愛し合うユッケとシヴァ。
未来を信じて、二人は別れる。
その時がきた。
シヴァの周りを漂っていたアルテマクリスタルの小さな欠片がシヴァの中へと消えていく。
そして、部屋の全ての欠片がシヴァの中に消えるとシヴァはニッコリとユッケ達に笑顔だけを残して、ハディとの闘いで部屋に空いた穴から外へと飛んでいった。
最後の別れはあっけないものだった。
しかし、言葉はこれ以上いらなかった。
何よりもユッケが黙っているのにそれ以上誰かが声を出す事ははばかられた。
「・・・終わったね・・・。」
ユッケが優しい柔らかな笑顔を皆に向ける。
「・・・・・・。」
誰も答えられない。
「・・・えぇ、終わったわね・・・。」
皆が答えられない中、全てを知っているミナが答えた。
ミナのユッケに対する想いもユッケがミナに対する想いも全て知っていた。
ミナもシヴァに負けないくらいユッケを想っていた。
想っていたからこそ、シヴァに放った言葉が今もミナの胸に引っかかっていた。
「・・・シヴァ様は・・・残酷ですね。」
ハバムート達とアルテマクリスタル破壊について、基地で話し合っていた時の台詞。
シヴァとしては、アルテマクリスタルと共に星の中心に向かう中で、ユッケを支えられるのはミナだけだと想ったからシヴァは「ユッケをよろしく頼む」とミナに告げた時の返答だった。
ミナにはその時にもう気付いていた。
自分がどう足掻いても、ユッケの心の中に入ることは出来ないと。
どんなに自分がユッケを想おうとも、ユッケの心の中にはシヴァが居て、愛を独占している。
ハディの父コーティを支えたラグアの母のように割り切れることはミナには出来なかったのだ。
「・・・ミナ・・・ありがとう、本気で向き合ってくれて・・・。」
ユッケが全てを知って受け入れた答えがミナに告げられた。
「・・・・・・うん・・・。」
ミナの胸のシコリが和らいだ瞬間だった。
セイムボディで全てを共有した段階でシヴァの想いも全部知っていたのだが、ユッケに改めて言葉にしてもらう事で救われたようだった。
「・・・俺にはできねぇな・・・漢だぜ、ユッケ。」
達観したユッケの肩に腕を回して、シドなりにユッケを元気付けた。
「お主には到底出来ぬ事だな・・・相手がおらんっ。」
「あんだとこら!」
「ふぉっふぉっふぉっふぉっ」
シドとラムウは雰囲気を和まそうとする。
「・・・あの・・・あのあの・・・。」
「・・・ありがとうミューレ・・・。」
頑張ってユッケを元気付けようとしたミューレを気遣い、頭を撫でながらお礼を言うユッケ。
「・・・わっ、私、絶対ユッケさんみたいな男性が良いと思います!・・・あっ・・・。」
余りの事態に思わぬことを口にするミューレ。
「あわわわ・・・ちがうんですちがうんです、ちがうんですぅ~~~。」
慌ててユッケから距離を取って顔を両手で隠して慌てふためくミューレ。
「フフフフッ」
「アハハハッ」
シドやラムウ、ミューレのドタバタに場が自然と和んだ。
「・・・感じる、ユッケ?」
ミナが両手を広げてユッケに尋ねる。
「・・・え?」
ミナの問いに答えられないユッケ。
「・・・シヴァ様があなたのために頑張ってる証拠よ・・・貴方にも感じれるはず・・・アルテマクリスタル様のエネルギー・・・。」
ミナは目を閉じて、アルテマクリスタルから流れるエネルギーを感じ取っていた。
「・・・・・・ホントだ・・・。」
ミナと同じように目を閉じて、静かに両手を広げる。
すると、暖かな柔らかな空気が漂っているのを感じ取れた。
愛しいモノを大事に抱えるように、触れるように、傷つけないように、優しく包み込むように。
母親がわが子をあやす様にアルテマクリスタルのエネルギーがユッケ達を包んでいた。
「・・・・・・感じません・・・。」
ユッケ達の真似をするもミューレには感じられなかったようだ。
「フフフッ・・・大丈夫よミューレ・・・あれは巫女の素質のようなものなのよ・・・。」
落ち着きを取り戻した元巫女候補のセレスがミューレを励ます。
「シヴァが俺達をずっと見守っててくれてるって証なんだね・・・。」
目を閉じて、最愛の人を想うユッケ。
「・・・・・・。」
ミナはユッケの姿を見て、さらに肩の荷が降りたように思えた。
離れ離れになったとしても、二人は感じ合える。
セイムボディでユッケにも巫女の能力が渡ったのか、はたまた母親の血からなのか。
どちらにせよ、少なからず救いがあることがミナはうれしかった。
「・・・踊るピエロの姿は実に愉快だよねぇ~~・・・。」
ハディ達が消えた闇の中から聞き覚えのある声が部屋に水を差すように響き渡った。
終わったかに思えた光と闇の闘い・・・。
そんな明日の希望の光を嘲笑って闇が浮かび上がる。
シヴァがいなくなったユッケ達は?
次回、「絡みつく闇」
青年よ、闇は光の先に必ず浮かび上がる(千葉しげるさん風)