地底に広がる星空の先にいよいよ
二つ目のクリスタル、土のクリスタルが一行の前に姿を現す
「お待ちしておりました巫女様。」
「昨夜は宿場にお泊りになったとか・・・我々に言っていただければ。」
「いいの。私達も予定があったから。」
土のクリスタルの神殿に来た巡礼の一行。
入るなり、早速神官達のミナへの歓迎があった。
ミナは慣れたような対応で神官達と話す。
(・・・結局、走らされた。)
ユッケは相変わらず杖を突きながら歩いていた。
昨晩は宿に着いて、食事をした後、約束通りゴウのシゴキが待っていた。その内容は時間制限までに上から下まで降りて、宿舎に帰ってくるという単純なものだった。が、直径1キロで深さ700mの円柱の側面にある道をらせん状に登ったり降りたりするのだから堪ったものじゃなかった。しかも、回復魔法で無理やりさせられるこの地獄。ユッケの精神はボロボロだった。唯一の支えは
「・・・大丈夫、ユッケ?私がケアルさえ覚えていれば・・・。」
オロオロしながらユッケの周りを飛んでいるシヴァ。
このシヴァの手厚いケアのおかげでギリギリ乗り切っているようなものだった。
(はぁ~~っ、このシヴァの優しさが無かったら・・・。ミナも見習ってほしいよ。)
シヴァのオロオロしている姿に癒されるユッケ。
しかし、それと同時にどんどんミナがさげすむ様な目で見てくるのを感じていた。
「・・・それにしても・・・。」
ユッケはミナを取り巻く神官達の様子を見ていた。
ここでも、シャイナールとの違いを感じざるを得なかった。神官自体は普通の人達で、シャイナールと殆ど違うわけではない。それに比べるとフレビアは小人ばかりだったのが頭に残っている。ここでは、たまにレオンのような身体の大きな神官もいたのが、それはグランドースならではなのだろう。しかし、シヴァに対する反応が面白いほど違った。シヴァが姿を現しても土の神官達は見ていないかのように無関心でミナと話をするだけだった。シヴァはシヴァでそんな対応を気にする素振りも無い。
「なんか、土の神官って冷たいよね。」
ユッケが率直な感想を言う。
「シヴァ様のこと?シヴァ様は水の系統だから。水と土は特に仲が悪いのよ。」
ティアがユッケの言葉に答える。
「・・・なんか、この世界って、思ってたより複雑なんだね・・・。」
ユッケはなんだか理想的な世界を壊されたかのようにガッカリする。
「・・・土の民って私達より内向的だったりするからね。」
ティアが付け加えて言う。
「・・・マジでっ?!」
ユッケが相変わらずニコニコしているレオンを見て驚く。
「ハハハハッ、伊達に変人だと言われておりません。」
無意味に胸を張るレオン。
「ハハッ、俺が出会った土の民がレオンでよかったよ。」
素直な気持ちをレオンに伝えるユッケ。
「・・・私もです。」
最高の笑顔で答えるレオン。
「ガードナーの方々、こちらへ。」
一人の神官がユッケ達に近付いてきた。
「うむ。」
一言だけ返事をして神官の案内に従うゴウ。
「ゴウってどの民なの?」
ゴウに聞こえないようにティアに小声で尋ねるユッケ。
「・・・風の民よ・・・。」
悲しそうな目をしながらティアが弱弱しい声で教えてくれた。
「・・・そう。」
ティアの様子からこれ以上聞くべきではないと悟ったユッケ。一行はそれ以上口を開くことなく、神官の案内する部屋へと進んでいった。
ガードナーの待機室で一時過ごした後、ユッケ達は神官達に連れられて、ある部屋へ案内された。
「こちらがクリスタルの間でございます。」
神官が土のクリスタルがある部屋の前で立ち止まってそう告げた。
その言葉に反応するかのように部屋の扉が開く。部屋の中はフレビアの火のクリスタルの部屋と変わらない純白のきれいな部屋で部屋の最奥に大きなクリスタルが浮かんでいた。
「はぁ~~~っ、いつ見ても広いし、大きいなぁ~~。」
ユッケが感心する。
「土のクリスタルも大迫力ですよ。」
レオンがニコニコしながらこれから起こる事に興味を持たせた。
「ユッケ、ボ~ッとしてては駄目よ。」
シヴァがユッケの袖を引っ張った。
袖を引っ張られたユッケがシヴァの方を見たその時、
「んっ!」
「・・・アッ?!」
気が付くとそこには咳払いするミナが隣に立っていた。
それを見て驚き、思わず声を上げるユッケ。どうやら、儀式の支度を終えたらしい。
ユッケをジトッと睨みつつミナがクリスタルの方へと歩いていった。ユッケ達はそれを見送った後、入り口付近で待機して、儀式が無事に終わる事を見守る態勢に入った。ミナが何かを呟きながら目を瞑り、土のクリスタルへと続く道を進んでいく。土のクリスタルはゆっくりとゆっくりと回り出し、それと同時に小刻みに揺れ出した。
〔ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・〕
「ウワワワワッ、揺れてる!」
腹に響くような重低音が部屋に鳴り響き、部屋全体が揺れ出した。
「ユッケ、落ち着いて・・・そう感じるだけよ。」
シヴァがユッケの肩に手を置き、教えてくれた。
(これも幻覚!)
ユッケはクリスタルが見せる大地の胎動という幻覚に驚く。
そして、次の瞬間、
〔ドゴンッ、ドゴゴンッ、ドガンッ、ドガガンッ・・・〕
次々と部屋の壁や床、天井を突き破ってくる尖った大地が現れた。
「こっ、これも幻覚なの?!」
幻覚と分かっていても、リアル過ぎて震え上がるユッケ。
「ハハハハッ、凄いでしょ?」
レオンは思ったとおりのリアクションを取ってくれたユッケをニコニコしながら見ていた。
「ユッケ、後ろ。」
ティアがニヤッと笑って後ろを指差した。
「オワアアアアアアアアアアッ!?」
ティアの示した方向を見てみるとそこから尖った大地がユッケに迫ってきた。
顔の前に腕を構えて防ごうとするユッケ。しかし、次の瞬間、
「おぉっ?!」
ゆっくりと目を開けるユッケが見たものは襲い掛かってきた大地が身体をすり抜けていた光景だった。
それを見る事でやっと幻覚だとわかるぐらい、周りで起きた現象はリアルだった。
「・・・アルテマも共鳴しているな・・・。」
ゴウが小さな声でつぶやく。
その声に導かれるようにユッケの目は自分の胸元にあるクリスタルへと運ばれた。そこには、アルテマクリスタルが静かに光っている姿があった。
(これで、ここも安定して平和がくるのか・・・。)
その姿を見て、今までの慌てようが嘘のように落ち着きを取り戻すユッケ。
「・・・むむむっ・・・これはすばらしいですな。」
横でレオンが驚いたような顔で身体を動かしている。
「クリスタルが安定して、本来の力がガードナーにも共有されたということだ。」
ゴウがその様子を見て、説明してくれた。
「これが本来の私の力ですか。」
レオンがニヤリと笑う。
「これで、気候も安定してモンスター達もおとなしくなるわね。」
ティアがホッとした表情でそう話す。
「しかし、いつ襲ってきてもいいものだが、わしに恐れを成したか?」
ゴウが表情を変えることなく闇の民の事を話す。
「このまま、巡礼の間おとなしくしててくれればいいんだけど。」
気の抜けたことを言うユッケ。
「ワシはそれでも構わんが。」
ゴウがユッケにそう一言で答える。が、ユッケはその行間を読む。
(襲ってこないなら襲ってこないで、その分お前をシゴいてやろう!)
ユッケの頭の中でウキウキするゴウが何人も現れた。
「ううううううっ。」
ユッケはなんだか泣きそうになってきた。
「あんた達、またのん気にして。さっさと次に行くわよ!」
ユッケ達が会話していると儀式を終えたミナが側まで戻って来ていた。
その声に従うようにユッケ達は神官に挨拶をして、宿舎に戻り、旅支度を始める事に。
「はぁ~~~っ、なんだか巡礼って言ってもその地域を楽しめた事ないな。」
身支度をしながら嘆くユッケ。
「フフフッ、そうね。」
シヴァがその様子を見ながら微笑む。
「シヴァは水って聞いたけど、シヴァの故郷ってどんな所なの?」
ユッケが作業をしながらシヴァに尋ねる。
「そうねぇ、私の故郷は水のクリスタルがある街アクツィアという場所の近くにある山よ。」
シヴァが優しく教えてくれた。
「山。なんでそんなところに?」
ユッケが作業をやめてシヴァの方を向いて尋ねる。
「フフフッ、私は水と言っても氷だから山の上の方の気温の低い所にいたの。」
シヴァが丁寧にユッケに教える。
「なるほど。」
納得するユッケ。
〔ガチャッ〕
「ユッケ、支度は出来たか?」
ゴウがユッケの部屋を開けて入ってきた。
「あぁ、師匠。大丈夫、もう出来るよ。」
ユッケは身支度をパパッと済ませてゴウに答える。
「うむ・・・これをお前にやろう。」
「うわッ?!」
ゴウはそう言うと、一振りの剣をユッケに投げた。
ユッケは荷物を床に落として、慌てて剣を受け取る。
(・・・うわっ、なんだこの剣。思った以上に軽い。)
ユッケはその剣を受け取って驚く。今持っている剣と同じような長さなのに持った感じ、今の剣よりずっと軽かった。
「それはミスリルの剣だ。グランドースの剣は出来がいい。もっておけ。」
ゴウがそう言うと部屋を出て行った。
「フフフフッ、ゴウもなんだかんだ言いながらユッケの事が好きなのね。」
その一連のやり取りを見て微笑むシヴァ。
「・・・・・・うん。」
なんだか恥ずかしくなるユッケ。ゴウから受け取った剣を見ながら
(もっとがんばろう!)
と、心の中で誓った。
「ユッケ、あんた何してんの。置いてくわよ!」
そうこうしていると外からミナの怒鳴り声が聞こえた。
「・・・まったく・・・はいはーーい!」
ユッケは元気良く返事をして、部屋を出て行った。
土のクリスタルの安定化を終えた一行。
ユッケ達は早速次の目的地に向かうのだったが?
次回、「フォレストーラへの道」
青年は燃え盛る炎に驚愕すッ!(千葉繁さん風)
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包容力があって、海のような心を持つ女性
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