強大な敵ゼッドを前に、強力な爆弾を使うことを決意するのだが、
その矢は閃光となってオメガクリスタル目掛けて飛んで行った。
ハカらずもゼッドの位置はその攻撃を防ぎきれない位置。
この攻撃に全てをかけてティアは強い想いを乗せて弦を弾いた。
(当たれ!砕けろ!)
その想いをクリスタルに伝える為に矢は走る。
動けないゼッドを交わして、閃光がクリスタルに当たり響く。
〔パキンッ!〕
クリスタルに矢が当たり、甲高い弾ける音が部屋中に響く。
「ッ?!」
矢は確かにティアの想いをクリスタルに伝えた。しかし、その結果に一同は歓喜から落胆へと急降下させられる。
「・・・あぶねぇ~~・・・大したタマだぜ・・・。」
無傷のクリスタルを見てゼッドが胸をなでおろす。
「・・・・・・。」
レオンは無傷のクリスタルを黙って見ていた。それはある種の決意の眼差しだった。
「戦いの最中に余所見はっ・・・ッ?!」
クリスタルに視線を向けていたレオンの横っ面に襲い掛かろうとするゼッド。
〔バコンッ!〕
ゼッドの攻撃をスルリと抜けるレオン。
さらに先に動いていたのはレオンだった。
レオンの右の飛び蹴りがゼッドの左頬に炸裂する。
「・・・てめぇ・・・。」
レオンの蹴りの衝撃でアゴを右斜め上に弾かれたゼッドだったが、そのままの状態でレオンをにらみつける。
「・・・ホッ。」
レオンはゼッドににらまれながらも着地と同時にゼッドの背後に走り出す。
「ナッ?!」
その行動にゼッドは少し驚く。
いつもならレオンは透かさず味方の方に近付いて、波状攻撃の準備をするはずなのだが、今回のレオンはあえて味方とゼッドを挟み込むように移動した。
「・・・・・・。」
レオンに目線を集中させつつも、ラムウ達にもチラチラと視線を送るゼッド。
「どうしました?私を倒すんでしょう?」
ゼッドの戸惑いをさらにあおるようにレオンが言葉を浴びせる。
(・・・下手に動くと背中を刺される・・・クリスタルも攻撃されるが・・・。)
ゼッドとクリスタルを中心として、レオンとティア達が挟み込む構図に対応するべく思考を瞬時に働かせるゼッド。
「・・・多少はしかたねぇ・・・。」
ゼッドは決心したようにレオンに視線を集中させる。
ゼッドとしてはこの中の攻撃で一番警戒すべきはラムウだった。しかし、ラムウの攻撃はタメがいる上に、連発できない事が先ほど証明された。となると、次に警戒すべきはレオンの攻撃。こちらはスキを見せれば、そこに確実に繰り出されるためにレオンからは絶対に目を離せない。それに比べて、ティアのクリスタルに対する攻撃を見ても、今、クリスタルに対しての攻撃はティアに多少させたとしても破壊されないとふんだゼッドはレオンを仕留める事を僅かな時間の中で最優先に選ぶ。
〔裁きの雷〕〔ズガンッ、ズガガンッ、ズゴゴゴオオオッ、ズギャギャンッ、スパンッ〕
「ヒャッハァーッ。」
ゼッドはラムウの攻撃を避けながら思わず笑みを浮かべる。
ラムウががら空きのオメガクリスタルを攻撃せずにこちらを攻撃したからだった。
(お前の攻撃はクリスタルにはさほど効かないってことだよな・・・。)
ゼッドはラムウの思考を読む。
「・・・むぅ~~・・・。」
ゼッドに思考を読まれたことを悟るラムウが顔を歪める。
「レオンッ、俺を甘く見過ぎだぜ!」
ラムウのインターバル、ティアの攻撃の弱さ、レオンの単独行動がゼッドの気持ちを高ぶらせる。
「・・・・・・。」
レオンは黙ってゼッドを見据えて、ゼッドの攻撃に備える。
〔ビュンッ、ズガンッ!ボッ、ビュッ、ドガガガッ・・・ドドドドドドッ〕
「ヒャッハッ・・・そんな砂粒で俺は止められねぇぞ兵隊さんよッ。」
レオンにゼッドの連撃が次々と襲い掛かる。ラスターがけん制するもまったく意に返さない。
あんなに硬いと思われた床も壁もゼッドの手で面白いように破壊されていく。その凄まじい攻撃は一撃でも喰らうと命を刈られる。レオンに襲い掛かる死神の鎌をレオンは回避に専念して交わしていく。
〔裁きの雷〕〔ズガンッ、ズガガンッ、ズゴゴゴオオオッ、ズギャギャンッ、スパンッ〕
「何度もご苦労なこったっ。」
レオンを援護するラムウの攻撃を余裕を持って交わすゼッド。
〔森の雷(フォレアラゥ)〕〔シュバアアアアアアーーーーーーンッ!〕
「ッ?!」
その閃光はゼッドの右目目掛けて一直線に迫る。その矢の軌道にゼッドは背筋を冷やした。
ラムウの攻撃をレオンの援護ではなく、ティアの囮にして使う。そして、ティアの正確な狙撃がゼッドの外部で一番モロい部分を襲う。
「グゥッ!」
寸でのところでアゴを引いて、ゼッドは額の角でティアの攻撃を弾いた。
〔ガキンッ!〕
〔ドゴンッ!〕
その一瞬の隙を逃さないのはレオン。
「グオッ?!」
予測はしていたもののそれを予測して放たれた左の蹴りがまともにゼッドの右わき腹を叩く。
余りの衝撃に右わき腹を抑えてよろめきながら後退するゼッド。しかし、
「・・・・・・。」
レオンはそれ以上ゼッドを追撃せずにその場に黙って臨戦態勢をとる。
「・・・・・・。」
右わき腹を抑えつつ、レオン見てゼッドは違和感を覚える。
(何を考えているレオン・・・・・・俺は何を見落としている・・・。)
レオンが匂わせる微かな違和感にゼッドは敏感に反応する。
絶好の追撃のチャンスを黙って逃すレオン。戦いにおいて、勝利の嗅覚は自分と同等だと思っていたレオンがそのチャンスを逃すわけはない。と考えるゼッド。
(ならば・・・狙いは俺に勝つことじゃ・・・・・・ない・・・。)
ゼッドは頭をフル回転させて思考を巡らせる。
(確かに奴らの狙いはオメガクリスタルの破壊・・・だが、女の攻撃も、ラムウの攻撃もクリスタルには届かない・・・・・・魔法使いのガキや兵隊は端から無力だ・・・なんだ・・・何を見落としてる・・・。)
研ぎ澄まされていくゼッドの思考。
レオン達が自分を倒す事が最優先ではないなら間違いなくクリスタルの破壊が最優先事項。しかし、レオンを含めてクリスタルを破壊できる者はいないはず。ならば、最優先事項は一番の邪魔者である自分(ゼッド)・・・そこまではゼッドの思考は整理される。そして、
〔地獄の火炎〕〔ゴゴゴゴゴゴオオオッ、ゴバアアアアアアアアアアアアアーーーーッ!〕
「ッ?!・・・・・・しまった・・・ッ。」
レオンはゼッドの不意の大技に声を上げるが、それは技に対してではない。
レオンは大技なだけに驚くもそれを簡単に交わす。
それはゼッドが必殺で放ってきていないからだ。
それが意味するものは、ゼッドの視線にあった。
ゼッドの思考が自分達の狙いを暴いた事に交わしながらもレオンはゼッドの目線を追って気付く。
「オマエカアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
ゼッドはレオンの注意を一瞬逸らして、死角になっていたオメガクリスタルの影になっていた部分を視界に入れるように移動する。
そして、そこで作業していたシドを見つけた。
ゼッドはもうすでにレオン達の術中にはまっていたのだ。
いつからだろうか?
それはティアが渾身の想いでオメガクリスタルに放った一撃から。
あの一撃はティアの最後の賭けでもあったが、それでもゼッドに対して、ティアの攻撃はクリスタルに対して致命的ではないと印象付けた。
そこからレオンがティア達とは反対サイドに移動する事でゼッドがレオンに集中するように誘い込む。
そこで出来たクリスタルの死角にシドが素早く入り込み、爆弾の設置作業を行い出す。
レオン達はそこから時間稼ぎをして、シドを死角に隠すようにゼッドを誘い込み続けた。
シドの作業スピードが早いこともあり、ゼッドは気付いたものの時既に遅し!
「・・・へへへっ。」
ゼッドと目を合わせて、シドが笑う。
(・・・なんだ、あれは・・・まさか・・・。)
笑うシドを視界に入れるとそれはゼッドの視界にも、もれることなく入ってくる。
「・・・一足遅かったな。」
シドはそういうとオメガクリスタルから急いで離れようとしていた。
(警戒するべきだった・・・軍人を連れてきてるなら・・・考えるべきだった。)
ゼッドは逃げるシドには目もくれず、それに目掛けて飛びついた。
「・・・貴方は本当に信頼できるトモですね・・・。」
ゼッドがそれに飛びつくや否や、全速力でゼッドの背後から迫っていたレオンが賞賛の言葉をゼッドに送りながらゼッドの腰を両腕でしっかりと掴み込んだ。
「レオンッ?!」
ゼッドはシドがオメガクリスタルに仕掛けた爆弾を掴むと同時に後ろから自分を掴むレオンに驚く。
「何してやがるレオンッ!」
突然のレオンの必死の抱きつきに爆弾を掴んだまま驚くゼッド。
そして、口角を少し上げながら笑うレオン。
〔アースウォール〕〔ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ〕
「なッ?!」
次の瞬間に部屋の中にいる人間の中で一番驚いたのはレオンだったに違いない。
驚くレオンの目に映ったのは遠ざかって行くゼッドと一緒にオメガクリスタルを包み込んでいくゴーレムの姿だった。
その光景はレオンにはまったく予想できないものだった。
レオンが考えていたのはオメガクリスタルとゼッドを同時に排除するチャンス。
それはアースカンド軍の最新鋭の爆弾を利用することで達成できるもの。だが、それはゼッドが出入り口をふさいだ事で爆発に仲間を巻き込みかねない諸刃の剣となっていた。しかし、仲間を巻き込まずにオメガクリスタルの破壊が可能だとレオンに思わせたのは、鉄壁の防御を誇るゴーレムの『アースウォール』だった。アースウォールに絶対的な自信を持っていたレオンは自分諸共にクリスタルもゼッドも道連れにする事を、自分達の力だけではオメガクリスタルを破壊できないと判明してから虎視眈々と狙っていたのだ。
しかし、予想外な事が二つ起こる。
一つはゼッドが予想以上に気付くのが早かったこと。
レオンの考えでは、爆弾を設置した後にゼッド諸共アースウォールに巻き込んで爆発を最小限にして仲間を守りつつクリスタルもゼッドも倒すというものになるはずだったのだ。
出だしはどうあれ、ゼッドもクリスタルもアースウォールに巻き込むことにレオンは成功した。
そして、もう一つがそんなレオンの考えをただ一人覆した者がいたことだ。
絶対の信頼をしていたゴーレムだった。
今まで無骨に無口に寡黙にレオンと共に戦ってきたゴーレム。
多くを決して語らず、オメガクリスタルの封印のために姿を消したタイタンの変わりに守護獣として長年ガードナーと共に歩んできたゴーレム。
自分の考えすら、滅多に表に出さないゴーレム。
しかし、そんなゴーレムだが、唯一つの取柄「守る」ということだけは誰にも犯されたくなかった。
レオンと共に死ぬ事も出来たが、それはゴーレムの芯にある「守る」という事に反していた。
ゴーレムはレオンの考えを理解し、その時をレオンとは違うベクトルで静かに待っていたのだ。
そして、
「なぜですっ、ゴーーーーーーレムーーーーーーーーーーーッ?!」
レオンがゴーレムに突き飛ばされながらゴーレムの名前を叫ぶ。
「オセエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
ゴーレムが初めて己の考えを言葉にした瞬間だった。
「・・・・・・。」
「押すんじゃッ!」
呆気にとられていたシドにカツを入れて叫ぶラムウ。
「ヤメロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
ゴーレムのアースウォールに包まれながらゼッドが断末魔を叫ぶ。
「お前は漢だぜええええエエエエエエエエエエッ!!!」
シドはゴーレムの勇姿に涙を流しながらボタンを力強く押した。
〔ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!〕
アースウォールに包まれながらも凄まじい爆発音を部屋に響かせる最新鋭の爆弾。
さらにオメガ全体を大いに内部から震え上がらせた。
自分の命を賭けて仲間を守るゴーレム。
その勇姿が爆発の砂煙で消えていく。
その先にあるのは、希望か絶望か?
次回、「命が繋ぐ」
青年よ、人の命の鎖が未来を輝かせるのだ!(千葉しげるさん風)