FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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母リアの命をかけた想いを聞いたノブヒデ。
そんな気持ちを知ってか知らずか、
バハムートがさらにシヴァに迫る!
襲いかかろうとするバハムート、一歩も引かないシヴァ。
王に挑むシヴァの脳裏にあの日の光景が蘇る!


母の祈り

「・・・リア。」

リアがクリスタルに願いを込めた時、シヴァは近くでそれを見守っていた。

それがいったいどういう結果になるかも分かっていた。

が、それを見守るしか選択肢はなかった。

 

「シヴァ・・・貴女にはいつも迷惑ばかりかけたわね・・・。」

ベッドに横たわりながらシヴァを優しい目で見るリア。

 

「・・・リア、それであなたは満足なの?」

シヴァはベッドに近寄り、ヒザマズいて、リアの手を取る。

 

「・・・お母さん・・・。」

リアのベッドの近くでその光景を見ていたノブヒデが怯えていた。

 

「・・・・・・ノブヒデ。大丈夫よ・・・お母さんの友達が会いに来てくれただけよ。」

体は動く気配がない。

そんな弱りきった身体で懸命にノブヒデをあやそうとするリア。

 

「・・・ミッドガルドはどうするの、リア?」

シヴァは今にも溢れそうな涙を必死に堪えていた。

 

「・・・ごめんなさい。巫女として、何もかも・・・失格ね。」

リアは残り少ない力を込めて、シヴァの手を握る。

 

「・・・最後に何を願ったの?」

シヴァはリアに尋ねる。

 

「・・・最後に・・・私の命を捧げるので・・・どうかノブヒデを・・・守ってくださいって・・・アルテマ・・・クリスタルも答えてくれた・・・巫女でなくなってるはずの私の声に・・・。」

今まで見た中で一番のリアの笑顔を見たシヴァ。

 

「・・・貴女って子は・・・。」

シヴァは震える声を絞り出して、リアに言葉を零す。

 

「・・・シヴァ、貴方も・・・私のわがままを・・・聞いてくれる?」

今にも事切れそうなリア。

 

「・・・・・・。」

シヴァは黙ってリアの手を握る。もはや、言葉が出ない。

 

「・・・ノブヒデ・・・お母さんの所に来て?」

息も絶え絶えの状態のリアが声を振り絞って、息子を呼ぶ。

 

「・・・あさん・・・。」

幼いノブヒデは母との別れを悟ったのか必死に泣くのを我慢して母に近付く。

 

「・・・シヴァ・・・ノブヒデを・・・私のノブヒデを・・・どうか・・・守って・・・。」

シヴァの手を離し、ノブヒデの震える頬に必死に手を伸ばすリア。

 

「おかあ~さん・・・。」

頬に手が触れるとノブヒデは大粒の涙を流しながらリアの手にしがみ付く。

 

 

「・・・ごめんなさいね。ノブヒデ・・・あなたの・・・成長を・・・もっと・・・。」

 

 

リアはそこまで話すと糸の切れた人形のように地面にその身体を引っ張られた。

 

「おかあさああああああああん!」

 

ノブヒデは母親を必死に起こそうとその身体を力一杯揺さぶった。

 

「・・・リア・・・。」

その光景を見て涙を流すシヴァ。

シヴァは泣きじゃくるノブヒデを優しく抱きしめてリアから離した。リアはこの上ない幸せそうな顔をしていた。

 

 

 

「おかあさアアああああああああああああああ・・・・・・・!」

 

 

 

リアの最後の光景がシヴァの脳裏に蘇る。

その思いを胸にシヴァはバハムートに挑む。

 

 

「・・・シヴァよ、今なんと言った?」

シヴァの言葉にバハムートは苛立ちを隠せない。

 

「リアの願いを尊重したと言ったの。」

シヴァがバハムートに立ち向かうように言う。

 

「・・・シヴァよ、お前は正気なのか?」

バハムートは大地を掴んでいた手に力を込める。

地面はメリメリと削られ圧縮された。

 

「私は私の考えでノブヒデをミッドガルドから遠ざけようとしていたのは否定しないわ。」

シヴァは自信を持って、言葉をバハムートにぶつける。

 

「・・・そうか。それならば話は早いな。」

バハムートの口から淡白い光が漏れ出す。

 

「待ってください、バハムート様!」

大きな声を出してバハムートを止めようとするレオン。

 

「もう少し冷静に話を!」

ティアも続けてバハムートを止めようとする。

 

 

「やめろ!」

 

 

ノブヒデはシヴァに攻撃しようとするバハムートの前に立ちはだかる。

 

「ノブヒデ、やめなさい!」

シヴァは慌ててノブヒデの前に出ようとするがノブヒデが両手を広げて妨害する。

 

「・・・いい度胸だ、アルテマの子よ。」

バハムートは覚悟を決めたノブヒデを見て、さらに口から光を溢れさせる。その時だった。

 

突然、ノブヒデの胸の所で、静かに様子を伺っていたアルテマクリスタルが強い光を放った。

 

「・・・こっ、これは?!」

その光に驚くノブヒデ。

 

「・・・リア・・・。」

その光を見て、シヴァの声が漏れた。

 

「ぬぉっ?!・・・」

アルテマクリスタルのその強烈な光にあてられたバハムートは攻撃準備をやめざるを得なくなり、手で光を遮る様に顔を隠した。

 

「・・・クリスタルが・・・守ったの?」

その光景をみて、言葉が零れるティア。

 

 

「・・・アルテマ・・・様。」

 

 

その光を見て、今までハディを失って放心状態だったミナが声を発する。

 

「おおぅっ?!・・・ミナ殿。」

レオンはニコニコしながらミナの方を見る。

 

「・・・アルテマ様。」

ミナは輝くクリスタルに向かってヒザマズき、祈りを捧げ始めた。

 

「・・・なんということだ。私が間違っていると言うのか、クリスタルよ。」

バハムートの言葉から今までの自信が感じられなくなっていた。

それと関係してか、クリスタルの光が次第に弱まっていく。

 

「・・・バハムート。本当にごめんなさい。私はこうでもならなかったらノブヒデをミッドガルドに近づけようとは思わなかった。事故とはいえ、ノブヒデが次元の歪みに飲み込まれてしまって・・・この世界へ戻ってきたのは驚いたわ。」

シヴァは申し訳なさそうにバハムートに頭を下げる。

 

「・・・次元の歪みだと?」

バハムートはシヴァの言葉の中で気になったことを聞き返した。

 

「えぇ、そうよ。リアが亡くなってから数年したときから次元の歪みが世界に現れだしたわ。私の考えだけど、間違いなく闇の民がミッドガルドとアースカンドを行き来していた証拠だと思うわ。」

シヴァは自信を持ってそうバハムートに考えを述べる。

 

「・・・なんということだ、闇の民が世界を行き来できる力を手に入れていただと・・・。」

バハムートは深刻そうに話し、考え込んだ。

 

「・・・この世界は次元がつながるほど近いのでしょうか?」

レオンが相変わらずニコニコしながら尋ねた。

 

「・・・ヒロヨシの研究も関係していると思うわ。ヒロヨシはリアが亡くなってからは、ずっとミッドガルドにクリスタルを戻す事に尽力していた。その研究のために次元を歪めて、この世界とつなげようとしていたから。」

シヴァがまたノブヒデを真剣な目で見ながらそう答える。

 

「・・・オヤジがそんなことをしてたなんて・・・知らなかった。」

ノブヒデは父親との関係が冷え切っていた。それは父親が自分や病弱な母に構わず研究に没頭していたためだったからだ。

 

「ヒロヨシはね・・・誰よりもリアの願いを叶えようとしていたのよ。」

シヴァが諭すようにノブヒデに話す。

 

「・・・なるほど、父上殿はノブヒデ殿が危険に関わらないようにクリスタルをミッドガルドに返し、事無きを得ようとしたのですな。」

レオンがニコニコしながら核心を突く。

 

「・・・オヤジ・・・。」

今までの父親への仕打ちを思い出し、居た堪れなくなって下を向くノブヒデ。

 

「・・・二つの世界は元々近い関係だったが、次元の歪みを故意に行い続けた事で不安定になってきたのはまずい。それにアルテマクリスタルの消失でミッドガルド自身も不安定になっている・・・急がねばなるまい。」

バハムートが考え事から帰ってきてノブヒデを見て話す。

 

「いかがしますか、バハムート様。」

レオンがバハムートに尋ねる。

 

「・・・ノブヒデよ、お前の存在は私には許しがたい。お前の父親も同様だ。だが、現実的に考えてお前にアルテマクリスタルを運んでもらわねばならん。」

バハムートが今までとは違い、柔らかい口調で話す。

 

「・・・俺が・・・。」

バハムートの言葉を戸惑いながら受け止めるノブヒデ。

 

 

「アルテマクリスタルはお前を守ったようにお前を選んでいる。この世界は滅亡寸前にお前によって救われたに等しい。母リアの世界をお前は救う気はあるのか?」

 

 

バハムートが母親の名を出してきた。

 

「・・・母さんはこの世界の為に尽くしてきた。その世界が壊れるのを俺が止められるなら願ってもないことだ。」

最初は戸惑っていたノブヒデだったが、決意をした目でバハムートを見る。

 

「・・・命を落としたとしてもか?」

ノブヒデの決意が固いか試すようにバハムートが尋ねる。

 

「・・・危険が怖くて逃げてても、このままなら同じ事なんだろ?」

今まで釈然としなかったバハムートにハニカんで返すノブヒデ。

 

「バハムート、ノブヒデならきっとやり遂げてくれるわ。私もいるもの。」

シヴァがノブヒデの肩に手を置き、微笑む。

 

「・・・我々もガードナーとして、張り合いがより一層出ますな!」

ニコニコしながら胸を張るレオン。

 

「・・・それじゃぁ、ミナは?」

ティアが心配そうにミナの方を見る。

 

「・・・私は・・・。」

半分放心状態だったミナは自分の置かれた状態をイマイチ把握できず、オドオドしていた。

 

「・・・アルテマの巫女には引き続き巡礼をしてもらう。そして、奇跡の巫女として表舞台に立ってもらう。」

バハムートが冷たい言葉で言い放つ。

 

「・・・それって、ミナが囮って事か?」

ミナを見ながら戸惑うノブヒデ。

 

「クリスタルが外部に持ち出され、今もなお外にあると言う事が如何に危険か分かるか?」

バハムートがノブヒデに詰め寄る。

 

「・・・でも、それじゃっ!」

「いいわ、私はアルテマの巫女ですもの。クリスタルを・・・世界を守る為にいるんですもの。」

ノブヒデの否定を打ち消すようにミナが身を乗り出す。

 

「わざわざ囮にならなくても・・・。」

釈然としないノブヒデ。

 

「・・・クリスタルは本来、人が持てるものではない。本当は今すぐにでも取り上げたいところだが、ノブヒデはクリスタルを身につけ、しかも、クリスタルがその力を使い、持ち主を守るのは例外中の例外。それならば、直接狙われるよりも敵を欺けるというもの。」

バハムートはそう話してノブヒデを丸め込もうとする。

 

「・・・ミナ、本当にもう大丈夫なの?」

ティアがミナに近付き、ミナの肩に手を置いて心配する。

 

「・・・まだ、ハディの事で頭がいっぱいだけど・・・世界はそうも言ってられないもの。」

ハディはミナが幼い頃より一緒に居た兄のような存在だった。

その大事な存在が闇の民にあのように消されてしまったのは耐え難い苦しみだった。それでも、ミナがこうして立っていられるのはリアにとってのノブヒデのように、ミナにとっては守るべき世界があると言う使命があるからだった。

 

「アルテマの巫女よ、いい心がけだ。お前の意思は必ずや世界を救うだろう。」

今までにない優しい声でバハムートはミナに接する。

 

「・・・俺はガードナーとしてミナを守るってことでいいのか?」

ノブヒデはバハムートに尋ねる。

 

「お前はフュージョンを使える数少ないガードナーだ。誰も不思議に思わないだろう。しかし、前線にはくれぐれも出るな。クリスタルがあると知られれば、敵が群がってくる。」

バハムートが釘をさすように話す。

 

(やっぱりミナを囮にするぐらいなら俺が名乗り出た方がいいんじゃないのか?)

ノブヒデは黙ってバハムートを見て、釈然としない思いを頭の中で膨らませていた。

 

「・・・ユッケ・・・貴方は今までどおりでいいのよ。私は私で役目を果たすだけだもの。」

釈然としたい気持ちのノブヒデの事を察したのかミナがノブヒデにそう言って先回りをした。

 

「・・・・・・。」

黙ってミナを見返すしか出来なかったノブヒデ。

 

「我々は引き続き、ミナ殿を守る方向で?」

ニコニコレオンがバハムートに指示を仰ぐ。

 

「・・・不自然にノブヒデを厚く守れば疑われる。ガードナーは本来通り巫女を。ノブヒデの方はこちらで手を回して置こう。」

 

〔バサッ、バサッバサッ、バササッ〕

 

「うわっ!?」

バハムートはそこまで言うと羽ばたき出して空中に飛んだ。ノブヒデは土煙にやれて顔を隠す。

 

「シヴァよ、お前の背徳行為は忘れぬ。それを心して役目を果たせ。」

最後に大きくシヴァに釘を刺して、バハムートは大空へと飛んでいった。

 

 

「本当にいいの、ミナ。貴方は正真正銘のアルテマの巫女よ?」

ティアがミナを心配して言う。

 

「・・・アルテマの巫女だからこそ出来る仕事よ、ティア。」

段々と調子を取り戻してきたミナがそう答える。

 

「我々は変わらずミナ殿を守るのですから。頑張りましょう!」

レオンがいつもどおり元気に声を張る。

 

「・・・あのさ。」

そんな中、ノブヒデが皆に声をかけた。

 

「どうかしましたか?」

レオンが猪の一番に反応する。

 

「・・・あの、名前なんだけど・・・。」

ノブヒデが恥ずかしそうにしている。

 

「名前がどうかしたの?」

ティアもイマイチ掴めずにいる。

 

「・・・せっかくだし、ユッケのままでいいかな?」

頭を掻きながらノブヒデが提案する。

 

「ユッケ?」

その言葉を聞いて一番戸惑うシヴァ。

 

「はぁ?あんた、名前思い出したんでしょ。なんでわざわざ・・・。」

ミナが有り得ないという顔でノブヒデを見る。

 

「・・・せっかくミナが付けてくれたんだし、あだ名みたいでいいじゃん。そっ、それにユッケの方がこの世界に馴染んでていいだろ?」

ノブヒデ、もといユッケはそうまともそうな理由をつけて皆を押し切ろうとする。

 

「あんた、ユッケの意味、知ってるんでしょうね?」

ミナが呆れた顔でノブヒデに聞く。

 

「・・・いや、知らないけど。知らなくていいよ・・・俺、気に入ってるんだ。」

ハニカミながらミナを見ていうノブヒデ。

 

「・・・好きにすれば!」

ミナは目線を外してそう言い放つ。

 

「ハハハハッ、いつもどおりになってきましたな。」

大笑いするレオン。

 

「フフフッ、いいわ。これからもよろしくね、ユッケ!」

ティアが笑顔でノブヒデに答える。

 

(ユッケ・・・ノブヒデってそんなに忘れっぽかったかしら?)

シヴァは由来を知らないので未だに釈然としなかった。

 

 

 

 

 

 

 




壮絶な母の人生を知ったユッケ
しかし、そんな母が自分を如何に思っていたかも知った
バハムートとの対峙を経て、
ユッケの中で新たなる決意が芽生える中、
一向は次の目的地に歩を進める。


次回、「光の街シャイナール」
青年は次のステージへと進む(千葉繁さん風)
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