バハムートの元に集まる守護獣達
そんな中、メラーニの元にヒロヨシから朗報が飛び込んでくる
「ヨルパ地方、被害甚大ッ!救援要請が来ています!」
「アボリカ地方からも救援要請です!」
「ネダホ州から防衛線が突破されそうだと報告がッ!」
慌しく動き回る数人と通信機で通信しながら状況を叫ぶ人々。
その一室が世界の中心かのように情報が咲き乱れ、狂い踊っていた。
「ヨルパにはロスマ艦隊を対落とし子装備で向かわせています。今は持ちこたえるように伝えて下さい。アボリカにはロスマ艦隊からまずは航空部隊を展開させてけん制させて、とにかく時間を稼ぐようにっ。ネダホの防衛線は後退して対落とし子装備の部隊をもっと急がせるように!」
情報が飛び交い混乱する中でも、メラーニは一つ一つ確実に指示していく。
「サッ!」
指示をされた通信兵達はそれぞれ相手と通信を取り、メラーニに言われたように返答をしていく。
「メラーニ中佐ッ、いくらなんでも世界各地に支援をするのは無謀すぎます。どこか切り捨てることも・・・。」
一人の兵士がメラーニに進言する。
「軍の編成で無理がないのであれば、出来る限り支援をしなければなりませんっ。元々は我々がまいた種・・・この戦いの後のことも考えての行動です。」
メラーニは進言してきた兵士に声を荒げることなく、丁寧に返答した。
「・・・了解しました・・・司令官がそうおっしゃられるなら・・・。」
兵士は少し納得しない顔で返事をする。
「・・・貴方の助言は助かります。臆せず、もっと言って下さい。」
一番大変であろうメラーニだったが、全体の士気を下げないように細やかなケアも怠らない。
「了解しましたッ!」
納得いっていなかった兵士は不意のメラーニの笑みに心奪われる。
「・・・メラーニ中佐。」
「博士ッ!」
慌しい司令室に車椅子でヒロヨシが姿を現した。
「我々はオメガの動向よりも落とし子に集中して下さい。本体をけん制したり、偵察は不要です。」
ヒロヨシが淡々と話す。
「・・・しかし、博士・・・我々とて、本体を見張っていなければ・・・。」
メラーニの隣にいた兵士がヒロヨシに反論する。
「・・・オメガは我々の手に負える存在ではありません・・・それに、オメガに対してはバハムートだけではなく、他の守護獣達も対処するでしょう・・・我々が居ては邪魔になるだけです。」
ヒロヨシはこの後のことを予言するかのように話す。
「・・・確かに博士のおっしゃるとおり、各地で未確認の化け物が落とし子を殲滅したと言う情報がありますが、それが博士のおっしゃる守護獣達なのですか?」
メラーニはヒロヨシの話を聞き、今まで入ってきた情報と照らし合わせて尋ねた。
「ギルガメッシュ博士の資料にはオメガの封印で各属性の守護獣達と連携した事が書かれていました・・・光2、闇が2、樹、風、水、土、火がそれぞれ1です。」
ヒロヨシがギルガメッシュの資料から得た知識を元にメラーニ達に説明していく。
「オメガの封印は守護獣達がオメガのエネルギーを膨大に吸収する事で成り立っていました。封印が解けた今、アースカンドでその任に当たっていた守護獣達が目覚め、オメガに対して行動を起こすのは間違いありません。その戦いに我々が加担する事は邪魔になってしまいます。ならば、その兵力を対落とし子に向けるのが我々が少しでも生き残るための希望になります。」
あらゆる情報を集約してヒロヨシが結論を話す。
「・・・確かに・・・博士のおっしゃるとおりかもしれません・・・ね。」
メラーニがヒロヨシの説明を聞いて考える。
「本当にオメガから目を離してよろしいのですか?」
兵士が心配そうにメラーニに進言する。
「オメガの様子は衛星で十分でしょう。我々がするべきことは一人でも多くのアースカンドの人々を守る事です。」
ヒロヨシが今まで見た中で一番の鋭い目をして兵士を見る。
「・・・分かりました。博士がオメガに対しての第一人者なのは間違いありません。対落とし子のことに関しても成果が上がってきています。この絶望の中で一つでも多くの未来を守りましょう。」
メラーニはヒロヨシの自信に突き動かされ、大きな決断をした。
「オメガはともかく、落とし子についてはギルガメッシュ博士の戦闘記録は豊富です。今の我々の文化レベルでは電撃を利用した攻撃方法でしたか活路はありません。バハムート達が本体を抑えているのであれば、それは逆に我々は落とし子さえ倒せば世界を守れるかもしれない。」
ヒロヨシが一筋のワラをメラーニ達に差し出す。
「博士、その考え方ではオメガは倒せる前提なのですが、本当に宜しいんですか?」
兵士はもっとも重要な事をついてくる。
「・・・大丈夫です。それについては私が言葉で説明する事はうまく出来ませんが、必ず何とかなりますっ。」
ヒロヨシは敢えて、ユッケの事は話さなかった。
父親が息子を信じると言葉に出せば、他人は「茶番だ」と一蹴してしまうだろう。
それではここまでまとめた話もややこしくなってしまう。
しかし、ユッケ達がオメガを倒せない事には世界は救えないのは確かだった。
解かれた封印を再構築するのは現代の科学力やヒロヨシでも到底不可能。
バハムート達の力ではオメガを抑えられても倒す事には到らないと分析した。
ならば、人類が希望を見出すのは一つしかなかった。
ここに来て、アースカンド人にとっての光を求める願いもユッケに集約しようとしていた。
アースカンドの世界はオメガの落とし子達によって、文明そのものの崩壊のレベルにまで達しようとしている。
メラーニ達の軍事施設が落ちれば、ほぼ連合軍の機能はなくなってしまうだろう。
その瀬戸際に父は息子に全てを託す選択を世界にさせたのだった。
それが正解か否かを知る者は最早、神しかいない。
世界の命運を知ってか知らずか、
ユッケと一緒に氷漬けになったアルテマウェポンの小さなアルテマクリスタルが静かに輝いた。
アースカンドの体勢が固まる中、
その希望を一手に背負った青年を復活させようと
仲間達が火の聖地へと足を踏み入れようとしていた。
次回、「ヴェフォニス火山にて」
青年よ、仲間の声が聞こえるか?(千葉しげるさん風)