しかし、それはユッケに対するシヴァの深い愛からだった。
ユッケの壮絶な戦いから少し経って、ユッケ達はそれぞれの課せられた任務のために準備していた。
「・・・・・・。」
一同は黙々と作業をしている。
レオンですら、この重い空気を打破できずにニコニコはしていたものの黙って戦う準備を進めていた。
「・・・みなさん、いよいよ我々は闇の民をとめるべく行動します。それぞれがそれぞれ任された任務を全うできれば、世界を救えます。」
沈黙を破ったはやはりセレスだった。
いろんな人々をまとめ上げる手腕はここに来ても頼もしく発揮される。
「・・・ただ、無茶はしないで下さい・・・世界を救う為に簡単に命を投げ出さないで下さい。」
ユッケを見てセレスが釘を刺す。
「・・・・・・。」
セレスの視線を後ろめたさで目を泳がせながら交わすユッケ。
「・・・みんな無事に帰りましょう・・・誰か一人でも欠けるのは辛いですからなっ。」
レオンがそうニコニコ笑いながら皆に向けて言う。
「・・・そうね・・・ここまで来たんだもの・・・帰る時も皆一緒じゃないとね。」
ハニカミながらティアがレオンに続く。
「・・・がんばりましょうっ。」
ミューレがいつものように小さな身体で頑張ってガッツポーズを作って張り切る。
「世界を救うだなんだと大きく考えたって仕方がねぇさ・・・目の前の事をやるだけよっ。」
もっとものな事を言って胸を張るシド。
「・・・お主は本当に科学者か?」
もっともな事だが、どうもふに落ちないラムウがいよいよシドの存在につっこむ。
「何をっ?!」
ラムウの突っ込みに腕まくりをしてにらみ付けるシド。
「ハッハッハッハッ・・・皆さんをみているとここが世界の命運をかけた命がけの戦場とはとても思えませんね。」
みんなの様子を見て、ラスターが笑う。
「フフフッ・・・確かにそうですね。」
ラスターにつられてセレスも微笑む。
「・・・不思議です・・・貴方達と共にしているとなんだって出来るような気がします・・・・・・戦場は常に何かを得るためには何かを失います・・・この世の理のように・・・等価交換をするように手から大事なものが理不尽にスルスルとこぼれ落ちて行くんです・・・でも、きっと貴方達なら大丈夫だ・・・そんな気がします。」
ラスターはニコニコとレオンのように胸を張って言い切った。
「ハッハッハッハッ、幾千の戦場を経験したラスター殿が言うなら心強いですな。」
ラスターに続いてニコニコと笑うレオン。
皆気休めだとは知っている。
ラスターの優しさだろうと思いながらもそれぞれがそれぞれの使命に押しつぶされないように支えあっていた。
「それでは、みなさん・・・生きてお会いしましょうっ。」
セレスは役割で分かれた仲間達に顔を見ながら声をかけた。
落とし子はあれ以来姿を見せない。
きっとハディの指示に従って、ユッケ達には手を出さないようにしているのだろう。
「シドさんはあまり無茶しないでね。」
ミナがシドの傍若無人さに釘を刺す。
「安心せい巫女殿、ワシが見ておる。」
「おっ・・・おい、ガキじゃねぇんだから頭を撫で回すなっ!」
シドが答えるよりも先にラムウがミナにニヤケながらそう答える。
シドはラムウが必要以上に自分の頭を撫で回すのを腕で振り払う。
「・・・たくっ・・・ヤムドマ、任せたぜっ。」
ラムウのからかいを交わしてシドは身なりを整えながら改めて、ヤムとドマにサンダーバードの事を頼んだ。
「合点でやんすっ、ボスっ!」
「わかったんだな、ボスッ。」
二人とも胸を張って、拳で胸を一叩きして答えた。
「モグッチさんもチョコさんもご無理はしないように頼みますね。」
セレスがモグッチ達に目線を合わせてニコリと笑った。
「任せるクポッ」
「クェッ!」
モグッチとチョコも元気良く答える。
「・・・チョコ・・・こんな所までついてきてくれてありがとうな・・・絶対無理するなよ・・・。」
「クェ~~~。」
ユッケは結局最後の最後まで付き合ってくれた相棒を撫でながら優しく声をかけた。
「・・・じゃぁ、皆・・・生きてまた笑って合おうっ!」
「オウッ!」
円陣を組んでユッケの合図と共に皆は再会を誓い合った。
そして、それぞれがそれぞれの役目を果たすべくオメガの深部へと進んでいく。
「・・・・・・。」
ユッケ達のその様子をニヤニヤとハディはモニター越しに見ていた。
「・・・だんな・・・手出しは無用だぜ・・・。」
ハディの後ろでうごめく巨体がハディに声を掛ける。
「・・・フッ、好きにしろ・・・。」
ハディはずっとモニターでユッケを見ながら素っ気なく答える。
「・・・・・・。」
うごめく巨体はハディの答を聞くと無言で部屋を後にした。
決死の戦場に向かうユッケ達。
その先には抗えない別れが待っているのか?
次回、「オメガクリスタルを破壊せよ!」
青年よ、純粋な感情こそ最も清いのかもしれない(千葉しげるさん風)