ハディ達は闇の底に沈み、
ユッケ達はその時が来た事を覚悟する。
「・・・全部おわったんだね・・・。」
ミナがハディの姿が消えた闇を見ながらそうつぶやく。
ユッケ達はハディが姿を消すとセイムボディを解除してそれぞれ元の姿に戻っていた。
「・・・・・・。」
ユッケは黙ってシヴァの背中を見ている。
「・・・・・・。」
シヴァはシヴァでユッケの視線を感じつつも、床に散らばったアルテマクリスタルの欠片を眺めていた。
「ユッケさんッ!」
しばらくすると、ハディとの壮絶な闘いを終えたにも関わらず、張りつめた空気が漂う部屋に何も知らないミューレの元気な声が響き渡る。
どうやら、オメガクリスタルを破壊して、サンダーバードに負傷者を置いて、動けるものだけでユッケ達の元にかけつけたようだった。
「・・・おいおい、なんだこの空気は・・・どした?」
壮絶な闘いを想定していたシドはやる気を削がれる光景に素直に言葉をもらした。
「・・・闇の民をたおしたようじゃが・・・ちがうのかの?」
シドの後ろからラムウも顔を覗かせる。
どうやら、応援に駆けつけたのはこの三人だけだった。
「・・・気付いてるのよね・・・。」
張りつめる3人の沈黙の空気を破ったのはシヴァだった。
「うん。」
シヴァの問いかけに素直に答えるユッケ。
「・・・・・・。」
黙って二人を見守るミナ。
セイムボディは言葉の通り、一心同体。
ユッケの身体の中に3人が溶け込み、合わさるものだった。
それはつまり、3人の間に一切の隠し事がなくなるということ。
今までの過去も、思考も、これからのことも全てを3人は共有すると言うものだった。
ユッケは知っている。
シヴァの愛を、ミナの想いも。
シヴァは知っている。
ユッケの愛を、ミナの想いも。
ミナは知っている。
二人が本当に愛し合っていることを。
そして、世界のためにシヴァがしようとしている事を3人は知っている。
「・・・どうにかならないの?」
切実な想いでユッケが声を絞り出す。
「・・・残念だけど・・・どうにもならないわ・・・。」
貼り付けた笑顔をユッケに向けて、シヴァが答える。
シヴァがそう答えると、シヴァは両手を広げる。
その動作に共鳴するかのように床に散らばったアルテマクリスタルの小さな破片がシヴァの周りに光りながら浮き上がり、集まり出した。
「・・・これはどういうことじゃ?」
その余りにも神々しい光景にラムウが言葉をこぼす。
「・・・マジで、女神。」
光り輝くクリスタルに囲まれるシヴァを見て素直な感想を口にするシド。
「・・・シヴァ様。」
ミューレは余りの光景に水のガードナーとして、神官として、自然と両手を組んで祈っていた。
「・・・どういうことなの、ミナ・・・。」
セレスは事態を知ってるであろうミナに尋ねた。
「・・・・・・シヴァ様は・・・シヴァ様は、これから星の中心に向かうんです。」
ミナがシヴァをジッと見ながら答え、一筋の涙を流す。
「・・・アルテマクリスタル様の破壊はシヴァ様の献身にかかっていました・・・破壊されたアルテマクリスタルは消滅するわけじゃないの・・・力が弱まってしまうけど、確かに存在している・・・だけど、小さな力では星の崩壊を止められない。だから・・・だからシヴァ様がアルテマクリスタルを抱いて、星の中心に行き、エネルギーの供給を助けるんです・・・。」
ミナは淡々と話す。
「・・・ミナ・・・そんな・・・シヴァ様は大丈夫なの?」
セレスの当然の問いだろう。
「・・・・・・大丈夫なわけ・・・ないよ・・・星の中心は私達が思ってる以上に高温・・・シヴァさまにとっては・・・まさに地獄よ・・・。」
張り裂けそうな胸を押さえてミナが言葉を搾り出す。
「・・・それなら、火に強い奴が行けばいいじゃねぇかっ。」
ミナの説明にもっともな事を言うシド。
「・・・無理じゃな・・・。」
シドの提案を透かさずバッサリと切り捨てるラムウ。
「・・・なっ、なぜなんですか?」
余りの急展開の事態に動揺するミューレ。
「・・・火に強い者は確かに星の中心に行っても耐えれるじゃろうが、肝心のクリスタルが熱にやられて本当に消滅してしまう。熱を中和できるシヴァが・・・残念ながら最も適任といわざるを得ん・・・。」
ラムウの杖を持つ手がワナワナと震える。
「・・・そんな・・・。」
ミューレはヘナヘナと腰から力が抜けて床に座り込んでしまう。
「・・・バハムート様達と色々話し合ったけど・・・他に手はなかった・・・ペレ様も、リヴァイアサン様も、皆色々考えたけれど・・・これしかなかったの・・・。」
ミナは決してシヴァから目を背けない。
最も辛いのは自分ではないと知っているからだった。
「シヴァっ!」
「やめてっ!」
ユッケがシヴァに何か言おうとしたのをシヴァが背を向けたまま叫んで制止する。
アルテマクリスタルのかけら達は光り輝きながらシヴァの周りをグルグルと回り出す。
「・・・ユッケ・・・ううん、ノブヒデ・・・貴方の事を誰よりも愛してるわ・・・。」
シヴァは涙交じりの笑顔でユッケにそう告げる。
「・・・・・・。」
ユッケは黙ってシヴァの言葉を聞く。
「・・・リアが死んでからは、貴方の事を本当にわが子として思っていたわ。だからこそ、私は行ける・・・その先にどんなに地獄が広がっていようとも・・・貴方が存在してるこの世界を守ってるって思えたら・・・どんな事にも耐えられるから・・・。」
シヴァはユッケに思いの丈を正直に話す。
「・・・俺も・・・・・・俺も愛してるよ・・・シヴァ・・・。」
「ッ?!」
ユッケも包み隠すことなく想いを告げる。
シヴァは心の底でそれを望んでいたとしても、その言葉を実際に告げられて驚きを隠せない。
「・・・俺も愛している・・・母親としてじゃないよ・・・一人の女性として・・・シヴァ、君を誰よりも愛してる。」
ユッケはゆっくりとシヴァの方に歩を進めて右手を伸ばしていく。
「・・・ノブヒデ・・・。」
シヴァは近付いてくるユッケに戸惑うも伸ばされた手に自分の右手を伸ばしていく。
それは本当に自然な事で、決まりきった海岸に打ち寄せる波の様に導かれていく。
「・・・最初は俺もそうだったよ・・・シヴァに母さんを重ねてた・・・でも、でもね・・・ずっと心の底で思ってたんだ・・・シヴァがずっと傍に居てくれたらどんな幸せだろうって・・・それは・・・それは母親に対しての想いとは違うだろ?」
ユッケはアルテマクリスタルのかけら達に囲まれながらもシヴァの手に触れる。
「・・・私も・・・私もずっと想っていた・・・でも、許されないことだって・・・ずっと言い聞かせてた・・・。」
ユッケの伸ばされた手に触れて、握り返すシヴァ。
「・・・シヴァ・・・俺はずっと待ってるよ・・・君の帰りを・・・ずっと想っている・・・君の事を・・・。」
ユッケは握ったシヴァの手を優しく握りこみ、シヴァの身体をゆっくりと引き寄せる。
「・・・・・・何年掛かるか分からないのよ?」
ユッケに引き寄せられるのを受け入れるシヴァ。
「・・・それが永遠だとしても待っているよ・・・。」
「・・・・・・。」
クリスタルの輝きに囲まれながら、愛する二人は静かに唇を近付けて、誓いを立てた。
その光景は本当に数秒のものだった。
瞬きのように、呼吸をするように、愛をササヤクよりも早い時間。
しかし、愛し合うものにとっては、それは永遠に心に刻まれる一刻。
その与えられた瞬間はどんな名画にも見劣りしない絵画となり、どんなに光り輝く一等星よりも光り輝いた。
「・・・・・・。」
その場に居た全員が息を呑む。
愛を誓ったその日に永遠ともいえる別れを告げられる二人に祝福の言葉はいらない。
ただ、二人の未来を信じることだけがその場に居た全員の想いであり、願いだった。
シヴァは独り地獄へと旅立つ。
それは他の誰のためでもない最愛の人ユッケのために。
望まぬ明日でも、少しでも望む明日へ
ユッケ達は歩み出そうとしていた。
次回、「希望と別れ」
青年よ、強い想いが明日を変える!(千葉しげるさん風)