命からがら逃げる事に成功したリア。
アルテマクリスタルと共にリアはどこに飛ばされたのか?
シヴァは?ハモウは?
リアが目を覚ました先に見るものとは?
あれからどれほどの時間が経っただろう。
「・・・ここ・・・は?」
リアは意識を取り戻し、ゆっくりと目を開ける。
「無事みたいね、リア。今はどこかの洞窟の中よ。」
「・・・シヴァ。」
リアが目を開けるとそこにはリアを膝枕するシヴァがリアを見下ろしていた。
シヴァは優しいまなざしをリアに向けて、安心させるようにゆっくりと言葉をツヅる。
「・・・ちょっと辺りを見回ってきたけど、どうやらミッドガルドではなさそうよ。」
シヴァが周囲を見渡して、リアにそう言った。
リアが横になったまま、辺りを見渡す。
「・・・・・・ハモウ様やルルアは?」
リアは見当たらない二人の事をシヴァに聞いた。
「私はあなたと離れないように抱きしめていたから一緒に飛ばされたみたいだけど、ハモウ様は気がついたときには姿は見えなかったわ。ルルアは・・・。」
ルルアの話題でシヴァはリアから目を逸らした。
「・・・ルルア・・・いい子だった。あんな死に方するような子じゃなかった・・・。」
リアは涙を流しながら最後のルルアの姿を思い出す。
「・・・ルルアはアルテマの巫女に仕える者として役目を果たしたのよ。」
シヴァはリアの頬に流れる涙を優しく指で拭きながらリアにソッと言葉を届けた。
ルルアがその命をかけて、貫いた使命。その言葉にリアの頭の中にある物が過ぎる。
「アルテマクリスタルは?!」
ルルアが守ってくれたものがリアの頭によぎって、ハッとしてシヴァの膝枕から上体を起こした。
〔カツンッ〕
その時だった。リアの胸の辺りから光る何かが地面に落ちた。
リアの目が自分から零れ落ちたものに自然と視線が向けられる。
「・・・あぁっ・・・よかった・・。」
リアはまた涙を流しながら、その光り輝く石にソッと手を伸ばす。
「・・・ルルアやハモウが必死に守ってくれた最後の希望ね。」
シヴァがその石を見ながら言葉を零した。
小さな小さなアルテマクリスタルを大事そうに両手で持ち上げてリアが嘆く。
「私達の世界の希望。アルテマクリスタルがこんなにも小さくなってしまうなんて。」
リアは声を震わせながら、失ったモノの数を数える。
シヴァはアルテマクリスタルを抱きながら座り込むリアに近づき、
「でも、私には分かるわ。どんなに小さくなってもアルテマの力は衰えていない。」
そうリアに優しく話しかけながら、シヴァはリアの肩に手を乗せ抱くように引き寄せた。
「・・・そうね。この力は闇の民なんかに渡してはいけない。」
リアは石を大事に抱きしめて、そう決意した言葉を放つ。
「ここはミッドガルドではない以上、闇の民は早々容易く追ってこれないはず。でも、注意はしなければならないわ。それに・・・。」
シヴァは落ち着いたリアから離れて、立ち上がり、身体を宙に浮かせ、周囲を警戒する。
「そうね、このクリスタルはミッドガルドに戻さなくてはならない。ここがどこかは分からないけれど、早く戻る方法を見つけなくては。」
リアもシヴァに続く様に立ち上がって、辺りを見渡す。
「アルテマクリスタルがなくなったミッドガルドがどうなっているか。バハムートが居る限り、闇の民の思い通りにはならないだろうけど、クリスタルの安定が保てるかは分からない。」
シヴァはそう言うと、少しリアから先行して洞窟を進み出した。
シヴァと違い、暗い洞窟を一歩一歩確かめながら歩くリア。
「シヴァ、外に出ればわかりそう?」
足元を注意しながら歩くリアはそうシヴァに尋ねた。
「先に外へ出てみるわ。出口もそう遠くなさそう。」
そう答えるとシヴァは少しスピードを上げて光が零れる方へと急いだ。
シヴァは洞窟の出口にたどり着くと、大きく振り返り、リアに言葉をかける。
「リア、大丈夫よ!」
シヴァは安全をしっかり確認して、リアを声と共に導く。
リアはまだ暗い洞窟の中を転ばないように慎重に進み、シヴァが待つ洞窟の出口へと向かった。
暗い洞窟の中から外へ出てみると外はまだ昼間で太陽が木々の間からリアを照らし出していた。
「・・・眩しい・・・。」
リアは久々に見る光に目を細める。
リアは洞窟から出てみると、そこにシヴァの姿がないのに気づく。
「・・・シヴァ?」
リアは恐る恐る辺りを警戒しながらシヴァの姿を探す。
「大丈夫ですか?」
シヴァを探している矢先、林の奥から男性の声が聞こえた。
「っ?!」
突然の男性の声で驚くリアの体は硬直する。
リアの事情など知る由もないその男は林の中から、ズンズン出てきてリアに近づく。
「こんなところで、どうかされましたか?」
林の奥から現れたのはモジャモジャの頭で、メガネをかけ、無精髭を伸ばし、大きなリュックを背負い、全身泥だらけになった服を着た20代後半ぐらいの男性だった。
男性は女性一人で居たリアを心配して声をかけたのだが、
「・・・・・・。」
迂闊にしゃべれないリア。
どうやら、シヴァはいち早くこの男に気付いて、身を隠し、様子を見ているようだった。何かしようとしたときにいつでも不意打ちできるように。
沈黙するリアを見て、慌てだしたのはその男性だった。
「はっはっはっはっ・・・そうですよね。いきなりこんな男が現れたらびっくりしますよね。」
男はモジャモジャの頭を掻きながら笑ってみせた。
「・・・・・・。」
それでも、警戒して依然黙るリア。
口を開かないリアに男性は苦笑いを浮かべる。
「僕は怪しい者ではありません。服とか汚れてボロボロですけど、論文の資料を採取しに来てまして・・・この町の大学に勤めてるんですけど。」
男性はリアにあまりにも警戒されているの困り果てるも、警戒を解こうと必死になる。
必死に誤解を解こうとする男性を見て、リアの口が自然と開く。
「・・・ここはミッドガルドですか?」
リアが恐る恐る男に尋ねる。
リアの優しい声に目を丸くする男性。
「・・・ミッドガルド・・・ほうほう、異国の方ですか?それにしては、言葉がお上手ですね。」
聞きなれない単語に戸惑う男。
男を警戒しつつも、質問を続けるリア。
「・・・ここはどこですか?」
リアは右手にギュッとクリスタルを握りこみつつ、左手でさらに隠し、シヴァの気配を感じながら、情報を集めようとしていた。
リアの心情など知る由もない男性はリアの緊張が絆されてきたと思い込み、自然と口が軽くなっていく。
「・・・ここはナパシティの町の外れの森です。申し遅れました、僕はヒロヨシと言います。」
ヒロヨシはそう言ってリアに微笑みかけた・・・・・・、
「これがノブヒデの父ヒロヨシと、リアとの最初の出会いよ。」
シヴァが目をツブりながら話し、皆に聞かせた。
「・・・まさか、ハモウが時空転移魔法を使えたとはな。」
バハムートが手で顎を触りながらシヴァの伝えたい所とは別の部分に感心した。
バハムートの関心にシヴァの視線が動く。
「ハモウが意図して使ったかどうかは分からないわ。でも、ハモウがその命を賭して、私達を逃してくれたのは事実。」
シヴァがバハムートを見ながらそう言った。
「母さんとオヤジがそんな風に出会ってたなんて・・・知らなかったな。」
ノブヒデは下を向きながら寂しそうな目でそうつぶやいた。
ノブヒデの言葉にシヴァの目に優しさがヨミガエる。
「・・・ヒロヨシは優しい男だった。何も知らないリアを家に招き入れ、生活の一切を面倒見てくれたわ。アースカンドの知らない事も子供に教えるように私達に教えてくれた。」
微笑みながらシヴァはノブヒデにそう話す。
シヴァの言葉にハッと目を丸くするノブヒデ。
「えっ?!オヤジはシヴァの事も知ってたの?」
ノブヒデは父とシヴァに面識があった事に驚く。
驚くノブヒデの目を迷い無く真っ直ぐ見て話すシヴァ。
「・・・えぇ、リアがヒロヨシに思いを寄せるようになってきた時からね。」
シヴァはリアの大事な子供であるノブヒデに淡々と真実を話す。
何かモヤモヤしたものがこみ上げて、握りこぶしを作るノブヒデ。
「・・・じゃぁ、オヤジはミッドガルドの事も知って・・・。」
ノブヒデは何かを思い、その感情に揺さぶられているようだった。
「ノブヒデと父親に何があるかは知らないが、それがミッドガルドに帰ってこなかった理由にはならないだろう。」
バハムートがノブヒデとシヴァの間に割って入るようにそうシヴァに詰め寄る。
バハムートの詰め寄りに頭を振りながら弁明するシヴァ。
「・・・帰りたかったけど、帰れなかったのよ。ヒロヨシにも手伝ってもらって、帰る方法を探したけれど、私たちは時空魔法を使えないし、そう簡単にミッドガルドにつながる次元の歪みなんて見つかりっこなかった。」
シヴァは視線を誰とも合わせないように地面に向けて、自分の体を抱え込むように右手で自身を包み込んだ。
「ならば、どうして今戻って来れたのだ?」
当然のような疑問を投げかけるバハムート。
悲しい目でバハムートを見るシヴァ。
「・・・それは。」
シヴァの口は当然のように重くなった。
母リアがアースカンドに逃れて、
父であるヒロヨシと出会った事を話すシヴァ。
自分の知らない父と母の話に戸惑いを隠せないノブヒデ。
さらに語られる母と父の姿にノブヒデは?
次回、「リアとヒロヨシ」
青年は両親の姿を頭に焼き付ける!(千葉繁さん風)