その街でも人々は涙ぐましく生きていた。
門を潜り、ウィンローラへと入ったユッケ達だったが、街というには余りにも活気がなかった。道行く人も居らず、道の両脇に建物は建っているが、どれもこれも手入れもされておらず、外壁の塗装もはがれたまま、壁が崩れ落ちているまま、扉らしきものが床に落ちたまま。建物の中に人がいる気配もなかった。
「・・・とても、クリスタルがあった街とは思えないな・・・。」
その様子を見て、正直な言葉がユッケの口から出る。
「・・・・・・。」
ゴウが気にする風でもなくただ黙々と歩くのみだった。
「・・・おぉ、まさか・・・巡礼の巫女様達か?」
少し歩いているとやっと街の人らしき男性がユッケ達に気付いた。
「大丈夫ですか?」
チョコの上からではあるがミナが男性に優しく声をかけた。
「・・・我々は見捨てられたものだとばかり・・・。」
ミナを見て、崩れ落ち。地面にウズクマってしまった男性。
「・・・アルテマクリスタル様は何人も見捨てたりはせぬ・・・。」
ゴウがヒザマズき、男性の背中に優しく手を置きながら今まで聞いたことないぐらいの優しい口調で声をかけた。
「・・・ありがとうございます・・・。」
地面にウズクマったまま男性は泣いていた。
その後もチラホラ人を見かけたが、最初の男性以外は何か怯えているようで、ユッケ達を遠巻きから様子をみているだけだった。ウィンローラの人々は大半がヒューランでチラホラ少数だが、ララフェルとミコッテも見かけた。
「・・・クリスタルの復活の事は言わなくてよかったの、師匠?」
ユッケが不思議そうにゴウに尋ねる。
「・・・クリスタルの復活は出来るか分からない・・・淡い期待で人々をまた、絶望に落とすわけにはいかん・・・。」
ゴウが前を向きながら静かな口調でユッケに答えた。
「・・・それにしても、ここには他の街からの助けとかないの?」
ユッケが辺りを見渡しながら尋ねる。
「・・・支援はしてるけど、どこも余裕がある訳じゃないのよ・・・。」
切なそうにティアが答える。
「闇の民が風のクリスタルを壊し、アルテマクリスタルを強奪しようとしたことにより、他のクリスタルを守るので精一杯でしたからな。」
さすがにニコニコせずにレオンが真面目に続く。
「・・・風がなくなった事・・・アルテマクリスタルの力がなくなったことで、普通の生活を送れなくなった人も多いわ。ウィンローラの苦しみも分かるけど、まずは近くの家族達を助ける人達を責める事は出来ないわ・・・。」
ミナがチョコの手綱を強く握り締めながら悔しそうに言葉を零す。
「・・・ユッケよ、それでもこの街で人々が生活できるのは、その余裕のない中からでも助け合う為に物資を僅かでも融通してくれている人たちがいるからだ。」
ゴウが皆を庇うように話した。
ここに来るまではウィンローラの人々を酔狂と言っていたゴウはもう居なかった。
(師匠もなんだかんだ言って、この街が好きなんだな・・・。)
ユッケは荷物を持つ手に力を入れて、胸の高鳴りを抑えた。
「絶対うまくいくよ師匠。うまくいかない訳がない!」
ユッケが前を見据えながら大きな声でゴウに言った。
「・・・フンッ。」
ユッケの励ましを恥ずかしそうに鼻を鳴らして交わすゴウ。そこへ、
「ゴウ殿ッ!」
前方からゴウの名前を呼ぶ人物が走ってきた。白いローブをマトった男性で、十中八九風の神官で間違いなさそうだった。
「ソトフ、元気にしておったか?」
ゴウがその人物に気付くとその者の名を呼んだ。
「ハァッ、ハァッ・・・まっ、まさか巫女様を連れて帰ってくるとは思わなかった。」
無理をして走ってきたのであろうソトフは息を切らしていた。
「詳しい事情はここでは話せぬ。神殿へ急ごう。」
ゴウが息を切らせているソトフを他所に、ソトフの腕を掴んで顔を近付けてそう促した。
「なっ?!・・・どうしたというのだゴウ殿・・・。」
急かすゴウに驚きを隠せないソトフだった。が、いつもとは違うゴウに促され、また来た道を休むまもなく歩かされるのであった。
「ふぅ~~~・・・やっと着いた・・・。」
走った後に休みなく歩かさせられたソトフは神殿に着くや否や、入り口の階段のところで座り込んでしまった。
「運動不足だぞ、ソトフよ。」
座り込んだソトフを嘆いてゴウが叱責する。
「・・・私は戦闘タイプではないのだ・・・無理を言わないでくれ。」
疲れ果ててうな垂れるソトフ。
「・・・いやはや、ソトフさん。僕の身にもなってください。」
大量の荷物の下敷きになっているユッケが残された力を振り絞って訴えた。
「・・・ハハハッ、どなたかは存じませんが、ゴウ殿に絞られているようで・・・お気持ちをお察ししますよ。」
苦笑いでまだ自己紹介もされていないユッケに優しく答えた。
「ハッハッハッハッ、ユッケ殿にしては頑張られましたな。その成長した姿、感服いたします。」
腕組みをして胸を張り、レオンが話す。が、助ける事はしない。
「ユッケの成長で私達も助かるわぁ。」
大きく背伸びをしてティアが言う。しかし、助ける事は一切しない。
「ホント最初に比べたら、やっとマシになったわね。」
サゲスむ様な目で見て悪態をつくミナ。自分の荷物だけ持ってスタスタ歩いていった。
「・・・あのっ・・・あの・・・。」
初めての雰囲気にどうして言いか分からないミューレ。勇気が出せない。
「大丈夫ユッケ?頑張ったわね。」
荷物の下からユッケを引っ張り出して膝枕で優しく開放してくれるシヴァ。
「ハッハッハッハッハッ、ゴウ殿。いい巡礼の旅をして来られましたな。」
一連のやり取りを見て、ソトフが大いに笑った。
「ふっ・・・まぁな。」
ユッケを見ながら鼻で笑って小さな声で賛同するゴウ。
「きっとうまくいく。」
ユッケがシヴァの膝枕されながら空を見上げ呟く。
「そうね。」
シヴァが優しくユッケの頭を撫でながら暖かい眼差しでユッケから空に視線を移し、賛同した。
チョコボの里からここまで、ずっと付きまとっていた重たいひり付いた空気がやっと和らいだ瞬間だった。
絶望から這い上がろうと頑張り、
絶望の故郷でそれでも暮らそうとする人々
それを目にしてユッケが思うのは?
次回、「闇の民とパンデモニウム」
(千葉繁さん風)
どっちが好み?あなたの選択でエンディングが変わります。
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包容力があって、海のような心を持つ女性
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等身大でお互いを認め合える女性