その能力で知ったハディの悲しい過去。
闇の民が一人の人間の総称となった過去が今、明かされる。
ミッドガルドはアルテマクリスタルを中心に光、樹、風、水、土、火。そして、闇のクリスタルによって支えられてきた世界。
中でも、闇のクリスタルが存在する地域は特殊で、ミッドガルドの人々は、そこに住まう人々を総称して『闇の民』とまとめていた。
風の民、水の民というが、それは一種の地域を指す略語に過ぎないが、闇の民と言うのはもっと重い。
闇の民は光を嫌う。
それは、光を浴びると火傷を負い、最悪の場合は灰になり、死んでしまうからだった。
だから、闇の民は自分達以外の民を『光の民』と総称した。
光の民と闇の民は滅多に交わる事はない。
余りにも違いすぎる世界のため、お互いが意識して、接触する事を遠ざけていた。
そんな世界を訪れたのはその時代の風のガードナーをしていた『コーティ』だった。
コーティは天真爛漫で縛られる事を嫌い、自由奔放に世界を旅している男だった。
そこで興味本位で訪れたのが闇の世界だった。
コーティはその世界で真実の愛に辿り着く。
愛の名は『アルナ』、闇のクリスタルの巫女だった。
光の民の存在を周りに疎ましく思われながらも二人は運命に惹かれ合い、愛し合う。
二人の間に出来た結晶に愛の名前が移る・・・その名は『ハディ』。
子供が出来た事でコーティとアルナは引き裂かれる事となるが、アルナは強い女性だった。
アルナは人里離れた聖域でたった一人、惜しみない愛を降り注ぎ、ハディを育てあげる。
ハディが10歳の頃、その時がきた。
闇のガードナー『パルト』に見つかってしまったのだ。
しかし、パルトはハディやアルナを殺そうとはしなかった。
殺そうと考えていたが出来なかった。
パルトは見た。
ハディの背後に、従属する事をよしとしないはずの守護獣ディアボロスが当然かのようにそこに鎮座し、笑っているのを。
パルトは考える。
ハディを殺すのではなく、立派なガードナーとして育て上げようと。
アルナを見つけ、説得し、ハディはパルトの元で生活を始める事になった。
パルトはハディの生い立ちを知っている数少ない人間だった。
だからこそ、ハディが風の民との混血だと他の民にばれるわけにはいかなかった。
外の国との混血は『禍人』(マガト)と呼ばれて忌み嫌われていた。
しかし、そんな心配を他所にハディは人気者となる。
父親コーティの血なのか、周りの人間をいつも笑顔にして、人の輪の中心に居た。
しかし、そんな幸せは長くは続かなかった。
ガードナーとして、その比類まれな才能と共にハディは揺ぎ無い地位を手に入れたかに見えたが、最愛の友『メニカ』が流行り病にかかってしまった。
その病を治すには光の民の世界にしかない薬草を使うしかなかった。
村には少しの備蓄があったものの、とてもメニカに与えるほどの量がなかった。
ハディはガードナーとして、男として、メニカを助けるべく、光の世界に薬草を取りに行く。
混血と言う事が幸いしたのか、ハディは光の下でも普段通り動け、難なく薬草をカゴ一杯持ち帰ることが出来た。
だが、その事事態がハディを追い詰めてしまった。
村の人々を助ける事は出来たが、禍人としての存在がばれてしまった。
ハディの活躍のおかげで助かった事が帳消しにしてくれると思いきや、それでも人々の恐れは消える事はなかった。
人々は言う・・・流行り病は禍人が招いた厄災だと。
しかし、その時のハディは気にしなかった。
守りたい者を守れたのだから、自分を誇らしくさえ想っていた。が、
運命はハディを奈落に突き落とす。
母アルナも病にかかってしまったのだった。
しかし、ハディが禍人と露呈した事により、調合した薬を分けてもらえる事が出来なくなった。
薬草を取ってきたのはハディなのに、闇の民の医者達や昨日まで仲の良かった村の医者でさえ、アルナを助けようとはしなかった。
流行り病が流行したのがパルトの巡礼と重なったのも大きかった。
パルトが帰ってきた時にはアルナはすでに死に、ハディの姿は何処にもなかった。
ハディの家には散乱する薬草と調合道具。
そして、たった一つ。
薬の入ったビンが母親の遺体の脇のテーブルに置いてあるだけだった。
次にパルトの前にハディが現れたときには、そこに広がっていたのはムクロの山だった。
闇の民の子供も、女も、老人も、パルトも、メニカも、闇の国で生きる全ての闇の民の総称がその日、一人の男に集約された。
ハディは全ての生きとし生ける人間を恨んだ。
差別をする全ての人間を根絶やしにする事を誓った。
闇の国を後にして、ハディが最初に訪れたのは他でもないウィンローラだった。
そこで、ハディは運命の出会いをする。
運命の名は『ラグア』。
たまたまウィンローラに行く途中の村の酒場でハディはラグアに出会う。
風のガードナーだとラグアが名乗ったのが運の尽きだった。
ハディは父コーティの事をラグアに聞く。
奇しくもラグアはコーティの『一人息子』だという。
父はラグアが物心つく頃には本の虫のような人でずっと書斎にこもっていたと言う。
しかし、ハディにはそんな事は関係なかった。
ラグアは次の朝、漆黒の闇の中に姿を消した。
ハディは知る由もなかった。
ラグアが過去を乗り越え、ガードナーとなり、腹違いの兄を探す旅にでようとしていた事を。
ハディはラグアの名前を使い、コーティを誘い出す。
コーティは手紙に添えられていたお守りに我を忘れる。
そのお守りはたった一人の最愛の人に送ったモノだったからだった。
コーティは半ば、自分の運命を受け入れて、その場に向かう。
父と子の対面は一瞬で終わる。
コーティはアルナの死を知らされると全てを受け入れて闇の中へと姿を消した。
ハディは知る由もない。
父コーティはあの日からずっとアルナを助ける為に全力を傾けていた事を。
ラグアの母との結婚は、その事を全て受け入れた愛からだったことも。
ハディはその日、ディアボロスとパンデモニウム、二人の守護獣を従える。
闇の民を根絶やしにしても、裏切り者の父親を葬っても気分は晴れない。
それどころか、ドロドロとしたものが心の中をうごめいてうずいて仕方がなかった。
その感情を紛らわすようにウィンローラの街を破壊しつくした。
全ての差別する者を根絶やしにする為にハディは力を求めた。
アルテマクリスタルの神殿を襲い、その力を手に入れようとしたが失敗する。
バハムートと言う大きな存在に阻まれて、慎重に動く事を覚えた。
潜り込んだ先は光のガードナーだった。
その類まれな才能でハディはその地位を意図も簡単に手にする。
そして、光の巫女候補生だったセレスに近付く。
セレスはハディを愛し、ハディは愛を演じた。
巫女候補生をやめたとしてもセレスは守護統括として、地位を築いた。
ハディの助けも合ってだが、全てハディの見立て通りだった。
ハディの見立て通り、妹のミナも巫女として選ばれた。
ハディの計画は淡々と静かに、確実に成功に近付いていく。
そして、ハディに最期の運命の出会いが訪れる。
最期の運命の名は『ユッケ』と名乗った。
明かされた過去とユッケの力に動揺と混乱からか
ハディはまったく歯が立たない。
それをさらに越えるようにユッケは大切な人から受け継いだ想いを形にする。
次回、「命の受け継ぎ」
青年よ、人の歴史は積み重ねこそ力となる(千葉しげるさん風)