FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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いよいよユッケ復活が近付くのか?
フェニックスがその判断を直接下す時がくる
ユッケは皆の想いにどう応えるのか?


ユッケとフェニックス

「・・・・・・」

ユッケは眠っていた。

 

 

 

暗い暗い深海にゆっくりと身を委ねる様に眠っていた。

落ちていく身体は綿のように軽く、その先に光などない。

肌で水の柔らかさを感じているだけで、呼吸の辛さもない。

自分が元から魚だったと疑いようがないような感覚で沈んでいく。

 

 

「・・・・・・。」

そんな沈んでいくユッケの耳に誰かの声が微かに届く。

小さ過ぎて、何を言っているのかは分からない。

 

 

辛うじて、それが声で自分に呼びかけているのだろうと感覚で分かるだけだった。

 

「・・・ユッケ・・・。」

ユッケを呼ぶ声が確かな言葉として鼓膜を揺らす。

その声は段々と沈んで行くユッケに近付いてきていた。

 

「・・・聞こえますか、ユッケ?」

声は段々とハッキリなモノとなり、ユッケの意識に届く。

 

しかし、ユッケには聞き覚えのない声でその声に答えるには戸惑いを隠せなかった。

 

 

「私の名はフェニックス・・・火のクリスタルの守護獣フェニックスです。」

その声はハッキリとユッケに届き、確かな存在をユッケに示した。

 

 

「・・・フェニッ・・・クス・・・。」

ユッケは名前を繰り返しながらゆっくりと目を開ける。

 

沈んでいた身体がふわりと止まり、空に停滞する雲の様に漂いだした。

身体に力が入らないユッケだったが、重いマブタを懸命に開けて、フェニックスの姿を捉えようとした。暗い暗い深海の中で、フェニックスの存在は余りにも異質で、燃える身体が強い光となり、ユッケのやっと開けた瞳を輝きで潰さんとしていた。

 

「・・・うぅ・・・ごめん・・・もう少し・・・。」

ユッケは懸命に開けた瞳をフェニックスの光に慣れさせる時間を貰おうと懇願した。

 

「・・・・・・。」

フェニックスはユッケの傍らで留まり、静かに待っていてくれた。

 

「・・・あぁ・・・すごい・・・な・・・。」

輝きに慣れ始めたユッケは瞳が捉えたフェニックスの姿に素直に驚いた。

 

暗い闇の中で炎で出来た大きな鳥が傍らで自分を覗き込んでいるのだから驚かないわけはない。

フェニックスの存在になれると、今度ユッケが気になるのは・・・もちろん。

 

 

「・・・ここは?」

ユッケは上体を起こして、辺りを見回す。

 

 

「・・・死後の世界ですよ・・・。」

淡々と事実だけを語るフェニックス。

 

「・・・あぁ・・・そうか・・・。」

意外にもユッケは自分が死んだ事をあっさりと受け入れた。

 

それもそのはず、ミナを助ける為にその身を投げ出して、クリスタルに願ったのだから、そう言う結果だったとしてもユッケにしては悔いなど一片もなかった。

 

「・・・なぜ、死んだ貴方のそばに私がいるのか、気になりませんか?」

自分の置かれた立場を早くも理解したユッケにフェニックスが休みなく疑問を投げかける。

 

 

「・・・・・・あなたも死んだ?」

死後の世界に居るのだから当然の結論だろう。

ユッケは素直に考えて答えた。

 

 

「・・・フフフッ・・・残念ですが違います。」

フェニックスは笑って見せた。

 

「・・・・・・。」

ユッケは笑うフェニックスが本当に理解できずに困惑する。

 

もちろん、フェニックスがどういう存在なのかはユッケでも正常な思考ならわかるだろう。しかし、死んでもう自分の役目が終わったと思っている人間にとって、そこまでの思考は未だ戻っていなかった。

 

「・・・あなたは思い残した事がありませんか?」

角度を変えた質問がフェニックスから放たれる。

 

「・・・未練ですか?」

ユッケがフェニックスの質問を再確認する。

 

「・・・そうです。」

フェニックスが子供に優しく教えるように答える。

 

「・・・ミナが・・・皆は・・・世界がどうなったのかな?」

ユッケがフェニックスから視線を流して、暗い虚空を見ながらそう呟く。

 

「・・・未だ世界は混迷しています・・・闇の民も健在ですよ。」

ユッケの問いに率直に答えるフェニックス。

 

「ッ・・・。」

フェニックスの言葉でユッケの思考が段々とクリアになっていく。

 

「・・・貴方の前に私が現れたのは、貴方の生還を願う仲間達の願いです。」

フェニックスが強い眼差しをユッケに向けて、確かな重みのある声で話す。

 

「ッ?!」

クリアになっていくユッケの思考が世界へと追いついた。

 

 

「・・・あなたは他者の屍の上を歩く覚悟がありますか?」

意識がはっきりとしてきたユッケを待っていたかのようにフェニックスが突然の問いを投げかえる。

 

 

「ッ?!」

クリアになった思考にガツンとハンマーで殴るようにフェニックスの一撃がユッケに入った。

 

「・・・結論から言うと、貴方が望むなら生き返ることが出来ます。」

フェニックスは自分の身体を大きく見せるように胸を張り、ユッケの前に立ちはだかる壁になるように翼を広げて威嚇した。

 

「・・・しかし、それは世界を大きく変えることになります。」

フェニックスが翼でユッケを包み込むように動かす。

 

「・・・貴方を生き返らせるということは、私と融合するという事。それはつまり、私の存在がこの世界から消える事を意味します・・・それはミッドガルドの世界から貴方も知っている治癒魔法ケアルが消えるという事・・・蘇生魔法レイズが消えるという事・・・闇の民とのこれからの戦いの中で救えるかもしれない命を繋ぐ希望を貴方が踏みにじるという事・・・。」

フェニックスはユッケに包み隠さず、これからの世界の真実を突きつけていく。

 

「・・・・・・。」

ユッケはフェニックスの言葉を一生懸命理解しようと黙って聞き入る。

 

「・・・貴方はそんな他者の命を踏み台にこれから人生を歩んでいかなければなりません・・・それを知った上で貴方は生き返りたいですか?」

 

「・・・・・・。」

ユッケは答えられない。

 

「・・・貴方の仲間はこの真実を受け入れた上で、貴方の生還を望みました・・・。」

フェニックスがこれまでの経緯も包み隠さず話していく。

 

 

「・・・無責任ですよね?」

「ッ?!」

フェニックスの思わぬ棘に驚くユッケ。

 

 

「・・・だって、そうでしょう?・・・ケアルやレイズが消えた事実や真実を今後受け入れていくのは貴方以外に居ないのです・・・仲間がどれだけ盾になろうとその事実や真実を本当の意味で受け入れ、受け止めるのは貴方たった一人です。」

フェニックスの眼光が鋭くユッケに刺さる。

 

「ケアルやレイズがあれば、助かったわが子の命。助かった伴侶。助かったかもしれない友。その全ての真実が貴方のこれから生きる人生に付きまとうのです。」

フェニックスの大きな瞳がユッケの眼前に迫る。

 

「・・・そして、もう一つ重要な事・・・・・・貴方は人ではなくなる・・・。」

フェニックスがユッケから顔を離して、今度は大きく見下ろす。

 

「・・・えっ?」

ユッケの心は壊れそうなほど攻め立てられる。

 

「・・・私と融合した貴方は簡単には死なない身体を手に入れるでしょう。そして、人の命の理から大きく逸脱した存在になるかと思います・・・過去に私と融合した者は居ないので、不確かですみませんが・・・。」

フェニックスが虚空に視線を流してそう話す。

 

「・・・俺は・・・。」

フェニックスの包み隠さない言葉に今にもつぶれそうなユッケ。

 

「・・・私の見立てでは、闇の民と戦っても勝てる見込みは低いです・・・。」

「ッ?!」

フェニックスが真っ直ぐな目でユッケを見て言い放つ。

その言葉に射抜かれるユッケ。

 

「・・・貴方が生き返った所で勝率が上がるとしても僅かです・・・仮に勝ったとしても、貴方のそれからの人生は不当な扱い、ノノシリを受ける事は確かです。」

フェニックスの瞳が少し潤む。

 

「・・・貴方の仲間がその真実をどれだけ考えているのかは分かりません・・・が、貴方の仲間は本当に貴方が帰ってくれば・・・勝てると信じている。」

フェニックスが今度は優しくユッケに語り掛ける。

 

「・・・・・・。」

ユッケの頭の中でこれまでの仲間との旅路が走馬灯のように駆け巡る。

 

 

そして、ユッケの旅路の最後にシヴァの笑顔が去来する。

 

 

 

「・・・貴方はそこまでして、この世界を救いたいのですか?」

フェニックスが最後にそう尋ねた。

 

 

 

「・・・・・・はい・・・・・・。」

ユッケは十分考えた上で答えた。

 

ユッケはゆっくりと立ち上がり、フェニックスの正面に向き直る。

すると、今まで深海の暗い暗い景色が、二人を中心にして、白く輝き、闇が消え去った。

 

「俺が生き返って、この世界が救えるのなら・・・俺は生き返りたい・・・。」

真っ直ぐな瞳でフェニックスを見るユッケ。

 

「・・・・・・。」

ユッケの言葉を静かに受け止めるフェニックス。

 

「・・・俺はシヴァや皆が笑える世界を守りたいっ・・・その後、俺がどうなろうが、それはその時に考えますっ。」

笑顔でそう言葉を続けるユッケ。

 

「・・・そうですか・・・分かりました。」

ユッケの全てを受け入れてフェニックスが頷いた。

 

「・・・それでは、私は貴方と融合します・・・私と融合した貴方は、火に対して、ほぼ無効となります・・・そして、身体を負傷したとしても驚異的な回復力が貴方を守るでしょう。ですが、あまり無茶はしないで下さい・・・決して死なないわけではありませんので・・・。」

フェニックスはそう丁寧に今後について説明してくれた。

 

「俺がもし、死んだら貴方はどうなるんですか?」

ユッケがフェニックスの言葉で気になったところを素直に質問した。

 

「・・・そうですね・・・貴方が死んだ後の世界にクリスタルが存在するなら、私は長い年月をかけて、復活すると思われます・・・何百年単位だと思いますが・・・。」

少し考えて、フェニックスがユッケの質問に丁寧に答えた。

 

「不死鳥って言われるだけあって、本当に不死身なんですね・・・。」

フェニックスの答えに素直に感心するユッケ。

 

「・・・別に私が特別なわけではありません。クリスタルと直接繋がっている守護獣はクリスタルが存在しているならば、エネルギーの供給により、再生できるという事です。」

フェニックスが付け足すように答えた。

 

「・・・・・・それでは、貴方のお仲間が信じたように・・・私も貴方を信じようと思います・・・勝てる見込みはさっき言った様に極めて低いです・・・が、なぜだか期待している私がいます。」

そう続けながらフェニックスは丸い拳代の光の球に変化していく。

 

 

(・・・ユッケ・・・貴方の今後の歩みを私に見せて下さい・・・。)

フェニックスだった球がユッケに近付き、ユッケの中へと消えていく。

 

 

「・・・うっ・・・。」

ユッケの頭の中にフェニックスの声が響いたかと思うと、ユッケの意識が遠のいていった。

 

 

 

 

 




ああ
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