そんなユッケに土のクリスタルの町グランドースが出迎える。
レオンの故郷、グランドースの町とはどんな町なのか?
「こっ、ここがグランドース・・・。」
ユッケが杖を突きながらグランドースの大穴に着いた。
シャイナールから24日目の昼、ユッケ達は目的地にようやく辿り着いたのだ。
「この24日間。実に充実した日々でしたなユッケ殿。」
「・・・・・・。」
レオンが泥だらけの姿で胸を物理的に高鳴らせてニコニコしている。
ユッケはもうその姿すら興味がなかった。2・3日目までは殺意が沸いていたが、レオンに普通に接していてはキリがないと悟り、もう考えるのをやめていた。
ミナがケアルラでサポートできると知ったゴウのシゴキは殺人的だった。
半殺しを越えるか越えないかの際どいラインを攻め倒して、ユッケをいたぶり続けた。何が頭にくるかというと、ユッケが必死にゴウのシゴキをこなす中、ニコニコしながら余裕でこなしていくレオンの存在だった。レオンの存在がさらにゴウを刺激して、そのしわ寄せが全部ユッケにきていた。しかし、そのおかげか、道中でモンスターの襲撃にあってもシヴァのサポート以外で自分の剣で対応する事が出来るようになっていた。危ない場面もあったが、そこは熟練したガードナーの面々。ユッケに気付かれる事なく、全てコントロールして、モンスターの襲撃さえ、ユッケの稽古に変えていた。ユッケ自身は知ってか知らずか、そんな影ながらのサポートのおかげで戦闘に対しての自信をメキメキつけていた。
「ユッケもだいぶ様になってきたわよね?」
ティアがボロボロのユッケを見ながらサムズアップした。
「アハハハッ・・・そうだといいけどね。」
苦笑いで返すユッケ。
「ホント、最初はモンスターに襲われて、あたふたしてた人間とは思えないわ。」
ニヤニヤしながら毒を吐くミナ。
一時は落ち込んでいた人間とは思えないぐらい元気になっていた。
「それはよござんした。お姫様の護衛はおろそかに出来ませんからね。」
ミナの接し方に慣れたユッケはサッとあしらう様にミナに返した。
しかし、ユッケとしてもあんな悲しそうな顔をするミナを見るのは耐えがたかった。悪態でも、ミナが皆と笑い合っている今の状態にホッとしていた。
「あんたがまともなら闇の民が出てこない限り大丈夫そうよね。」
懲りずに責め立てるミナ。いいかげん、頭に少し血が上るユッケ。
「はいはい、そこまで。町にも着いたんだし、休むなり、神殿行くなりしましょ?」
頃合いを計ってティアが止めに入る。
「そうですな。久々の故郷の味を堪能したいものです。」
レオンがニコニコしながら自分のお腹を叩いて鳴らした。
「・・・ユッケよ、めしを食って一息休憩したら始めるぞ。」
「ええええええっ・・・。」
今日はゆっくりできると踏んでいたユッケに無慈悲なゴウの指令が下る。
「なんじゃ?」
ユッケの不服にゴウが睨む。
「・・・いや、出来ればクリスタルの儀式とかやるでしょ。俺も行かないと行けないし。」
「あらぁ~~、安心してユッケさん。今日は宿場でゆっっっくり休んでからにするわ。」
ニヤリとミナがユッケを追い詰めた。
「・・・了解・・・。」
頭をうな垂れてユッケが返事をした。
「さてさて、それでは宿舎に参りましょうか?」
レオンが自分の故郷を案内すべく先頭に立った。
「・・・それにしても、話に聞くよりでかいね。」
ユッケは目前に広がる大穴を見て率直な感想を言った。
レオンから話を聞いていたが、聞くのと見るのでは全然違う迫力だった。
「ハハハハッ、直径1キロはある大穴ですからな。深さも700はありますぞ。」
ニコニコと自慢するレオン。
「700ッ?!もしかして、神殿ってそこにあるんじゃないよね?」
「一番底ですよ。」
驚くユッケにすばやく答えるレオン。
「えええええええっ?!そこまで歩くの?」
ユッケは目の前の大穴を見て、絶望する。
「アハハハッ、ユッケ。下ばかり見てないで中央の所見てみて。」
ティアがコロコロ表情を変えるユッケを見て笑いながら大穴の中心部分を指差した。
「・・・おぉっ?!なんだあれ?」
ユッケがティアに言われたように大穴の中央に目をやってみると。
なにやら底から伸びる柱のようなものが数本見えた。そして、その柱から大穴の端に橋が無数に掛かっており、その橋を往来する人々が遠めでちらほら見えた。どうやら、ユッケ達はグランドースに着いたはいいが、町の入り口というわけではなかったようだ。しかし、ユッケ達が着いた場所にもチラホラ建物があったのでユッケは勘違いしてしまっていた。
「ここがグランドースの入り口じゃなかったのか・・・。」
周囲の建物を見渡しながらユッケが落胆する。
「ハハハハッ、ここもグランドースと言えば、グランドースですからな。ただ、ここいらの建物は商人の寄り合いの場だったり、ギルドの中継場所だったりしますから。」
レオンが丁寧に説明してくれた。
「さて、グズグズしていたら稽古の時間がなくなる。急ぐぞ。」
ゴウが待ちきれないように入り口の橋の方へ歩き出した。
「まだ、歩くのか・・・。」
ユッケは肩を落として、杖を突きながらゴウについて行った。
「おい、あれ巡礼じゃないのか?」
「おぉ、巫女様じゃないか。」
「あぁ、もうそんな時期か。」
しばらく歩くと、グランドースの本当の入り口に着いた一行。
ここの人達は巡礼を見ても、さほどいつもと変わらないような反応だった。フレビア・シャイナールと見てきたユッケとしては驚きの光景だった。
「・・・ここの人達はあんまり関心がないのかな?」
ユッケが町の反応を見てつぶやく。
「そうね。今までの町が特に信仰が深いっていうのもあるけど、ここも深い人は深いわよ。」
ティアがユッケの言葉に答える。
「信仰心のある方々は大体底の近くにいますからね。町に出入りしている方々はこの町の鉱石や工芸、装備品を求めにきた人達が多いので。」
レオンが付け足すように詳しく答えてくれた。
そして、一行が橋を渡りきるとそこには大きな太い柱が数本立っており、その柱が円形に囲むように並んでいて、さらに中央になにやら箱のようなものがあった。
「あれ、これ・・・もしかしてエレベーター?」
ユッケがその箱を見て言う。
確かに見た目は箱で丈夫そうな鎖が数本繋げてある形だった。しかし、エレベーターはフレビアの神殿にしかないと聞いていたのでユッケは疑問に思った。
「・・・あれ・・・。」
ミナがユッケの肩を叩き、指で何かを指し示していた。
「・・・え?・・・あれ??」
ユッケはミナの指す方向を見てみた。
すると、そこには屈強な男達が数人鎖を持って何かを引っ張っていた。
そう、その何かとはまさに中央にぶら下がっていた箱だった。男達は全員で鎖を一生懸命引っ張り下から箱を上げていたのだ。箱は2個あるようで、もう一つに人が流れ込んでいくのを見た。
「・・・まっ、まさか・・・人力?」
ユッケが驚き固まりながらミナに聞く。
「ハハハハッ、フレビアはどういった構造で動かしているかわかりませんが、私どもは昔からああやって使っておりました。あれはお金がもらえる上にいい鍛錬になりますので、私も昔はよくやっておりました。」
レオンが腕をムキムキさせながら教えてくれた。
「・・・たしかに自動エレベーターはフレビアしかなさそうんだな・・・。」
妙に納得したユッケ。
土のクリスタルの民がどういう人達なのかなんとなく理解した。
〔ガクンッ・・・ジャラジャラッ・・・ガクンッ・・・〕
グランドース式エレベーターに乗り込んだユッケ達。
その乗り心地というのは、最悪だった。
下がるエレベーターは男達がゆっくりゆっくり落ちていく箱を鎖で止めながら進んでいく。この安定感の無さ。四方と中点に鎖がつながれているが、その揺れ心地は慣れていないと恐怖を感じた。
「・・・こっ、これ。大丈夫だよね?」
ユッケがキョロキョロしながら聞く。
「あんたもマシになったかと思えば、まだまだだらしないわね。」
ミナが落ち着きの無いユッケを見て呆れていた。
「ハハハハッ、安全面は心配要りませんよ。なんせ、グランドースの男達ですから!」
レオンがニコニコしながら根拠の無い事を口走る。
「・・・安心せい。箱の下にも鎖が垂れ下がっていて、各階で男達がもしもの時に備えて控えておる。」
(ホントかよ・・・どれどれ。)
ゴウの言葉にユッケは安全確認を急いでした。
下を見て見えると底知れない暗闇が広がっていたが、ゴウの言うとおり、箱の下に4本の鎖が延びており、下の方で男達がそれを引っ張っていた。
(・・・しかし、これを見ても安全なんてこれっぽっちも感じないんだけど・・・。)
ユッケはその光景を見て、さらに不安になった。
「レオン・・・フレビアの人達にエレベーターの原理とか聞けばいいんじゃないの?」
不安が晴れない顔でユッケがレオンに提案する。
「できませんな。」
レオンがニコニコとキッパリ否定した。
「・・・土と火って案外仲悪いのよね。私達も火の民はあんまり好きじゃないんだけど。」
ティアがうんざりしたような顔で言う。
「皆、仲良しじゃないの?!」
てっきりこの世界の人たちは皆仲良しだと思い込んでいたユッケは驚いた。
「表立って、皆喧嘩はしないけど。それぞれ思う事もあるのよ。」
ミナが澄ました顔で言う。
「土の民って、手の器用な人達が多いの。だから、火の民がそれを越えるような技術を持ってるのは受け入れがたいのかもしれないわ。」
シヴァが優しくユッケに言う。
「・・・巡礼が始まってから、私でガードナーは3代目。初代から先代まで誰一人、フレビアでの事はお話になりませんでした。それは、グランドースの誇りを守るためなのです。グランドースなら自力で越えると言う自信。その志を私が水を差し、邪魔してはなりません!」
胸を今まで以上に張りに張り、レオンが鼻息を荒くする。
(・・・フレビアも教えてあげればいいのに・・・。)
ユッケは勇ましいレオンを見て、少し悲しくなった。
「2階に着くぞーーッ!」
エレベーターの中にいた係員が声を上げる。
グランドースのエレベーターは地上を1階として、50m毎に刻んでいき、地下とは付けずに階数を客に知らせてくれていた。それぞれの階で役割が違うようだが、ユッケ達は8階の宿場まで行く予定だった。エレベーターは2階に着くと手動で檻のような箱の扉を開き、客を降ろしていた。その扉から見える景色は、柱を結ぶように円形に橋が架かっており、そこからさらに穴の側面に続く橋が何本も伸びていた。
(・・・便利なんだけど、これに乗ってるだけで疲れそう・・・。)
ユッケはこれからまだまだ続くエレベーター地獄に嫌気が差してきた。
「ユッケよ、エレベーターが嫌なら側面にある道を走って降りてきてもいいんだぞ。」
ゴウがユッケの心を見透かすように冷たく言ってきた。
「・・・お断りします。」
ゴウの目を見ることなくユッケはエレベーターの窓から外を見ながら否定した。ガクガクと下がる箱の外は闇が段々と深くなり、側面にポツリポツリと明かりがついているのが目立ってきていた。ユッケはさらに下を見る。
そこには地下に広がる星空のような町の明かりが散らばっていた。
土のクリスタルがある街グランドースに着いたユッケ達。
街を堪能する事なく、一行は巡礼の儀式を執り行う事に。
土のクリスタルが見せる力の片鱗とは?
次回、「土のクリスタル」
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