ここは、好奇心が強い無謀な者だけが到達できる闇の深淵。
見たら最後、闇に魅入られる場所。
引き返すなら、今しか無いだろう・・・。
オメガ・グラティニカ
何か腑に落ちない事がある。
月と星が恐怖で身を潜める真っ暗な夜空のパズルの最後のピース。
物語の深淵のさらにその奥底。
第一次オメガ大戦で生き残った関係者はギルガメッシュのみ。
では、稀代の天才と言われたアルテマの巫女イデアとセイムボディをして、パラディンとなった者は誰と戦って、その命を落としたのか?
「・・・ん?・・・」
ユッケはオメガの最奥で待つハディの元へと走って向かっていたが、ふと一瞬だけ気に止めた場所があった。
「どうしたの?」
立ち止まったユッケの様子をみて、シヴァが声を掛ける。
「・・・・・・いや・・・なんでもない・・・。」
ユッケは辺りを一通り見回して、気のせいかと思い、また走り出す。
その場所は、本当に今まで見てきた代わり映えのない風景だった。
ずっと続くオメガの内部の通路で、特に目立ったところも無い。
しかし、そのちょっとした変化をユッケが気付いていれば・・・幸か不幸か、会えたのかもしれない。
・・・この全ての戦いの闇の元凶に・・・
ユッケが気の迷いから立ち止まった丁度その場所にあった隠し通路。
それは誰も知らないオメガの最深部。
誰が作ったのか?
誰が必要としたのか?
ハディすら知らない本当の最深部で、ある者がある部屋で何かを見ていた。
「・・・マスター・・・何千年ぶりだろうね?」
腕組みをして、ディアボロスが部屋の中心にある太い柱に話しかけていた。
その柱はオメガと同じく、様々な合金で作られていて、床や天井から管が幾重にも、その柱に向かって伸びていた。良く見ると、その柱には、女性の彫刻が埋め込まれており、ディアボロスはそれに向かって話しているようだった。
「・・・約束通り、マスターを起こすのも悪くないが・・・自分で起きれないなら、僕が取って代わってもいいよね?・・・・・・想定内って、言ってたものね・・・。」
ディアボロスは口角を上げて、白い歯を自慢げにその女性の像に見せ付ける。
「・・・オメガは手に入れた・・・後はアルテマを手に入れれば、僕が最強になれる・・・貴方ではなく、僕がね・・・。」
そういうとディアボロスは闇の中へと溶けて、姿を消した。
「・・・・・・。」
部屋に残された支柱に埋まる女性の彫刻の瞳が少し光ったように見えた。
時をさかのぼり数千年前のオメガ内部。
そこには、ボロボロの姿となりながらも、それでも最期まで敵を見据えているイデアと、その横で、辛うじて、片膝をついている騎士の姿があった。二人の後方には、すでに絶命した守護獣の亡骸がある。
「・・・パラディン・・・すばらしい力でした・・・この私も本当に危うかった。」
ボロボロの二人が見ているその人物が二人を見下ろしながらそう呟く。
「・・・グラティニカ・・・。」
騎士が力を振り絞って、その者の名を口にする。
「・・・ハディ・・・あなた方は、その命をかけて、私をここに留め置く事で、オメガクリスタルの封印の成功率を上げました・・・40%にも満たなかった成功率が、87.3%まで上がりました・・・これは、私があなた方のパラディンという隠し玉と、あなた方の献身性を軽視した結果です。」
グラティニカは冷静に淡々と騎士達に話していく。
グラティニカと呼ばれたその者は、今はボロボロではあるが、髪の毛に見立てたような無数の管がロングヘアを形成し、腰まで大きくたなびいている。全身が何かの金属で出来た肌で覆われており、傷付いた肌の奥からは配線が漏電してバチバチと音を立てていた。全身を覆う物はなく、女性のありのままの姿で騎士達と対峙している。
「・・・今回はあなた方の勝利です・・・このまま、オメガクリスタルのエネルギー供給が遮断されれば、後から来る平凡な連合軍の物量でも、私はやられてしまうでしょう・・・しかし、お見事でした・・・前室で、多くの仲間達がその命を掛けて、あなた方に攻撃のチャンスを作り、自己犠牲という形で散っていった・・・人間がここまで、他者を信頼し、命をかけられるというのも計算外でした・・・。」
グラティニカはそう言って、騎士達に背中を見せる。
「・・・幸いなのは、相打ちという形で、あなた方も無事ではすまなかったこと・・・そして、私には無限の時間とチャンスがあるということ・・・このまま、私がやられた事にすれば、連合軍もオメガクリスタル封印という形で幕引きにするでしょう・・・。」
グラティニカは背中を見せたまま、顔だけを後ろに向けて、今にも倒れてしまいそうな騎士を見る。
騎士の横にいたイデアはもう気を失って、すでに事切れていた。
「・・・にっ・・・逃がす・・・か・・・。」
騎士は一人となっても最後の力を振り絞って、立ち上がる。
「寝てなよっ。」〔ズガンッ!〕
「ぐわあああああああああああああっ!」
やっとの思いで立ち上がった騎士だったが、頭上に現れたディアボロスの全体重を乗せた踏みつけに絶叫する。
「・・・・・・。」
騎士はディアボロスの攻撃に完全に意識を失った。
「・・・マスター・・・どうするの?」
騎士を踏みつけたままディアボロスがグラティニカに尋ねる。
「・・・貴方も聞いていたでしょう?・・・私はこれからオメガと共に眠りにつきます・・・貴方にはここで私となって、やられてもらいましょう・・・。」
グラティニカはディアボロスに指示をしながら何処かへ歩いていく。
「・・・やられるのって、意外に痛いんだよね・・・。」
ディアボロスが両手の手の平を上に向けて、おどけて答えた。
「・・・オメガクリスタルの復活にどれほどの時間が掛かるのか・・・今の私でも、計算出来かねますが、無限の時間がある私達ならば、問題ないでしょう・・・貴方の望む闇も必ず来ますよ・・・。」
グラティニカがしばらく歩くと、床から無数の管が現れて、グラティニカを覆い出した。
「・・・僕の身は気にしないって・・・か・・・。」
グラティニカの言葉の中に、自分の事が含まれていないとディアボロスが少し顔を歪める。
「・・・フフッ、駄々をこねる姿もかわいいですよ・・・貴方の裏切りも想定内です・・・お好きになさい・・・。」
そう言い終えると、グラティニカは管に覆われて、そのままオメガの中に飲み込まれて姿を消していった。
「・・・・・・言ってくれる・・・。」
姿を消したグラティニカにディアボロスは言われた通り、グラティニカに姿を変えながら言葉を吐き捨てる。
「グラティニカっ!!」
丁度、ディアボロスがグラティニカに変わった後にギルガメッシュと連合軍の兵士達が部屋に雪崩れ込んできた。
ディアボロスは、あくまでやられ役として、程々に戦い、ギルガメッシュ達に見事に討ち果たされる。その後は、グラティニカの予想通り、ギルガメッシュ達はオメガから仲間達の亡骸の回収を最優先して、地底に封印されるオメガから撤退した。
グラティニカはほくそ笑みながら、眠りにつく。
ギルガメッシュがオメガクリスタルの精製計画の中で、一番危惧していたのは、このグラティニカの部分だった。
正式名は『オメガ・グラティニカ』
オメガクリスタルの精製、管理・運営を任された人工知能AI。
古代アースカンド人が持てる叡智を結集した最高傑作だった。
その叡智の集大成であるグラティニカは、期待通りにオメガクリスタルの精製を完璧にこなして、アルテマクリスタルのデータから人工的にマスタークリスタルの精製を成功させた。そこから、グラティニカは言葉巧みに、古代アースカンド人達をたきつけて、ミッドガルドと争わせ、最終的にはアルテマクリスタルの奪取、または破壊を目論んだ。古代アースカンド人は、自分達が全て考えて行動したと思っていたが、そのほぼ全ての行動が、グラティニカによって、企てられたものだった。そのことに気付いていたのはギルガメッシュとその仲間達だけで、バハムート達ですらも本当の敵を見誤っていた。
ギルガメッシュ達は、孤立しながらも仲間を集め、最終的にはグラティニカの野望を阻止したが、グラティニカを完全に消す事は出来なかった。ギルガメッシュの未来に託した資料の中にもグラティニカの項目がなかったのは、倒したと思わされた事と、その存在自体が、余りにも凶悪だった為に、ギルガメッシュが記述として残す事さえも躊躇ってしまった為だった。
しかし、結果的にディアボロスの裏切りにより、この時間軸では、グラティニカは破壊されたオメガと共に深海に沈められて、最早、復活はほぼ不可能とされた。
だが、もしかすれば、違う時間軸のユッケ達がその部屋に到達したかもしれない。
結果的に復活はしなかったが、この物語の最悪の元凶の姿を見ることがあったのかもしれない。
最高とまで言われたアルテマの巫女イデアとセイムボディをして、パラディンとなった騎士ハディと仲間達の自己犠牲により、ようやく相打ちという形になったグラティニカに挑めたのかもしれない。
この世から、最大の元凶はなくならなかったが、この最後の物語が終わったというならば、未来永劫、グラティニカは復活する事は無かったのかもしれない。
しかし、今もグラティニカは深海のオメガの残骸の中で、復活を願って待っているのは確かだ。
もし、ゲームになっていれば、裏ボスとしての設定。
やり込みが好きな人が最期に挑むエンドコンテンツです。
できれば、カンストしたキャラで対等がちょうどいい壊れ具合で。
最後の最後まで見てくれて、ありがとうございました。
これで、本当に終わりです!!