FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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多くの人々の望みがオメガクリスタルに届いた瞬間
オメガクリスタルに大きな傷が入った。
オメガクリスタルを巡る壮絶な戦いにいよいよ幕が降りようとしていた。


全てを乗せて

ティアは弓を構えて、オメガクリスタルの大きな傷に狙いを定める。

 

「・・・おんなぁぁぁ・・・。」

ティアがやろうとしていることがわかるゼッドが身体を必死にクリスタルに擦りながらクリスタルを守ろうと身体をゆっくりと動かしていく。

 

しかし、ティアの目にはゼッドは最早映らない。

ただ一点のオメガクリスタルの急所だけを見据えて息を整えて、弦を力一杯伸ばしていく。

 

(・・・ぐぅ・・・。)

ティアは誰にも気付かれないように心の中で激痛に耐える。

 

 

ここに来てからティアは何発〔森の雷(フォレアラゥ)〕を放っただろうか?

 

 

ティアにしてみれば、必殺の大技。

その一発一発に全神経を集中させて、全力で放つ一撃。

連発できるものでもないが、そうしなければならない状況だった。

そして、今、その全てが右腕に跳ね返ってきていた。

誰にも気付かれないように隠していたが、右手は小刻みに震えていた。

それでも、ティアはこの一撃を放たなければならなかった。

 

「あははっ・・・らしくないなぁ・・・。」

自分の置かれた真っ暗な状況にふさぎ込まざるを得ない状況に苦笑いするティア。

 

「・・・やらせねぇ・・・・・・やらせねぇぞ・・・。」

クリスタルを背負いながらゼッドがティアに標準を合わせる。

 

 

「・・・・・・。」

レオンが無言でゼッドにティアの邪魔をさせまいとするが。

 

(・・・まったく、ニコニコはどうしたのよ・・・。)

残った力全てを使って弓を引くティアだったが、レオンの背中を見て、少し意識を持っていかれる。

 

レオンの背中は石つぶてによって、ラスターほどではないがボロボロだった。

とても常人では立っていられないのではないかと思われるほど傷だらけで血まみれだった。

しかし、当のレオンは背中を見せなければ、笑顔がないだけで平然としている。

それがレオンである所以なのだろうが、レオンがいつもと違い、自分と同じように満身創痍なのは見て取れた。

 

「・・・・へへへへへへへ・・・レオオオオオオ~~ン・・・。」

ゼッドはレオンが立ちはだかるのを見て、アドレナリンが溢れ出す。

ここに来て、レオンの捨て身の構えは逆効果のようになってしまった。

 

「・・・レオン・・・ガードナーのよしみよ・・・最期まで付き合いなさい・・・。」

ティアは汗を滝のように流しながらレオンにそう告げる。

 

「・・・心得ました・・・。」

レオンはティアに背中を向けたまま一言そう答える。

 

レオンも分かっている。

ゼッドが突っ込んでくれば、レオンもティアも無事ではすまない。

それでも、ティアがその最後の一撃を放つまで、ゴーレムがくれたこの命を燃やす事がレオンにとっては格好の死に場所だった。

 

 

「レオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!・・・・・・・」

ゼッドが最期の力を振り絞ってオメガクリスタルを踏み台にレオン達に突っ込む。

 

 

「連続魔法 ブリザガ」〔パキパキパキッ、ドドドドーーーンッ〕

 

 

「ッ?!」

ゼッドは勢い良くレオンだけを見て突進した。

それ以外には目もくれていない。

そんなゼッドを横から襲ったのはたった一人しかいない。

 

「させませんっ!」

ミューレだった。

 

〔ドゴーーンッ〕

 

「ぐわあああああああああああああああああっ!!」

横からの氷の最強魔法が直撃したゼッドはレオンからもクリスタルからも離れた壁に勢い良く叩きつけられる。

 

「私が絶対にお二人をお守りしますっ!」

ミューレはそう言うと力強く仁王立ちしてゼッドをにらみつけた。

 

結果的には、オメガクリスタルが破損した事により、オメガクリスタルの魔法無効化が消えたのが幸いしたのだろうが、それでも、ミューレならば力尽くで打ち破ったかもしれないと思わせるほどの鬼気迫る迫力だった。

 

「・・・・・・ナイスッ!」

ティアは視線だけをミューレに送って、ニコリと笑った。

 

 

〔森の雷(フォレアラゥ)〕〔シュバアアアアアアーーーーーーンッ!〕

 

 

ティアが最期の閃光をオメガクリスタルに放った。

閃光は何者にも邪魔されることなく、光の線を一直線にオメガクリスタルに延ばし、今度は突き抜けていった。

 

〔パキパキパキパキパキッ、パキンッ・・・パーーーーンッ〕

 

オメガクリスタルは閃光に貫かれるとそこからヒビが全体に広がり、最期は弾けて粉々に砕け散った。

 

〔・・・ドサッ〕

砕け散るのを確認すると糸が切れたようにティアは両膝を床に突いた。

 

「ティア殿ッ。」

今だ光のないレオンだったが、ティアに近付いて肩を触る。

 

「・・・ヘヘヘッ・・・もうからっぽ・・・。」

ティアは右腕をダランとさせながら苦笑いでレオンに答える。

 

「ティアさんっ!」

ミューレが涙を流しながらティアに走って近付く。

 

「ミューレッ、ナイス援護ッ。」

今作れる精一杯の笑顔でミューレを迎えるティア。

 

「・・・まったく大した女だぜっ。」

「ッ?!」

シドがスッとティアに近付くとお姫様抱っこをして声をかけた。

思いもよらない体勢に驚きを隠せないティア。

 

「まぁ~~~。」

その光景を見て、場違いにニヤニヤするミューレ。

 

「ちょっ、ちょっ、ちょっと・・・なにしてんのよっ!」

右手が使えず、満身創痍のティアは言葉だけでシドに殴りかかる。

 

「おいおい、暴れるなよっ・・・レオンもボロボロなんだからしょうがないだろっ。」

シドは暴れるティアを強く抱きかかえて押さえ込む。

 

「むぅ~~~~・・・。」

観念したティアが顔を隠して赤くなる。

 

「・・・ハハハッ・・・なんとかなりましたね・・・。」

微笑ましい光景を見つつ、ラムウに支えられながらラスターが精一杯の笑顔を作る。

 

「ふぉっふぉっふぉっふぉっ、まったく・・・ここがオメガの腹の中だとわすれとらんか?」

シドの微笑ましい光景にニヤニヤを隠せないラムウだったが、どこか孫を見るような暖かな眼差しだった。

 

 

「・・・レッ・・・オッ・・・ンンンンンッ・・・。」

レオンを必死に求める声はもちろんゼッドだった。

 

 

「・・・・・・。」

レオンは黙って、ゼッドの方に視線を流す。

 

そこに居たのはボロボロになった身体を左腕だけを使って必死に前に進もうとはわせるゼッドの姿だった。

レオン達もボロボロだったが、それ以上にゼッドはボロボロになっていた。

 

「させませんっ!」

そんなゼッドの執念を前に、一歩も引かないのはミューレだった。

 

ミューレは先ほどまでオメガクリスタルのせいでまったく魔法が使えず、歯痒い思いで一杯だったが、今は違う。

元気も有り余るミューレはゼッドにとってはラムウ以上に相手にしてはならない天敵だった。

 

「・・・・ぐぅうぅぅ・・・邪魔を・・・するなぁぁぁ・・・ガキィイィィィ・・・。」

それでもゼッドはレオンを。勝利を諦めない。

 

「・・・ミューレ殿・・・。」

「ッ?!」

ゼッドに立ちはだかるミューレの肩にソッと手を置いて声を掛けるレオン。

 

もはや、誰がどう見てもゼッドは死を待つだけだった。

わざわざミューレがゼッドの死を背負う必要もないのだが、その相手にレオンは止めを刺す意欲も元気もなかったのだ。

それをミューレに背負わせるわけにもいかないと思い、レオンはミューレを止めた。

 

 

「・・・ゼッド・・・もう会うこともないでしょう・・・お別れです・・・。」

レオンは光のない目でゼッドを見て、背中を向けて二度と振り返る事はなかった。

 

 

「レオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!」

振り返る事のない男の背中に最後の力で想いを乗せて言葉を浴びせるゼッド。

 

「・・・・レッ・・・・・・オッ・・・・・・・。」

ゼッドは近くに落ちていたオメガクリスタルの破片を握りこんで薄れる意識に抗っていた。

しかし、もうその時はきた。

ゼッドの視界は闇に飲まれていき、暗く寒く冷たく静かに閉じていった。

ゼッドはオメガクリスタルの破片を握りこんだまま動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




強敵ゼッドを倒し、オメガクリスタルを破壊したレオン達。
闘いはいよいよ佳境にさしかかる。

次回、「ユッケと闇の民」
青年よ、揺るがぬ想いで闇に立ち向かえ!(千葉しげるさん風)
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