FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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命の灯火が消え掛かっているヒロヨシ。
しかし、世界はそんなヒロヨシを
黙ってベッドの上で安静にさせてはくれなかった。


ヒロヨシとギルガメッシュ

「ヒロヨシ博士、お待ちしておりました。」

ある部屋に入ると一人の女性がヒロヨシに丁寧に挨拶をした。

 

「・・・いえ、お役に立てれば光栄です。メラーニ中佐。」

ヒロヨシは車椅子に乗った状態でメラーニにお辞儀をした。

 

ヒロヨシは最早、満身創痍の状態で移動は車椅子となっていた。

海岸沿いの基地に隣接する病院から内陸の方に移動して、そこでアグニスの代わりに指揮を執っていたメラーニの元に呼ばれて来たのだった。

もちろん、アグニスの死はメラーニにちゃんと伝わっている。

その悲しみを一切感じさせることなく、彼女は気丈に振舞っている。

兵士の中では二人は愛し合っていると噂されるほど、いつも一緒にいて、これからもそうだと思っていたが、今はもう見る事は出来ない。

 

「博士、資料の到着はもう少々時間が掛かります。が、それよりも厄介な事が起こりそうなので、身体に障るでしょうが、移動させてもらいました。」

メラーニがにこやかにヒロヨシに話す。

 

「・・・いえいえ、こんな私に尽くして頂いてありがたい限りですので・・・。」

ヒロヨシはこれまでの高待遇とも言える至れり尽くせりのこの状況に対してのお礼を述べた。

 

軍としてはヒロヨシの知識は貴重なので、当然の計らいだとは思うが、それにしても万全の医療体制と管理は予想以上のものだった。それは全て、アグニス。今となっては、メラーニの影響が大きいと言わざるを得ない。

 

 

「博士は、オメガについてご存知でしたか?」

メラーニが不意にヒロヨシに質問する。

 

 

「・・・オメガですか?・・・いえ、初めて聞く・・・何かの名前ですか?」

メラーニの質問に丁寧に答えるヒロヨシ。

 

「・・・いえ、なんでも兵器の名前だそうで・・・。」

にこやかに柔らかく話すメラーニ。

 

 

「失礼しますっ、中佐っ!到着しました!」

 

 

ヒロヨシがメラーニと話していると部屋の中に一人の兵士が飛び込んできた。

 

「了解したっ・・・博士、目的のモノが届いたようです。よろしくお願いします。」

メラーニは最後にそうヒロヨシに微笑む。

 

「わかりました。拝見させて頂きます。」

車椅子に座ったままヒロヨシは軽くお辞儀をしてメラーニに挨拶をした。

 

ヒロヨシはお付きの看護師に車椅子を押してもらい、メラーニの執務室から連れて行かれ、いよいよギルガメッシュの資料と対面することになる。

 

 

 

「・・・・こっ・・これはっ・・・・・・。」

 

 

 

ヒロヨシは一目ギルガメッシュの一部の資料に目を通しただけで驚愕してしまった。

その資料に書かれている技術、知識、見識。全てにおいて、オーバーテクノロジーで、とても常人が読み解けるものではなかった。それでも、ヒロヨシはそのエイチの一端に触れただけで震え上がってしまった。

 

(・・・なんて恐ろしい知識なんだ・・・これがもし、外部に流れていたら・・・。)

ヒロヨシは脂汗を隠さずにはいられなかった。

 

「・・・博士、大丈夫ですか?」

兵士が心配になってヒロヨシに声を掛けた。

 

さすがに軍事機密となるので、看護師は部屋の外で待機してもらっている。見た所で、理解はできないだろうが当然の処置だった。かわりに、技術部に配属されていた兵士がモノの扱いが分かるという事で助手として付き添っていた。

 

「・・・すまない・・・この資料はどれだけの人間の目に触れているのでしょうか?」

ヒロヨシは深刻な顔をして兵士に尋ねた。

 

「・・・さっ・・・さぁっ・・・即答はしかねますが・・・たぶん、そう多くはないかと・・・。」

兵士は出来る限り丁寧に答えた。

 

「・・・早急にメラーニ中佐に聞いて下さい。そして、中佐にここに来るように伝えて下さいっ。」

ヒロヨシは力強い目で兵士に訴えかけて促した。

 

「・・・りょっ、了解しましたっ。」

兵士はヒロヨシの意志を汲み取り、急いで部屋を出て行く。

 

「・・・・・・・。」

兵士が出て行ってからヒロヨシは資料に目を通す。

 

膨大な資料だが、ヒロヨシはスラスラと目を通していく。

全てを理解しているわけではないし、出来るわけも無い。が、ヒロヨシはマテリアルとアルテマクリスタルの知識がアースカンド一。いや、唯一と言って良いほどの人物なので詰まることなく、読む事が出来た。

 

「・・・この文体は見た事がある・・・ハディが私に見せたのはギルガメッシュ博士の資料の一部だったのか・・・。」

資料を読み進める中で、ハディが一度ヒロヨシに資料を持ってきたことがあったのを思い出す。

その資料は、今目の前にある資料の中の一部だったのだとヒロヨシは理解した。

 

 

「博士っ!失礼しますっ。」

 

 

資料に熱中している中、メラーニの声が部屋に響き渡った。

 

「中佐ッ、よかった。」

ヒロヨシは資料から一旦目を離してメラーニを見る。

 

「何かわかったのですか?」

メラーニは真剣な顔でヒロヨシに尋ねた。

 

「・・・えぇっ・・・この資料は大変なものです・・・。」

メラーニにそう伝えて、メラーニの後ろに控えていたあの兵士に目をやる。

 

「・・・・・・。」

メラーニはヒロヨシの意図を汲み取り、兵士に部屋を出るようにジェスチャーで指示を出した。

 

兵士は敬礼を簡単に済ませて、そそくさと部屋を出て行く。

 

 

「・・・この資料は本当に凄い・・・この資料の一つの技術だけで世界の構造が簡単に変わってしまう・・・。」

兵士が部屋を出たのを確認してヒロヨシがメラーニに深刻さを伝える。

 

 

「・・・・・・。」

ヒロヨシの言葉に真剣に耳を傾けるメラーニ。

 

「・・・この資料を見た者はどのくらいいるのですか?」

ヒロヨシが真剣にメラーニに質問した。

 

「・・・余り居りません。さっきの兵士を含めても、数人かと・・・。」

ヒロヨシの目をしっかりと見て、答えるメラーニ。

 

「・・・なら、マテリアやゲートに関わっているような人間には?」

ヒロヨシが質問を続ける。

 

「・・・大丈夫です。博士だけです。」

メラーニが尚もジッとヒロヨシの目を見て答える。

 

「・・・・・・そうですか・・・それはよかった・・・。」

ヒロヨシはそこまで来るとホッとして息を大きく吐き、車椅子の背も垂れに身体を預けた。

 

「・・・博士、オメガについては何か分かりませんでしたか?」

メラーニはその様子を見て、少し顔を緩めるがせっつく様にヒロヨシに質問した。

 

「・・・えぇ、全て理解は出来ませんが・・・オメガについての記述を中心に探していました。」

ヒロヨシはオメガと言う言葉が気になって、事前に資料の中からオメガの記述をピックアップして見ていた。

 

「さすが、博士です。我々ではどうにも理解出来ませんので・・・。」

メラーニもやっと気を緩めて一息つく。

 

「・・・それは幸いですよ・・・この資料は徹底的に処分しなければなりませんから・・・。」

ヒロヨシがそういって真剣な顔で資料に目をやる。

 

「・・・・・・。」

ヒロヨシの言葉にメラーニにピリついた空気が流れ込む。

 

「・・・安心して下さい。今すぐと言う事ではありません。時期が来たらで構いません。」

ヒロヨシはニコリと笑ってメラーニに伝える。

 

「・・・分かりました。私が責任を持って・・・。」

メラーニが真剣な顔に戻って、ヒロヨシにそう約束した。

 

「・・・この資料には、マテリアルのエネルギーを活用した装置を作っていた私でも思いつかなかった兵器の設計についてはもちろん、アルテマクリスタルの作用についても書かれています。メラーニ中佐が心配していたオメガについても・・・。」

ヒロヨシが資料に目を通しながらメラーニに説明する。

 

「・・・確かに・・・このオメガと言うのは厄介ですね。」

ヒロヨシが一つの資料に集中してメラーニに言葉を続ける。

 

「このオメガは、完全に独立して、自ら考え、動く兵器です。動力源はアルテマクリスタルを完全に複製したと思われるオメガクリスタル・・・この理論が正しいなら活動は無限です。」

資料の内容を読みながら、メラーニに分かりやすいように噛み砕いて説明していくヒロヨシ。

 

「・・・無限・・・ですか・・・。」

ヒロヨシの言葉に戦慄するメラーニ。

 

「・・・オメガ本体も脅威ですが、別の資料に書かれている『落とし子』と呼ばれる兵器が我々にとっては最大の脅威だと思われます。」

心なしかオメガについて説明するヒロヨシの目はランランとして、ワクワクしているようにメラーニには映った。

 

「この落とし子もオメガの中で自動生成されて、資源が尽きない限り、永遠に生成されていきます。エネルギーもオメガから供給されているので実質無限です。個々が独立して動き、必要な資源を集めたり、敵を排除したりするようなので、この落とし子が世界に拡散すれば、今の我々にはどれだけの被害が出るか分かりません・・・。」

ヒロヨシは淡々とメラーニに説明していく。

 

「・・・分かりました。すぐに軍を編成して、落とし子に備えるように伝えます。」

メラーニはそう言うと部屋の出入り口の方に歩き出し、部屋から身体だけを出して、外にいる兵士に指示を出した。

 

 

「・・・本当に世界は丸ごと地獄に落ちるのかもしれません・・・。」

「・・・っ・・・。」

 

 

その時のヒロヨシの顔を見て、メラーニは戦慄した。

恐ろしいと言う感情ではなく、喜んでいるようなヒロヨシの表情は確かに人間ではなく、科学者という存在なのだと初めて理解した瞬間だった。

 

 

 

 




ヒロヨシがオメガについて、対応策などを思案する中、
オメガは無慈悲に人類へと牙を容赦なく向ける。

暴れ回るオメガの「落とし子」達。
また一人、一人と戦場に命が散っていく。

次回、「オメガの落とし子」
青年よ、闇のジュウリンから目を背けるな!(千葉しげるさん風)
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