しかし、ハディはそれも想定内と言わんばかりに落ち着いていた。
〔ドドドドドドッ、ドッドドドドドッ・・・〕
〔ザシュッ〕
「グワッ!」
敵に向けて必死に銃撃するも兵士はあっという間にその命を消した。
「・・・まったく・・・流石に飽きてきたな・・・。」
ハディはすっかり赤く血塗られた剣を片手で持ちながらそうぼやいた。
ハディは闇雲に遺跡内を歩き回り、目に付いたアースカンド人を一人残らずこの世から消して行った。ハディは遺跡内の道が分からず迷っているわけではない。ハディは兵士達をオメガクリスタルに近づけないようにしながら誘き出して、狩って遊んでいたのだ。
〔ドドドドドドドッ、ドドドドドドドドドッ・・・カンッカンッカカンッ・・・〕
(・・・ん?)
ハディは僅かな違和感を見逃さなかった。
兵士達が自ら姿をさらすように攻撃してきて、今、真下に手榴弾が投げ込まれた。
〔ドーーーーンッ!〕
〔ザシュッ、ドシュッ、ドスッ〕
「グッ・・・。」
「コッ・・・。」
「・・・・・・。」
もちろん、ハディは手榴弾が爆発する前に素早く動き、攻撃してきた兵士を一人残らず始末した。
ハディが違和感を受けたのは兵士達が自ら攻撃を仕掛けてきたこと。そして、その方向にだった。
〔ドドドドドドドドッ、ドドドドドドドドドドッ〕
兵士達はハディを全力で仕留めに掛かる。今までは一定の距離を取り、ハディの行動を観察する事に徹していたが、何かが起こり、今度はハディに対して、積極的に行動を起こしてきていた。
(・・・なるほど・・・辿り着いたか・・・。)
ハディは兵士達の行動の意図を逃すことなく観察し、敵が目的のモノに辿り着いた事を瞬時に理解した。
「・・・フフフフッ・・・発見した所でお前達にどうこう出来る訳ではないのに・・・。」
兵士達の行動に哀れみの表情を浮かべるハディ。自然と笑いが込み上げてきた。
〔ドドドドドドドドドドッ、ドドドドドドドドドドドッ〕
兵士達はそんなハディの思考も知るはずもなく、自分達が世界を救うべく全力で行動していた。
「・・・丁度飽きてきていたし、そろそろ終わりにするか・・・。」
ハディは兵士達の攻撃を交わしながら距離を詰めて、そう呟きながら闇に消えていく。
その後に動くものは何もなかった。
〔ドドドドドドドドッ、ドドドドドドドドドドッ、ドーーンッ、ドドーーンッ!〕
「大佐ッ!奴がすぐそこまで来ていますっ!」
アグニスの近くに兵士が叫んで戦況を伝えにきていた。
「作業は順調だッ!焦る事はない、各自しっかりと任務に集中するんだッ!」
兵士の方を一切見ることなく、アグニスは何やら何かの装置をいじりながらそう叫ぶだけだった。
「サッ!!」
周りで同じように作業していた兵士達がアグニスの方向を見ずに、必死に作業をしながら大きな声で答えた。
〔ドドドドドドッ、ドドドッ・・・〕
「グオワッ。」
部屋の一つの出入り口で戦っていた最後の兵士が絶命する。
「・・・お邪魔かな?」
暗い暗い通路から明るい部屋にハディが入ってきた。
「・・・・・・。」
アグニスが静かに立ち上がって近くの兵士にアイコンタクトをして、作業を引き継いだ。
アグニス達が作業していた場所は他でもない。
オメガクリスタルがあるクリスタルの間だった。
幅2m、高さ4m以上はある大きな大きなクリスタル。
オメガクリスタルは部屋の中心にあり、大きな台座の上にその圧倒的存在感を示していた。
ミッドガルドにあったそれぞれのクリスタルの間と違うのはその機械的な装置や管。
台座には多くの大小の管が張り巡らされており、管が続く先の部屋の隅々にはそれらをコントロールするための装置らしき機械がこれまた大小設置されていた。
装置は今は動いておらず、存在しているだけだったが、それはオメガクリスタルの現状によるものだろう。オメガクリスタルは台座ごと、凍っているかのように別のクリスタルに固められていた。これこそが、ギルガメッシュ達が施した封印なのだろう。
そのオメガクリスタルを脇に置き、二人の男が視線を交わした。
「・・・こうやって話すのは初めてだな・・・闇の民・・・ミスターハディ・・・。」
アグニスはゆっくりとハディの方に向き、そう言いながらハディの方へと歩き出した。
「・・・なるほど、君がここの指揮官か・・・なかなかやるようだ・・・。」
ハディも口角を上げながらゆっくりとアグニスに近付くように歩く。
「・・・お前は知っていたんだろう?なぜ、闇雲に歩いていた。」
アグニスはわざと遺跡内を歩き回っていたハディに真意を尋ねた。
「・・・・・・暇つぶしだ・・・。」
ハディはそう一言答える。
「・・・そうか。」
アグニスは答えが分かっていたように納得して見せた。
「・・・しかし、お前もなかなかひどい奴じゃないか・・・部下をみすみす死地に向かわすとは・・・どんな心境なのか聞いてみたい・・・。」
ハディはアグニスに悪戯な質問を投げかけて微笑んだ。
「・・・我々は兵士だ。死地に赴くのも任務なら当然のこと。そこに感情を入れていては平和は守れない・・・。」
微笑むハディに対して、アグニスはしっかりと真剣な顔でハディを見据えて対峙した。
「・・・平和?・・・フフフフッ、そうかそうか・・・それは大事な事だ。確かにここで死んでいった連中はその瞬間まで恐怖を感じずに受け入れていた。良い訓練をしている。」
ハディはゆっくりと手を広げて兵士達を讃える。もちろん、皮肉だ。
「・・・オメガを復活させて、どうする気だ?世界を破壊して何がしたい?」
アグニスはそうハディに真剣に尋ねる。
「・・・・・・それを知ってどうする?・・・もう少し待った方がいいのか?」
微笑むのをやめて、ハディは馬鹿げた時間稼ぎにつき合わされていることにウンザリした。
「・・・・・・お前はどこまでも、人を馬鹿にして命を弄ぶのかッ・・・ッ?!」
アグニスは一度周辺を目だけで流して見てから、腰に隠していたマグナムを素早く構えてハディを撃とうとした。が、
〔ドッ・・・ドカーーンッ!〕
アグニスがハディを捉える事は出来なかった。
アグニスがマグナムを構えて撃つよりも先に、ハディの蹴りがアグニスの無防備な腹に入り、アグニスはその強烈な蹴りによって、後方の壁に勢い良く叩きつけられた。
「グフッ・・・。」
アグニスの口から鮮血が飛び散る。今の衝撃で全身の骨が折れ、ひびが入り、最早立つ事は出来ない状態になっていた。
「ヌワアアアアアアアアアアッ!」
一人の兵士が立ち上がって、隠し持っていた銃でハディを攻撃する。
〔ドンドンッ!ザシュッ〕
「くっ、へへへっ・・・。」
ハディによって、貫かれた兵士はそう笑って死んでいった。
「・・・・・・。」
ハディはまた違和感を受ける。
「ハディッ!もう終わりだッ!!」
アグニスが精一杯の力を振り絞って叫んで右手を上げた。
その右手には何かしらのリモコンが握られている。
〔スンッ〕
「ッ?!」
アグニスは自分の右手が切り落とされるよりも一瞬で移動したハディに驚く。
「・・・これはなんだ?」
ハディはアグニスの切り離した右手を持ち、アグニスに尋ねる。
「・・・・・・餞別だ・・・。」
アグニスはそう言ってハディを笑った。
〔ピッ〕
「ッ?!」
微かな音が部屋に響く。その音を聞き逃さないハディは音の方向に思わず向いてしまう。
そこには一人の兵士が何かリモコンらしきものを押しているのが目に映った。
「ウワアアアアアアアアアアッ!」
「クタバレエエエエエエエエッ!」
「オオオオオオオオオオオオッ!」
それは刹那の時間。
部屋の出入り口にいたリモコンを押した兵士。
それを合図に周りにいた兵士達が銃火器をハディに向けて襲い掛かる。
流石のハディもリモコンの兵士までには距離が遠い、気付けば、出入り口から一番離れた場所に誘い込まれていた。そして、ほんの数秒後、今度はアグニス達がハディをアザ笑うかのように部屋のあちこちで爆発が起こり始める。
出入り口に立ち、逃げ出しもせずに銃を構える兵士。
周りが爆発している中でもハディに特攻していく兵士達。
残った左手でマグナムを構えるアグニス。
今、部屋の全てをアグニス達が設置した爆弾の爆発が飲み込もうとしていた。
アグニス達は役目を果たす為に命を賭した。
バハムートの前にその結果が示されようとしていた。
次回、「バハムートの戦い」
青年よ、王者は窮地の時こそ不敵に笑う!(千葉しげるさん風)