ディアボロスと接触している間に
ティアやゴウは、それぞれの役目を果すべく奔走していた。
〔ドゴーーーーンッ・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴッゴオゴオオオオオオオオオオオ・・・。〕
遠くの方でバハムートが起こす地鳴りが響いている。
ユッケ達と離れてから、ゴウとティアは森の中を駆け抜けていた。もちろん、目的は守護獣であったはずのパンデモニウムの元へだ。森の木々が生い茂った中でもティアは目標を見失わない。ずっと一点を目指して迷いなく進んでいく。それにすぐ後方でピッタリと距離を離されないようについてくるゴウ。とても外見の年齢とは思えない身体能力だった。ゴウはヒューランでありながらずっと前線に立ってきた老兵。もう今年で50の半ばを過ぎようという男だ。
(ゴウは本当にすごいわ・・・。)
前を向きながらもピッタリとついてくるゴウを背中に感じながら感心せざるを得ないティア。
〔ザザッ、ザザザッ、ザッ!〕
ティアは程なくして、立ち止まり前を見据えた。
「道案内、ご苦労だったティア。ここからは風の民であるワシの務めだ。」
ゴウも同じく立ち止まり、覚悟を決めた目でこの先にあるものを見据えた。
「・・・本当に一人でいいの?」
ティアはゴウの身を案じる。
「ワシとて、伝説と言われた男。お主達に迷惑はかけん。」
そう言いながら今度は静かに歩を進めていく。
「・・・ゴウ、バハムートを止めたらすぐに駆けつけるから。」
ティアは心配そうにゴウを見るが、自分の使命を優先させた。
〔ザッ、ザザザザッ・・・〕
ティアはゴウに後ろ髪引かれながらではあるが、自分の役目を果たすため、今までとは違う方向の森の奥へと姿を消した。
「・・・さて、ワシはワシの役目を果たさねばな・・・。」
ゴウは珍しく頬に汗を一筋たらしながらゆっくりと歩を前へ前へと進める。普通の人には何もわからない。ただ、木々がウッソウと生い茂った獣道すらない森の中を確実に迷いなく進んだ。
数刻歩いた先でそれは必然的にゴウへと接触してきた。
「懐かしき我が友よ・・・このような所で再会するとは思わなかったぞ。」
ゴウに友と言ったその異形の者は空中から見下ろすようにそこに静かに存在していた。
「・・・パンデモニウム様・・・。」
ゴウはパンデモニウムを捉えると名前を呼び、片膝をついて礼節を尽くした。
「しかし、よもやお前一人で私を止めに来るとは予想外だった。」
パンデモニウムはそう言うとゴウの目の前へとゆっくりと静かに下りてきた。
「・・・パンデモニウム様。まずはご無事だった事を喜ばしく思います。しかし、なぜ、貴方様のような方が闇の民と一緒に居られるのか?」
ゴウはひれ伏したままパンデモニウムに丁寧に疑問を投げかけた。
「面白いことを聞くではないかゴウ。私の守りしクリスタルはもうない。私を縛るものがない以上私が何者と一緒にいようと関係のない事だ。」
ゴウを見下ろしたままパンデモニウムは静かに答える。
「・・・そうです。クリスタルがないのは奴のせいです。だからこそ・・・。」
「違うな、ゴウ。」
ゴウが顔を上げて、パンデモニウムに返答しようとした所をパンデモニウムが割って入った。
「風とはなんだ?風とはなぜ吹くのか?どこに吹くのか?そんな事を考えた事はあるかゴウ。」
パンデモニウムは風の根源的なモノをゴウの中に問いかけた。
「・・・そ、それは・・・。」
突然の哲学的な問いに戸惑うゴウ。
「風とは吹く事を強制される。吹く場所も吹く時もあらゆるモノに左右される・・・。」
パンデモニウムは静かに語る。
「・・・だからこそ、望むのだ。風は縛られずに自由に吹く事を・・・。」
パンデモニウムはそこまで言うと目線をゴウに合わせた。
「・・・どっ、どういうことで・・・しょう?」
ゴウの中で内心、不安が湧き上がってきていた。パンデモニウムから真実を聞くべきか迷いだしていた。それが歯切れの悪い口調となって現れる。
「・・・私はずっと思っていた。この縛られた運命からどうすれば自由になれるのか。」
パンデモニウムは立ち上がり空を見上げた。
「その時だった。マスターが私の前に現れ、古き理から解き放ってくれたのは・・・。」
パンデモニウムはヒザマズいているゴウを再び見下ろす。
「・・・しかし、貴方のマスターはラグアだったはず!」
ゴウは今は亡き甥の名前をパンデモニウムに投げかけた。
ラグアとは風のクリスタルの最後のガードナーとされる人物で、ゴウとは叔父と甥の関係だった。ラグアは風のガードナーとしても優秀だったが、闇の民が風のクリスタルを消滅させた時に死んだとされていた。そして、その時にパンデモニウムも一緒に消滅したものと思われていたのだった。
「・・・ラグア・・・懐かしい名だな・・・。」
パンデモニウムはその名を静かに発するがその中に感情はなかった。
「・・・もしや・・・パンデモニウム様が・・・ラグアを・・・っ。」
ゴウは絶望の中で地面に塞ぎこんだが、大地を握ったその手には怒りの感情がこれ以上なくこみ上げてきていた。
「・・・ラグアは強かった。私では倒せなかっただろう・・・。」
感情のないまま、冷静に話すパンデモニウム。
「ラグアもラグアの父コーディもあの日以来、死体すら見つかりません・・・。もしかしてと言う思いもありました。」
ゴウの言葉が噛み締めたように口から絞り出される。
「・・・残念だが・・・ラグアもコーディも死んだ。その時、私はすぐ傍にいたからな・・・。闇の中へと沈んでいった・・・二人ともな・・・。」
パンデモニウムが静かにゴウの希望を打ち砕くようにラグアとコーディの最後を告げる。
「・・・・・・・。」
ゴウは何も言えなかった。今まで崇拝もしていた者から惨い現実を突きつけられ、ゴウの心の中はマグマのように煮えたぎっていた。
「おっとっとっ・・・。甘美な感情の匂いに惹かれて来て見れば・・・。」
「?!」
ゴウが声がした方向を見てみるとそこには意外な者が立っていた。
「・・・ディアボロスか・・・早かったな。」
パンデモニウムがその者の名を口にする。
「ディアボロス・・・様ッ。」
ゴウは謀らずも守護獣と言われる人智を超えた存在二つと出くわしてしまった。
「君って確か、魔法剣士ゴウだったかな?こんな所で会えるなんて光栄だな・・・でも、想像してたよりも爺さんだね。」
ディアボロスはゴウを見て率直な感想を言って、ニヤリと笑みを浮かべた。
「ディアボロス・・・そんなことよりも目的は達成したのか?」
今度はパンデモニウムが割って入った。
「アハハハハハッ、思ってたよりも例の子が強くってさ・・・命からがらだったよ。」
ディアボロスがおどけて言い訳をする。
「・・・まったく・・・お前には最初から期待はしていなかったが・・・。」
腕組みをして呆れるパンデモニウム。
「・・・・・・。」
ゴウは無言で力強く剣を構える。
「で、どうするの、これから?」
ディアボロスがゴウを見て、パンデモニウムに意見を求めた。
「これ以上ここにいても仕方がない。マスターの元へ戻るぞ。」
パンデモニウムはそう言いながら、静かに浮き出しゴウをさらに見下ろした。
「フッフッフッフッ・・・よかったねゴウくん。」
ディアボロスはそう言うと自身の影の中へと沈んで行き、全身が沈み終わるとその影が森の奥へとすばやく滑るように消えていった。パンデモニウムもディアボロスが消えた方向へと静かに飛んで消えていった。ポツンッと一人残されたゴウ。ここに来るまでに死を覚悟していたが、今はそんな些細な事すら吹き飛んでしまった。今、彼を支配するのは『怒り、憎しみ、怒り』無限に心の底からこみ上げてくる負の感情だけだった。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
ゴウは天を仰いで力一杯叫んだ。
天を貫かんばかりの感情を乗せて。
ゴウの頬には熱い涙が流れていた。
守護獣2体と相見え、絶体絶命のピンチとなったゴウだったが、
パンデモニウムの感情のない言葉で地獄へと落とされた
ゴウが絶望の淵でもがく頃
ティアは自分のやるべき事を成すべく、先を急いでいた。
次回、「フォレストナイト」
森を守るのはか弱き乙女?(千葉繁さん風)
どっちが好み?あなたの選択でエンディングが変わります。
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包容力があって、海のような心を持つ女性
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等身大でお互いを認め合える女性