意外な恥ずかしがり屋さんの住民の手厚い挨拶を受けて
ユッケ達はフォレストーラへと足を踏み入れた
恐怖を覚えてからさらに数日して、一行は大樹のフモトで、樹のクリスタルがあるフォレストーラの入り口に立っていた。
「さ、さすがに街の中だと皆ちゃんといるよね・・・。」
すっかり怯えきった表情で周囲を見渡すユッケ。
「・・・だ、誰も近付いてこないわね・・・。」
同じく平然としているが、内心ビクビクしているミナが周囲に目を泳がせて言った。
「・・・・・・。」
そんな一行とは裏腹にフォレストーラの人々は黙々と通りを歩いている。
信仰の深い者はミナ達を見るとお辞儀して無言で去っていく。
そんな中で一般の人々はチラッと一目見たかと思えば、興味ないように自分の世界へと帰っていった。
これだけでは恐怖を覚える事はない。何がそんなに恐怖に変わったかと言うと、あの道での出来事から二人とも常に誰かに見られている視線をずっっっっと感じていたからだった。
フォレストーラへ向かう途中の休憩中も、
「だっ、誰も居ないよねティア?」
ユッケが恐る恐る尋ねると
「・・・んっ。」
ティアが自分の用事をしながらノールックで一つの茂みを指差す。
〔ガサガサッ〕
「ひっ!?」
物音に驚くユッケ。何者かが無言で森の奥へと逃げていった。
「みんな外の事には興味津々なんだけどねぇ~。」
何事もなかったかのように作業を続けるティア。
ユッケもミナもそんな事をここ数日繰り返し経験していたので二人ともストレスで参っていた。食事のときも、トイレの時も、身体を拭くときさえ、その感覚が消える事はなく、ミナに至ってはいつもきれいにしているにもかかわらず、ここ数日服を着たままでしか身体を拭くことが出来なくなっていた。そんな出来事を経て、二人ともすっかりエレゼン恐怖症におちいっていたのだ。
「ユッケがもしもアースカンド出身って分かったらここから出られなくなるかもね。」
ティアがユッケの肩に手を置き、そこからニヤケた意地悪そうな顔を覗かせて言った。
「むっ、あの者はさっきも通り過ぎましたな・・・。」
レオンがニコニコしながら一人の通行人を指差す。
「・・・・・・。」
レオンと目が合った途端に人ごみの中へとその通行人は消えていった。
その光景を見て、ゲンナリするユッケとミナ。
「エレゼンは好奇心旺盛ではあるが、用心深い者が多いからな。」
さも当然かのように言うゴウ。
これが、旅に慣れていないものと慣れているものの違いなのだろうと自分に言い聞かせたユッケ。ユッケやミナとは裏腹にティアもレオンもシヴァさえ普段と何も変わらなかった。ミナも気丈そうに見えて、忘れがちだが初めての巡礼だと意外な場面でユッケは再確認した。
「お待ちしておりましたティア様、巫女様。」
そうこうしているときれいな白い一枚布で覆っただけのような服を着た神官らしき男二人が声をかけてきた。
「わざわざ迎えに来てもらって悪いわね。」
ティアが友人に挨拶するように手を振りながら答えた。
「いえ、大した事ではございません。」
手を前で揃えてお辞儀をする神官の男性。
(・・・やっぱりガードナーって特殊な人が多いな・・・。)
目の前に居る3人の対照的なエレゼンを見てそう思うユッケだった。
「んっ、どうかしたユッケ?」
ニコニコしながらティアが目の合ったユッケに声をかけた。
「いや、ティアってエレゼンぽくないなって・・・。」
素直に思っていた事を話すユッケ。
「アハハハハッ、よく言われるぅ~~っ。」
ほっぺを指で掻きながらニコニコして答えるティア。
「ティア様、さっそく儀式を・・・。」
神官の男性が急かす様にティアを促した。
「そっ、そうね。」
気を取り直して答えるティア。
「えっ、休みなし?!」
忙しい周囲の行動の早さに驚くユッケ。
〔ペシッ〕
「アイタッ!」
「あんた状況考えなさいよ。」
お気楽な事を言うユッケを戒めるようにチョコに乗った状態で頭を叩いて通り過ぎていくミナ。
「日も高いですしな。」
ニコニコしながらレオンも後に続く。
「いつ闇の民が来るか分からないからしょうがないわ。」
シヴァが叩かれたユッケの頭を撫でながら優しく声をかける。
「キューーーンッ!」
ユッケが歩き出そうとした時だった、進行方向からかわいい動物の鳴き声がした。
「カークン、元気だった!」
その動物は一直線でティアの元に飛んで行き、ティアはその動物を受け止めて頭を撫でた。
その生き物はなんともフワフワとした緑色の毛をしていて、目は小動物のいたいけな瞳で女性なら誰彼構わず魅了しそうな勢いだった。大きさは小型犬ぐらいでちょうどポメラニアンのような雰囲気だった。そして、特徴的なのはなんと言っても二つのかわいらしい瞳の上、おでこの中心に光り輝くルビーだろう。そのかわいらしい瞳よりも大きく赤く輝く宝石が一番に目に飛び込んでくる。
「えっ・・・。」
「きゃーーーーーっ、カーバンクル様かわいいッ!!」
ユッケの驚きを掻き消して、魅了されたミナがチョコから飛び降りティアの周りをピョンピョン跳ね回った。
「ンッ!!」
「アッ?!」
ゴウの大きな咳払いでチャームを解かれたミナ。
赤面してふさぎ込んでしまった。
「カーバンクルってティアの?」
ユッケがカーバンクルを指差してティアに尋ねた。
「そうよ、カークンは樹のクリスタル守護獣なの。小さくてもすごいんだから!」
「きゅきゅ~~んっ。」
ティアはうれしそうにカーバンクルの喉を触りながらユッケに答えた。カーバンクルはなんとも気持ち良さそうにされるがままの状態で時折、かわいい声で鳴いていた。
「そういえば、ずっと見てなかったね。」
今までカーバンクルを見ていなかった事にユッケが気付き、独り言のように話す。
「連れて行ってなかったのよ。カークンにはフォレストーラを守っててもらってたの。」
「きゅきゅぅぅっ。」
ティアがカーバンクルをさらに触りながら答えた。カーバンクルは目をつぶり、尻尾と耳をパタパタ動かしながら気持ち良さそうにモダえていた。
「うぅぅぅぅ~~~っ。」
その様子を見ていたミナはなんとも切なそうにウナっていた。
「アハハッ、カークンかわいいよね。後でちゃんとミナにも撫でさせてあげる。」
「えっ、ホント?!」
ティアのうれしい提案に少女のようにまたキラキラとした瞳で生き返るミナ。
「ンッ!」
「うっ・・・ごめんなさい。」
我を忘れそうになるミナを引き戻すゴウ。
一層落ち込んだミナがそこにはいた。
「・・・・・・。」
無言ではあるが、冷静に見ているかのように見えたエレゼンの神官の耳が二人ともピクピクしていた。
「・・・むっ。」
その様子をユッケは見逃さなかった。
(ん~~~~、今日までこれほど他人の心が覗きたいと思ったことはないな・・・。)
と、ユッケはその時ばかりは誇り高きエレゼンの気丈な振る舞いの裏にあるものを求めてやまなかった。
フォレストーラに着いて
一息も束の間に事態は大きく動き出そうとしていた
ティアの視線の先に現れたバハムート
その王者が見据えるものとは?
次回、「フォレストーラの厄日」
青年よ、大地を揺るがす怒りを知れ!(千葉繁さん風)
どっちが好み?あなたの選択でエンディングが変わります。
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包容力があって、海のような心を持つ女性
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等身大でお互いを認め合える女性