FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

54 / 157
いよいよ風のクリスタルを復活させようという
大きな仕事に取り掛かるユッケ達
この世界に風は戻ってくるのか?


クリスタル復活

「うわっ・・・これはひでぇ・・・。」

クリスタルの間に入ったユッケが見た光景をそのまま素直に表現した。

 

クリスタルの間は各地のクリスタルの間と変わらないほど広いものだったが、屋根は簡単に取り付けただけの板張りのもので、風があれば隙間風が容赦なく入ってくる程度のものだった。壁や床は所々ボロボロで補修もされておらず、部屋の中心にはくすんだ輝きを放つ大小のクリスタルの欠片が集めてあった。

 

「一生懸命集められたのですね。」

中心に固められたクリスタルの欠片の山を見て、レオンがニコニコしながらソトフに言った。

 

「・・・これぐらいしか出来ませんからね。」

苦笑いで返すソトフ。

 

「ユッケよ、念のためミナと共に進め。」

ゴウがユッケの背中を軽く押しながら指示を出した。

 

「えっ?」

意外な指示に驚くユッケ。

 

「不可能を可能にするんですもの。念には念をってね。」

ティアがユッケにウィンクする。

 

「ちゃんとついてきなさいよ。」

眉間にしわを寄せてミナがユッケをニラむ。

 

「・・・わっ、分かったよ。」

頭を掻きながらバツが悪そうにミナの後ろについていくユッケ。

 

「がっ、頑張ってください!」

自分の出来る最高のガッツポーズを作ってユッケを励ますミューレ。

 

「オウッ。」

そんなミューレにサムズアップして答えるユッケ。

 

「いよいよね。」

シヴァのその言葉を合図にミナが目をツムって、祈りの言葉を小さく唱え出した。

 

いつもはその様子をジッと立ってみていたユッケだったが、今回はミナの歩みに合わせて動かなければならない。ミナの邪魔をしないように慎重にゆっくりと歩幅を確認しながら進むユッケ。ミナはそんなユッケを意にもカエさなず祈りに集中していた。

 

「・・・あっ!」

ユッケは自分の頬に感じる風の感触に思わず声を出してしまった。慌てて、両手で口を塞ぐが、ミナは動じずに祈りを進めていく。

ミナの歩みが中心に迫れば迫るほど、風が段々力を増しているように感じるユッケ。

 

(あれ、幻じゃない?!)

 

ユッケはそこでハッと気付く。今まで体験してきたクリスタルの祈りの共鳴は今回は頬で感じたのを皮切りに、風が髪をナビかせ、天井の板をカタカタと今は小さく動かしていた。

ゴウ達はいつものように出入り口を固めていたが、そこに目をやるとゴウ以外はその変化に気付いたのか辺りをキョロキョロと見渡していた。

 

「ちょっと、これってもしかしてっ。」

「もしかするかもしれませんなっ!」

周囲の変化に期待が膨らんでくるティアとレオン。

 

「あぁ、本当に奇跡が・・・。」

余りの変化に膝から崩れ両手を合わして涙を流し始めたソトフ。

 

「・・・・・・。」

ポーカーフェイスのゴウだったが、腕組みした手に期待が込められていた。

 

ユッケはミナの方に向き直り、歩みを合わせて歩く。

ユッケの胸でアルテマクリスタルの輝きが増してきていた。

ユッケの傍に浮かんでついて来ていたシヴァがそれに気付いて、ユッケの肩を掴む。その手に静かに力がコモる。

 

〔カタカタカタカタカタッ〕

 

半分ほど近付いた所で、天井の板が大きく音を立て始めた。

 

〔ヒューッ、ビュヒューーーッ〕

 

風が強くなり、風がそこら中のモノを使って音を奏で始めた。

 

〔カチャカチャカチャッ〕

 

「ッ?!」

今度は驚いて声を出さないようにユッケは声を殺した。

 

ユッケは目の前に積まれていたクリスタルの欠片が山となっている所から音がしたのを聞いて、そこに目をやって驚いた。なんと、くすんだ光を放っていたクリスタル達が震えだしたのだ。その変化を察したのかミナは歩みを止める。

 

「ウワッ・・・。」

ユッケはミナの反応に呼応するかのように自分の胸元からフワフワと浮かんで出てきたアルテマクリスタルに声を殺せなかった。アルテマクリスタルはペンダント加工されていたのでユッケの元からはチェーン以上には浮かばなかったものの。チェーンが無ければどこまでも飛んで行きそうなぐらいに浮かんでいた。

 

〔ガチャガチャッ、カチャカチャッ〕

 

アルテマクリスタルの力か、その光に導かれるかのように破片となっていた風のクリスタル達が大小関係なく、浮かび上がろうとしていた。

ミナは目をツムったまま祈りの言葉を止めない。

ミナの祈り。

アルテマクリスタルの輝き。

風のクリスタルの欠片達の動き。

三者が完全に呼吸を合わせるかのように重なり合って、その部屋で奇跡が起ころうとしていた。

 

〔ガタガタガタガタッ〕

〔ビューーーーッ、ビュウォーーーーッ〕

 

クリスタルの欠片が全部宙に浮いて互いにぶつかり合うのをやめると、回りの風の音が際立ち出した。強い風に飛ばされるのを必死に堪えようとしている板。その板の間を無理やり抜けてこようとしている風が音を出して暴れていた。

 

「・・・・・・。」

祈りの言葉を唱えているミナ以外は言葉を失った。そこで繰り広げられる奇跡を見逃せないと、見逃してはいけないという使命感に支配されていた。

 

〔ビュワアアアアアア――――――ッ〕

 

隙間と言う隙間から入ってきた風が部屋の中心で踊るクリスタルをさらに集めるかのように中心へと中心へと集まり出した。

 

「ウワッ。」

中心部に近いユッケは余りに強い風に腕を前に出して目にゴミが入らないようにした。中心部に大きな風の渦が出来ているようで軽いものはなんでも吸い込みそうな勢いを作り出していた。風は目に見えるものではないが、幸いか、クリスタルの欠片達が風の姿を可視化していた。縦の竜巻を描き出したり、大きな渦上の円になったり、風が「俺達を見ろ!」と言わんばかりに踊りを表現していた。ミナの祈りとアルテマクリスタルの光が強くなるにつれて、その踊りは早く荒々しくなり、段々と中心に中心にへと集まり出した。中心に集まれば、クリスタル同士のぶつかり合いが音を出して分かりそうなものだが、一切音は出なかった。そして、

 

「・・・・・・。」

完全にその部屋の一同は目を奪われた。

 

クリスタル達が液体になったかのように形をグニャグニャと変化させて、交じり合っていったのだ。中心に集められた大小のクリスタルは大きな水の塊のように変化し、その中心に小さな光が出来始めた。と、思った瞬間。

 

「アッ?!」

奪われた目に強い光が直撃した。目をツブっていたミナ以外は全員目をやられたかもしれない。ものすごい強い光が部屋中を包み込んだ。

 

「・・・やったわ・・・。」

 

目を閉じた闇の世界に居たユッケの耳にミナの微かな声が届く。その微かな声を頼りに、ゆっくりと目を開けてミナを探す。

ミナは光にやられる前のまま、一歩も動かずにそこにいた。しかし、ミナは祈りを終えたのか目を開けて頭上を見上げていた。その目線を追っていくユッケ。

 

「ァァァァッ・・・。」

その余りの光景にユッケの言葉が息を吐くかのように漏れ出した。

 

ミナに導かれるように目線を移動させた先には、紛れも無い大きなクリスタルが浮かんでいた。今まで見てきたクリスタルと代わりの無い大きな大きなクリスタル。今までも、これからもずっとそこにある。あったとばかりに主張する存在がそこに鎮座していた。

 

「アアアアアアアアアアアッ!」

ソトフが余りの嬉しさに脇目も振らず大きな声で泣き出した。

 

「・・・やったのね・・・。」

ティアもその男泣きにつられたのか涙を隠さない。

 

「やりましたな。」

レオンは腕組みしながらニコニコしている。

 

「ウゥゥゥゥゥゥッ。」

両手で口を押さえながら大粒の涙を流すミューレ。

 

「・・・よくやった・・・。」

ゴウはユッケを見て、小さな声でユッケ達を讃えた。

 

「どうなさったのですか?!」

部屋の外から別の神官の声が聞こえ出した。いつもは幻だったが、今回は違う。風がこの世界に帰ってきたことを知らせるかのように盛大に暴れたのだから。外で状況を知らない人達は慌てるのは無理も無い。

 

「大変だッ!」

別の神官の声がする。内容がこっちの望んでいた反応と違う。

 

「大変です、ゴウ殿、ソトフ殿・・・あっ!」

慌てて入ってきた神官がゴウとソトフの名を叫んだが、部屋に復活したクリスタルを見て、度肝を抜かれていた。

 

「どうかしたのか?」

ゴウが冷静に入ってきた神官に用件を尋ねる。

 

「アァッ・・・なんと・・・言いますか・・・。」

ゴウとクリスタルを交互に見て、完全に混乱している神官。

 

「落ち着けッ!重要な用件ではないのかっ?」

ゴウが一喝して神官を落ち着かせる。

 

「すっ、すいません。クッ、クリスタルがあったものでつい・・・。」

まだ少し混乱してるがゴウの一喝で冷静を取り戻しつつある神官。

 

「・・・実はものすごい風が吹いたかと思ったら、神殿の広場の上空にパンデモニウム様が現れて。」

 

「なんだとっ!?」

神官が用件を言うとその事の重大さに大声で驚くゴウ。

 

「まさかっ!」

ティアがそう言って慌てて部屋を走り出て行く。

 

「私もッ!」

レオンが間髪入れずに後に続く。

 

「アワワッ、私は・・・。」

感情のジェットコースターを降りたばかりで整理がつかないミューレ。

 

「しっかりせんかっ!」

混乱するミューレの肩を掴み一喝するゴウ。

 

「はっ、はいっ!」

ゴウの一喝で背筋をピンッと伸ばすミューレ。

 

「ユッケよ、ワシらは固まって行動するぞ。あやつらがどこから来るか分からん。」

ゴウが冷静に指示を出す。

 

「わっ、分かった師匠ッ!」

ユッケがゴウに答えてゴウの方に歩みだす。

 

「ちょっ、ちょっとっ!」

ユッケは感情の高ぶりか、ゴウの「一緒に行動する」という指示に忠実に従い、ミナの手を掴み一緒に歩き出していた。その咄嗟の行動に驚くミナ。

 

「アッ、ごめんっ!」

ユッケは驚き慌てて手を離す。

 

「もう・・・私は貴方みたいに子供じゃないわよっ。」

少し頬を赤らめたミナはユッケをニラみつけ、掴まれた手を摩りながらゴウの方へと一人で歩き出す。

 

「・・・チッ。」

ユッケは自分の失態を頭を掻きながら舌打ちで表現した。

 

「何をしておる、早くこんかっ!」

ゴウがユッケを怒鳴って促す。

 

「フフフフッ。さぁ、行きましょう。」

シヴァがその光景を見て、微笑み、ユッケの肩に優しく触れて促した。

 

「あぁっ。」

ユッケもシヴァに微笑み返し、ゴウの方へと早歩きで向かった。

部屋を出る際、再度ユッケは部屋の中心に復活した風のクリスタルを見た。

今まで大小の欠片に分かれていたクリスタル。ユッケは再び世界を支える光となって輝き出したその姿に心を震わせるのだった。そして、不可能を可能にしたその自信がユッケを大いに勇気付けた。

 

 




風のクリスタルの復活に湧き立つ一同
しかし、それを知っていたかのように現れたパンデモニウム
希望と不穏が交差しながらユッケ達は歩んで行く

次回、「強襲」
青年よ、挑め!(千葉繁さん風)

どっちが好み?あなたの選択でエンディングが変わります。

  • 包容力があって、海のような心を持つ女性
  • 等身大でお互いを認め合える女性
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。