シドの秘蔵っ子「サンダーバード」がユッケ達の前に
ついに新しくなって姿を現す1
「・・・まったくよ・・・せっかく驚かそうと思ってたのによ・・・。」
不貞腐れながらもシドが先頭を歩き、ユッケ達を基地にある飛空挺の格納庫の一つに連れて来ていた。もちろん、シド御自慢の飛空挺『サンダーバード』のものだ。
「サンダーバードに乗ったのはあれ以来だね。」
ユッケが一緒についてきているメラーニに気を使って言葉を濁した。
「・・・そうですね・・・アグニスを救出するためでしたね。」
気を使ってくれたことを意識して、あえて名前を出して話すメラーニ。
「あの時のサンダーバードと比べてもらっちゃ困るぜっ。」
シドが俄然ウキウキしながら自慢話を始めようとする。
「はいはい、何が凄いのかは説明してもらっても分からないんだから簡潔にね。」
ティアがシドに釘を刺すように言葉を投げた。
「・・・・・・。」
釈然としないシドが黙り込む。
「・・・まぁ、なんじゃ・・・ヒロヨシに協力してもらって、マテリアルのエネルギーを使って装甲強化や動力の効率化によってのスピードの向上じゃな・・・。」
黙り込んだシドに変わってスラスラとラムウが話す。
「おいおいおいおい、それだけじゃ・・・。」
「ああ~~、はいはい分かりました分かりました。」
シドが納得いかずにもっと話そうとするのをティアがシドの肩を強めに押して止めに入った。
「ようは、オメガの内部進入に適したように改造したという事ですなっ。」
脳筋のレオンが的確に話す。
「なるほどですねっ!」
レオンの話を聞いて、ミューレの目がランランと輝く。
「くぅ~~・・・。」
なぜか悔しがるシド。
「なにしとるんじゃ・・・さっさと幕をとらんか。」
悔しがって動かないシドにラムウが行動を促す。
「・・・・・・。」
不貞腐れた表情でシドがユッケ達の目の前にある大きな布がかけられたモノに近付き、近くの装置のボタンを押した。
〔バサッ!〕
大きな物体にかけられていた大きな布が装置のよって取り除かれる。
「オォッ?!」
姿を現した物体。即ち、サンダーバードの全貌を見て、一同は驚きを隠せなかった。
飛空挺と言えば、空に浮く船のような構造が主だが、サンダーバードはシャープにまとめられており、両翼は少し斜め後ろに広げられているのが特徴的だった。両翼に二つずつ付いているエンジンは思ったよりも小型ではあるが、尾翼にも交互に二つエンジンが付いていた。
小型のヨットのような船体をベースに翼が付けられており、先端に向けて、鋭角に尖っているのも珍しかった。
「・・・こいつはスピードをあげるために先端を長めに伸ばして、風の抵抗を流すように船体は丸みを帯びてるんだが・・・。」
ブツブツとシドが説明し出す。
「・・・後でしっかりレオンが聞いてくれるから、早く中に案内しなさいよっ。」
ティアがブツブツしゃべっているシドを突っついて促した。
「ハッハッハッハッ、それは楽しみですなっ。」
胸を張ってニコニコしながらレオンが答える。
(・・・絶対話し聞かないパターンだ・・・。)
長い付き合いのユッケが心の中で全てを悟る。
「進入した後に必要なものや物資に関しては事前に積んでおきました。ご一緒できないのは残念ですが、御武運を祈っております。」
メラーニがそう話して、最後に綺麗な敬礼をした。
「メラーニさん、必ず成功させますので、どうかできるだけ多くの人々を助けて下さい。」
セレスが同じリーダーの立場として相手を労う。
「えぇっ・・・帰ってきたら、ゆっくりお茶でも行きましょう。」
セレスに微笑んでメラーニが答える。ユッケ達と特にセレスと話す事で幾分かメラーニの肩の荷は降りたようで、つき物が取れたように表情も軽くなっていた。
「・・・それでは行って参りますっ。」
ラスターとアポニスの部隊員達がメラーニに敬礼をする。
「・・・頼むぞラスターッ・・・隊長も分まで。」
ラスターに敬礼で返してメラーニが激励する。
「・・・・・・。」
無言で敬礼して返すラスター。
ラスター達はユッケ達より先にサンダーバードに乗り込んでいく。
「ヤム、ドマ。お前達、ちゃんと説明書を読んで理解してるか?」
シドが未だに説明書を読み込んでいるヤムとドマに声をかけた。
「大丈夫でやんすっ・・・それに運転に関してはドマは天才的でやんす。」
シドの方を見て、笑顔で答えるヤム。
「なんだなっ・・・運転のテクニックなら大体おやびんに教わったんだな。」
片手に食べ物を持ち、食べながら答えるドマ。
確かにヤムの言うようにドマはテスト飛行の際、驚異的な操縦テクニックを見せており、スピード重視でピーキーであるはずのサンダーバードの扱いもあっという間にこなしていた。
ヤムはそんなドマをサポートするように説明書を読み込み、ドマが操縦に集中できるように完璧に計器を見て、操作のサポートをしていた。
正直、サンダーバード、ひいては飛空挺の操縦に関してはアースカンド一にといって言い程のコンビでシドが心配する事は何もなかった。
「・・・心配クポッ・・・絶対落ちるクポッ・・・どうにかして逃げたいクポポッ・・・。」
後ろの影の方でモグッチがソワソワしていた。
「クエッ、クエッ、クエエッ。」
そんなモグッチの横でチョコはウキウキしながら身体を揺らしており、逃げようとしたモグッチを知らずに口に加えて、ユッケ達のほうへとつれていく。
「ちょっ、ちょっと待つクポッ!僕には大事な用事がっ。」
不可抗力で連れて行かれるモグッチがジタバタしている。
「・・・シヴァ。」
ユッケがシヴァに声を掛ける。アルテマクリスタルの破壊といい、自信満々なシヴァに対して、ユッケにしても納得いっていなかったからだ。
「・・・どうかしたの、ユッケ?」
そんなユッケの不安も何処吹く風と大人の女性の余裕で微笑んでシヴァがユッケを包み込む。
「・・・いや・・・本当に大丈夫なのかなって・・・。」
頬を指で軽くかきながら目線を下げてシヴァに尋ねるユッケ。
「大丈夫よ・・・ミナも言っていたように皆とならなんだって出来るわ。」
シヴァが相変わらずの自信満々の顔で微笑んでユッケに答えた。
しかし、シヴァは微笑んでいるものの。
ユッケの目にはシヴァの瞳の奥で何かがうごめいているように感じてならなかった。
オメガに向けて、サンダーバードに乗り込んだユッケ達
しかし、未だにモヤモヤとした想いがユッケの中に渦巻いていた。
それを知ってか知らずかシヴァがいつものように振舞っている。
次回、「二人」
青年よ、想いこそが明日を切り開く!(千葉しげるさん風)