大きな争いもなく、平和な日々が二つの世界に長く訪れていた。
しかし、そんな世界にも一つの黒い点がある。
狂った英雄となったユッケの存在だった。
「巫女様~~っ、見てみてっ!」
「待って~~~っ!」
花の冠を両手で掲げて、女の子が二人花々を掻き分けて、ミナの元へと掛け寄って来る。
「あらあら、危ないわよ・・・私は逃げたりしないから。」
ミナは駆け寄ってきた二人の少女を抱き止めて、優しく包み込んだ。
ミナがいるのはもちろんアルテマクリスタルの神殿だ。二人の少女は巫女候補生と共にミナに仕える女中のようなものだった。ミナは昼下がりに二人を連れて、神殿の庭にあるお花畑に羽休めに来ていた。
「巫女様あったか~い。」
ミナに花の冠を持ってきた少女がそう言う。
アルテマクリスタルの神殿は気候は穏やかのはずだった。だがしかし、不思議な事に今日に限っては少し肌寒かった。
「わぁっ・・・見て、巫女様ッ、何か白いものが降って来るよッ!」
「ッ?!」
もう一人の少女が天を指差して叫ぶ。
その指の指し示す光景にミナはハッとした。
天から舞い降りてくるのは紛れもなく雪だった。肌に触れると優しく消え、パウダースノウだということが分かる。シヴァが消えてから世界に雪は降ることはなかった。しかし、肌寒さを感じた今日・・・何百年ぶりかに大地に雪が舞い降りた。
「わぁっ、何これッ。つめたーーいっ!」
「ワァッ、すごいすごいっ!」
二人の少女は雪を知らない。
何百年も降らなかったのだから無理もない。ミッドガルドで知っているのは勉強熱心な者だけで、その存在は最早おとぎ話の中にひっそりと語られるだけのものだった。
「・・・・・・。」
「巫女様?」
「巫女様、どうしたの?」
二人の少女はミナが天を仰ぎながらキョロキョロしているのを不思議がる。
「・・・ッ?!」
ミナは神殿を囲む崖の一つにその姿を見つけた。
もう何百年も前に別れた姿のままにそこにあの青年が立っていた。傍らには絶世の美女があの時と変わらず、青年の隣に浮いて、寄り添っている。
(・・・あぁ、お戻りになられたんですね・・・。)
その姿を焼き付けて、ミナは涙する。
日々、アルテマクリスタルに祈りを捧げていたミナには分かっていた。もう数年も前から安定したアルテマクリスタルの力を感じていて、あの方が帰ってくるのは近いだろうと。そして、望んだその姿がミナのその目にやっと映ったのだった。
「・・・・・・。」
「ッ?!」
青年と目が合うや否や、青年は背中を向けて崖の向こうへと姿を消して行く。
ミナはその背中に思わず手を伸ばした。
一瞬だったが、確かに青年はミナに微笑を残していく。空を舞う美女もミナに手を振った後、青年の後を追って崖の向こうへと姿を消して行った。
(あぁ・・・私もお別れが近いのでしょうね・・・最期に私に姿を見せに来てくれたんでしょ?・・・そして、今際の際に未だに私は貴方の背中を追いかけていたんですね・・・ユッケ・・・。)
ミナはつらつらと止まらぬ涙を流して、届かぬ背中に想いをはせた。
ミナは知っていた。
ユッケが仲間達の死期が近付くと、姿を現して別れを告げる事を。もう何百年と巫女として役割を果たしてきたミナだったが、その時が来たのだと悟った。
しかし、ミナは満足していた。
大切な仲間達に巡り合い、ユッケと出会って強くもなれた。そして、今では、こうしてアルテマクリスタルに仕え、多くの人に支えられている。最後には1番見たかった光景を一番大切に思っていた人が見せてくれたのだから・・・。
「巫女様ッ!どうしたの?!」
「巫女様ッ!」
「どうかなさいましたか、ミナ様ッ!」
慌てる少女達に、近くに居た神官がミナの異変に気付いて、こちらも慌ててミナにかけよる。
ミナはただ、雪が舞う空を仰ぎ、涙を流して、あの背中に手を伸ばし、想いをはせ続けていた。
「・・・よかったの?」
シヴァがユッケにそう声をかける。
「・・・お別れは済んだよ・・・俺達に言葉はいらない・・・。」
ユッケがそういって、シヴァを優しく引き寄せる。
「・・・寂しくなるわね・・・。」
シヴァがユッケの腕の中で切なそうにしている。
「・・・・・・。」
シヴァの言葉にユッケは黙っていた。
ユッケはシヴァに伝えていた。
自分が人の死期を感じ取れる事を。そして、今日ミナに会ったのは最後にシヴァに会わせてあげたかったからだ。シヴァが間に合ってくれた事がユッケにとっては幸いだった。
人の幸せがなんなのかは分からない。
ミナが本当に今幸せなのか、ユッケに判断する事はできなかった。だが、こうして、シヴァと二人でいる事をミナに報せる事が最後に出来たのはよかったと思えた。
「父さんッ!」
寄り添う二人に一人の男性が声をかける。
「・・・どうかしたのか、ハディ?」
ユッケはその男性の名前を呼んで尋ねた。
「アースカンドのチャム地方でやはり迫害が起きてるようで・・・。」
ハディはユッケの問いに素直に答える。
「・・・そうか・・・行こう・・・。」
ユッケはそう言うと腰に下げたアルテマウェポンに手をかける。
ユッケはシヴァとハディと共に止められていた飛空挺に乗り込んでいった。
ユッケは父の死後、ゲートが安定するまでアースカンドで差別や迫害を受けている人達をたった一人で助けて回っていた。しばらくして、ゲートが安定するとミッドガルドにも赴き、同じように活動し続けた。誰に助けを求めるわけもなく、ユッケは黙々とたった一人で助けを求めるその手を救い上げる。
差別をするのは決まって多数。
迫害するものは決まって強者。
多数派や強者は容易に情報を操作できる。自分達がしたことを隠して、ユッケに汚名をきせて自分達の罪を逃れようとした。最期にはユッケの手に掛かるものも多かったが、流した情報が人々の間で面白おかしく伝わり、ユッケの周りは敵だらけとなった。それでも、ユッケの行動は変わらない。誰かに助けも求めない。
救えなかったあの少年の手を今でもユッケは捜し続けている。
いつしか、敵も増えたが仲間も増えていた。ユッケが助けた中に、勉学に励み、富を築く者達も多かった。ユッケに恩を返すべく、その者達はある組織を作る。
組織の名は『スノウクイーン』
組織の長はユッケだが、ユッケは人の上に立つ事を拒み続けたので、組織の長は名を受け継ぐ事でユッケの代わりに代々組織を運営してきた。
組織の長の名前は『ハディ』
ユッケが救えなかった少年の名を忘れないようにとユッケがわざとそう付けさせた。
ユッケの事を父親といっていたが、ユッケにはまだ実の子はいない。なら、なぜそう言われるようになったかと言うと、ユッケが助けた者達の中には、多くの孤児がおり、そう言うものの中から自然とユッケの事を父親と慕い、ユッケの事を父親と言う者達が現れた。その事で、今ではユッケの事を組織では父親と言う事が定着したことによるものだ。
ユッケは救い続けるだろう命の続く限り、親愛なる子供達と共に。
そして、ユッケは今も再会を果たした最愛の人と共にその少年の手を捜し、救い続けている。
二度と泣いている少年が闇の中で迷わぬように。
少しずつでも望んだ未来(あした)に近付くように・・・。
ファイナルファンタジー
アルテマクリスタル
~~~~FIN~~~~
こちらは物語の途中で行ったアンケートに沿って分岐させた
シヴァルートENDになります。
(元々のプロットはミナENDで作ってましたw)
アンケートに応えて下さった方、ありがとうございました!
処女作と言う事で、書き切る事を目標にしてきましたが
思いの他、たくさんの方々がその大切な時間を使って
この作品を見てくれた事を心の底から感謝しています。
今の時代はたくさんの楽しい事が溢れています。
それを24時間で全て味わうのは難しいことです。
そんな中で、私の作品に少しでも時間を割いて下さった皆様方に
楽しい経験が出来たと思ってもらい、さらに明日の糧になったと思ってもらえたのなら幸いです。
長い間お付き合いしてもらって、ありがとうございました!
PS:最期にこの物語が伝えたい事は決して、「マザコンが強い!」というわけではありませんので、あしからず・・・。