アグニス達の決死の作戦が失敗したと言うことに・・・。
「・・・・・・餞別だ・・・・・・。」
アグニスが最後にハディに残した言葉。
その言葉と共にオメガクリスタルの間は大爆破に飲み込まれていく。
ハディは気付いた時には部屋から出る場所からどこからも離れており、ヘイストで加速しようとも爆発から完全に逃れる事は出来ない状況だった。だが、
「・・・フッ・・・。」
ハディはアグニス達を鼻でアザ笑った。
〔ドガーーンッ!ドドゴーーーンッ!ドドドドーーーンッ!!〕
設置された爆弾が次々と爆発していき、最早部屋の原型を留めないほどの大破壊が行われたように見えた。
アグニスを始め、多くのアースカンドの軍人がその爆発に飲み込まれてこの世から姿を消した。
「・・・・・・。」
出入り口の外でハディが逃げないように待ち構えていた残った数名の兵士達が状況を静かに伺っている。
全員、死を覚悟して爆弾を身体に装備している。
その姿になんとしても、オメガクリスタルを破壊してハディをこの世から消すのだという強い意志を感じた。
「・・・フッフッフッフッフッ・・・。」
兵士達の望みを虚空に消し去るように、大爆発が終わった後に残った爆煙に包まれているオメガクリスタルの間の中から不吉な笑い声が聞こえてくる。
「・・・・・・。」
兵士達は銃を持っている手に力を込めて覚悟を決める。
〔ザシュッ、ドシュッ、ブシュッ、ズシュッ、ドスッ・・・〕
しかし、そんな兵士達の最後の抵抗もハディは許さなかった。
一矢報いる事も許されず、自爆する事も叶わず、兵士達は無言でその命の灯火を消された。
〔ヒュンッ、ヒュンッ〕
「・・・まったく、弱者の考える事は愚かで無様だ・・・。」
ハディは自身の剣についた血を振るって飛ばし、最後に肉塊になった兵士の服で剣を拭った。
ハディがそうこうしていると、オメガクリスタルの間に立ち込めていた煙が薄くなっていく。
その様子を見て、部屋の中心に視線を向けるハディ。
そのハディの表情は、あの大爆発でオメガクリスタルが破壊されるのではないかという不安などミジンも感じさせないほど冷静なモノだった。
「・・・オメガクリスタルの破壊・・・それを考えている事は容易に想像できたが、まさか犬死までするとは・・・幸せな連中だ・・・。」
ニヤニヤと口角を上げながらハディが部屋の中へと入っていく。
大爆発を起こした部屋は設置されていた装置や管は原型を留めないほどに破壊しつくされ、部屋の中に散乱していたが、部屋の壁や床はあの大爆発は幻だったのではないかと思えるほど傷一つついていない様だった。兵士達のものと思われる肉片や血でそこかしこが汚れているが、それ以上何かがあるわけではなく、部屋はその場所に悠然と存在していた。
「・・・・・・。」
ハディは静かに部屋の中心にあるオメガクリスタルの方へと歩みを進めていく。
まだ少し煙が掛かっている部屋の中心。
オメガクリスタルがあった場所のモヤがゆっくりと晴れていく。
そして、モヤが晴れて、オメガクリスタルが姿を現すと、その現状が明らかになった。
オメガクリスタルはさすがに無傷ではなかった。
爆発により、封印とされていた台座とオメガクリスタルを覆っていた氷のようなクリスタルは消し飛んでおり、オメガクリスタルだけが部屋の中心に浮いて佇んでいたが、そこら中に大きな傷やヒビが入り、とても無事ではない事が見て取れた。
アグニス達の自爆が功を奏したのではないか。
そう思いたくなる現状ではあったがハディの顔には満面の笑顔が浮かび上がっていた。
「フッフッフッフッフッ・・・封印を解くのに時間が掛かるかと思ったが、手間を省いていくれて助かったよ・・・なんて名前だったかな?」
ハディはオメガクリスタルの現状を眺めながらニヤニヤが止まらないようだった。
「・・・わざわざ、ギルガメッシュの資料も残しておいたのに・・・やはり、理解はできなかったようだ・・・。」
両手を両脇に添えてハディが胸を張る。
「・・・・・・。」
ハディは部屋をグルッと見回すように視線を泳がせる。
「・・・どうやら、もう遺跡内にはゴミはいないようだ・・・。」
ハディは鋭い感知能力を使って、遺跡内に人間が残っていないか調べたようだった。
「・・・確かにギルガメッシュの残した資料は難しい。科学というものに精通していない私は全てを理解する事はできなかった・・・。」
ハディはオモムロに胸元からアルテマクリスタルを取り出す。
「・・・一時の感情に流されて、風のクリスタルを破壊して、その後にアルテマクリスタルの奪取、もしくは破壊しよとして失敗した・・・あの時の苛立ち・・・。アルテマクリスタルを探して探して、アースカンドにまで足を伸ばし、偶然ここを発見した・・・。」
ハディは独り言で今までの経緯を話しながらアルテマクリスタルをオメガクリスタルに近づけるように掲げる。
「・・・ここでギルガメッシュの資料に目を通した時、驚愕したよ・・・。」
ハディが独り言を続ける中、アルテマクリスタルがその身を輝かし始めた。
「・・・オメガクリスタルとオメガの存在。ギルガメッシュ達が施した封印を解くためとオメガの再起動にミッドガルドのクリスタルとアルテマクリスタルの完全な力が必要な事・・・。」
ハディの独り言が復活の詠唱ではないかと錯覚するようにその言葉に反応して強く輝き始めるアルテマクリスタル。
アルテマクリスタルのその輝きに共鳴して、オメガクリスタルの中心部分から小さな光が発現する。
「・・・あの時は風のクリスタルを破壊した事に絶望してしまったが、ヒロヨシとの出会いが俺に希望を与えてくれた・・・。」
ハディは淡々と誰にとは言わずに話し続ける。
「・・・ギルガメッシュは本当に良く調べていてくれた・・・。」
ハディの口角が思わず上がる。
「・・・ヒロヨシのマテリアルの再結晶・・・あれを見て、心が打ち震えた。」
ハディの歯茎がその姿を隠すことなく露わになる。
ハディの高揚に反応するようにオメガクリスタルの光が強くなり、オメガクリスタルもまた、光源の塊になっていった。
そして、その光はグニャグニャとゆがみ始めて、その形を変えようとしていた。
その動きに合わせる様に回りに散らばっていたオメガクリスタルの破片と思われるモノも光り輝き、光の玉となって浮かび上がり、オメガクリスタルだった光の中に取り込まれていった。
「・・・殆ど理解できなかったが、ギルガメッシュの資料の中にオメガクリスタルの生成に関する説明も残されていた・・・あれは、本当に助かったよ・・・。」
ハディは光に少し目を細めながらも笑顔でその光景を見続ける。
「・・・そして、アルテマクリスタルを持ったユッケの出現・・・フッフッフッフッ、フレビアで会った時、俺に女神が微笑んだ瞬間だと思ったね・・・。」
ハディは輝きが弱まっていくアルテマクリスタルを自分の方へと近づけて眺める。
ハディの脇でグニャグニャにその形を変え続けるオメガクリスタルの光も弱くなっていった。
それに伴って、変化し続けていたその姿が元のオメガクリスタルの形に近付いていく。
「・・・後は邪魔なバハムートの存在の把握とコントロール・・・ミッドガルドのそれぞれのクリスタルの完全復活によるアルテマクリスタルの完全復活・・・。」
ハディは光を失ったアルテマクリスタルを愛おしい目で眺めながら、ゆっくりと自分の胸元の服の中へと戻していく。
「・・・アルテマクリスタルのコントロールに必要な巫女の確保・・・そして、力の譲渡・・・。」
ハディがオメガクリスタルの方にゆっくりと視線を移す。
「・・・知らなかっただろ?アースカンド人・・・。」
ハディはオメガクリスタルを見て、ニヤリと笑う。
そこには何事もなかったかのようにそこに佇むオメガクリスタルの姿があった。
「・・・全てのクリスタルは、アルテマクリスタルがある限り、不滅なんだよ・・・。」
ハディはオメガクリスタルを仰ぎ見ながら両手を大きく広げて喜びを表現した。
ハディの目的の成就も近いのか。
ハディは喜びの感情を押し殺すような事をしなくなっていた。
そんな中、悪魔と対峙して生き残ったヒロヨシに
あの時の記憶が蘇っていた。
次回、「悪魔の宣告」
青年よ、悪魔の言葉に惑わされるな!(千葉しげるさん風)