FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

11 / 157
闇の民の「ディメンション」により
ハディという大切な仲間を失ったノブヒデ達
その圧倒的な強さに絶望した時
頭上に大きな影が現れる!

その名は「バハムート」


バハムート

(・・・早かったわね。)

「?!」

 シヴァが空を横切った影に向けて、そうつぶやいたのをノブヒデは逃さなかった。次の瞬間、

 

「ゼッド!」

 闇の民の大きな声がノブヒデの鼓膜を大きく揺らす。

 

「なんだい、大将!」

 その闇の民の声に答えるゼッド。

 

「潮時だ。」

 そう言うとティアに背を向けて、明後日の方向へと歩き出す闇の民。

 

「待ちなさい!」

 自分たちに背を向ける闇の民に叫ぶのはティア。

 

「グラビデ」〔ズワウゥゥゥーーーンッ〕

「あっ?!」

 ティアが弓を構えて、闇の民を射抜こうとした瞬間。闇の民の魔法がティアに襲い掛かる。地面がティアを中心に広くくぼみ、ティアの全身が鉛になったかのような重さに襲われ、ティアはその荷重に耐えられずにヒザマズく。

 

「ティアっ!」

 ティアの変化に気付き、すばやく駆け寄るノブヒデ。ノブヒデがティアの傍に近付く前に闇の民は自身のすぐ傍に暗い闇を作り、悠然とその中へと進み、ノブヒデ達の事など、もはや気に留めることもなく闇と共に消えていなくなった。

 

 

 一連の闇の民の動向を見ていたゼッド。

「チッ、盛り上がってる最中なのに・・・しかたねぇな。」

 ゼッドは残念そうに舌打ちをして、レオンと素早く距離を取る。

 

 

「・・・逃げるのですか?」

 ニコニコとレオンがゼッドを引きとめようと挑発する。

 

「へっへっへっへっ、その手にのらねーよ・・・大将は怖いからな。」

 右手を肩の高さに上げ、人差し指を左右に振ってレオンにそう答えるゼッド。

 

「ガードナーのあなたがなぜヤツに手を貸すんですか?」

 レオンはそう当然のことのようにゼッドに問いを投げかける。

 

 アルテマクリスタルやその他のクリスタルを守護する役目と共に、そのクリスタルの守護獣とも言える召喚獣を従えるガードナー。火のクリスタルの守護獣イフリートを従えているゼッドは紛れもなくガードナーのはず。それがアルテマの巫女を襲い、アルテマクリスタルを消失させた闇の民側についているのは、レオンにとっては異常とも言える行動だった。

 

 

 

「・・・おもしろいから。」

 子供が素直に真っ直ぐ答えるようにゼッドはそう言葉を捨てるように言った。

 

 

 

「・・・・・・。」

 レオンはそれ以上言葉は出なかった。すると、それを機にゼッドはものすごいスピードで駆け出し、大きくジャンプして、フレビアの町の中へと姿を消していった。後に残されたのは傷ついたフレビアの民と治療に追われる神官達とノブヒデ達だけだった。

 

 

 

 

 

 

「・・・逃げ足だけは相変わらず速いな。」

 ノブヒデ達の頭上からものすごい重圧を声だけで表現する低い音が降り注いだ。

 

「・・・でかい。」

 空に目をやって思わず声が漏れるノブヒデ。そして、あまりの光景に身体が固まった。そこにいたのは空を覆うほどの大きな翼を広げ、広場に舞い降りようとしていたドラゴンだった。身体の部分は5mもあろうかという巨躯。破壊を体現するその姿。鋭く輝くその眼光は鋭利な刃物より研ぎ澄まされていた。

 

 

 

「ノブヒデよ、探したぞ。」

 バハムートの声は腹のそこに重く響く。それを浴びたノブヒデだったが声よりもその言葉に驚いた。

 

 

 

「・・・俺?」

 ノブヒデは突然のバハムートからの指名で混乱した。自分の記憶を取り戻したり、目の前で仲間が消えたり、さらには空から現れた怪物に名指しされると来た。頭がフル回転しても整理が追いつかないほどいっぱいいっぱいになるのは当然だろう。

 

「・・・そうだ、お前だ・・・ここではこれ以上はまずい。場所を変えるぞ。」

 そういうとバハムートはノブヒデに背を向けた。どうやら、自分の背に乗れと言う事だろう。

 

「行きましょう、ノブヒデ。」

 いつの間にかフュージョンを解いて元に戻っていたシヴァが、ノブヒデの隣で浮きながらそうノブヒデを促した。

 

 ノブヒデはシヴァに導かれるように気持ちを動かしたが、身体と視線は自然と周囲へと動く。

「・・・みんなは?」

 ノブヒデはウズクマっているミナを見ながらシヴァにそう尋ねた。

 

 ノブヒデはシヴァに視線を送ったが、それを遮るようにバハムートが口を開く。

「・・・ガードナーを一人選抜せよ。話の分かる者が良い。」

 バハムートはそういって、ノブヒデをイチベツした。

 

 ノブヒデが困惑する中、バハムートに従うように素早く動いたのはレオン。

「ティア殿はミナ殿を頼みます。私が参りましょう。」

 ニコニコとレオンがそう答えながらノブヒデの元に颯爽と来た。

 

 ノブヒデはあまりにもあっさりしたレオンの行動に呆気にとられるが、それを代わりに問いただしたのはティアだった。

「ちょっと待ってレオンっ。ミナはあいつらに狙われてるのよ。」

 ティアがもっともな主張を口にする。がしかし、

 

「・・・・・・。」

 バハムートはミナを一目見て、目線を空の方に戻して無言で答えを告げる。

 

 ティアはバハムートの言動に口を一文字にするが、ミナにゆっくりと近づいて気遣う。

「ミナ、立てる?」

「肩貸すよ。」

 ふさぎ込むミナを促すティア、それを見かねたノブヒデがすばやく駆け寄る。

 

 そのティアの行動・・・いや、ノブヒデが行動したことに目をしかめるバハムート。

「急げ、ノブヒデ。」

 バハムートはモタモタするノブヒデに業を煮やしている様子だった。

 

 先程の戦闘による緊迫した空気とは別の意味で張り詰める広場だったが、それをものともしないレオンが素早く切り替えて行動を起こした。

「私が抱えた方が早いでしょう。」

 レオンがニコニコしながらスッとそう行動に移し、ミナを抱えてバハムートの所まで走った。

 

 レオンがミナをバハムートの元に連れきて、いよいよというその時に、広場に今までとは違う声が響く。

「クェ~~~っ!」

 怯えて隠れていたチョコが置いて行くなと言わんばかりに鳴きながら、神殿の中からノブヒデ達の元に走ってきた。動物的なカンが成しえた行動だろう。

 

 バハムートの支持とは異なるように、巡礼にまつわるモノたちが、図らずもバハムートの元に集った中、

「神官様、突然だけど、私達は巡礼に戻るわ。民をよろしくね。」

 慌しい旅立ちをティアは怪我人の手当てをする神官達に告げた。

 

 事の成り行きをバハムートに目を奪われながらも震えて見ていた神官だったが、

「とんでもない!守護者の中の王バハムート様のお告げとあらばっ。」

 両腕を組んで、頭よりも高々と腕を上げて、恐れ多いとカシコまった。

 

「チョコ、慌てなくていいから。」

 ノブヒデは慌てて駆け寄ってきたチョコを撫でて落ち着かせた。

 

 

 

 

 

 しばらくして、ノブヒデ達はバハムートの大きな背中に乗り込み、旅立ちの時を待っていた。

「・・・時間がないというのに、悠長な者達だ・・・。」

 全員背中に乗ったことを確認したバハムートは翼を大きく羽ばたかせた。

 

「きゃああああああああっ!」

「うわああああああああっ!」

 ものすごい風が神殿広場に巻き起こる。バハムートは広場で倒れている人間など眼中にないようだった。

 

「バハムート、動けない人間がいるのよ!」

 シヴァはバハムートを諭すように言う。

 

「・・・・・・。」

 バハムートはその言葉に答えることなく羽ばたき続け、空中へとその巨躯を浮かせていった。動けない者達は神官や動ける者達が必死に押さえつけ飛ばされないようにしていた。

 

 狙われているミナを見捨てるような言動。

 傷付いた人間に何の関心も示さない冷徹さ。

 

 

 

(・・・なんなんだ、こいつ。)

 ノブヒデの中でバハムートに対するモヤモヤした感情が渦巻いた。

 

 

 

 バハムートへの不信感を募らせるノブヒデを他所ににこやかなのはレオン。

「さすがですなっ、バハムート様はっ!・・・風の力が弱い今でも変わらず飛べるというのはっ。」

 空を飛ぶバハムートにレオンは素直に感心する。風のクリスタルが消滅した今、鳥達が頼りにしている風はほとんど吹かない。それをものともせずに空を我が物顔で飛ぶバハムートは確かに凄かった。

 

「・・・しかし、動けないものもいました。もう少し配慮があっても・・・。」

 ノブヒデが思っていたことをティアが代弁する。

 

 

 バハムートはティアの言葉に一瞬視線を背中に向けて、サッと正面に戻す。

「世界がその者の為にあるわけではない。」

 一刀両断だった。ティアの優しさはいとも容易くバハムートの言葉に切り裂かれた。

 

 

「・・・・・・出過ぎた意見をすみません。」

(えっ?!)

 なぜか謝るティア。その態度にノブヒデは心底驚いた。

 

 しかし、ノブヒデの思惑とは裏腹な様子が目前に広がっていく。

「お前達もガードナーならば、優先順位をしっかりと判断せよ。」

 バハムートは意見したティアに逆に諭すように上から言葉を投げた。

 

「・・・はっ。」

「了解しました。」

 カシコまるティアとさも当然のようにニコニコと笑顔で答えるレオン。

 

「・・・・・。」

 その横でノブヒデは釈然としなかった。

 

 そんなノブヒデがうつむき加減の中、

「アルテマの巫女は大丈夫?」

 シヴァは優しい声でふさぎ込んでいるミナに声をかけ、ミナの背中を優しく摩った。

 

 コブシを握り締めて、それを見ているだけしか出来ないノブヒデ。

「・・・・・・ミナ。」

 ノブヒデは誰の耳にも届かないだろう小さな声でその名を口にすることしかできなかった。

 

「・・・・・・。」

 バハムートは常に正面を見て飛んでいく。知ってか知らずか、お構いなしに一行をどこかの空の彼方へと連れ去っていく。

 

 

 

 




突如現れた最強の守護獣バハムート
その背に乗り、一向は何処かに・・・。
そこで明かされる巡礼の非情な事実と母の過去とは?


次回、「使命の重さ」
青年は王と対峙した先に何を思う?(千葉繁さん風)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。