そこで出会ったミューレと言う水のガードナー
一瞬ではあったが、氷のような視線をユッケに向ける彼女の心意とは?
ユッケ達一行は可もなく不可もなく水のクリスタルのある水の神殿へと辿り着いていた。が、一団の雰囲気は真冬のように冷え切っていた。先導するミューレと神官達。それについていくユッケ達だったが、今までと違って、全然、一切、微塵も好意的ではなかった。ミューレを筆頭に道案内で前を歩くだけで、ここまでの道のり誰一人として、後ろを振り向かない。一番後ろに歩いている神官が時々チラリと目線をこちらに向けるだけで黙々と、ただひたすらに黙々と歩くだけだった。そんな空気の中だから、街ですれ違う人々も静かに恐る恐るお辞儀するだけで後は遠目で見ているか、黙って通り過ぎていくだけだった。ユッケ達も、あのレオンでさえその空気に飲まれて、一言も話すことなく、神殿へ歩くだけで、道のりは十数分ぐらいだったが、何時間も歩かされたほどの疲れを少なくともユッケは感じていた。
「着きましたな。」
耐え切れなくなったレオンが到着したことでチャンスとばかりに言葉を発した。
「・・・巫女様、どうされますか。儀式の支度を致しますか?」
最後尾の神官が静かに振り返り、レオンを盛大に無視してミナに尋ねた。
「えっ?!・・・えぇ、まだ日も高いですし・・・。」
完全に気圧されしたミナが怯んで答えた。
「承知しました。それでは私達はそのように手配いたしますので・・・。」
ミューレがそう答えてお辞儀をすると、それに合わせて周りの神官達もお辞儀をして、それぞれがやるべきことへと向かって静かに歩いていった。
ユッケ達は知らない土地と知らない神殿でポツンと残されることに・・・。
「・・・・・・なんか、アウェー感すごいね・・・。」
ユッケが思ったことを口から零す。
「アウェー、ですか?」
レオンがニコニコしながら素直に尋ねる。
「・・・なんていうか、味方なのか敵なのか分からない感じっていうか・・・。」
アウェーという答えにはなってはいなかったが、ユッケは近い表現で説明した。
「・・・私もこんな雰囲気は初めて・・・。」
ティアが頬を指で掻きながらそう呟く。
「・・・ふん、おまえのせいではないのか?」
ゴウがニヤリとしながらユッケを見て言葉をぶつけてきた。
「・・・そっ、そう・・・。」
「私のせいよ。」
ユッケがゴウに答えようとした言葉に被せてシヴァが口を開く。
「・・・きっと私が自分の役目を忘れてここを離れたせい・・・。」
悲しい切ない声でそう言いながらシヴァは姿を現した。
「・・・シヴァ様、ようやく姿を御見せになられましたね。」
「?!」
突然の声に驚き、ユッケはその声の方に目を向ける。そこにはもちろん、ミューレが立っていた。立ってジッとシヴァの方を見据えていた。
「・・・ごっ、ごめんなさい・・・私が・・・。」
「シヴァ様がそのような事をするはずがありません。自分の役目を分かっておられると思いますので・・・シヴァ様は水の守護獣である前にアルテマの守護獣でもありますから。」
シヴァは素直にミューレに頭を下げようとした。が、それを遮るようにミューレの言葉が畳み掛けてきた。
「・・・おっ、俺のせいなんだ。」
「そうですね。」
「えっ?!」
ユッケがシヴァを庇い、一歩前に出てミューレに謝罪しようと試みた。
すると、ミューレは間髪いれずにそれに同意をして冷たい目でユッケを突き刺した。ユッケは思わず、たじろぐ。
「シヴァ様はお優しい方だと、前任者から聞いておりました。きっと貴方のわがままのせいでシヴァ様はそうせざるを得なかったのでしょう?」
「・・・そっ、それは違うわ!」
今度はシヴァがミューレの言葉に被せて否定する。
「いいえ、そうでなければ・・・。そうでなければ、シヴァ様が私達を見捨てて、何年もこの地を離れるなんて事はありえません!」
シヴァが前に出てきた分、それ以上に言葉を強めて、自分の意志をぶつけてくるミューレ。
「・・・ずっと・・・ずっとお婆様は待っておられました。ただ、ひたすらに・・・。」
シヴァを真っ直ぐ見て切ない目を向けて、今にも零れ落ちそうな涙を堪えてミューレは言う。
「・・・・・・。」
シヴァはもうそれ以上何も言えなくなった。
「巫女様、準備が整いましたのでミソギの方をお願い致します。」
一人の神官が戻ってきて、今の場の状況を我関せず、慌てる事もなく、冷めた目でミナを見て、静かにお辞儀をしながら促した。
「巫女様、どうかこの地を支える水のクリスタルに安定を・・・。」
さっきまでの事など、なかったかのように平静を取り戻し、深々とミナにお辞儀をして懇願するミューレ。
「えっ・・・えぇ、わかりました。」
ミナは状況をイマイチ飲み込めず、戸惑っていたが、ただ自分がすべき事をするようにと思い、返事をした。
「それではこちらへ。」
淡々と自分の仕事をする神官がミナを導く。
「お願いします。」
ミナが一度シヴァの方を見てから、神官に連れられて神殿の奥へと消えていった。
「・・・ほれ、お前も自分の仕事をせんか。」
「えっ?!」
背中をゴウに押されるユッケは事態が掴めず、ゴウの顔見る。
「お前も儀式に参加するんだろうが?我々は神殿の外で警戒しておる。」
やれやれといった表情のゴウがユッケにすべき事を教えた。
「あっ・・・あぁ・・・。」
状況に戸惑い、イマイチ歯切れが悪いユッケ。
ユッケ達の行動を見て、ミューレが間髪入れずに動く、
「すみませんが、一般人の方を儀式に・・・。」
「ユッケは一般人ではないわ。儀式を守る上で重要な役目があるのよ。」
ミューレの行動を先読みしてか、ティアがミューレが頑なにユッケを拒絶しようとした言葉に被せて反論する。
「・・・しかし。」
一向に下がる気配のないミューレ。
「はっはっはっはっ、バハムート様のご指示でもですかな?」
ニコニコとレオンがティアをサポートする。
「バハムート様のっ?!」
さすがのミューレも大物の名を聞いて驚く。
「そういうことじゃ、よろしく頼むぞミューレ殿。」
ゴウが腕組みをしながらミューレに同意を求めた。
「・・・・・・わかりました・・・それではこちらへ・・・。」
バハムートの名には逆らえないのかミューレは長い沈黙の後、渋々とユッケを儀式の間へと導くように促した。
ミューレが先をいそいそと歩いていく中、ユッケはゴウ達を見て、後ろ髪を引っ張られながら神殿の儀式の間へと歩んでいった。シヴァは落ち込みを隠さずにフワフワとユッケの隣で浮かびながらただただ着いていった。
(アウェー感半端ねぇ・・・。)
ユッケの心の声が、聞こえるはずのない水の神殿内に響き渡るようだった。
ミューレが放つ不穏な空気に圧倒される一同
それでも儀式のためにユッケ達は進まなければならなかった
儀式は無事に行われるのか?
次回、「水のクリスタル」
青年は水の奥深さにのまれる?!(千葉繁さん風)
どっちが好み?あなたの選択でエンディングが変わります。
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包容力があって、海のような心を持つ女性
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等身大でお互いを認め合える女性