナが見ている方へ目をすかさず移動させる。
「えっ?!」
ノブヒデがそこで目にしたのは、地面に広がるとてつもなく暗い闇。その闇に抵抗むなしくみるみる吸い込まれていくハディの姿だった。
「まさか、なぜお前が時空魔法を・・・。」
身動き取れずにただただ飲み込まれるしかないハディ。その魔法に、目の前の男の正体に、ハディが気付くにはあまりにも遅すぎた。
「ハディイイイイイイイイイイイイイイイイッ!」
広場に木霊すミナの絶望の声。
ハディはミナの声に応えるように動ける上半身と視線をミナに向ける。
「・・・・・・ミナ、すまない。セレスに伝えてくれ、セレスも君も心から家族のように愛していた・・・。」
ハディは優しい微笑をミナに向け、そう告げた。そう告げるのが精いっぱいだった。
「いやああああああああああああっ!」
ミナは泣き崩れて、その場で顔を手で覆った。ハディはみるみる闇に飲まれ消えていき、ハディを飲み込んだ闇も地面へ吸い込まれていくように消えていった。
「お遊びは終わりにしよう、諸君。」
両手を広げて、白銀の鎧の男が言う。
闇の民と言われたその男はそう言いながら、静かにミナへと歩を進める。
「・・・巫女がおとなしく私の元にくるのなら、姿を消すのは彼だけだ。」
悠然と歩み、ノブヒデ達にそう告げる白銀。
ノブヒデ達は互いに視線を交差して、対応を思案し合う。黙る一同を他所に白銀の口は滑らかに動く。
「・・・・・・立ちはだかるなら、それも結構。」
ゆっくりとミナの方へ歩き出す白銀。
「あんた、いったい何者っ?!」
ミナの元に着実に近づく白銀の前に、果敢に立ちはだかろうとするティアが叫ぶ。
ティアの問いに、歩きを止めた白銀。
「・・・言わなくても、薄々分かっているのでは?」
白銀のその発する言葉と気迫で、ティアの全身に冷や汗が噴き出した。
「・・・闇の民。」
恐る恐るポツリとその名をつぶやくティア。
「・・・正解・・・むっ?!」
ティアの問いに笑みを浮かべたような口調で答えた闇の民。しかし、闇の民の意識がティアから削がれる。
ノブヒデ達の頭上に大きな影が高速で横切った。
〔ゴオオオオオオオオーーーッ〕
その大きな何かが広場を横切った後、凄まじい風切り音が広場に響き渡り、凄まじい風が吹き荒れた。
ティアに向かって大きく手を広げていた闇の民は頭上に何か大きなモノが横切ったのを認識すると、その者の名を自然と口にしてしまった。
「・・・バハムート・・・だと。」
今まで冷静で圧倒的だった闇の民がその影の存在を口にして、初めて戸惑いだし、闇の民という存在が何故か小さくなるのをノブヒデは感じた。
目の前で仲間を失ったノブヒデ達
絶望の淵に見た希望とは?
次回、「バハムート」
青年は大空に希望の光を見たか?!(千葉繁さん風)