FF アルテマクリスタル   作:葛屋伍美

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闇の民ハディに全てを奪われて
闇へと落とされたユッケ。
闇の中でユッケは何を思う?


アースカンド編
次元の狭間


 

「クポポッ。」

「・・・・・・。」

「起きるクポッ。」

「・・・・・・。」

「さっさと起きろクポッ!」

 

〔ポカッ〕

 

「イテッ。」

暗闇の中にいたユッケは頭に何かがぶつかった痛みを感じて声を出した。

ゆっくりと目を開けて、視界を回復させていくと、そこには・・・。

 

「やっと起きたクポッ。」

なにやら、マルマルフワフワした白い人形のような生き物が空中に浮かびながらユッケを見下ろしていた。猫のような大きな耳を持ち、頭にはマルマルとした赤い球体がついていた。そして、髭が両方に二本ずつ。ズングリムックリした体型だが、さわったらさぞ柔らかいだろうという印象が強かった。背中にはコウモリのような羽根が生えており、それで空を飛んでいるようだった。目は細めでどこを見ているか分からない感じだったが、きっと自分を見ているのだろうと思ったユッケ。

 

「・・・キッ、君、しゃべれるの?」

まずはそこが気になったユッケ。自分にも分かる言語でしゃべるフワフワの生き物に尋ねた。

 

「当然クポッ!なんでかは割愛するクポッ!!」

なぜか胸を張る生き物。

 

「ここは?」

そこで、ユッケは自分がどこに居るのかを確認する。覚えているのは闇の民だったハディに「ディメンション」を使われて、地面に開いた闇に飲み込まれたところまで。そこから、先は記憶にない。周囲を見渡してみると、星のない空に放り出されたような空間で、所々に大きな岩や小さな岩が空中に浮かんでいるのが見えた。さらに遠くの方に目をやると難破船のようなものが暗闇の中に有るような気がした。倒れている所を確認すると、直径10mぐらいの平たい地面のようで、その先は何もなく、闇が広がっているだけだった。一番に目についたのは、ユッケの場所から、飛び地のようなに等間隔に並んだ平らな面が上を向いた逆円錐が何個も連なる先にある大きな逆円錐の上で光っているクリスタルだった。遠くても良く分かるほど大きなクリスタル。そのクリスタルが発光しているせいか、星のない暗闇が辛うじて見えるのはありがたかった。

 

「・・・あそこは?」

クリスタルが光っている場所を見ながらユッケが呟く。

 

「あそこはハモウの家だクポッ。」

フワフワの生き物がそう教えてくれた。

 

(・・・ハモウ・・・どこかで聞いたような・・・。)

ユッケはどこか聞き覚えのある名前だったが思い出せなかった。

 

「僕も居候させてもらってるクポッ。」

また胸を張って言うフワフワの生き物。

 

「・・・教えてくれてありがとう・・・自己紹介が遅くなったね・・・俺の名はッ。」

 

「ノブヒデクポッ。」

「ッ?!」

自己紹介しようとしたら、先に名前を言い当てられて名札が着いているのかと慌てて自分の身体を見回すユッケ。

 

「ハモウに教えてもらったクポッ。」

胸を張って当然のように言うフワフワ。

 

「僕の名前はモグリエーテ・ファンベルト・モンテカルロ・オデットナルトクポッ。」

そう自己紹介をしてくれたモブリエーテ以下省略。

 

「でも、名前が長いからって、ハモウにはモグッチと呼ばれているクポッ。」

 

(よかったッ。)

突然長い名前を言われて混乱したユッケだが、助け舟が出されてホッとする。

 

「ハモウから君を連れて来いと言われたクポが、重すぎて無理だったから起きるのを待ってたクポッ。」

待ってる奴は人の頭を殴らない!というツッコミをモグッチに入れようとしたのをすんでで我慢したユッケ。

 

「ちょうど起きたならついてくるクポッ。」

モグッチがそう言いながらクリスタルのある陸地に飛んでいく。

 

(・・・ハモウ・・・どこかで聞いたことがあるんだけど・・・なんだったかな?)

モグッチの後を追いかけながら頭の中で思い出そうとするユッケ。

 

「足元、気をつけるクポッ!踏み外したら、どこにいくか分からないクポポッ。」

考え事をして歩いているユッケに注意を促すモグッチ。

 

「・・・アァッ、ごめんごめん。」

モグッチの忠告に素直に従って謝るユッケ。足場の下を覗き込むとそこには光も届かない暗い暗い闇が広がっているだけだった。上下左右に広がるのは闇闇闇闇で、クリスタルが光っているこの場所以外には、光があるようには思えなかった。闇の中に見えるのは大小の岩だけで殺風景を通り越して、何もないと表現した方がいいような世界だった。

 

「ハモウ、つれてきたクポッ!」

モグッチが早々に目的地に着いて、そこにいたハモウに声をかけた。

 

(ハモウ・・・ハモウ・・・誰だったかな?)

ユッケは逆円錐の足場を歩きながらハモウという人物について思い出そうと頑張っていた。

 

「おうおう、モグッチ助かったワイ。」

ハモウという人物がモグッチにお礼を言った。

 

「また、クリスタルを眺めて暇人じじいクポ。」

モグッチがハモウに失礼な言葉を投げかける。どうやら、二人?は随分仲が良さそうだった。

 

「ヒョッヒョッヒョッヒョッ、こんなにいい暇つぶしもないわい。」

笑って返すハモウ。

 

「・・・・・・。」

モグッチとハモウが話している間にやっとユッケが目的地に辿り着く。

そこは直径100mはあろう広い地面が広がっており、大きな大きなクリスタルの塊が半分以上を占めていた。残った地面にこぢんまりとした掘っ立て小屋がある。たぶん、あの小屋がモグッチの言っていたハモウという人の家なのだろう。当のモグッチとハモウは大きな大きなクリスタルの塊の前で談笑していた。

 

「オォオォッ、ノブヒデよ。良く来られたな・・・いや、落とされたか?」

ハモウと言う人物がノブヒデ(ユッケ)の名前を口ずさみながら親しそうに話しかけてきた。

 

「・・・あぁ・・・どうも・・・。」

ハモウと言う人物は親しそうに話しかけてくるが、ノブヒデはその姿を見てもピンと来なかった。ハモウと言う人物は背が140cmぐらいのこぢんまりとした老人で、長い髭を顎に蓄え、鼻の下に左右にクルクルと先端が巻かれた髭が特徴的だった。白い所々汚れたローブに身を包み、目は黒いまん丸サングラスで隠していた。髭が立派なせいか頭には髪の毛が一本もない。

 

「・・・・・・オオオオッ?!そうじゃったそうじゃった、ワシが知っていてもお主がワシの事を知っているはずもないワナッ、ヒョッヒョッヒョッヒョッ。」

ハモウは自分の中で納得したのか要領を得ないユッケの顔を見て笑った。

 

「・・・すっ、すいません・・・。」

ノブヒデはとりあえず謝る事にした。

 

「いやいや、申し訳ない・・・ワシはずっとお主の事をクリスタルを通して見ておったから、知っている気でおったわ。」

そう言いながらハモウは大きな大きなクリスタルに目を向けた。下から見たクリスタルは大きく光っているだけのように思えたが、近くで見れば、もっと大きくその存在感は小さな山のようだった。淡い光を発して、暗い暗いこの世界を必死に照らしている。

 

「・・・ずっと・・・見ていた?」

ノブヒデはふと気になったことをハモウに尋ねた。

 

「そうじゃよ・・・お主の母親リアがアースカンドに渡ってからずっと見ておった。」

 

「ッ?!」

母親の名前を出されてそこでハッと思い出した。いつか、シヴァがバハムートとシャイナールの近くの草原で話してくれた母リアを闇の民ハディから救ってくれたというミッドガルド一の大賢者。その名が確かにハモウだった。

 

「まっ、まさか・・・大賢者ハモウ様?」

ノブヒデは驚きの余りハモウを指差してそう言った。

 

「ヒョッヒョッヒョッヒョッ、昔々の話じゃよ。」

ハモウは自慢げに顎鬚を触りながら胸を張る。

 

「生きてらしたんですね・・・。」

伝説の人物にあってノブヒデは目を丸々とさせる。

 

「ヒョッヒョッヒョッヒョッ、ワシも運がよかった・・・いや、悪かったのやら・・・。」

周囲を見渡しながらハモウが言う。

 

「・・・ここは・・・ここはどこなんですか?」

ノブヒデは慌ててハモウに説明を求める。

 

「まぁまぁ、落ち着きなされ・・・気持ちは分からんでもない。」

慌てるノブヒデを見て、ハモウは落ちつかせようとする。

 

「・・・すいません・・・でも、大事な人達がどうなっているか心配で・・・。」

ノブヒデは拳を握り締めてハモウに訴える。

 

「・・・大丈夫じゃっと言ってやりたいがそうでもないのもまた事実。」

アゴヒゲを触りながらハモウがノブヒデを見る。

 

「しかし、急いだからといって、状況が変わるわけではないぞ・・・。」

陽気な雰囲気だったハモウの空気が少しピリッとした。

 

「・・・・・・ッ。」

まん丸サングラスの奥でハモウの眼光が鋭くなったのを感じたユッケ。

 

「・・・よろしい。さすがはリアの子供じゃ、頭がよいの。」

落ち着きを取り戻したノブヒデを見てハモウがニコリと笑う。

 

「ワシはこのクリスタルの力を使って、外界の様子をずっと見ておった。主にリアやノブヒデ、お主の様子をじゃ・・・。」

ハモウがゆっくりとクリスタルに近付いて触りながらノブヒデに話し出す。

 

「・・・ここは『次元の狭間』。次元の歪みや闇の民ハディによって運悪く落とされた場所。運が良いものはアースカンドに飛ばされ、そうでないものはここで一生闇の中で漂う。」

ハモウがノブヒデにニヤリと口角を軽く上げながら説明した。

 

「・・・じゃぁ、俺達は一生ここに・・・。」

ノブヒデは説明を聞いて膝から崩れ落ち塞ぎ込む。

 

「・・・慌てるなと言うに。」

ノブヒデの落ち込んだ姿を見てハモウが声をかける。

 

「・・・出られるんですか?」

ノブヒデはハモウに少ない希望の眼差しを向ける。

 

「やってみないと分からんがな・・・。」

クリスタルを触りながらそう告げるハモウ。

 

「でっ、出られるクポポッ?!」

今まで黙っていたモグッチが驚きの声を上げる。

 

「ヒョッヒョッヒョッヒョッ、ワシとお前だけなら無理をする必要もなかったんじゃがな。ノブヒデ・・・いや、今はユッケと言った方がよかったか?ユッケがここに来てしまった以上どうにかせんといかんワナ。」

笑いながらアゴヒゲを触りハモウが言う。

 

「ウソツキクポッ、ウソツキクポッ!あれだけ僕が頼んでも出られないって言ってたのにッ!」

空中で暴れながらモグッチが怒り出した。

 

「ヒョッヒョッヒョッヒョッ、まぁまぁそう言うな・・・お主とワシがここから出た所でどうにかなるもんでもあるまいて。」

モグッチの怒りをやんわりと交わしながら笑うハモウ。

 

「そう言う問題じゃないクポッ!モーグリ侵害だクポポッ!」

空中で駄々をこねる子供のように暴れるモグッチ。

 

「ハモウ様、お願いですッ。一刻も早く俺はミッドガルドに戻りたいッ!」

ハモウの近くまで擦り寄り懇願するノブヒデ改め、ユッケ。

 

「・・・うむ、わかっておる。」

小柄ながらも座り込み、ユッケに目線を合わせてユッケの肩に優しく手を置いてユッケの目を見詰めるハモウ。

 

「モグッチ、お茶を用意しておくれ。」

立ち上がってハモウはモグッチにお茶の用意をするように催促した。

 

「むむむむっ、モーグリをムゲに扱うと罰が当たるクポッ!」

そう怒りながらも素直に従うモグッチ。

 

「・・・あっ、あのっ。」

「お茶を飲もう、ユッケ。」

ユッケが何かを言おうとしたのを遮るかのようにハモウが微笑んで言葉を重ねた。

 

 

〔カチャッ〕

 

 

次元の狭間のハモウの掘っ立て小屋の中、ハモウがお茶を飲んでカップをコースターに戻す。

 

「・・・ワシはずっと見ておった。リアがヒロヨシと一緒に懸命になってミッドガルドを救おうとした事も。リアとヒロヨシが結ばれて、お主が誕生した事も。そして、リアがお主の存在により変わってしまった事も・・・。」

遠い目をしながらハモウが話す。

 

「リアが死んで、シヴァがリアの思いを受け継いだ事も。何の因果か、お主がミッドガルドに来てしまったことやお主が懸命にミッドガルドを救おうとしてくれた事も知っておる。」

ハモウがユッケの目に視線をゆっくり移して優しく微笑む。

 

「・・・ワシはリアを責めたりはせん。シヴァも同様じゃ・・・責められるはずもない。母親にとって子供がどれほど大事なものかよう分かっておる・・・。ましてや、子供に世界を救わせようなどと普通の母親は思わんよ・・・。」

ハモウは座っていた椅子から立ち上がり、ゆっくり部屋の中を歩き出す。

 

「現に世界を救おうとしたお主は闇の民によってここに飛ばされてきたんじゃからな・・・。」

そこまでいうとハモウは立ち止まりユッケを見る。

 

「リアがもしも生きておれば、卒倒したじゃろうてッ。」

ハモウが微笑みをユッケに向けた。

 

「・・・・・・。」

ユッケはお茶を出されたものの、口を付けれるような気分ではなかった。ハモウの言葉をジッと聞きながら貧乏揺すりを必死に我慢していた。

 

〔ポカッ〕

 

「アイテッ!」

「せっかく僕が入れたお茶を飲まないなんて失礼クポッ!」

モグッチが入れたお茶に口を付けないユッケにいよいよモグッチが怒りの鉄拳を浴びせた。

 

「ヒョッヒョッヒョッヒョッ。」

その様子を見て笑うハモウ。

 

「・・・ごめん・・・いただきます。」

ユッケはモグッチにまた殴られないように冷めたお茶を飲んだ。

 

「・・・どうじゃ、お茶を飲めば落ち着いたじゃろ?」

ニコニコとユッケを見るハモウ。最早、それは子煩悩なおじいちゃんの姿だった。

 

「・・・すいません・・・。」

確かにお茶を飲むことで一気に頭の熱も下げられたように感じたユッケ。

 

「・・・さて、そろそろ本題に入ろうかの・・・。」

掘っ立て小屋の小さな窓からクリスタルを見るハモウ。

 

「・・・これから行う魔法は確かにここ『次元の狭間』から抜け出す事が出来るのじゃが、ミッドガルドに戻れるかは分からんのじゃ・・・。」

 

「ッ?!」

ハモウの説明に驚くユッケ。どうしても、ミッドガルドに帰って、ミナやシヴァを助けたいユッケには青ざめる内容だった。

 

「・・・落ち着いて気持ちを統一せねば、成功率は下がる。余計ミッドガルドに戻れなくなるかもしれん・・・チャンスは一回しかないからな・・・。」

ハモウが真剣な顔でユッケを見る。

 

「・・・・・・。」

唾を飲み込みユッケはハモウを見返す。

 

「ここにあるクリスタルは、昔、アルテマ神殿にあったアルテマクリスタルの残骸と言っていい物じゃが、エネルギーの残留物は相当なものじゃ。」

窓からクリスタルを見ながらハモウが話す。

 

「その力を使って次元移動を行う。光の塔を思い浮かべながらミッドガルドに帰りたいと強く念じれば、ミッドガルドに戻れるかもしれん。」

ハモウが淡々と話す。

 

「・・・運が悪ければ、どこに飛ぶか分からん。アースカンドか、はたまた次元の狭間の違う何処かか・・・或いは存在そのものが消滅してしまうか・・・。」

ハモウがユッケの目に視線を移す。

 

「・・・やるか?」

ハモウはユッケの決意を尋ねる。

 

「やります。」

ユッケは迷わなかった。即答してハモウに答える。

ここに居ても、どうにもならない。今もこうしている間にシヴァやミナや皆がハディにやられているかもしれない。そう思うとユッケに選択肢なんてなかった。

 

「・・・しょっ、消滅しちゃうクポ?」

怖気づく動物が一匹いた。

 

「力を使えば、クリスタルは光も出さなくなる。暗い闇の中で居たいのなら無理強いはせんよ。」

ニコニコしながらモグッチを見るハモウ。

 

「・・・・・・うぅっ、分かったクポ・・・やるクポッ。」

浮かびながら頭をうな垂れて覚悟を決めたモグッチだった。

 

「それでは、行こうとするかの。」

ハモウはそう言うと掘っ立て小屋の出入り口へと歩き、扉を開けて外へと出て行った。

 

(待っててくれ、ミナ、シヴァ、皆・・・。)

ユッケは握りこぶしを作り、それをジッと見て思いを高めた。

そして、ハモウの待つクリスタルの元へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 




ミッドガルドに還る為に賭けに出るユッケ達
そんなユッケ達を尻目に
あの男が人知れず、闇の中をうごめく・・・。

次回、「闇のクリスタル」
青年は影法師と踊る?!(千葉繁さん風)
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