FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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追い詰められたかに見えたユッケとゴウ。
しかし、伝説の最強の剣士ゴウの真髄を見せ付けられて徒労に終わる。
だが、安心したのもつかの間、目の前でやられてしまったレオンを見て
ユッケは怒りに我を忘れてしまう。


氷と炎

 

 

「オマエエエエエエエエエエエエエエエッ!」

 

 

(ユッケ、落ち着いて!)

ユッケが怒りに任せて、ゼッドに突進する中で、頭の中でユッケを止めようとするシヴァ。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

怒りに支配されたユッケが叫びながらゼッドに切りかかる。

シヴァの声は届かない。

 

〔ヒュオンッ〕

 

「ひゅぅ~っ、おぉ怖。」

無我夢中で切り込むユッケの斬撃を避けるゼッド。

 

〔ビュオンッ、ビュオンッ〕

 

無我夢中で剣を振り回すユッケ。

 

(ブリザラ)〔パキパキパキパキッ、ヒュボッ〕

 

「何っ?!」

ユッケの攻撃を避け続けるゼッドだったが、突然地中から氷の牙がゼッドに襲い掛かった。

 

〔ガシャーーーーーンッ〕

 

「グワッ。」

まさか剣を振り回しているだけのド素人がレオンと同じ攻撃をするとは思いもよらなかったゼッドはモロに攻撃魔法を食らってしまう。

 

(ユッケ、落ち着いて!相手はレオンを倒した相手なのよ!)

「ハァハァッ・・・ごめん・・・。」

魔法が炸裂した事によって、ユッケはやっと冷静を取り戻してシヴァに謝った。

 

「なかなかやるな、あんちゃん。演技は抜群じゃねーか?」

ゼッドが立ち上がりながらユッケを褒める。

が、立ちくらみが起こるように膝が踊り、体勢がぐらつく。

 

(なっ・・・なんだ、このダメージは?レオンから受けた攻撃とは比べ物にならないくらい重いじゃねーか・・・。どうなってんだ?)

ゼッドは思わず膝をつき、自分の身体に起こった異常に驚く。

 

 

(・・・これが相性というものだ。)

 

 

ゼッドの頭の中に野太い声が響く。

 

「クハハハッ、まさかこんな状況でお前の声を聞くとはな。イフリート。」

ゼッドはイフリートの声を聞き笑った。

 

(今の攻撃は二人の連携ではない。あれはシヴァの咄嗟の攻撃だろう。)

イフリートは冷静にユッケの攻撃を分析した。

 

「・・・なるほどな、フュージョンっていうのはそう言う連携もできるって訳か。裏を返せば、あんちゃんはやっぱり素人ってことでもあるが・・・。」

ゼッドはユッケの攻撃に一時は驚いたが、冷静に話しながら気持ちも体勢も落ち着かせた。

 

(気をつけろ、相手は素人でもあの剣はお前には死神の鎌だ。)

イフリートがゼッドよりも冷静にユッケを見て話す。

 

「・・・なるほど、それが相性ってヤツね・・・火と水じゃ、火の方が不利って事か・・・。」

ゼッドが首を左右にゆっくり曲げながらイフリートの言葉を噛み締める。

 

(ユッケ、相手は相当に出来るわ。距離を取って戦いましょう。)

「わかった。俺は良く分からないからシヴァにまかせるよ。」

ユッケはゼッドに剣を構えながらシヴァに答える。

ユッケとゼッドの間合いは10mも無い。ゼッドのスピードは掴めないが、ユッケなら一瞬で縮められる距離だった。

 

(ユッケは冷静に、向かってくる相手を斬りにいって。私は相手の動きを見て、魔法でけん制するわ。二人なら大丈夫。きっと勝てるわ。)

シヴァは相手を掴めない事から打って出るよりも待つ体制を取る。

 

この選択は正しかった。

 

ゼッドはレオンを倒した相手。相性が良いからと迂闊に攻めに行けない。シヴァ達が待ちの姿勢になったことは後方に控えるゴウの援護を待つ時間稼ぎになる。にらみ合う両者にとってシヴァ達が圧倒的に有利に見えた。

 

 

(我を退屈させるのか?)

 

 

イフリートが待ちに入ったゼッドを見て声をかける。

 

「クハハハッ、言ってくれるねぇ。俺を誰だと思ってんだ?」

イフリートの言葉に笑って返すゼッド。

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

「ッ?!」

にらみ合っていた二人の後方。

レオンが倒れていた辺りから何かの叫び声が聞こえ、その方向を見てユッケ達は驚いた。そこにはレオンとのインスタが解除されたゴーレムが天に向かって叫んでいた姿だった。

 

「・・・ゴーレム・・・くやしいですよね。私もくやしいです・・・こんなに悔しい事はない。」

 

レオンがボロボロになった身体で今まさに立とうとしていた。

 

「レオン、もう無理しないで!ユッケにまかせて。」

ティアがさらに後方からレオンに叫ぶ。

 

「ハハッ、それは・・・出来ません。私達はこのままでは終われない。」

「グオオオオオオオオオオオオオオッ!」

レオンの声に共鳴するようにゴーレムが叫ぶ。

 

「・・・やっと、私達は一つになれたような気がしますね。」

レオンが立ち上がりゼッドへと笑顔を向ける。その時だった。

 

 

 

「フュージョン」

 

 

 

ゴーレムはフュージョンの言葉と共に崩れて行き、大地に溶けて行った。かと思うと大地から大きな手がレオンを掴み包み込んだ。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

〔ドガアアアアアアアアアアアンッ!〕

 

レオンの雄たけびと共にレオンを包み込んだ岩の手が爆散して、中から岩の鎧をまとったレオンが姿を現した。奇しくも、悔しいという思いがレオンとゴーレムを一つにして、フュージョンを可能にしたのだった。

 

「レオン!」

「レオン、やったじゃない!」

ユッケとティアがフュージョンの成功を喜ぶ。

 

「・・・さて、第二ラウンドと行きましょうか?」

 

兜の下でもにこやかにするレオンが分かるような明るい声だった。

 

「クハハハハハッ、そうこなくっちゃな!」

空に向かって高らかに笑うゼッド。

 

「ユッケ殿、ご迷惑をおかけしました。」

レオンはユッケの隣に来るとユッケの肩に手を置き、感謝の言葉を述べた。

 

「レオン、もう大丈夫なのか?」

先ほどまでボロボロだったレオン。

フュージョンしたからといってダメージが回復するわけも無い。その事を心配するユッケ。

 

「なーに、ちょうどいいハンデです。」

サムズアップして答えるレオン。

 

「クハハハッ、フュージョン出来たからってハンデと来たか・・・おもしろい。」

ゼッドが先ほどとはうって変わって身構える。

 

「ゴウ殿が大丈夫なら、ユッケ殿はミナ殿の元へ・・・。」

レオンがユッケを見ながら言う。

 

「・・・わかったよ。」

ユッケもサムズアップしてレオンに答えて下がった。

 

「さてさて、貴方には本当に感謝しないといけませんね。」

レオンが構えてゼッドにそう告げる。

 

「何の事だ?」

ゼッドがレオンに問う。

 

 

「・・・私はまだまだ強くなれる!」

 

 

レオンがそう言うやいなや、ゼッドの方へと突進する。

 

「ハッ!」

それに反応するかのようにゼッドも突進した。

 

 

〔ドゴーーーーーーーーン!〕

 

 

二人の拳がかち合うと大地と空が凄まじい轟音と共に揺れるのをその場の全員が感じた。

 

 

 

 

 




フレイムナイトのゼッドと渡り合うユッケ。
そこにレオンが覚醒してグランドナイトへと変貌を遂げる。
いよいよ、戦いは佳境へ!


次回、「炎と大地の漢」
青年よ、漢の背中にカツ目せよ!(千葉繁さん風)

どっちが好み?あなたの選択でエンディングが変わります。

  • 包容力があって、海のような心を持つ女性
  • 等身大でお互いを認め合える女性

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