ユッケはモヤモヤとした気持ちの中でシヴァを見ていた。
全員が準備を終えて、サンダーバードに乗り込む。
いよいよ、サンダーバードが離陸してオメガに向かおうとしていた。
〔キイイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーンッ〕
滑走路を走りながらサンダーバードのエンジンが唸りを上げる。
〔ボッ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ〕
滑走路の直線コースに入るとエンジンにいよいよ火が入り、スピードがみるみる上がっていく。
「・・・・・・。」
ユッケはサンダーバード内の席に座ってベルトをしっかり締めて離陸に備えていた。
しかし、その目線はばれない様にではあるがシヴァをずっと見ていた。
「・・・・・・。」
シヴァはそんなユッケに気付いてはいるが、気付いていないように気にせず前を向き、ユッケの隣で離陸に同じく備えている。
「・・・・・・。」
ユッケとシヴァの様子を見て、不安を隠せないミナ。
ミナはユッケの知らないこれからの事を全て知っている。
それはアルテマの巫女としての仕事も含まれているので、バハムートやシヴァから頼りにされている証なのだろうが。
(・・・ユッケの事・・・お願いね・・・。)
シヴァが全てを知って、全てを受け入れて尚、笑顔でユッケを想い、ミナに託した思いがミナを苦しめていた。
(・・・どうして、笑っていられるんですか・・・シヴァ様・・・)
ミナにとって、シヴァの置かれた状況は自分ならとても受け入れられないものだった。
それでも、シヴァはこの世界のため。
何よりもユッケのために全てを受け入れている。
(・・・私じゃ・・・・・・とても・・・・・勝てない・・・。)
シヴァの愛の深さに打ちのめされた少女がそこにはいた。
〔離陸するでやんすッ。衝撃に気をつけるでやんすッ〕
操縦室のマイクからユッケ達のいる席にスピーカーで状況が伝えられる。
〔ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ〕
順調に滑走路を走っていたサンダーバードが大空へと羽ばたく時がきた。
思い思いの三人を乗せて、サンダーバードはオメガに向けて飛び立ち、音速を超える体勢を整えようとしていた。
(ウワッ・・・さすがにすごいGだな・・・。)
スピードに乗るサンダーバードの中で必死にのしかかるGに耐えるユッケ。
〔安定飛行に入るでやんす・・・オメガにはまだしばらく近付かないでやんすッ・・・しばらくの間、待機でやんすッ。〕
ヤムの声がユッケ達にスピーカー越しに届く。
「よ~~し、お前らッ。サンダーバードは安定飛行に入ったが、作戦は数時間後になる。各々しっかり準備しとけよっ。」
操縦室からユッケ達の方へとシドが顔を出して、ユッケ達にそう話す。
ユッケ達はシドの指示を聞くと各々ベルトを外して、準備をし始めた。
「・・・少し、席を外すわね。」
シヴァがユッケにそう言うとイソイソとどこかに飛んで行った。
「・・・・・・。」
気になったユッケはシヴァから少し時間を置いて席を立ち、後を追う。
スピード重視のサンダーバードだが、高高度を飛ぶようには出来ていないのでそれなりの大きさの窓は付けられていた。景色を楽しめるような速さではないのでつけているのはシドのセンスとしか言えない。
そんな窓の前で、外を眺めるシヴァをユッケは見つける。
「・・・どうしたの、ユッケ?・・・ずっと不安そうに私を見てるわね・・・。」
窓の外を見ながらシヴァがユッケに聞こえるように声を出して問いかけた。
「・・・・・・。」
ユッケは何も言い出せなかった。
「・・・私の事を心配してくれるのはうれしいけど・・・何をそんなに気にしているの?」
窓からユッケの方に視線を移していつものように微笑みかけるシヴァ。
だが、その微笑みがユッケにはどうしても張り付けたようなマスクにしか見えなかった。
「・・・シヴァ・・・俺は頼りないかな?」
やっとユッケの口から言葉が飛び出した。
「・・・何を言っているの?・・・フェニックスの力を得た貴方はきっと誰よりも強いわ。」
もっともな言葉を並べてシヴァが飾り付ける。
「・・・なんでだろう・・・今のシヴァからいつも感じてた暖かな感じが・・・。」
言葉では言い表せられない思いを必死にユッケが導き出す。
「・・・何も変わってないわ・・・いつもの私よ・・・。」
シヴァがさらに取り繕うように言葉を並べる。
「・・・・・・そうだね・・・ごめん・・・。」
ユッケはシヴァがこれ以上は話してくれない事を知り、それ以上踏み込まない事を伝えた。
「・・・・・・。」
その時、ふとシヴァの微笑が曇ったのをユッケは見逃さなかった。
「・・・シヴァ・・・俺はどんな事をしても、君を守るよ・・・母さんが守ろうとしたこの世界も・・・全部守ってみせる・・・だから・・・だから、その時はちゃんと話してね・・・。」
ユッケはシヴァから視線を流して、背中を向けて最後にそう言葉を残した。
「・・・・・・。」
ユッケがシヴァから離れていくのを黙って見送るシヴァ。
表情を読み取られるのを恐れたシヴァは顔をまた窓の方へと向けてユッケから見えないようにする。
立場は違えど、想い合う二人を乗せて、
いよいよサンダーバードはオメガに向けて迫ろうとしていた。
交差する想いを乗せたまま
いよいよユッケ達はオメガに迫る!
そして、ミナが巫女としての力を示そうとしていた。
次回、「ホーリー」
青年よ、聖なる光のその先に進め!(千葉しげるさん風)