いよいよかと思われた決戦を前に
ユッケ達はある決断をする・・・。
ユッケが生き返って、しばらくしてからユッケ達は光の塔ではなく、ミッドガルドに侵攻して来たアースカンド軍のゲート基地に集まっていた。
塔の方にはミッドガルドの兵士達が多く集まっていたが、それをあえて避けてアースカンド軍の方へとユッケ達は来ていた。
それはこれからの戦いが、より一層の覚悟を伴う事。
より一層の犠牲が付きまとう事が分かっていたからだった。
アースカンド軍を退けて、士気も高いミッドガルド軍だったが、守護獣以外は死ねばそれまでの人生。ケアルもレイズも失われたこの先で同じように命を張ってくれとはとても言えなかった。
しかし、生き残った守護獣達はバハムートがオメガと戦っているうえに、オメガの存在を放っておけるわけもないので、殆どのモノが戦列に加わろうとこの場に集結していた。
「・・・お帰りなさい、ユッケ君。」
通信機の向こうからメラーニの声が聞こえる。
「・・・すいません、只今戻りました。」
メラーニに少しハニかんで答えるユッケ。
「・・・戦況は想像以上に悪いです・・・オメガ本体はバハムートさん達が応戦していますが、我々人間にはオメガの落とし子すら手に余ります・・・対策は貴方のお父上に立てて貰ったのですが、防戦一方で被害は増すばかりです・・・。」
メラーニが丁寧に戦況を説明してくれた。
「父さんは生きていたんですかっ?!」
父親が生きているという情報に驚くユッケ。
「・・・・・・ユッケッ・・・お帰り・・・帰ってくると信じていたよ。」
メラーニの声が通信機の向こうから消えると変わって懐かしい声がユッケの耳に届いた。
「・・・父さん・・・無事でよかった・・・。」
ユッケは完全にディアボロスに父親はやられたと思っていたので、嬉しさの涙を止めることは出来なかった。
「・・・・・・お前には結局、トコトン背負わせてしまう事になって・・・本当にすまない・・・。」
ヒロヨシが本当に申し訳なさそうにユッケに謝った。
「・・・いいんだよ、父さん・・・俺が選んだ道だから・・・。」
気負う父親の背中を優しく撫でるようにユッケが答えた。
「・・・・・・ありがとう・・・。」
ヒロヨシは小さく感謝の言葉をユッケに返した。
「・・・ユッケ君、親子の再会を邪魔はしたくはないんだが・・・恥ずかしながら、もう我々の世界にはそれほど時間は残されていない・・・勝手な話で本当に申し訳ないが・・・この世界を任せられるのはもう君達しかいない・・・。」
メラーニの今までにない対応でその切羽詰った状況がユッケ達には十分伝わった。
「・・・安心して下さい・・・って、胸を張りたい所ですけど、自信満々には答えられませんが、俺達もこのまま黙っていられませんので・・・最善は尽くします。」
ユッケは飾らず素直にメラーニに答えた。
「・・・本当にすまない・・・。」
最後にメラーニは唇を噛むように言葉を搾り出してユッケに謝った。
その後、もっと詳しい戦況については、ゲートを管理している軍の指揮官から教えてもらえた。
あえて、触れなかったアグニス大佐の生死からオメガの復活。
オメガの落とし子によるアースカンド全域の侵攻。
バハムート達のオメガへの抵抗。
アースカンドの各地の都市は防衛線で辛うじて、凌いでいる所は僅かで、最早都市という言葉すら不要になった場所が殆どだった。現代兵器は落とし子達にはまったく効かず、やっと遺跡で見つけたギルガメッシュの資料から辿り着いた対策で対応するのが精一杯だったのだ。
「・・・ギルガメッシュ・・・もっと違う形で出会いたかった・・・。」
ユッケは話の中で出たギルガメッシュの本当の立場を聞いて、そう言うしかなかった。
ヤムとドマは悔し涙を流し、未だにギルガメッシュの死を受け止められてはいなかった。
「・・・現代離れした技術だとは思っていたが・・・そういうことだったか・・・。」
話を聞いて、納得していたのはシドだった。
今の技術でも不可能なロボットの数々と兵器。
マテリアルのエネルギーの応用など、シドはオメガとの戦いそっちのけでギルガメッシュが残した資料を読み漁りたい衝動に駆られていた。
「・・・よほど強くディアボロスの精神支配を受けていたのかもしれん・・・哀れな事だっ。」
ラムウが故人を哀れむように目を閉じて髭を触りながらその経緯をイタんだ。
「・・・セレス様、本当にみんなに話さなくて良かったんですか?」
ティアがミッドガルド軍への協力を拒否した事を未だにセレスに尋ねている。
「・・・これ以上は無理強いが出来ません・・・助力はほしいですが、余計混乱するだけかと・・・。」
別の意味で悔しそうに答えるセレス。
「死んだら終わりの人生です・・・がしかし、アースカンドが破壊しつくされれば、ミッドガルドにくるのでしょう?」
レオンが包み隠さず事実を述べる。
「・・・少しでも、勝機を上げたい・・・けど、これ以上はミッドガルドで生きてきた人たちにとっては酷だよ・・・もし、負けたとしても・・・それまで、幸せに暮らせるのなら・・・。」
ユッケがセレスをフォローするように話す。
「・・・でも、もし、一緒に戦えば勝てたなら・・・その時が来た時に、なぜって後悔はしないんでしょうか?」
珍しくミューレが自分の意見を言う。
「・・・・・・。」
ミューレの言葉にその場が静まり返る。
「あぁっ・・・すっ、すみませんっ・・・。」
場の静けさに耐えかねて謝るミューレ。
ミューレの一言からしばらくそれぞれが黙って考え込む。
そして、その静寂を破ったのはセレスだった。
「・・・いえ・・・ミューレが正しいのかもしれないわ・・・。」
セレスがミューレの言葉に促されて言葉を発する。
「・・・私とて、死ぬときは納得して死にたいですからなっ。」
ニコニコしながらレオンが自身の死生観を話す。
「・・・断られるにしても、話さないのは・・・違うのかも・・・。」
ティアがウツムキながら言葉を零した。
「・・・・・・。」
みんなの様子を見てユッケが考える。
(・・・もしかして、俺は少しでも責められない様に立ち回ってたのかもしれない・・・これからの戦いでフェニックスの力がなくなったことを知られずに済むなら・・・そう思ったのかもしれない・・・。)
ユッケはフカンして己を見て、自分を見つめ直した。
「・・・話そう。」
ユッケは考えて、考えた末にポツリと言葉を発する。
「ッ?!」
皆はユッケの言葉に注目する。
「・・・全部話そう・・・逃げちゃだめなんだよ・・・協力とか・・・戦う戦わないとかじゃない・・・これからの世界について、皆に話そう。」
ユッケは口角を上げて、みんなと向き合ってそう胸を張って話した。
「・・・そうね・・・それがいいのかもね・・・。」
ユッケの言葉にミナが賛同した。
「・・・すいません、もう一度メラーニさんに繋いでもらっていいですか?」
ユッケは指揮官に申し訳なさそうにそうお願いした。
メラーニには、一度光の塔に行ってから作戦を立てるという事で時間を貰った。
時間が惜しい中で、ミッドガルドの兵の協力を得られるならとメラーニは了承してくれた。
守護獣達は先にアースカンドで戦うというのでそのまま別れることに。
シドは向こうで何かするらしいのでラムウとヤムドマをつれて一足先にアースカンドへと戻って行った。
モグッチは何かを察したのか、珍しく危険なアースカンドの方に思えたシド達について行った。
ユッケ達は良い答は得られないと薄々分かってはいたが、ミッドガルドの兵士達に全てを話すべく、ラスター達が運転してくれたジープに再び乗って光の塔へと向かった。
ユッケ達は全てをミッドガルドの兵士に話すことを決め、
光の塔で勝利を喜ぶミッドガルドの兵士に包み隠さず真実を話す。
その混沌の中で、希望は見つかるのか?
次回、「ミナという巫女」
青年よ、すがるは偶像か?虚像か?実体か?(千葉しげるさん風)