事態は予期せぬ方向へと進んでいく・・・。
「見たところ、前にあった時よりもさらに凛々しくなったんじゃないか?」
両手を広げて、余裕を感じさせる口調でゆっくりと近付いてくる闇の民。
「お前を倒すために必死だったからなッ!」
ユッケは剣を構えて、闇の民をにらみ付け臨戦態勢をとる。
(シヴァが居ないのが痛い。どうする?)
シヴァの不在でフュージョンが出来ないユッケは焦っていた。
「ユッケッ!」
その時だった。近くでシヴァの呼ぶ声が聞こえた。
「シヴァッ!」
闇の民を見据えつつ、願ってもないチャンスの到来を喜んでシヴァの名前を叫ぶユッケ。
「・・・お前達の絆は本当に厄介だな・・・。」
シヴァの存在に気付いた闇の民が少し悔しそうに呟く。
「・・・でも、それももう遅い・・・。」
「ッ?!」
ユッケは思いもよらない方向からの声に背筋が凍った。
ゆっくりゆっくりその声の方向に顔を向けていくユッケ。
不思議と周りの時間も合わせてゆっくり流れていくのを感じた。
「・・・ッ?!」
ゆっくりゆっくり振り向くその先にはミナとハディしかいないはずだった。
そう、確かにそこにはミナとハディしかいなかった。
「・・・ユッケ君。アルテマクリスタルをここまで安定化させて・・・そして、わざわざ運んでくれてありがとう。」
気を失ったミナを片手で構えて、胸元にアルテマクリスタルを輝かせて、不敵に微笑むハディの姿がそこにはあった。
「ハハッ・・・そんな・・・嘘だろ・・・。」
ユッケはその光景を見て固まってしまった。
「嘘じゃないよッ!」
「ッ?!」
突然、白銀の闇の民の顔が目の前に現れた。しかし、いつもの冷静な闇の民とはかけ離れた陽気な雰囲気を爆発させていたのにユッケは思わず驚く。
「ハッハッハッハッハッ、その顔傑作ッ!」
空中に浮きながら白銀の鎧は腹を抱えて笑っていた。
「余りからかってやるな、ディアボロス。」
ハディがニヤケながら白銀の鎧の中身の名を呼んだ。
〔ディメンション〕〔ブウウウウウウウーーン〕
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。」
ユッケの足元に闇が広がっていく。しかし、ユッケは一歩も動けない。一斉に押し寄せた様々な感情と出来事の波に飲まれて、息をするのがやっとだった。
「おかしいと思わなかったかユッケ君。なぜ、ミナがクリスタルを持っていることを分かっていたのか?・・・とか。」
ニヤニヤしながらハディがユッケに向かって話していく。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。」
しかし、沈んでいく中でユッケは必死に溺れない様に息継ぎを繰り返すことしか出来ない。
「風のクリスタルの時もそうだ。アースカンドの飛空挺がなぜ、都合よく現れたと思う?」
空を見ながらハディが語りだしていく。
〔バチバチバチバチッ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ〕
その時だった。花火と星に彩られた空に次元の裂け目が大きく大きく広がっていった。
「ユッケエエエエエエエエエエッ!」
やっとの思いでユッケを見つけたシヴァがユッケの姿を見て叫ぶ。
「行かせないよッ!」
ディアボロスは白銀の鎧の姿から今度はキングチョコボの姿になり、シヴァの行く手を遮った。
〔グワングワンッ、グワン・・・〕
〔ヒュンヒュンヒュンヒュンッ〕
〔バラバラバラバラバラッ〕
〔ブウウウウウウウウウウウウウウウンッ〕
〔ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ〕
〔ガシャンッ、ガシャンッ、ガシャンッ、ガシャンッ、ガシャンッ、ガシャンッ〕
大きく大きく開いた次元の裂け目から現れたのは、アースカンドの大軍団だった。
飛空挺が十何隻も現れ、それに伴って、プロペラ機とヘリコプターも何十機もミッドガルドの空を飛び始めた。地上では戦車が何十台も現れ、パワードスーツを着て、自動小銃を構えた歩兵が何百、何千と現れ、最後に大きな大きな戦車が一台、歩兵達を従えるように現れた。
「お前達の行動は全て知っていた。ディアボロスにずっと監視させていたからな。」
これから始まるであろう苛烈な戦いを他所に淡々と話を続けるハディ。
「邪魔なバハムートの動きをコントロールするのには手間取った。」
ハディの余裕を込めた笑みがユッケの胸に突き刺さる。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。」
ユッケは何も言い返せない。息継ぎを保つだけで精一杯だった。
「ユッケ君、すまない・・・これから始まるパーティに君を参加させて上げられなくて申し訳ない。」
ハディが口角を裂ける様に上げてユッケに謝った。
「駄目エエエエエエエエエエエエッ!」
ディアボロスに遮られ、ユッケの元に行けないシヴァが涙を流しながら叫ぶ。
「ハッハッハッハッハッハッ、最高ッ!」
ディアボロスは元の姿に戻り、シヴァを遮りながら大笑いしていた。
「お願いよ、ディアボロスッ!・・・貴方達のためになんでもする。なんでもするから、ノブヒデだけは・・・ノブヒデだけは奪わないでッ!」
涙を流しながら行く手を阻むディアボロスに懇願するシヴァ。
「・・・・・・。」
ディアボロスは横目でハディに確認するが、ハディはニヤリと笑うだけだった。
「だめだってさッ。」
〔グラビデ〕〔ブウウウーーーーーン〕〔ズドーーンッ〕
「アアアアッ!」
シヴァはディアボロスのグラビデにより地面に叩きつけられる。
それでも、シヴァは右手をユッケの方に必死に伸ばし助けようとする。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。」
シヴァのそんな姿を見ても、ユッケは何も出来ない。
そんな中、様々な感情がユッケの頭の中を駆け巡っていく。
今から自分がどうなるのか?
自分が居なくなった後にミナは、シヴァはどうなるのか?
闇の民ハディはこの後、ミッドガルドで何をするのか?
ティアは?レオンは?ミューレは?チョコは?セレスは?
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
ユッケの悩みを打ち消すようにバハムートの猛々しい怒号が空を支配する。
それにつられて、塔に集結していた守護獣達がアースカンドの軍団へと突進していく。
シャイナールの周辺に今か今かと潜んでいた守護獣たちもそれに続いた。
「そうそう、ユッケ君。君はアルテマクリスタルを持っていて、何も感じなかったのか?」
バハムートが現れて、守護獣達も応戦する中、それでも冷静なハディ。沈み行くユッケにハディがニヤつきながら尋ねる。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。」
ユッケは何の事か分からない。ただただ、大量の汗を掻きながら息継ぎをするだけだった。
「君はクリスタルの本当の使い方を知らないらしいな・・・身に着けているだけでどれだけの力が得られるか、全然分かっていない。宝の持ち腐れというのはこのことだな。」
ミナを抱きかかえている手とは逆の手で首に掛けたクリスタルを拾い見詰めながら言う。
〔ドドドドドドドドドドドッ〕
〔ズガーーンッ、ズガーーーンッ〕
〔ババババババババババッ〕
突進してくる守護獣達にアースカンドの軍隊は重火器を一斉に発射して迎え撃つ。
その銃弾をものともしないで突っ込む守護獣達。
「アルテマクリスタルの無限の力というのを見せてやろう・・・。」
ハディがそう言うとクリスタルを持っていた手からクリスタルを滑らせて、その手を空に向かって掲げる。
〔メテオ〕〔ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ〕
メテオを唱えた瞬間、空に大きな大きな隕石がバハムート目掛けて降り注ごうとしていた。
「ッ?!」
隕石の接近に驚くバハムート。
「オノレエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!」
バハムートはメテオを受け止めるが、その余りにも大きな力に押され隕石と一緒に沈んでいく。
「ハーーーーーーーーッハッハッハッハッハッハッ!」
ハディの大きく大きく開けた口から笑い声が高らかに溢れ出す。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。」
ユッケの体はもう首まで飲み込まれていた。
「ノッ・・・ブゥッ・・・ヒデェーーーーーッ!」
シヴァがノブヒデの名を搾り出しながら、大粒の涙を流し、超重力に耐え、必死に届くはずのないノブヒデに手を伸ばそうとする。
「フハハハハハハッ!」
「ヒャーーーハハハハハッ!」
ユッケとシヴァの姿を見ながら、笑いが止まらないハディとディアボロス。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・。」
ユッケはミナとシヴァを交互に見ながら懸命に息継ぎをする。そして、
「・・・・・・。」
闇はユッケを飲み込み、静かに地面へと吸い込まれていった。
闇の民ハディの「ディメンション」によって
ユッケは闇の中へと飲み込まれた。
闇の中に落とされたユッケはどうなるのか?
次回、「次元の狭間」
青年は闇の先のその先に想いを馳せる!(千葉繁さん風)
どっちが好み?あなたの選択でエンディングが変わります。
-
包容力があって、海のような心を持つ女性
-
等身大でお互いを認め合える女性