一行はシャイナールになる光の塔へと到着した
一行を待ち受けるのは?
「巫女様、風が戻ってまいりました!」
「巫女様、ありがとうございます!」
「貴方こそ、アルテマの巫女です!」
「アルテマの巫女、万歳!」
一行は2度目のシャイナールに到着していた。一度目のシャイナールも羨望の眼差しはすごいものだったが、風のクリスタルの復活による風という自然現象の復活が、普通の人でも感じる事が出来る分、反響が物凄いものになっていた。
「アルテマの巫女様こそ、真の巫女です!」
「アルテマの巫女様、こっち向いて!」
「アルテマの巫女様、我々に希望をありがとうございます!」
「アルテマの巫女、万歳!」
節度ある巡礼者や信仰の深い者が多い分、前と変わらず海が割れるように道が開かれているのだが、その両脇に溢れる人の数が半端なかった。
「すげぇ~~っ、こんなに人居たっけ?」
圧巻の人混みに驚くユッケ。
「風の復活で益々巡礼者が増えたようですな。」
ニコニコとレオンが言う。
「光のクリスタルの儀式があるでしょ?あれが終わった後にお祭りがあるみたいよ。」
ティアがどこからか仕入れた情報なのかユッケ達に教えてくれた。
「お祭りがあるんですかっ?!楽しみですっ!」
ミューレがチョコの上で揺られながらウキウキしている。
「お祭りか~~~・・・あの状態で楽しめるの?」
ユッケは光の塔の頂上でこちらを見ているであろう王の姿を見てそう言った。
光の塔の最上階にはバハムートが来てもいいような造りになっているのだろう。そこにバハムートが羽根を休ませて控えており、ユッケ達の方を見て、ジッとしていた。
「むしろ、バハムート様がいるからこそ盛り上がるのよ。」
ミナがニコッとユッケを見てそう言った。
「・・・そっ、そういうもんなんだな。」
ミナの笑顔に戸惑うユッケ。
「ちょっと、先にバハムートに会って来るわね。」
シヴァがそう言いながらバハムートの方へと飛んでいった。
「おっ、シヴァ様がユッケからこんなに離れるのって初めてねっ。」
ニヤッとした顔でユッケを見るティア。
「・・・確かに、そうかな。」
シヴァの背中を見ながらボゥッとした表情で呟くユッケ。
「んふ~~~っ。」
ティアはニヤニヤしながらミナを見た。
「・・・儀式、儀式。」
ティアの思惑に惑わされないように集中するミナ。
「私、お祭りって大好きですっ!」
ミューレの頭の中はお祭りの事で頭がいっぱいのようだった。
「そっ・・・。」
「それじゃ、ミューレは私と一緒に回りましょうね!」
ユッケがミューレに何か言おうとしたのをティアが割って入って黙らせた。
「なっ・・・。」
「レオンも一緒に回るのよっ!」
レオンが何かユッケに言おうとしたのを先回りして潰すティア。
「ユッケはミナを守るって言ってたからちゃんと守らないとねっ!」
ニコニコしながらティアが外堀を埋める。
「えっ・・・あぁ、そうだね・・・。」
ユッケが頭を掻きながらミナを見る。
「・・・しっ、仕方ないわね。」
ミナはチラチラとユッケを見ながら観念?していた。
「巫女様ッ!」
「ミナ様ッ!」
そうこうしていると、神官達が大勢で走ってきた。奇跡の巫女の到着に居ても立っても居られなかったのは一般人だけではなかった。
「アルテマの巫女、ミナ様入りますッ!」
クリスタルの間の扉を守る衛兵が精一杯の大きな声で叫んで伝えた。
音を立てずにスゥッと大きな扉が開き、赤い絨毯が中心へと伸びる。
その先に居るのはもちろんミナの姉であるクリスタル守護者統括者セレスだった。あの時と変わらず、毅然と玉座の前に立ち、穏やかな表情でユッケ達を迎えていた。
「良くご無事で、ミナ。」
玉座の階段から降りてセレスがミナに手を広げる。
「姉さま、ただいま戻りました。」
姉妹が抱き合い、お互いの無事を確認する。
「・・・ゴウの事は聞きました。勇敢に戦い、役目を果たしてくれたと聞いています。」
ユッケを優しい眼差しで見て、セレスが話す。
「はいっ。」
ユッケはビシッと背筋を伸ばし、セレスに答える。
「見違えるように逞しくなられましたね、ユッケさん。」
女神の微笑でユッケの成長を労うセレス。
「あっ、ありがとうございますっ。」
思わず、頬を赤らめるユッケ。
「・・・・・・。」
ミナが鋭い眼光を向けている。
「・・・・・・。」
ユッケはミナから目線を外して明後日の方向を見る。
「ミナ、儀式はどうしますか?」
ミナの方に向き直り、セレスが尋ねる。
「・・・はい、皆が待っているでしょうから今からでも構いません。」
ミナは丁寧にお辞儀をして姉への礼儀を示した。
「そうですか・・・それは助かります。お願いしますね、ミナ。」
セレスはニコリと微笑みミナに頼んだ。
「それでは、ミナ様。」
4人の女性の神官がミナの前にヒザマツく。儀式の前の清めへとお供する神官だ。
ミナは小さく頷き、その神官達を連れて、部屋を出て行った。
その動きに合わせるかのように部屋の両端に居た神官達が各々の役割をするべく一斉に動き出した。
「・・・ユッケさん。妹を守ってくださって本当にありがとうございました。」
統括者としてのセレスは消え、そこにはミナの姉のセレスが深々とお辞儀をしていた。
「えっ・・・そんな、俺なんてたいしたことは。」
頭を掻きながら恥ずかしくなるユッケ。
「私は姉として、守護者統括者として、別世界から来られた貴方に本当に感謝しています。アルテマの巫女であったリア様のご子息と言う以外にこの世界とは関わりの無かった貴方が、ここまでこの世界のために尽くしてくれて、この世界の代表として感謝のしようもありません。」
深々と頭を下げたセレスはその状態のままユッケに今までの思いを伝えた。
「あっ、頭を上げてくださいセレス様。俺は俺で、できることをしただけです。それに俺だけじゃない。みんなのおかげですから。」
セレスより目線を下げるように座り込み、セレスを導くかのように後ろに控えていたティア、レオン、ミューレ。そして、チョコを見回す。
「な~に言ってんの?私達こそ、自分の仕事しただけなのよ?」
「お忘れですか?私達はガードナーなんですよ?」
「ユッケさんは本当にすごいと思います。」
「クエエエッ!」
ティア達はこれまでのユッケを見て、讃えてくれたユッケに答える。
「フフフッ、私は統括者として果報者です。」
セレスはユッケ達を見て微笑んだ。
「・・・しかし、まだまだあなた方に頼るしかない私を許して下さい。」
セレスが顔を引き締めてユッケ達を見る。
「・・・闇のクリスタルですね。」
ユッケが答える。
「・・・そうです。アルテマ神殿襲撃以来、バハムート様しか行かれていない闇の世界。闇の民の領域である非常に危険な所です。」
セレスが真剣な顔で話す。
「バハムート様曰く、もう人は誰一人居ないと言います。その中で、闇のクリスタルは存在し続けている。火、土、樹、水。そして、風と光。闇のクリスタルの安定を終えて、始めて世界に本当の安定が蘇ります。どうか、最後の巡礼をお願いします。」
セレスは統括者として、皆の顔を一人一人しっかり見て伝える。
「ここまで来たんです。任せてください。」
ガッツポーズを作りユッケがセレスの願いに答える。
「・・・はい。今度は私も一緒に参りますのでっ。」
セレスがニコリと微笑む。
「・・・えっ?」
固まるユッケ。
「エエエエエエエエエエッ?!」
ユッケ達は大声で叫んで驚いた。
「フフフッ、私はミューレさんほど魔法に長けてはおりませんが、それでも魔法に関しては自信があるんですよっ。」
かわいいガッツポーズを作ってユッケを見るセレス。
「わっ、わっ、私なんてとんでもないっ。セレス様はあのハモウ様の再来とまで言われた賢者じゃないですかっ?!」
ミューレは目をグルグル回しながら混乱している。
「よっ、よろしいんですか?統括が動いたりしてっ。」
セレスの大胆な提案にティアも驚きを隠せない。
「バハムート様とも相談したのです。いよいよ、闇の民とも正面からぶつかるかもしれないので・・・それに私だけではないのですよ。」
含みを持たせた言い方でセレスがニコリと微笑む。
「エッ?他に誰か居るんですか?」
辺りを見渡して探すユッケ。
「ほぼ全員です。」
ニコリと微笑んでユッケに言うセレス。
「全員?」
セレスの言葉に理解できずにいるユッケ。
「バハムート様が全守護獣に召集をかけました。」
セレスはユッケの言葉に付け足すように説明してくれた。
「全員?って言う事は、光の守護獣も?」
全員来るということで今まで疑問に思っていた光の守護獣の事を聞いてみた。光のガードナーだったハディはいたが、ハディは守護獣を連れている感じではなかったからだ。それが全員召集でお目にかかれるのかと期待もしていた。
「光の守護獣はおりません。」
セレスがユッケの疑問に率直に答えた。
「エッ?」
その率直な答えに驚きを隠せないユッケ。
「元々、光の守護獣はいないのです。遠い昔からおりませんでした。しかし、光の塔は世界の中心で人の往来も多く、比較的安全でしたから。」
寂しい微笑でセレスが説明してくれた。
「ですが、他の守護獣。来れるモノ全員で闇の世界に入ります。」
セレスが微笑みを崩さぬまま続ける。
「・・・全員とは、すごいですねっ。」
苦笑いで驚くレオン。
「・・・・・・。」
事の重大さに固まってしまったミューレ。
「各々、もう来ているものはシャイナールの近くに控えています。もうほぼ召集した全員が揃いつつあります。最後の戦いを貴方達だけに任せるわけにはいきませんからっ。」
セレスはそこまでいうとユッケの手を両手で取って握り締めた。
「・・・皆ッ。」
セレスの手を握り返して、ティア達の目を見る。
「ええっ。」
セレスとユッケの手にティアの手が重なる。
「やりましょうっ。」
ニコニコしながらレオンも続く。
「がっ、がんばりますっ!」
ミューレも小さな手を重ねる。
「・・・ミナを守ろうッ!」
「オオオオオオオッ!」
ユッケの合図でそれぞれが頭上に片手を上げて己を奮い立たせた。
「ちょっとちょっと、人が居ない間に何盛り上がってるのよっ?」
ミソギを終えたミナが戻ってきて、ユッケ達の騒ぎに驚いて近付いてきた。
「フフフッ、ごめんなさい。儀式の後で貴方にもちゃんと説明するわねっ。」
セレスが姉の優しい微笑をミナに向ける。
「ッ???」
ミナはお預けされて益々要領を得なかった。
「・・・・・・。」
ユッケは儀式に入ったミナをジッと静かに見ていた。
光のクリスタルの儀式は玉座で行う。玉座の前でヒザマツき、ミナがいつものように儀式の言葉を唱える。玉座に続く赤い絨毯の両端に神官達がズラリと並び、ミナと呼吸を合わせて言葉を小さく合唱する。セレスとユッケ達は入り口で控えてその様子を見ていた。
ミナの祈りが始まると部屋中に蛍のような光が無数に現れだし、各々が自由に飛びまわっていた。光のクリスタルの中心に輝きが始めは小さく、そして、祈りが進むにつれて、大きく大きくなっていった。周囲を飛び回る蛍も大小と無数に飛び交い、部屋中のクリスタルも共鳴するかのように輝き出した。そして、祈りも佳境に差し掛かった時、大小の蛍が一斉に中心の光のクリスタルに集まり、クリスタルが放つ光に飛び込んでいった。飛び込めば飛び込むほど光は大きくなり、最後には部屋全体を光が包み込んだ。
「・・・まっ、眩しいッ。」
ミナをずっと見ていたユッケだったが、さすがに光に負けて目を閉じる。
「・・・無事に終わりましたね。」
セレスの優しい声がユッケを導く。セレスの声を聞いて、ゆっくりと目を開けるユッケ。
そこには、儀式を終えて、こちらに歩いてくるミナの姿があった。
「お疲れ様、ミナ。」
笑顔で妹を迎えるセレス。
「ふぅ~~~~っ。」
大きく息を吐き、ミナが歩きながら背伸びをして見せた。
「これで後一つねっ。」
ティアが微笑む。
「いよいよですなっ。」
ニコニコしながら胸を物理的に高鳴らせるレオン。
「きっと私達なら負けませんッ!」
かわいいガッツポーズで鼓舞するミューレ。
「クエッ!」
ミューレに続くチョコ。
「そんなことより、さっきの説明って何?」
儀式中もずっと気になっていたのかミナがさっそく皆に尋ねた。
「エエエエエエエエエエエエッ?!」
これでもかという大きな声で叫ぶミナ。
「だっ、駄目よお姉ちゃんっ!絶対駄目ッ!」
余りのことに素に戻るミナ。
「もう決まった事だから、心配しないで。皆がいるじゃない。」
ニコニコと心配性の妹を説得する姉。
「だっ、だからって・・・そんな・・・。」
どうにか姉を危険から遠ざけたい妹。
「・・・・・・。」
家族の事だからと、ユッケ達はその様子をジッと黙ってみていた。
「あっ、あんた達もあんた達よっ!統括者よ、リーダーなのよッ!」
もっともな事をいうようでいっぱいいっぱいなミナ。
「・・・アハハッ、その統括者の命令って言うのもあるんだわっ。」
苦笑いで正論を言うティア。
「守護獣全員集合と聞いては、ワクワクが止まりませんっ。」
ニコニコピクピクさせながら自分の思いだけを言うレオン。
「私もユッケさんたちもいますっ。私はセレス様と一緒に戦えるなんて光栄です。」
ミューレは鼻息荒く気合十分だった。
「・・・もぅ~~~っ、たしかに全員で行くなら安全かもしれないけど・・・。」
呆れるミナ。
「あら、だったら、私も危険だからミナを行かせられないわっ。」
両手を両脇につけて、胸を張り、ミナに迫るセレス。
「わっ、私は巫女じゃないっ!」
当然の返しをするミナ。
「私も統括者ですからッ。」
ニコリとミナを一蹴するセレス。
「うっ・・・。」
ミナはセレスの攻撃に怯む。
「バハムート様の賛同もあるんですよ。」
左手の人差し指を立ててバハムートの名を出すセレス。
「・・・・・・。」
ノックアウトだった。
〔ドドーーンッ、ドーーーンッ、パラパラパラパラッ〕
そうこうしていると、塔の外から爆発音が聞こえてきた。
「さぁさぁ、話はこれぐらいにして、お祭りよッ!」
ティアが待ってましたと話を区切り、祭りに行こうと提案した。
「ワアアアアアアアアアッ!」
両手を挙げて喜ぶミューレ。
「フフフッ、戦士達にも暫しの休憩が必要だものね。」
微笑んでセレスが皆を促す。
「それでは参りましょうか、ミューレ殿。」
ニコニコとレオンはミューレと手を繋いで部屋を出て行った。
「よ~~~し、おもいっきり食べて飲むわよッ!」
片腕をブンブン振り回してティアが続く。
「私は少し用事があるので二人ともいってらっしゃい。」
セレスは空気を読んだのか透かさず、距離を取り、そそくさと離れていった。
「・・・いっ、いこうか?」
「・・・そっ、そうね・・・。」
二人ポツンと残されたユッケとミナは渋々という態の元で祭りに向かって行った。
ああ
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包容力があって、海のような心を持つ女性
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等身大でお互いを認め合える女性