オメガにとっての敵もその眠りから目覚めようとしていた。
バハムート達は悠然と飛び続けるオメガに対して、ずっと休まずに攻撃をし続けていた。
その影響で落とし子がもう何百と犠牲になってはいたが、本体のオメガに対してはさほどダメージはなく、その進行を少しも緩める事は出来なかった。
「ハァァッ、ハァァッ・・・ここまで力が落ちているのは自分自身に腹が立つ。」
流石のバハムートも肩で息をし始めていた。
「フッフッフッフッ、我らの王ともあろう存在が弱音とは滑稽だな・・・。」
まだまだ元気なリヴァイアサンがバハムートを皮肉る。
「・・・他者を頼った弱さなのか・・・昔の自分なら考えられん・・・。」
バハムートは自分の右の手の平に目をやってそう呟いた。
「・・・ほぅっ・・・。」
バハムートの口から思わぬ言葉を聞き、素直に感心するリヴァイアサン。
「バハムートよ、それは弱さではない・・・お前がこれまで持っていなかった強さだ・・・。」
バハムートを真剣な目で見て、言葉を投げかけるリヴァイアサン。
「・・・そうか・・・。」
バハムートもリヴァイアサンを見て、素直に納得した。
「・・・ならば、この際・・・頼る事にしよう・・・。」
バハムートは誰にも分からないぐらいに口角を上げて笑った。
(お前達ッ、そろそろ起きろッ!!!)
〔ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーンッ!!〕
バハムートのその雄叫びはアースカンド全土を揺るがした。
海という海を越え、山という山を越え、
大地と空を振るわせた。
〔ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ、ドガガガーーーーーンッ!〕
オメガを中心にして西の方角。
とある山々が立ち並ぶ山脈の奥深く、山々を震え上がらせながらその者は目覚めた。
その姿はまさに歩く山城。
純白の塗装で固めた大きな城にまさに足が生えたように動いている。
その者の名は「アレクサンダー」。
〔ズシーーンッ、ズシーーーンッ・・・〕
バハムートの声に応えるように。
その圧倒的な巨躯で大地を揺らして、その者はオメガを目指す。
〔ドドドドドドッ、ビュシュンッ、ビシュンッ〕
山々が立ち並ぶフモトの街で落とし子達が無慈悲に人々を襲っている。
〔キャアアアアアアアッ、ウワアアアアアアアアアアッ〕
〔おかあさあああああああああんッ〕
逃げ惑う人々、大事なモノを守ろうと命を落とす者。
阿鼻叫喚が街に木霊していた。
〔ズシーーンッ、ズシーーーンッ・・・〕
落とし子に襲われて、壊滅状態の街に大地を揺らす音が聞こえだす。
「・・・ジッ、地震・・・泣きっ面に蜂かよ・・・この世の終わりだ・・・。」
逃げ惑って疲れきっていた一人の男が大地の揺れに絶望して天を仰ぐ。
〔ズシーーンッ、ズシーーーンッ・・・〕
「・・・ママッ、山が動いてるッ。」
街に突然地響きと共に現れた巨躯を見て、幼い女の子がそれを指差す。
「マリちゃん、何をいっ・・・ッ?!」
逃げ惑い疲れ切った母親が子供の言葉に導かれて、子供の指が指し示す方向を見るとそこには
〔ズシーーンッ、ズシーーーンッ・・・〕
動く山とはよく言ったもので、何十mもあるであろうアレクサンダーという山が大地を踏みしめて歩いていたのだった。
〔ズシーーンッ、ズシーーーンッ・・・〕
アレクサンダーは無言でただただ街を横断しながら前進している。
もちろん、その遥か先にはオメガがいるのは間違いなかった。
バハムートの呼び声に答えるべくアレクサンダーはただただまっすぐオメガを目指していたのだった。
〔ピシュンッ、ピシュンッ、ドドドドドドッ〕
アレクサンダーを見つけた落とし子達は人間からアレクサンダーに目標を変えて攻撃を始める。
〔ビコーーンッ、ドシュシュウウウウウウウンッ、ドドドドガーーーンッ〕
落とし子の攻撃に反応するようにアレクサンダーも反撃を開始した。
両肩に備え付けられた砲台から落とし子に攻撃を放つ。
その攻撃は見事に落とし子達を殲滅していき、街を救う形となったのはいうまでもない。
人間に被害が出なかったと言えば嘘になるが、そのまま落とし子に全滅させられるよりは何倍もマシだっただろう。
「お山さんッ、ありがとうッ!」
幸か不幸か落とし子全滅により助かった先程の女の子がアレクサンダーに向かって手を振った。
〔ズシーーンッ、ズシーーーンッ・・・〕
「・・・・・・。」
もちろん無言のアレクサンダーは女の子をイチベツする事もなく、黙々とオメガに向かって歩くだけだった。
後にこの地方でアレクサンダーが守り神様として祭られる事になるのは言うまでもない。
「バハムートが我々を呼ぶとは時代は変わったモノだ・・・。」
大きな剣を担いで、重装備の馬にマタガる騎士がそう呟きながら空を見上げている。
ここはオメガを中心にして南西の方角。
「・・・たっ、助かったのか・・・。」
戦い疲れてボロボロになっている兵士が突然何処からともなく現れた騎士を見て、言葉を零した。
〔ガサガサガサガサッ、ドドドドドドドッ〕
落とし子達が騎士に群がって攻撃を仕掛けていく。
「フッ・・・お前達では準備運動にもならん・・・。」
騎士はそういうと剣をグルンと一回転させる。
「唸れっ、斬鉄剣ッ!」〔スインッ〕
騎士がそう言いながら馬を走らせて、落とし子の群れの中を颯爽と走った。
〔ドドドドガゴーーーーーーンッ!〕
剣を一振りして、颯爽と走った次の瞬間。
落とし子達は勢い良く爆発して消え去ってしまった。
〔ドシュンッ、ドシュッ、ドドドドドドッ〕
残った落とし子達が応戦する。
「貫け、グングニルッ!」〔ボシュンッ!〕
騎士は剣を消して、右手に槍を持ちその槍を落とし子達に無造作に放った。
〔ドドドドドドドズガゴオオオオオオオオンッ!〕
槍は意思を持っているかのように騎士の手から離れると閃光となって、落とし子達を一体残らず貫いて、それが自然な理だと言わんばかりにスッと騎士の手元に帰ってきた。
「・・・こんなものか・・・。」
騎士は軽くそう流すと辺りを見回した。
「・・・あっ・・・あんたっ・・・いったい・・・?」
あっという間に自分達があれ程苦労した落とし子を消し去った騎士に対して、素直に疑問を投げかける兵士。
「・・・我が名は『オーディン』。ミッドガルドの偉大なる光のクリスタルの守護獣。拾った命を大事にするのだな・・・アースカンドの民よ。」
オーディンは兵士の質問に素直に答えて、颯爽と空へと馬で駆け上がり、瞬くに空へと消えて行った。
「・・・・・・オーディン・・・神の使者・・・か・・・。」
兵士はオーディンの名を口にしていつまでもオーディンが消えた空を眺めていた。
「・・・まったくもって、ディアボロスの小僧はかわらんようだ・・・。」
大きな鎌を肩に担いで黒いローブに身を包み、もう動かなくなった落とし子達の残骸の上に座っているガイコツがそう呟く。
ここはオメガを中心にして南の方角。
「・・・デスよ、あやつはああいう性分だ・・・諦めよ・・・。」
デスの近くで同じように落とし子達の残骸の上で悠然と立っている一つ目の怪物がそう言った。
「カドブレパスよ、そうはいってもかわいい眷族。お仕置きぐらいせねばな・・・。」
デスが上がる口角を現すようにカタカタとアゴを鳴らして笑った。
「・・・・・・。」
地獄のようなその光景を戦い疲れ切った兵士や街の住民が遠巻きに見ている。
生きた心地がしないだろう。
それもそのはず、自分達を苦しめた落とし子の残骸の上に鎌を持った死神が佇み、怪物と話しているのだから、自分達は死んだのだろうと思い込んでも仕方がなかった。
「・・・ホッホッホッホッ、人間達が我らをイブカしげに見ておる・・・お前のせいだぞ。」
自分達の事を生気を失った目で見ている人々を笑ってデスがそう言った。
「・・・アホウが、死神のお前の姿に決まっているだろう・・・お呼びが掛かっているんだ・・・せっかちな王を待たせるわけにも行くまい・・・そろそろ行こう。」
カドプレパスはデスの悪態も気にも留めずにそう言うとオメガの方向にスタスタと歩き出した。
「・・・お主達は拾った命を大事にせいよ・・・その時が来たら、迎えにいくでな・・・なんてな・・・ホッホッホッホッ・・・。」
デスは人々にそう言い残してカドプレパスが歩いていく方向にふわりと飛んで行った。
「・・・・・・。」
アースカンドの人々はその光景が夢だとしか思えず、ただただ呆然としているしかなかった。
バハムートの雄叫びに呼応するように
アースカンドの各地から次々と守護獣達が現れ続ける。
アースカンドをジュウリンしていた落とし子達を蹴散らしながら
そのモノ達が目指すのは?
次回、「集うモノ達」
青年よ、王の前に集いしは聖者か愚者か?!(千葉しげるさん風)