FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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バハムートに連れられてきたノブヒデ一行。
そこでバハムートと対峙する事になるノブヒデ。
果たして、バハムートの口から語られるものとは?


使命の重さ

「・・・この辺りだな。」

どのくらい飛んだだろうか。バハムートはお目当ての場所に到着したことを一向に告げた。

 

そこはだだっ広い草原だった。遠くで大きな塔らしき建造物が光っているのが分かった。

 

「ここは・・・。」

光る建造物を見て、何かに気付いたティア。

 

「光の塔があるということは、シャイナールの近くですかな。」

ニコニコしながらレオンが場所を特定した。

 

「ここならば、盗み聞きしていれば、すぐ分かる。」

バハムートが辺りを見回して敵がいないかを確認した。

 

「バハムート、少し荒っぽくはない?」

 先ほどの一件を蒸し返して尋ねるシヴァ。

 

 シヴァの言葉に表情一つ変えずにバハムートが口を開く。

「・・・使命も忘れて、遊んでいたお前に言われる筋合いはない。」

 重い声と鋭い眼光でシヴァを威圧するバハムート。

 

「・・・・・・。」

 痛いところを突かれたのか黙ってしまうシヴァ。

 

 そんなシヴァを横目にユッケもとい、ノブヒデが閉じていた口をこじ開けた。

「あんたは守護者の王って言われてるんだろ?もう少し守ってる者に関心を持った方がいいんじゃないのか?」

 イライラしていたノブヒデはぶちまける様にバハムートに言葉をぶつける。

 

 

 

 ノブヒデの言葉にバハムートは視線をシヴァからノブヒデに向けた。

「アルテマの子ノブヒデよ、何か勘違いをしているようだな。」

「っ?!」

 バハムートがノブヒデに向かって話したかと思えば、突然のノブヒデの出生の秘密の暴露に驚き、面食らうノブヒデ。

 

 

 

 呆然とするノブヒデを見て、シヴァは顔をしかめる。

「・・・バハムート、その事は・・・。」

 そう言って辛い表情を隠せないシヴァ。

 

「シヴァよ、何も伝えていないのか?」

 バハムートはそう言って、シヴァに詰め寄る。

 

 シヴァに詰め寄るバハムートを見て、ハッと正気を戻したノブヒデが一歩前に出て、バハムートに尋ねる。

「・・・アッ、アルテマの子?それなら、俺じゃなくて、ミナじゃ?」

 ノブヒデは母親がこの世界の住人だったとシヴァからは聞いてはいたが、まさかその母がアルテマの巫女だったと言う事実は計り知れない衝撃をノブヒデに与えた。

 

 ノブヒデの言葉に少し目を細めるバハムート。

「・・・アルテマの巫女ではない。アルテマの巫女が生んだ有るまじき子よ。お前は我々の事を正義の使者とでも思っているようだな。」

 バハムートはそう鋭い釘をさすように言葉をノブヒデに投げる。

 

 そこで、ノブヒデはバハムートはノブヒデを探していたようだったが、どうやら好意的な感情ではないことに気付かされた。下手をすれば、ここでバハムートに命を奪われるのではないかという不安にも襲われる。

「・・・・・・。」

 そう思うと、ノブヒデは口を真一文字に扉を閉めるようにするしか選択肢はなかった。

 

 ノブヒデの感情を読み取るようにバハムートが追い打ちをかけていく。

「我々は守護獣ではあるが、別に世界の人々の平和な生活を守っているわけではない。」

 バハムートはそう淡々と話していく。

 

「我々はアルテマクリスタルの力によって生み出され、そこにいるシヴァも同様、クリスタルの存続が我々の使命なのだ。クリスタルの安全を確保できるならば、民の生活など問題ではない。」

 バハムートの非情なまでの忠誠心が言葉になって襲い掛かる。

 

 

 王の素質なのか。

 

 

 バハムートの頭の中は実に冷酷ではあるが目的を達成すると言うことに対して純粋に。そして、揺るがない判断力を持っていることを皆に知らしめた。

 

 

 

 バハムートとの口から発せられる音が重さを増していく。

「私の一時の油断から守るべきアルテマクリスタルを見失った。今では私は王と言われる事に恥すら感じている。しかし、この世界がまだあるということはアルテマクリスタルが存続しているということ。ならば、私はその責務を果たさねばならないのだ。クリスタルは守るが、その上に住んでいる民を守ると約束した覚えはない。」

 鋭い眼光がその考えに一切の曇りがないことをノブヒデに告げていた。

 

 

 

「・・・でも、あんたは皆に慕われていたじゃないか。あの火の神官も。」

 負けじと前に出るノブヒデ。だが、その姿は揺るがない信念の前に滑稽にすら映る。

 

「何度も言うように、私は正義だの悪だのという安っぽい思想で動いてるわけではない。その者にどう思われるかはその者の捉え方だ。」

「・・・・・・。」

 バハムートの鋼鉄のような魂は何を言っても揺るがないと確信したノブヒデは撃沈した。

 

 

 その場に絶対的な静寂が支配する。

「・・・さて、もう御託は済んだか。」

 バハムートだけがその場に音を生み出すことができ、ノブヒデに止めを刺してきた。

 

 

「・・・・・・。」

 黙り込む一同。反論の余地など、ノブヒデの他にも誰も持ち合わせているわけがないのだから当然ともいえる。

 

「ノブヒデよ、お前はこの世界で許されざる存在だ・・・が、お前がこの世界に来たことは救いでもある。」

 バハムートがただただ淡々としゃべる。

 

「火のクリスタルはアルテマクリスタル無き後、アルテマの巫女が命を削りながらコントロールしてきた。しかし、お前の出現により、その必要がなくなったのは喜ばしい。」

 バハムートの淡々とした氷のような言葉が続いていたが、

 

 

 

「命を削る?」

 ノブヒデは自分の耳を疑い、自然とその疑問が口から飛び出した。

 

 

 

 バハムートは自分の話に突然不躾に割って入ってきたノブヒデの事など些細なことだと思いながら、ただ口を開く。

「そうだ。アルテマの巫女達はその命を削り、その生命エネルギーをクリスタルに供給することでコントロールしてきたのだ。今ではそれももう追いつかなくなってきていたがな。」

 バハムートはさも当然の行為のようにミナ達、アルテマの巫女が巡礼をしてきたのはクリスタルの力をコントロールするためだと言ってのけた。

 

 今思えば、地域の環境を大きく左右するクリスタルの力。お祈りだけで簡単に済むはずがないとは思っていた。その疑問がここに来て解決したのだが、その事をさも当然かのように淡々と冷徹に話すバハムートに恐怖した。

 

「クリスタルが要求するエネルギーはアルテマクリスタルという無限のエネルギーを生み出す原動力があってこそだ。その代用として、巫女達がつないできた。」

 なんとも無機質に言うバハムート。

 

「・・・さっき、あんたは『自分の一時の油断で』って言ってたけど。」

「それがどうかしたか?」

 淡々と話していくバハムートに我慢できなくなったノブヒデが割って入った。が、当然、バハムートにとっては些細なことでしかない。

 

「今の話だと、巫女がその尻拭いをしてきたってことじゃないのか?」

「・・・・・・。」

 ノブヒデの言葉に黙るバハムート。

 

 ノブヒデはバハムートに反撃する光明を見つけて、猛り狂う喜びが・・・湧くはずもない。その事実にノブヒデの体内は熱くタギる。

「あんたの背負ってる使命とその力は大したものだけど・・・そこは否定しない。けど、少しでもいいから、あんたの使命を肩代わりしていた人達への敬意は忘れないでくれないか?」

 ノブヒデはミナをイチベツして、バハムートを睨みながら真摯な気持ちだけをぶつけた。

 

 ノブヒデの言葉で、バハムートはミナの今の姿をやっと視界にいれた。

「・・・・・・。」

 バハムートは黙って、現アルテマの巫女である人物をただ見ている。

 

 目に涙をいっぱい貯めて、ノブヒデがその目をバハムートに向ける。

「母さんがどうして、俺の世界に来たのかは知らない。俺があんたにどれだけ嫌われてるのかは知らない。けど、俺がこの世界が滅ぶのを止められるって言うなら手伝うよ。だから・・・そのかわりといっちゃなんだけど、この世界をあんたとは違う意味で守ろうとしている人達の事を少しは褒めてあげてもいいんじゃないのか?」

 ノブヒデはバハムートに怒りを抑えながら言葉を静かに投げかけた。

 

 バハムートはノブヒデのせいいっぱいの言葉を受けきってなお揺るがずにその眼光で見据える。

「・・・それでお前が動くと言うのであれば、善処しよう。」

 バハムートなりにノブヒデと向き合い、言葉を選び出す。

 

 

 

 場の空気が完全に冷え切った中で、さも当然のように口を開く男。

「いやはや、すばらしい男ではありませんか、バハムート様。」

 ニコニコとレオンがノブヒデに続く。

 

 

 高圧的だったバハムートに果敢に挑むノブヒデの姿に打たれ、ティアもやっと口を開く。

「私達、ガードナーはどのように動けば、よろしいですか?」

 ティアもただ使命だからとアルテマの巫女達を見ていたわけではない。見送ってきた彼女たちに少しでも寄り添ってくれたノブヒデにティアなりに出来る限りの誠意を返えすように、その場を前へと進めていく。 

 

 バハムートはガードナー達の本意を見るように目を細める。

「アルテマクリスタルとクリスタルのために動くと言うならば、教えておこう。火のクリスタルが安定したのは、エネルギーの供給が再開されたからだ。それは他でもない、この世界にアルテマクリスタルが帰還したことを意味する。」

「っ?!」

 驚く者とそれを薄々感じていたものに分かれる。そして、感じ取っていた者は一斉にノブヒデの胸元を見た。

 

 

 

「・・・まさか・・・これが?」

 ノブヒデは注目を浴びている事に気付きつつ、おもむろに胸元からペンダント状のクリスタルを取り出した。

 

 

 

「そうだ、その小さなクリスタルこそ、我々の待ちわびたアルテマクリスタルの変わり果てた姿だ。」

 バハムートが少しノブヒデの方に顔を近付けて、ノブヒデの持つアルテマクリスタルを見る。

 

「・・・それはノブヒデの母『リア』が必死に闇の民から守った結果よ。」

 重い口を開き、シヴァが話す。

 

 バハムートの知らないアルテマクリスタルの消失からの経緯。バハムートが一際目を輝かせる。

「どういうことか説明してもらおうか、シヴァ。お前がこの世界を捨ててまで、リアに付き従っていた間に何があったのかを・・・。」

 バハムートは食い気味にシヴァに詰め寄る。

 

 

 

(母さんの過去)

 

 

 

 シヴァの口からはミッドガルドの住人だとしか告げられなかった母の過去が今、ノブヒデの前に明かされようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 




人の命をなんとも思わないバハムート
しかし、それは全てアルテマクリスタル最優先の結果だった。
納得しないノブヒデだったが、母の本当の姿に驚きを隠せない。
そして、シヴァから語られるあの日の出来事。

次回、「リアという巫女」
青年は母の真実を受け止められるのか?(千葉繁さん風)
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