それを得て、ユッケは何を想うのか?
ユッケは淡々と全てを話した。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・」
ハディはユッケの口をフサごうと剣を振るい続けるが、最期まで成功する事はなかった。
「・・・・・・悲しい道だね・・・。」
「だまれええええええええええええええええっ!」
〔ガキンッ〕
ユッケはここではじめてハディと剣を交えた。
一人は静かに穏やかに見つめ、もう一人はこれ以上ない怒りをぶつけていた。
「・・・ハディ・・・俺はあんたの全てを知った上で、この世界からあんたを排除する。可哀想とか、同情なんて俺は一切しない・・・あんたは、自分の過去を盾に正義面してるだけだ・・・あんたのした事は絶対に許されない・・・。」
ユッケは常に一定の表情でハディに向き合う。
「・・・全てを見通して、聖人面をするかと思ったら、良い事を言うじゃないかっ。」
ハディはユッケの言葉を受け止めて、素直に笑った。
「・・・セレスは本当に君を愛して、君を助けようとした・・・その想いだけ叶えてあげられないのが悲しい・・・。」
ユッケはハディを見つつも、背中越しのセレスを思いやり、言葉をつづる。
〔ギャリギャリギャリギャリッ〕
「・・・・・・騙され、踊り続けた悲しい女の想いなど不要だっ・・・俺にとってもお前の存在は絶対に許されないものだッ。」
ハディはセレスに視線を一切送らずにののしる。
交わっていた剣をハディが勢い良く振り払うと、ユッケはフワリと後方に飛んで距離を取った。
「・・・守って見せろッ。」
「ディメンション」〔ブウウウウウウウーーン〕
ここに来て、ハディはよりにもよって、セレスの足元にディメンションを放った。
ユッケとは少し距離があるもののユッケは一歩も動かなかった。
「・・・・・・強がるなよ・・・。」
ユッケはそういうと左手の手の平をセレスの方に静かに向けた。
「ッ?!」
パンデモニウムは驚く。
ユッケが手をカザすとその手が光り輝き、セレスの足元で広がろうとしたディメンションの闇を光で照らし消し飛ばしたのだった。
「・・・ハディ・・・お前は愛から逃げて、目を背けてるだけの臆病者だ・・・。」
セレスから視線をハディに移して、ユッケが淡々と話す。
「・・・・・・。」
ワナワナと身体を震わせるハディ。
「・・・お前が母親のために本気で成し遂げようとしたように、セレスにも本気で向き合ってみろ・・・。」
「うるさあああああああああああああああああああああいっ!!」
ハディの怒りは頂点に達して、限界を突き破る。
怒りのままにハディはユッケに襲い掛かる。
「・・・これはゴウがさっき教えてくれたんだ・・・本当に尊敬できる師匠だよ・・・。」
「ッ?!」
斬りつけたハディはユッケの行動に驚きを隠せない。
ユッケの足元に風が舞い踊り、ユッケは滑らかにハディの怒涛の斬撃をすり抜ける。
〔スッ・・・ドブワアアンッ・・・ドカンッ!〕
「ガハッ!」
ハディの斬撃をすり抜けたユッケが剣を持ち替えて空いた右手の手の平をハディの左のわき腹に添えた。
すると、ハディは強風にあおられた様に全身が吹き上げられて、壁に勢い良く叩きつけられる。
「・・・魔法剣っていうんだ・・・。」
ユッケは変わらず淡々と言葉を並べていく。
(・・・絶対的強者・・・マスターをしても、これほどまでに力の差があるのか・・・)
全てを見ていたパンデモニウムはユッケの存在に恐れひれ伏す。
「・・・・・・。」
ハディは苛立ちを隠せない。
ユッケはわざと斬りつけなかった。
わざわざ剣を持ち替えて、吹き飛ばして見せただけだった。
いつでも、お前を倒せる。
そういわんばかりのゴウマンとも言える態度だった。
「・・・これはハモウから教わったんだ・・・。」
ユッケは壁にもたれ掛っているハディに両手を向ける。
〔連続魔法 サンダガ〕〔ズギャゴンッ、ズギャゴンッ、ズガガガガガガッ、ズガーーンッ〕
「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「お前ッ?!」
ユッケから放たれた攻撃を受け止めたのはハディではなく、パンデモニウムだった。
「・・・マッ・・・マスター・・・私はどこまででも・・・ついていく・・・。」
パンデモニウムは強大な力を受けた身体を引きずりながらハディに想いを告げる。
「・・・・・・。」
ハディは黙って、パンデモニウムを受け入れた。
セレスがハディを想う様に
パンデモニウムもまた、ハディを想い、ここまで共に来ていた。
そんな想いがハディに次の扉を開こうとしていた。
次回、「光と闇の闘い」
青年よ、光と闇は常に争う定めなのか?(千葉しげるさん風)