いよいよアグニス達が目的に到着する。
〔ゴゴゴゴゴゴッ、ガタガタガタガタッ〕
目的地に向かって飛行する輸送機の中、エンジン音と急いでいるために選択した空路で機体が無理をしていると報せている音が機内中に響いていた。
「大佐ッ、ハディは地下に潜ったと思われます。」
輸送機の中でも慌しく動く兵士達を余所目に地図と睨めっこしているアグニスに一人の兵士が情報を持ってきた。
「地下?モイスタイニアに地下があったということか?」
アグニスは情報を伝えに来た兵士に尋ねた。
「はっ!偵察している部隊によりますと、ハディは島内の各地に点在する石像の中から一つの石像を選び、その前に立ち、何かをした後に現れた地下に通じる入り口からその中に一人で入っていったとの情報です。」
兵士は敬礼をしながらそう説明した。
「・・・あそこは地下調査もしていたはずだが・・・。」
アグニスは困惑した表情で誰に聞くわけでもない独り言を呟いた。
「・・・そうであります!事前の調査報告書には地下らしきものは何もないと確認もしました。」
アグニスの疑問に即答するように優秀な兵士は事前に確認した事も伝えた。
「・・・古代アースカンド人の技術なのかもしれないな・・・。反応は変わらず、島内にある・・・引き続き、慎重に調査するように伝えてくれ。」
アグニスは兵士にそう伝えて地図の方に目を戻した。
「ハッ!」
兵士はピシッと敬礼しなおして、雑踏の中へと消えていった。
「大佐ッ、後20分程度で目的地に到着します。現地部隊はハディの入ったと思われる石像周辺に展開中です。出入り口は元に戻ったとの事。現地到着後、部隊との合流には16分ほどかかります。」
別の兵士が遠目から現在の状況を詳しく伝えた。
「分かった・・・みんな、そろそろ目的地に着くぞッ!これは絶対に失敗してはならない任務だっ!!大切な人や家族のためにやり遂げるぞッ!」
アグニスがそう輸送機の中の兵士全員に声を掛ける。
「オウッ!!!」
兵士全員が決死隊ということを十分に理解して、任務の重要性も飲み込んだ上で覚悟の声を上げた。
報告通りの時刻、アグニス達は現地部隊に合流して、ハディが入ったと思われるオメガクリスタルに通じていると思われる石像の前にいた。
「ずっと調べているのですが・・・。」
現地で先に調査していた兵士が悔しそうにそう伝える。
「・・・・・・。」
アグニスも先ほどから石像を調べているが、なんともつかめない状況にヤキモキしていた。
〔ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ〕
アグニス達が立ち往生しているとそれを嘲笑うかのように石像が動き出し、ハディが入ったと思われる入り口がアグニス達の前に姿を現した。
「ッ?!」
アグニス達はその光景に驚きを隠せない。
「・・・どこまでも我々は眼中にないと言わんばかりだな・・・。」
ハディの仕業にアグニスは悔しさを隠さない。
アグニス達がどう足掻こうが、ハディにとってはアリが這い回る程度にしか感じていないのがありありと伝わった。
「・・・どうされますか、大佐?」
屈強そうな一人の兵士がアグニスの指示を仰ぐ。
「・・・相手が我々をなめているならそれはこっちにとって好都合だ。我々のやることは変わらない・・・中隊を5個小隊に分けて中に進むぞ。どこか一つでも小隊がオメガクリスタルに辿り着けば、我々にも勝機がある・・・。」
アグニスは入り口を見ながら兵士達にそう指示を出した。
「ハッ!」
周りの兵士達はアグニスの指示を受けると元気良く返事をして、動き出した。
(待っていろハディ・・・我々はお前の手の平で踊っているだけではない事を分からせてやる。)
アグニスは怒りに満ちた眼光で入り口の向こうにいるであろうハディを睨みつけて拳を力強く握った。
「・・・この深さは・・・海の底に続いているんでしょうか?」
アグニスの部隊の一人の兵士が銃を構えながら呟く。
「・・・こんな遺跡が今も発見されずに残っているなんて・・・古代アースカンド人というのは我々の想像をはるかに超える文明を持っているのかもしれない。」
アグニスが前方を注視しながら兵士に答えるように話す。
「・・・やはり、他の部隊とは通信が取れません・・・先に入った2部隊がどうなっているか、まったく分かりません。」
部隊の通信兵が先に入った部隊と交信していたがまったく繋がらない事を嘆いた。
「・・・どういう状況だろうが、進むしかない・・・相手が罠を張っていようとも、我々は我々の目的を完遂するだけだ・・・。」
通信兵に檄を飛ばすようにアグニスが返す。
「ハッ!すいませんっ。」
通信兵は不甲斐無い自分を恥じて謝った。
「気にするな・・・未知に踏み込む人間は誰だって不安だっ。」
アグニスは通信兵にそう言うと一瞬だけ笑顔を向けた。
「・・・・・・。」
周りの兵士達はその様子を見て、想いを強くする。今回の作戦はアポニス部隊だけでは到底人数が足りなかった。その影響で、アポニス部隊を5部隊に分けて、それぞれ小隊を指揮させていた。そうなると、今までアグニスを直接知らなかった兵士達も大勢いる。選ばれたのは志願した経験も豊富で屈強な兵士達だが、士気に関してはアポニスようにはいかない。しかし、アグニスのカリスマ性はそれをいとも容易く成し遂げた形となった。
そして、10分ほど慎重に歩いていると、
「どうやら、やっと遺跡についたらしいな・・・。」
アグニスが階段の底にライトが当たったことを確認して部隊に右手を握り、軽く上げて止まるように指示した。
すると、その合図と共にアポニスの部隊員数名が静かに先行して遺跡に入り、周囲の確認を行った。その後、先行部隊からライトで安全を報せる合図があり、それに従いながらも慎重に部隊を進めた。
「先行した部隊は分隊に分かれて、マッピングを行っているようです。」
遺跡に入ると先行していた兵士がアグニスにそう伝える。
「・・・通信はどうだ?」
アグニスは先ほどの通信兵に通信状態を尋ねた。
「・・・悪いですが、通じないわけではないようです。」
通信兵がそう答える。
「・・・何分隊かは標的と接敵してしまい通信が途絶えたようです。」
別の兵士がさらにアグニスに現状を伝える。
「目標は?」
アグニスが単刀直入にその兵士に聞く。
「・・・未だ発見できておりません・・・が、いくつかの部屋を確認しております。」
兵士は素直に応答して情報を伝える。
「マッピングの進行状況がほしい。」
アグニスがその兵士に続けて尋ねる。
「ハッ!・・・少し進んだ所にモイス中佐がおります。そこに今は集約しております。」
兵士は素早く答えて、道を指し示した。
「了解した。」
アグニスは兵士の指し示す方向に足早に急ぐ。
「大佐、我々の部隊はどうしますか?」
アグニスの歩幅に合わせる兵士がアグニスに部隊の指示を仰いだ。
「アルファ部隊は待機。後続の小隊には急いで降りてくるように通達。相手が我々を過小しているスキに先行して目標を見つける。」
アグニスは目的の部屋に向かいながら足を止めることなく、兵士にそう指示した。
「ハッ!」
兵士は元気良く返事をしてアグニスから離れて後方へと消えて行った。
「モイス中佐ッ、マッピングの状況を教えてくれっ。」
アグニスはモイス中佐のいる扉もない少し広めの部屋に入って、早々に目的のモノを尋ねた。
「ハッ!・・・大佐、こちらになります。」
部屋は少し明るめにライトで照らされており、石のテーブルの上にモイス中佐が地図を広げていた。
「・・・・・・なるほど・・・標的の動きはどうだっ。」
地図を見ながらハディの位置をモイスに尋ねるアグニス。
「標的はこちらに進んでいます。接敵を避けて、2分隊に行動を監視させていますが、何度か襲撃を受けて、4分隊ほど壊滅しました。」
モイスが尋ねられた事に対して、包み隠さず話す。
「遺跡の中はトラップもあり、数名死傷しております。そのため、マッピングも慎重に成らざるを得ません。」
モイスが現状を続けて伝える。
「・・・遊んでいるようだな・・・好都合だ。トラップは仕方ない、出来る限りの速度で奴より先にオメガクリスタルを発見しよう。」
アグニスがそう言いながら地図に記されたハディの位置を睨んだ。
〔ドドドドドドッ!ダダダダダダッ!〕
〔ザシュッ、ドシュドシュッ〕
「グワッ!」
「ウオッ!」
暗闇に銃火器を向けて、銃撃する兵士達。その行動も虚しく、闇から突如現れる白刃にその命が狩られていく。しかし、兵士達は一切怯まない。常に一定の距離を保ち、仲間がやられる中もその男を自分達から攻撃することなく様子を伺っている。
「・・・何を考えているアースカンド人・・・オメガクリスタルを俺より先に発見して破壊したいのか?・・・そんなことが出来るとでも本気で思っているのか?」
闇が良く似合うその男ハディは全身に返り血を浴びながら微笑んでそう呟く。
オメガクリスタルが眠るこの遺跡でアグニスとハディの最後の闘いが始まろうとしていた。
オメガクリスタルは遺跡の奥で光ることもなく、闇の中でひっそりと佇んでいる。
ああ